825:冷石:2024/07/21(日) 02:10:24 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp

   銀河憂鬱伝説   シマヅ戦記


   銀河帝国首都オーディン 新無憂宮


 この日銀河帝国は激震に見舞われていた。先日のタンネンベルク会戦における大敗の衝撃もやまぬ中皇帝フリードリヒ4世が崩御したのである。
後継者を定めずに皇帝が死んだため後継者を誰にするのか、宮中の目はその一点に注がれていた。


「ブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯、今日はお呼び建てして申し訳ない」

「社交辞令はいい、本題に入ってもらおう」

「そうだ、陛下の後継者をだれにするか、それがこの会談の趣旨であろう」

「ならば、本題に入らせてもらう。二人もご存知の通り帝国は危機にある。先日のタンネンベルク宙域で帝国軍は大打撃を受けた」

「そんな中だ、いがみ合っている状況ではないと?」

「そうだ、それで提案なのだが・・・まず後継者だが私はエルウィン・ヨーゼフ皇子をおす。
そして、その許嫁にリッテンハイム候のご息女サビーネ様になっていただく。
そしてブラウンシュヴァイク公には帝国宰相として文武百官の首座についていただく
現状これが帝国の分裂を防ぎ挙国一致でこの難局に立ち向かうのに最も良いと考えるがいかに」

門閥貴族の領袖二人はこの提案に首を縦に振った。

826:冷石:2024/07/21(日) 02:11:17 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp

メルカッツはこの日リヒテンラーデ国務尚書に呼び出された

「フォン・メルカッツ参上しました」

「入りたまえ」

「はっ」

メルカッツはリヒテンラーデ国務尚書からの用件の内容は予想がついていた、そして彼からの発言はその予想した通りのものだった

「メルカッツ元帥、貴官を帝国軍元帥に任命し帝国軍宇宙艦隊司令長官に任命することになった
正式な任命式は後日になるが、これは決定事項だ」

火中の栗を拾わされることになるかとメルカッツは内心で嘆息した

「かしこまりました。このメルカッツ粉骨砕身の覚悟で任務に就かせていただきます」

「うむ、それで就任にあたり何か要求はあるかね。可能な限りかなえよう」

「では、まずローエングラム上級大将の旧元帥府にいた諸提督をそのまま正規艦隊提督として私の指揮下に置くことを認めていただきたい」

「・・・わかった。そのようにエーレンベルク軍務尚書に伝えよう他には?」

「はい、私の名のもとに叛乱軍との間で捕虜交換の提案を行う事をお許しいただきたい」

「理由を聞こうか」

「理由は二つあります、一つは時間稼ぎです。この提案を叛乱軍が受けるかどうかはわかりませんが。何らかの結論が出るまで進撃のペースが落ちるかもしれません」

「無視して進軍してくる可能性は?」

「高いですが、それならばそのことをフェザーンを通じて叛乱軍の勢力下に流します。ゆさぶりくらいにはなるでしょう
立て直しの時間は少しでもあるに越したことはありません。ならば打てる手は打つべきかと」

「もう一つの理由は?」

純粋な軍人としての発想しかできないと思っていたメルカッツの以外と言える一面を見た気になったリヒテンラーデは評価を上方修正しつつ発言を促す

「純粋に戦力の強化です。最近の戦闘で捕虜になった将兵はブランクがあるとしても十分な訓練を受けた人間です
まったくの新兵よりは訓練にかかる時間は少なく済みます。叛乱軍の方も同じことが言えますが。メリットは我々の方が大きい。そう判断しました」

「わかった、ではすぐにでも進めてくれ。先にも言ったが正式な任命は後になるが宇宙艦隊司令長官としての権限は現時点をもって与える。今後君の命令は宇宙艦隊司令長官として発したものとする」

「感謝いたします」

「時間は貴重だすぐにでも進めてくれたまえ」

敬礼しメルカッツは退席した


  銀河帝国首都オーディン 軍務省内


「メルカッツ提督宇宙艦隊司令長官就任おめでとうございます」

「火中の栗を拾わされただけだよ、ファーレンハイト大将」

先のタンネンベルク会戦での勇戦が認められ大将に昇進が決まったファーレンハイトがメルカッツの元に訪れた

「まあいい、今大事なのは宇宙艦隊の再編についてだ」

「ええ、とりあえず新規に編成される宇宙艦隊の中核になる提督はローエングラム上級大将の幕下にいたものでよいのですか?」

「問題以前だ、今残っている艦隊は彼らの指揮下にいた者たちだ、いきなり上を挿げ替えて十全の働きを期待できるとは思えない
それに今回の失態は大きいが能力面は不足はない者たちだからね」

「ローエングラム上級大将はどうされますか」

「彼の才能は惜しいが閑職に回すことになるな。今回の敗戦のスケープゴートになってもらわねばならん
そうでもしないと彼の配下だった諸提督を呼び戻せない」

「配下の諸提督を再登用するためにすべての罪をローエングラム上級大将にかぶってもらうわけですか」

「そうだ、そうでもしないとローエングラム上級大将直属の者はともかく。他の兵士や臣民が納得しないだろう
それに本来最高司令の仕事はこういったものだ。その軍事行動の全ての責任を被る。
艦隊の指揮や作戦の立案は下の者に任せればいい。その結果発生する責任を取るのが最大の仕事だ
その仕事をしてもらうだけの事だ、それに・・・」

「それに?」

「いや、彼の事よりも今は叛乱軍の侵攻を食い止めることを考えねばならん。一応フェザーン経由で捕虜交換の打診をしているが
その返事を待ちつつ、叛乱軍の手薄なところを突く。こうして侵攻速度を落とし出血を強いて叛乱軍の財政にダメージを与える
そうして耐えきれなくなったところで一時的な講和をむすぶ。これが私の考える基本戦略だ。
何か意見は?」

「今のところとれる手で最善だと思われます。勢いに乗った叛乱軍に真っ向勝負を挑むのは避けたいですからね」

「ではその旨を上に掛け合ってくる」

(ローエングラム上級大将、君は少なくとも焦土作戦を取るならば上にきちんと報告すべきだったな。作戦の意図を上に理解させることを怠ってなければ更迭されずに君の思い描いたとおりにこの戦いは進んだろうに)
自身を頼みすぎるあまり意図を周囲に理解させる努力を怠った英才のことを惜しみつつメルカッツは統帥本部へと向かうのだった。

827:冷石:2024/07/21(日) 02:18:14 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
とりあえず、帝国サイドアップします
原作通り老皇帝には崩御していただきました。この事態だと門閥貴族も官僚たちも争うのをやめて
この辺で妥協するかなと思いこの結果に。
新司令は皆さん予想通りメルカッツ提督です。と言うよりこの時点で司令長官ができるくらいの軍歴を持ってるのって
メルカッツ提督しかいないですからね。帝国上層部からすればラインハルトの復権は避けたいでしょうし
後メルカッツが政治的な判断を下せたのは下級貴族でありながら軍高官に長く入れたくらいですし。リップシュタットの時に
門閥貴族から最高司令に任命されるくらいに名望があるわけですから、これくらいの判断はできるかなと。
原作だと亡命後が主な活躍の場だったので政治的な判断や発言は意図的にしなかったと思うんで

01/26 一部誤字等を修正

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最終更新:2025年01月26日 20:42