347:モントゴメリー(オルタ):2024/09/11(水) 23:16:32 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
日本大陸連合 Strong Style③——前編——

——「旧」防衛省庁舎
その一角にある会議室に多くの人間が集まっている。
「被占領国」たる列島日本からは総理大臣を筆頭とする文官たち。及びそれに助言をするために「元」統合幕僚長以下少数の武官(敢えてこう明記する)。
「占領国」、通称『大陸連合』総司令部からは議長を始めとして文武の高官たちが出席している。
列島日本の総理大臣は、大陸連合内の強硬派の主張により降伏文書調印後に「八つ裂き(直喩)」にされる所を、穏健派の取り成しにより「切腹(直喩)」へ、更に「切腹(保留)」へと減刑され未だに政府の代表を務めている。

なお、大陸連合が列島日本占領政策における軍事面で第一に成した事は「防衛省及び自衛隊の完全解体」である。
彼らから見れば、それらは軍事組織として使い物にならなかったからである。
実戦部隊たる自衛隊に関して言えば、装備や練度についてはまだいい。この世界の技術レベルを考慮すれば及第点くらいは認めてやれる。
しかし、隊員たち個人個人の心構えはいただけない。ある古参の自衛官に聞き取り調査した時など

「私は人の命を救うために自衛隊に入ったんだ。戦うためではない」

という返答が帰って来て大陸連合関係者を唖然とさせた。
確かに国民の生命財産を守ることが軍隊の「使命」である。しかし、その使命を果たすためには戦闘という「手段」を避けては通れない。
その心意気は警察官や消防士ならば天晴れであるが、“防人”としては失格なのだ。
更に言えば、現場を支えるべき法令関係の整備が不足している…というよりほぼ皆無であったのが致命的だ。
軍法会議すら開けないなど、これ実際に戦争になっていたらどうするつもりだったのだろうか?と大陸連合の法務将校は首を傾げた。

このような惨状から大陸連合総司令部は、自衛隊を発展改善するのではなく新しい国軍を一から創り上げた方が早いと判断したのだ。
自衛官は統合幕僚長から二等陸士まで全員が解雇された。
されど大陸連合の者たちは勇士への敬意の表し方を知っている。
彼らのほぼ全員が一階級昇進の上、規定通りの退職金のみならず基本給1年分が一律で給付された。さらに、希望者は新国軍への優先入隊権が与えられる。
(思想調査などの各種試験を突破する必要はあるが)
また、先の戦闘で負傷または「戦死」した隊員は二階級特進の上それに見合う額の一時金か遺族年金が支払われた。

防衛省に至っては存在自体が害悪と言ってよい。
予算確保という“自己保存”すらできないとは、軍事に限らず国家機関としての条件を満たしていないではないか。
こちらも職員は全員解雇である。退職金を出しただけまだ慈悲深い。
防衛省に代わって「兵部省」が新設される予定である。

348:モントゴメリー(オルタ):2024/09/11(水) 23:17:47 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
「——これより『列島日本正常化計画』、その初期段階の説明を始める」

議長が厳かに宣言した。
なお、議長は列島日本占領の元凶となった特使夫妻殺害事件。その被害者を出した世界出身であり強硬派の最右翼集団のトップである。

「まず前提として、列島日本の統治方針は天武天皇を模範とする」

列島日本の出席者たちはその言葉の意図を測りかねていた。ただ一人を除いて。

「…『凡政要者軍事也』。政治は軍事を第一とするということですか」
「流石は安倍氏の末裔と言った所か?腐っても鯛だな」

総理の言葉に、議長は面白くなさそうに返す。

「国家の役割とは究極的には『国防』と『司法』と『物流』だ。
 私は夜警国家主義者ではないが、この三つの条件を満たした共同体が国家を名乗る資格があるという主張には全面的に同意するものである。」
「そして、その意味ではこの列島日本は国家未満ですね」

議長の言葉に連合側の一人が付け加える。

「いかにも。本計画が“正常化”と銘打たれているのもそれが理由である」

議長は言葉を続ける。

「国家の基本である軍事、そのまた基本である兵員数については『人口の約1%』を基準とする」
「1%…?」
「具体的には総兵力『130万人』である」

その言葉に列島側の人間がざわめいた。何せ旧自衛隊の5倍以上の数である。

「そ…なんな数の兵員をどうやって揃えるおつもりか?」
「志願制で賄うのが最善であるが、それは望み薄であることも承知している。
 ——徴兵制を施行する」
「っ!?」
「更に総力戦体制の構築も進め、最終的には『人口の約10%』、1300万人を動員可能な体制を目指す」
「……!!」

列島側諸氏は言葉を失った。その中でも、財務省からの参加者が声を上げる。

「し、しかし…。徴兵制を採用したら経済への悪影響が…」
「経済だと?貴様らがそれを言うか?経済的失策を繰り返し『失われた30年』とやらを生み出した貴様らが!?」

議長はその声を一蹴しつつ続ける。

「我々を侮るな。貴様らと違い、軍事と経済を両立してご覧に入れよう。我々はそれを常になしてきたのだ」

実際、大陸連合加盟国の大半は21世紀になっても徴兵制を維持し続けている。

「それに、敢えて言うが我々が必要なのは『ゲート』の番人なのだ。
 1000万の精兵が揃うならば、1億の民が飢えに苦しむことになろうと一向に構わない」

議長の言葉に、列島側参加者は肩を落とし、顔を青ざめた。

「——まあまあ、議長。あまり事を急いではいけませんよ」

沈黙が満ちた会議室に一人の声が響く。
先ほど発言していた大陸連合側の出席者である。

「議長の仰る方針は誠に正しい。国家を一人の人間とするなら軍事力は筋肉です。筋肉がなければ何もできません。
…しかし、栄養失調状態の者にいきなり筋肉を付けさせようとしても逆効果です」
「…ふむ?」
「まずは段階を踏みましょう。フルマラソンの前に、1500m走が出来る程度の筋力をつけることを目標とするべきです」
「具体的には?」
「我々の提案する計画は——こちらになります」

彼が手元の端末を操作すると、プロジェクターに数表が表示された。

「まずは最低限の備えとして、『人口の0.5%』、65万人体制を目指しましょう。これならば現状でも達成可能です。
我々の方策により『職を求める人間』が激増する予定ですので、志願制でも賄えるかと。
…どうでしょうか?列島側の皆さんにとっても悪い話ではないかと思いますが?」
「…! は、はい。それでよろしいかと」

急に話を振られた総理は一瞬呆けながらも即座に再起動し同意した。
正直言って65万人でも過大な要求である(旧自衛隊の3倍弱)し、最後にものすごく不穏な一言が添えられたような気がするが、この“蜘蛛の糸”を掴まなければより深い地獄へと落とされるのは確定なのだ。
拒否できるはずも無い…。

「どうでしょう議長殿、このあたりが落としどころだと推察いたしますが?」
「……階段は一段ずつ登らないと足をひっかけるか。
よろしい、貴殿達の顔を立てる意味でもこの『暫定案』を採用しよう。しかし、あくまで暫定案である。最終目標に変更は無いことは明言する」
「ありがとうございます。——では、昼休みとしませんか。見たところ皆さんお疲れのようですから。」

こうして会議の第一幕は無事?閉幕した。

349:モントゴメリー(オルタ):2024/09/11(水) 23:19:12 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
以上です。
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長らくお待たせいたしました。
ストロングスタイル世界、第三話です。

前にも話した通り自衛隊解体&徴兵制施行ルートとなります。
でも、穏健&リベラル派(鉄血アプリ内蔵の皆さん)のおかげでちょっとマイルドになりました。

人口当たりの兵員数で言うと、同じ島国であるイギリスで0.6~0.7%。
フランスなんて0.9%ですから、大陸連合の要求である1.0%って実はそこまで飛躍した数字ではないのですよね。
0.5%は本当に「最低限」です。
(まあ、フランスの数字は「裏技」を使っているのですが…)

ちなみに後編はオマケと言うか、「舞台裏」のお話です。
議長=サン、結構な演技派です。もしくはツンデレw

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最終更新:2025年03月07日 23:54