361:earth:2024/04/29(月) 23:45:20 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp


「弊社は悪の秘密結社です」  3話

人類がフィクションから這い出てきたような化け物共に襲われて1年。
ユーラシアの人類の生存圏は大きく後退し、かつてそこにいた人々は死後の世界か、他国への強制転居を余儀なくされていた。
しかし被害は失われた土地に生きる者達のものだけではなかった。ユーラシアの人類の生存圏が失われ、ユーラシア中央の上空の制空権を失い、
インド洋の制海権も危うくなりつつある事態は、世界中の経済に悪影響を与えていた。
ここに至り、地上部隊を統括するレッド(赤髪の駒井)からの提案で【頭】が確定しているであろうBETAを先に叩くことも考えたが・・・・・。

「問題は今、BETAを葬って、事態が悪化しないか確証がない」

オリジナルたるブラックがそう言ったのは月面基地の一角にある円卓が置かれた会議室。
それぞれの席には当人が座るか、離れた場所にいる人間の場合は立体映像が投影されていた。

「なぜあの化け物共が出てきたのか判らない。藪をつついて蛇を出す愚行は控えたい」
『しかし・・・・・・』

地上の窮状を実際に目にすることが多いレッドは言いつのるものの、理論的に納得させることが出来ない。
駒井シリーズだけでなく、駒井たちが作り上げた自律型ドロイド(参謀、指揮官を担える高級モデルは人間と見間違うレベル)も、消極的反対という意思を示す。

「・・・・・・今は情報の収集だ。下手に仁義心をかきたてて動いても碌なことにならないのは判っている筈だ。他ならぬ俺たちはそれを知っている」

この言葉に反論する者はいなかった。
あまたの世界で、仁義心にかられて動いても最後は倒すべき敵として排除されてきた経験・・・・・・故に彼らは自分達の目的にそぐわないのなら見捨てることを
是とするのだ。
尤もレッドの名前を与えられた個体は若干、甘いというのがブラックの評でもある。

(まだ俺も人を信じたいという気持ちが残っているんだな)

自分の人としての良心がどこかに残っていることに、半ば呆れつつ、半ば安堵する。

「・・・・・・ただ今のような地上軍の火消し戦術だけでは情報収集が不足というのも事実」

ブラックの言葉にホワイトがうなずく。
彼らはガルダ級及び機動性の高いMS、MAによる火消し戦術でことに当たっていたが、それらは全て現地球人類側との接触を避けるためでもある。
火消しを追えた後はステルス機能を付与したガルダにMSとMAを収納して、地上の秘密基地に戻す。それが基本的なやり方だったのだ。
それだけでも相応の戦果は挙げていたのが、肝心の情報が集まらない。

362:earth:2024/04/29(月) 23:45:56 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

「ブラックの言うとおりだ。我々が動いて3ヶ月程度にはなるが、いまだ有効な情報が得られていない。ならばアプローチを変えるべきだろう。先人達の例に倣って」
『・・・・・・なるほどAL4をもう一度、と』
「ただ黒い月がどう動くか判らん。きたかぜゾンビ、いや規模的にはナガト・ワンダーのようになったザンジバル級、エンドラ級などが確認されている・・・・・・・そして
これらはかつて我々が沈めたことのある艦だ」

半ば生物と化したようなザンジバルやエンドラの映像に沈黙が広がる。

『・・・・・・』
「まるで怨霊共が我々を追ってきている気さえする。油断は禁物だろう」
『では?』
「世界征服には不要と思っていたが、宇宙艦隊の増産、特に要塞攻略に使える艦種が必要だろう」
『ネル・アーガマ、いや松島級機動特装艦を増産すると?』
「手間が掛かりすぎる。プランBとして考えていたマゼラン・ヤマト仕様を検討する」

マゼラン級にMS搭載能力を付与するのではなく、艦底側の砲塔の一部を撤去し、そこに大口径のハイメガ粒子砲を搭載する・・・・・・火力全振りの戦艦であったが、
ネル・アーガマを量産するよりは手間が掛からない。そして攻城戦においてそれなりの数が用意できれば、選択肢が広がる。

「AL4とビンソンプランの同時進行・・・・・・後者は兎に角、前者はまた『力』を使うことになるか」

オリジナルたるブラックしか持ち得ないチート能力は、かつて自分が得たことがあるものを召喚(再現)できるというものだった。
ただしその構造が複雑であればあるほど、脳を筆頭に体への負荷が大きいので連続して使いたくないというのが本音でもあった。
だからこそ、工場を建設して必要な生産設備を整えてからはあまり使っていない。
しかし現在の設備で00ユニットが作れるかといえば微妙である。時間をかければ可能だろうが、生産に時間をかけないとなれば彼が出張る必要がある。
だがやらねばならない以上、彼は覚悟を決める。

「では仕事に取りかかるとしよう。世界を征服するために」

363:earth:2024/04/29(月) 23:47:30 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
要望に応えてマゼラン・ヤマト仕様という謎の艦種登場。
どちらかというとでスラー砲艦な感じもしますが(笑)。

MS搭載能力を排した火力極振り(量産型)戦艦の登場です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2025年02月11日 22:50