540:earth:2024/05/01(水) 22:53:02 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp


 「弊社は悪の秘密結社です」  7話


 月面基地の軍需工廠が文字通りフル稼働を開始すると消費する資源量も跳ね上がった。
 ミノフスキードライブを搭載して亜光速航行が可能な艦艇を動員して、資源を木星圏からも運び込むようにしているが、この活動に合わせて幻獣軍の
活動も活発化してしまい、各地で小競り合いが勃発。更に幻獣側の偵察部隊が月へも接近するようになった。
 ミラージュコロイドを含め、様々な方法で偽装された月面基地は発見される可能性は低いが、月に橋頭堡を築かれてしまうと面倒なことになりかねない。

「警備部隊を増強するのは良いが・・・・・・もう月に重要拠点があることを白状するようなものだからな」

 飾り気のない司令室の机でブラックはそうこぼす。

「ラグランジュ1に前線基地を設けるか」

 どこぞの副司令よろしく右後ろに立っていたホワイトは眉をひそめる。

「本気か? さすがに地上人も気づくぞ」
「仕方ないだろう。それに現状では地上への介入もやむを得ない」

 月の裏側(宇宙世紀で言えばグラナダの位置)に本部があるが、表側には発見を恐れて大規模な拠点はない。
 徹底的に秘匿し、電撃的に地球を制圧する予定だった上に、地球人類に月まで攻めてくる力は無いということで半ば放置されていた為だ。
 ちなみに対地上作戦が長期化した場合、万が一の地球側の反撃に対する備えの拠点をラグランジュ1に置く予定ではあった。 

「必要な資材はもともと用意してある。短時間で済むはず」
「ふむ。接触しようとする輩が増えるな」
「だがやむを得ないだろう。地上の様子は予想通りに酷いからな。我々の予想を良い意味で裏切ってくれれば良かったのだが」
「我々にとっては吉報でもあるのでは? 英雄がまだ現れていないということだ」
「・・・・・・それも一理ある」 

 地上の荒廃は彼らが予想した範囲内ではあるが、それはそれで酷いものであった。

「ヨーロッパ・ロシアは核兵器の使用と原子力発電所の破壊で汚染塗れ。東欧も戦術核を使いすぎて人間が住めた物ではない。
アジアも中共とインド、パキスタンが核を使用して汚染が広がっている。大惨事だな」

 オリジナルのブラックの口調は冷淡であったが、どこか哀れみの感情を持っていることをホワイトは感じた。

「(甘いな)・・・・・・この調子だと中東陥落も時間の問題だろう」
「流通の要衝と石油資源を抱える土地。それが故に因縁と怨念に満ちた土地。軍事介入するとなるとさぞ厄介だろうな。現地人に任せておきたいが」
「米国が逃げ出すのも時間の問題だろうな」

 情報を分析する限り、現地米軍の損耗率は限界に近いと彼らは判断していた。

「テコ入れしても、この程度とは」

 ホワイトの言葉にブラックは苦笑して口を開く。

「何十年も戦っていた世界とは違うから戦う為のドクトリンや兵器も不十分だ。それに奴らは我々が知るものよりも大幅に強化されてる」
「・・・・・・では彼らに助力する、と?」
「AL4の結果次第では、最低限の技術支援ぐらいはしてやる。不本意極まりないがね・・・・・・」

 駒井シリーズはオリジナルの決定をネットワークにて伝達され、その方針に沿って行動を早めていくこととなる。

541:earth:2024/05/01(水) 22:54:51 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
短めですが7話目終了。
次回以降、本格接触予定。
もし天御門の宇宙船ドック(宇宙戦艦がずらっと並ぶ)を浪漫を持つ青少年が見たら
興奮するだろうなと思ってしまった。

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最終更新:2025年03月02日 20:57