521 :名無しさん:2012/03/09(金) 14:19:42
流れをぶった切って失礼。憂鬱版ブラクラの銃器事情を考えていて浮かんだネタをひとつ。



 

M1911非公然改造型簡易短機関銃《スタンプ=ガン》


 

 本銃は冒頭に掲げたタイトル通り、決して公式モデルとして生産されたことは無い銃器である。
その源流は1920年代の禁酒法時代、いわゆる「ギャング・エイジ」にまでさかのぼる。
 
 
 当時のギャングが愛用していた「トンプソン短機関銃」、別名「シカゴ・タイプライター」は、
最大で45ACP弾100発入りドラムマガジンを装着できる、極めて火力に優れた短機関銃であった。
しかし、同時にその桁外れな装弾数がトンプソンの数少ない欠点の原因となっていた。
 
 重すぎるのだ。その重量全備状態で実に約7kg。到底もって歩けるものではない。良くある、
「ギャングが走る自動車から銃を乱射する」というギャング映画の描写は、全くの真実である。
「車に乗って移動し、発砲も車上から行う」という運用方法を取るしかないほど、トンプソンは
重かったのだ。
 
 当然の事ながら、「もっと軽いマシンガンが欲しい」という声が上がったのだが、どこの誰が
ギャング御用達の銃器を専門に開発してくれるだろうか? 結局の所、ありものの銃器を改造して
お茶を濁すのが限界であった。
 
 こうしてギャング(と銃密造・改造業者)たちは無数の改造銃器を作り出すことになったのであるが、
そのベースとして優秀な自動拳銃であるコルトM1911が注目されたのは、極々自然な流れであった。
本銃の原型が誕生するに至った経緯はこのようなものである。


 

 本銃は「コルトM1911ガヴァメント」の改造銃である。その改造は多少のバリエーションがあるが、
多くは以下の三点に集約される。

 

①内部機構をフルオート対応に変更
②フレーム前部に固定式のフォワグリップ・ハンドルを溶接
③20発ないし30発を装填可能なロングマガジンの装備
 
 
 
 ……正直な話本銃は、「そこそこ名の知れたギャングが使っていた」「それなりに使える銃だった」
という話を加味しても、銃器の歴史における際物でしかない。こののち同様のコンセプトの銃器が
メーカー公式モデルとして発売されることはついぞ無かったのも、その事を裏付けている。であるが、
その状況は「大西洋大津波」とその後の列強進駐、アメリカ解体の中で、完全に覆される事となった。
 
 東米建国前後の世相を現す言葉として「銃を、もっと銃を! 出来ればより強力な銃を!」
という文言があるが、この流れの中で本銃も復活を果たす事となった。「45ACP弾をばら撒ける
サブマシンガン」としては既にトンプソンがあったが、慢性的な治安悪化と銃器不足に晒された
東米のなりふりかまわぬ事情が、本銃をリバイバル ―それもより悪い形で― させたといえる。
 
 東米時代、本銃への改造に供されたM1911は、中小零細メーカーによってクローン&コピーされた、
粗悪な加工精度・品質のものがほとんどである(「純正品」のM1911はその品質・工作精度・信頼性
etcから既にプレミアもので、このような乱暴な改造銃のベースとされる事は少なかった)。
 
 ゆえにその性能も「純正品」のM1911を用いたものよりも劣悪で、連射によるバレルの加熱・消耗、
無理な連射化改造による作動不良、各部への高負荷による部品の破損、ロングマガジンの変形に
よる給弾不良と良い所がほとんど無く、「程度のいいコピー品のM1911を 探したほうがまだマシ」
という評価が一般的であった。際物銃がゲテモノ銃へと成り下がった分けである。
 
 当然の事ながら、このようなガラクタを公的治安機関が装備する事は無く、それこそギャングや
それに類する連中御用達という結果となった。まさに歴史は繰り返す、であった。
 
 なお、本銃の通称である「スタンプ=ガン」とは、「シカゴタイプライター(トンプソンマシンガン)のような
連続射撃は到底無理。せいぜいがスタンプ程度だ」という評価からつけられたとも、「地団太を踏んで
踏みつけ(スタンプ)してしまいたいくらい役に立たないクソ銃」という一般的認識に端を発するとも
言われている。

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最終更新:2012年03月23日 13:55