812:冷石:2024/07/20(土) 20:01:14 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp


     銀河憂鬱伝説    シマヅ戦記


   自由惑星同盟軍第5艦隊旗艦『リオ・グランデ』


「今、なんとおっしゃいましたか?」

ビュコックから先ごろ行われたタンネンベルク会戦の結果を聞いたアンドリュー・フォーク准将は呆けたような表情を浮かべ口にした

「うむ、先日タンネンベルク宙域において帝国軍迎撃艦隊と会敵しこれを殲滅した
正確な戦果は現在まとめておるので後日そちらに送るが、まあ、敵正規艦隊約八個艦隊をほぼ殲滅したと言ってよいじゃろ」

「詳しい話を聞いても構いませんかなビュコック提督」

口元を引きつらせながら訪ねるフォークにビュコックは

「うむ、帝国辺境星域において陽動作戦を行っていたシマヅ提督の第14艦隊に『なぜか』迎撃軍八個艦隊を差し向けてきたので
我々も全軍を差し向けて、タンネンベルク宙域において会敵、戦闘に入り敵軍を撃破した。としか言いようがないのう」

いけしゃあしゃあとビュコックは答える

「まあ、今回通信を入れたのは戦果報告もじゃが我々艦隊司令官達から侵攻軍司令部に報告と陳情をしたくての
すまんがロボス司令とグリーンヒル参謀長、あとキャゼルヌ少将も呼んでくれんかの」

「どんなことですか、要件なら小官がうかがいますが」

「いや、これは今回の出兵の今後にかかわる重大事じゃ、司令だけでなく司令部に直接進言したいのでな、すまんが司令を呼んでくれ。あとキャゼルヌ少将は補給の陳情においてどうしても聞かねばならんことがあるので最優先で呼んでくれ」

「キャゼルヌ少将については承りました。ですが司令は現在取り次ぐわけにはまいりません」

「理由を聞いてもよいか?」

眉をしかめビュコックは尋ねる

「司令は現在昼寝中で・・・」

「ならばグリーンヒル参謀長を呼んでくれ。この進言は一刻を争う。少なくとも司令、それか参謀長クラスでないとならんのでな」

「小官ではだめなのですか「グダグダ言わずにとっとと呼んで来い!」

ビュコックの隣に控えていたシマヅが吼えた。

「この用事は、今後の戦の行く末ばきめっ重大事じゃ。司令が昼寝しとっとなら、たたき起こして連れてこい!
起こすんに時間がかかっとなら、水ぶっかけてでも起こせ!」

「フォーク准将、司令を読んできたまえ」

「参謀長、ですが」

「いいから呼んできたまえ。提督たちがそろっての用件だ」

「了解しました」

813:冷石:2024/07/20(土) 20:02:23 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
十分ほどしてロボス元帥、グリーンヒル大将、キャゼルヌ少将ら司令部の要人がそろったのを見てビュコック元帥が発言する

「司令部の皆、そろっていただき感謝します。用件を言う前にキャゼルヌ少将にお尋ねしたい、今送っただけの食料、生活用品を即座に送ることは可能ですか?」

送られたデータを見たキャゼルヌは青ざめた顔をして

「不可能です、今イゼルローン要塞にあるすべての物資を前線に送ってもこの数字には届きません」

「やはりそうですか、少将返事をいただき感謝します。そのことを踏まえて進言します
我々は現在の占領地を維持することは不可能です、よって占領地を放棄してイゼルローンへの撤退を提案します」

その発言を聞きイゼルローンの司令部はざわめく。そしてフォークが発言する

「なぜ、占領地を放棄して撤退をしなければならないのですか?ビュコック提督。提督は先ほど帝国軍の迎撃艦隊八個艦隊をほぼ殲滅したとおっしゃっていたではありませんか。今こそ好機ではありませんか。さらに侵攻すべきと小官は思いますが」

フォークの発言にヤンが答える

「確かに、我々は帝国軍に大打撃を与えた。それゆえ好機と思うかもしれませんが、それは占領地に十分な物資があってこそです
ですが、占領地には食料は一週間分しかなく、生活用品も同様です。つまり帝国軍は焦土作戦を仕掛けていたという事です
幸いシマヅ提督がこのことを予期して最初の迎撃軍司令ローエングラム上級大将を更迭させるという策で何とか切り抜けましたが
それまでに占領した宙域はもう物資が無い状態です。それゆえ、占領地へ物資を配給するために必要な物資量が
先にキャゼルヌ少将に提示した数字です。今後その数字は増えることはあっても減ることはありません。
さらに言えば、帝国軍の迎撃艦隊を撃破したと言ってもまだ帝国には正規艦隊が八個存在しています。
それだけではありません、ここから先には大貴族領もありそこにも防衛艦隊はあります
それに何より帝国領は想像以上に広い、今後は占領地の防衛もしなければならなくなります。
大打撃を受けた帝国軍は決戦を避け我々の手薄なところを突いてくるでしょう。この手は歴史上よくとられています。
その為、タンネンベルク会戦での大勝と言う戦果によって帝国の威信を下げた。これで足れりとしてイゼルローンに帰還すべきです
もう一度言いますが、今の我々遠征軍に占領地を維持するだけの物資はありません。そこを突かれでもしたらほんの些細なことでも
敵の威信の回復につながりかねないのです。
もしもあくまで侵攻すべきと言うならば。明確な戦略目標を提示していただきたい。大攻勢をかけるなどと言う曖昧なものではない
具体的な目標を示していただきたい」

814:冷石:2024/07/20(土) 20:02:54 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
ヤンが発言を終え、着席するやキャゼルヌが発言する

「後方担当としては諸提督の意見に賛成です。ヤン提督が言った通りならば。先にも言ったようにそれだけの物資をわが軍は用意できません、
現状でも本国に物資を送ってもらえるよう打診してますがかなり返事は渋いです。それだけの物資を用意するだけの予算が無いと」

「あー、ちょっとよかですか?正直なとこをいうと。専制政治からの帝国国民の解放という大義が無かったら。こんいくさはとっとと終わらせた方がよかです。
占領地の軍政ばしいちょる連中に確認したとこ占領地から同盟領の一番貧しい地域並みの税収とれるようになるに10年単位でかかるちこっじゃ。
戸籍も教育もまともに受け取らん農奴ばかりで。そいつらに民主共和制を教育して理解させるだけでもどんだけかかるかわからんち事じゃ。
イゼルローンでの最初の軍議でフォーク准将が言った、我々を解放軍としてもろ手を挙げて迎え入れるなんてこつば夢物語じゃちゆうとった。
そん事きいてわしは思った。同盟国民の生活犠牲にしてまでこん戦こだわるべきかとね」

「聞き捨てなりませんな、帝国で苦しむ市民を見捨てるというのですか?」

「はっきり言えばそうじゃ。我らに潤沢な物資があり帝国国民を十分に養えるならばともかく現状それは不可能じゃ。
このままこん戦続けっとなら占領した地域の民衆に我慢を強いることになる。それをどう納得させる?
ごく一部の教育ば受けて民主主義を理解しとる奴らならともかく大半の連中からすれば我らは侵略者、
我らのせいで生活が苦しくなったと思うじゃろう。そうなると暴動が起こりかねんぞ。
それを武力で鎮圧すればもう帝国国民はわれらを二度と解放者とはとらえんじゃろう
民主主義より帝政の方がましと思われる。よく考えてほしか帝国国民からすれば500年じゃ
500年ずっと民主主義は悪と教育されてきたとじゃ。そのことはもう常識として刷り込まれちょる
それを覆すにゃ安定した生活ば与えて教育からやり直さにゃならん。先にも言ったが今の遠征軍にそれは不可能じゃ
ならば、帝国軍に大打撃を与えた、威信を叩き折った。ここで満足して引き返すべきじゃとわしは思っとる
ロボス司令、司令がトップじゃ決断は司令が下すもんじゃ。
侵攻を続けるか一度イゼルローンに引き返して戦を続けるかの判断ば政府にゆだねるか
今なら帝国軍に大勝利をおさめた遠征軍として終らせる事ができもす。ご決断を」

815:冷石:2024/07/20(土) 20:03:28 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp

   自由惑星同盟首都ハイネセン

「レベロ、遠征軍が帝国軍に大勝利をおさめたみたいだ」

「ああ、ホワン。トリューニヒト委員長からそのことを聞いたよ。それと遠征軍はいったんイゼルローン要塞に帰還したともね
ここでこの遠征を終わらせる必要がある」

「だがどうやって終わらせる?この勝利に乗じて帝国全土を占領してしまえと言うやつが現れるかもしれんぞ」

「うむ、だがトリューニヒトに策があるそうだ。今日来てもらったのはその件でその件で話しあいたいとの事だ」

「策?どんな策だ?レベロ聞いていないのか」

「どんな策かは聞いてはいない。だがそういった策に関しては我々は彼の足元にも及ばない。乗るしかないだろう」

「そうだな」

しばらくしてトリューニヒトが複数の男を連れてやってきた

「待たせて済まない」

「いや、それほど待ってはいない。だがトリューニヒト委員長そちらの方は誰だい?」

「ああ、彼らは同盟の軍需産業の労働組合の幹部たちさ」

「レベロ委員長、ホアン委員長初めまして」

「ああ、よろしく。それでトリューニヒト彼らをこの場に呼んだのはなぜだい?」

「ああ、彼らには大規模なストライキを打ってもらおうと思ってね」

「ストライキを?この時期にか?」

「この時期だからさ」

ニヤリとトリューニヒトが笑う。その表情にレベロとホアンはトリューニヒトの意図に気が付く

「なるほど、そういう手か!」

「ええ、トリューニヒト委員長から現在の同盟政府の財政状況を伺いました。このままだとどうなるかという事も
その予想図は我々労働者にとって好ましいものではない。それで委員長の手に乗ることにしました」

「なるほど、しかし・・・トリューニヒト委員長君は大したものだ。我々の及ぶところではない」

「ホアン委員長これを利用して議会に案を提出してくれないか?」

「ああ、まかせてくれ」

「それとレベロ。これは遠征軍の司令部から陳情された物資だ。見てくれるか。ついでに言えばこれより増えることはあっても
減ることはないとのことだ」

「わかった、これも遠征を終わらせる材料にする」

「では細かいところを詰めよう」

そうしてハイネセンの夜はふけていく。



あとがき
とりあえずタンネンベルク会戦後の同盟サイドです。
帝国サイドはもう少しお待ちを
冷石でした

816:冷石:2024/07/20(土) 20:05:11 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
とりあえずシマヅ戦記アップしました

トリさんがとった策はマスターキートンで誘拐犯との交渉でキートンがとった手です

01/26 誤字脱字を修正

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最終更新:2025年01月26日 20:36