316:earth:2024/04/29(月) 17:34:33 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
「弊社は悪の秘密結社です」 2話
人類は突然現れた3種の化け物に対し、それぞれBETA、ネウロイ、幻獣との呼称をつけていた。
尤もそれは彼らが自主的に定めたのではなく、誤射を避けるために、天御門から時折送られる通信内容を元にした決定だった。
「呼び名を共通にしていた方が混乱しなくて済む」
それが当時の人類の決定だった。
本来は天御門と正式に接触して、何とか協力体制を築きたい(というより技術、兵器供与して欲しい)というのが人類側の考えであったが、駒井を頂点とする
天御門はこれらの呼びかけに対し、一顧だにしない。
「何で我々の技術が漏れるリスクをとる必要がある?」
ただし人類が壊滅しても困るため、天御門は敵の情勢などの必要な情報を送信はしていた。そう、日本語で。
「訳すことも出来るけど、それくらいは現地でやってくれ」
日本語で記された、時折送られる様々な情報は、何十もの検証の末、各国のBETA、ネウロイ、幻獣戦略に使用されることになったが、これらの対応の所為で
天御門は日本と関係があるのではないかと疑われ始めた。
特に出現頻度が高いのが日本近隣であったこともあり、「彼らは日本の秘匿戦力なのでは?」などと疑う者さえいる。
化け物との戦いについて議論する国連の安全保障理事会では、日本代表に探るような視線が向けられる。
「人型機動兵器、あちらからの通達ではモビルスーツというそうですが」
「随分と日本のアニメに出てくるロボットとそっくりですな。恐るべき偶然というべきでしょうか?」
「人類の危機に際し、我々は隠し事をするべきではないでしょう」
そんな言葉を国連の会議の席で他国から浴びせられる日本代表は気が気でない。
(俺たちだって知りたいのに、納得してくれない! どうすればいいのだ!?)
尤も実りが期待できない探り合いに汲々とするほど、彼らも暇ではないので議論はすぐに戦略レベルに戻る。
317:earth:2024/04/29(月) 17:35:07 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
「20XX年の4月1日に世界各地に出現したBETA、幻獣、ネウロイ。
すでに中央アジアの過半は奴らの占領下にあります。BETAの巣・ハイヴはカシュガルを中心に8つ健在。
片やネウロイの巣はワルシャワ、ウランバートル、エヴェンスクとユーラシア各地に分散して現れていますが、強力な飛行ユニットに手を焼いています。
すでに一部はアラスカにも威力偵察をしかけているとの報告もあります」
「そして幻獣。彼らはインド北部を勢力圏とし、現在はチベット、イランに侵攻する構えをとっているようです」
ユーラシアの過半が失われつつある状況に誰もが青ざめる。
「ただ幻獣とBETAが侵攻先が被るため、頻繁にぶつかってくれているのが幸いでしょうか。幻獣は人類を攻撃しますが、BETAにも同程度の攻撃を
行っており、これにより同方面のBETAと幻獣の進撃速度は低下しています」
「ただ幻獣は海洋にも進出し始めているようで、インド洋での船舶の被害が確認されています」
中東とのシーレーンが遮断されかねない情勢に日本代表は青ざめる。
(ま、拙い、我が国の生命線が!?)
中東が危うく、ロシアは今や石油を輸出どころではない。それは大凡百年前の危機的状態に再び陥りかねないことを示していた。
「欧州はネウロイの攻撃にさらされており、ポーランドが完全に国土を喪失。ドイツ国境に展開したNATO軍が戦術核を使用することで辛うじて
侵攻を阻止していますが、部隊と弾薬の消耗に補充が追いつけません」
「
アジアですが、こちらはBETAとネウロイの侵攻により北京を含む華北一帯が制圧され、BETAは北進、ネウロイは西進を続けています。
ただ先日の東シナ海海戦にて、天御門が乱入。重攻撃型ネウロイを撃滅したことでネウロイの東シナ海侵攻は一時的にストップしました」
「他の戦域での天御門の動きは?」
「可変型MS、飛行可能MSを遊撃部隊として送り込む形で、化け物共の侵攻を遅らせる成果は上げています。実際、彼らに倒された化け物の
数は、我々が倒した数を上回るでしょう」
「「「・・・・・・・」」」
「しかし我々も無力ではない。精鋭のロシア軍は各地で反撃している」
ロシア代表は強がっていたが、東と西からBETAとネウロイによって挟撃されつつあり、シベリア失陥さえ時間の問題という有様だった。
核兵器を多数見舞ったが、決定打にならず、最近では迎撃されて効果が薄れてきている。
人相手では難攻不落を誇ったはずのロシアが化け物共の手によって滅亡の危機にあることにロシア人は狂いそうになっていた。
「しかし後退は続いている。事実は直視するべきだろう」
比較的余裕名態度を見せるアメリカ代表はそう諫めた。
尤も内心はそんなに余裕ではない。
アメリカはまだ本国が直接地上侵攻を受けたわけではないが、アラスカにはネウロイが威力偵察をしかけてきており、少なくない被害が
出ている。このため本国の有権者は「本土防衛を最優先にしろ」と騒ぎ立てており、政府もそれに苦慮していた。
(やはり天御門。あの勢力を如何に早く口説き落とすか、だな)
特にアメリカは天御門のものと思われる宇宙船が地球近隣で活動していることを察知しており、彼らの拠点が宇宙にみあると判断して
探索を進めていた。
(中露はこの戦争で脱落する。ここで本土が無傷の状態で、天御門との協力体制を上手く構築できれば、我が国は再び偉大な国として
世界に認められ、君臨することが出来るだろう)
当然、そんなアメリカの考えなど他国もお見通しのため、この情勢下にもかかわらず、様々な足の引っ張り合いが起きていた。
夜明けは未だに遠い。
318:earth:2024/04/29(月) 17:36:23 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
とりあえず2話目終了。
地球の状況を即興で想定。
うん、中国の工場がヤバいので、リアルだと日米も酷いことになりそうですが、
まぁフィクションということで勘弁を。
それでもインド洋シーレーンが遮断されたら、日本お終いのお知らせになりそうですが。
最終更新:2025年02月11日 22:48