322:弥次郎:2024/12/10(火) 21:43:04 HOST:softbank126116160198.bbtec.net


憂鬱SRW ファンタジールートSS 「サトゥルヌス祭にはご用心」6


  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ周辺


 雪上を疾走するのは、MGF-205R クリスタル・ランツィーラーを纏うマーコール所属のウォーザード達だ。
 実地での夜間行軍および戦闘訓練のため、夜間哨戒とは別で3名が実戦装備で出撃していたのであった。
 全くの偶然であり、幸運。その3名は既に各所に散開して防空戦闘に参加していた。

「とらえた!」

 リカルダのトリガーと共に、腰部主兵装ユニット部に据えられた主兵装の長銃身型マギリングキャノンが火を吹く。
メインに加え、サブのエーテルリアクターからもエーテルを供給された魔導式光学兵器は、遅滞なく攻撃力を伴った光を放つ。
発射と着弾はほぼほぼ同時。速力を優先した弊害か、複雑な回避運動が取れないネウロイはあっけなくエーテルの光に飲まれる。

「スプラッシュ1!」
『CPより、101G002!次はポイント33-4に航空機型が複数侵入!迎撃を』
「了解!」

 ホバーでランダム回避運動を重ねつつも、指定された空域をセンサーで走査。即座に標的を捉える。
音速ステルス型とは違う、速度は遅くレーダーでもとらえられるタイプが複数体雲間から攻撃の機会をうかがっている。

「しまった……!」

 HUDにはその航空機型のネウロイが質量弾を腹から連続して投下しているのが表示された。
質量弾は洒落にはならない。過去のデータから考えると、あれは砲弾で言えば徹甲炸裂弾のようなモノ。
対地攻撃を行うには有効範囲が狭いが、エーテルバリアを張っているペテルブルクに対しては有効となりやすい。
今から撃ち抜ける---いや、間に合うか?一瞬の逡巡、しかし、リカルダは行動を止めない。

「ッ!」

 両手で構えた砲は件の航空機型ネウロイ---ではなく、その下方だ。
 瞬間的にトリガー。発生した光条は刹那で空を横断し、落下していく質量爆弾の下方にその帯を広げる。
トリガーはそのままに、相手の飛行に合わせて旋回しつつ照準を合わせてやれば、質量爆弾を全て空中で処理することができるというわけだ。
 しかし、マギリングキャノンは過熱を回避するために射撃を中断し、冷却に入ってしまう。
 ネウロイもそれを察したか、今度こそと行動に移そうとした。

「甘いです」

 クリスタル・ランツィーラーの武器は決して一つではないのだ。
 ネウロイが九死に一生を得て動こうとする間に、背部アタッチメントに据えている魔導式レールスマートキャノンが展開し、照準を合わせ終えている。
射線上に味方機がうっかりでも紛れ込んでいないことを確かめ、トリガー。

「……スプラッシュ3」

 レールキャノンの連続射撃は一瞬で3連射。とらえていた3体のネウロイをオーバーキルともいえる威力で消し飛ばす。
 それでも、空爆をされるよりはましであるし、ついでに言えば自爆特攻などをされる可能性も考えれば、消し飛ばすのは非常に正しい選択だった。
 というか、だ。

「カルメン、見えているのでしょう!大型の処理を急いでください!」

 通信に乗せた声は、ペテルブルクに並ぶ建造物の中でも、ひときわ高い502JFW基地の上に届けられた。

323:弥次郎:2024/12/10(火) 21:44:09 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

「聞こえているわよ、リーカ」

 502JFW基地の屋根の上。そこにカルメンの姿があった。
 彼女もまたクリスタル・ランツィーラーを纏い、その武装を構えている。
 背部アタッチメントに背負う長大を通り越した大砲---ハイ・マギリング・バスターランチャーだ。
MPFを一機全力稼働させるのに必要なエーテルと電力を本体とは別のエーテルリアクターから供給されて稼働する、途方もない巨砲。
超大型種、あるいはまともに殴り合うと危険な数を送りだしてくる状況を想定して開発されたものだ。

「この子、扱いが難しいのはわかるでしょ?」
『わかっています。ですが、それを扱ってこそでしょう!』
「急かさないで……そっちも頑張ってね」

 カルメンが言うのも無理もない。
 エネルギーの充填、照準合わせ、機体の固定、反動の制御、外逸要素の排除などなど、熟すべきは山のようにあるのがこれなのだ。
破格の威力を持つが、そうであるがゆえに、味方を巻き込んだ時には洒落にならないことが起きるのだ。
迎撃のために502JFWのウィッチが緊急で出撃しているほか、オーカ・ニエーバのウォーザードも展開している。
照射の余波などを考えれば、迂闊な発砲は友軍を傷つけたり、あるいはペテルブルクの街を焼く結果になりかねないのだ。

(他の兵装とかみ合わせが悪いのよね)

 そして、もうひとつの欠点がこれだ。かなり長い砲を両手で抱えて運用する都合上、その他の武器がほとんど使えなくなる。
腰部主兵装ユニット部の武装は干渉が起こって使えなくなり、頼れるのはサブアームで使える武器か脚部アタッチメントの武装程度になるのだ。
それらがこの空襲を仕掛けてきたネウロイに対する迎撃戦闘においては、自衛に使うくらいしか能力がないということは実質固定砲台となるのと同義だ。
それでも、1年ほど前にペテルブルクに超大型ネウロイが中核となった大規模空襲を仕掛けてきた時のことを考えれば、やりすぎということはない。

「CP、こちら101G003、砲撃を実施するわ。射線上の友軍へ退避勧告を」
『CP了解。速やかに伝達する』
「急いでね……」

 入り込まれる前に、超アウトレンジで叩く。それがこの砲の使い方だ。
 カルメンのHUDには、第二波でもないのにかなりの数のネウロイの数が表示されていた。
あれを一々迎撃していては、本命を見逃してしまう可能性が高いと判断した。

『こちらCP、射線クリア。何時でもどうぞ』
「了解したわ。それじゃあ……」

 すでにエネルギーの充填は完了している。
 機体の固定も完了し、反動制御のためにパワーも入れられている。
 レーダーと光学視認の両方で射線上がクリアであることは自分でも確認済み。

「発射ァ!」

 そして、トリガーが引かれた。
 射撃は激烈を通り越していた。
 大群、あるいは超大型種を想定した大型砲だから当然であるが、極太のエーテルの柱が出現した。
ペテルブルクの中心から伸びるそれは、雲を割り、降り続ける雪を溶かし、その先に展開していたネウロイの群れを一瞬で蒸発させる。
とはいえ、散開していた群れに対して流石の極太のエーテルの光は一部を飲み込むにとどまってしまう。
砲撃が弱いのではなく、相手が多すぎて、尚且つ広がりすぎていることが原因だ。
それがわかっていたから、照射状態のままカルメンは旋回を始めた。

「くっ……」

 反動と振動でかなり揺れる感覚を抱えつつも、それでも決して制御を手放さない。
 ゆっくりと、しかし、着実に動くそれは、迫りくるネウロイの群れを一気に薙ぎ払う。
少数を消すどころではない、群れという単位で消し飛ばす。そうでなければ危険だから。
 そして、一分近く照射を続けたハイ・マギリング・バスターランチャーは、緩やかに出力を落とし、やがて吐き出し終える。
同時に砲身の冷却とチェック、さらには酷使されたエーテル回路などの状態を確認し始める。

324:弥次郎:2024/12/10(火) 21:45:09 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

「CP、こちら101G003、射撃完了。標的ガンマの排除を行ったわ。
 現在主砲は冷却中、これより兵装を切り替えての対空戦闘に切り替える」
『CP了解、ナイスキルです』
「もっと褒めていいのよ?」
『まあ、今は勘弁してください。
 今の群れの排除でおおよそ第一波はうち止めのようです……レーダーの索敵範囲から反応が増えなくなりました』
「けど、まだいるわね?」

 はい、とCPの人員は決して油断していない。

『第一波の打ち止めは確実ですが、第二波の可能性は十分にあり得ます。
 ……あっ、偵察に出たタマロ曹長からです、ネウロイの群れを再度確認、白海方面からと!』
「やっぱり……」
『タマロ曹長は交戦を開始、可能な限り数を削るそうです』

 その情報は即座に共有されたのだろう、回線に陣頭指揮にあたっているラルの声が乗った。

『各員に次ぐ、こちらラル少佐。
 第一波はほぼ駆逐できたようだが、第二波が接近中だ。
 残敵の始末を終えたらすぐに統制の回復を。武器弾薬の補充を済ませろ。
 モートラート隊に弾薬を運ばせているから、最寄りの地点に一時集合せよ』
『こちら101W002、工藤です。遅くなりましたがこれよりスカイ・リッターで出撃します。
 AWACSによる支援及び情報共有を行いますので、データリンクをよろしくお願いします』
『101W002へ、了解した。各員AWACSの情報を確認しろ。
 まだ終わっていないぞ、すぐに本命が来る』

 ラルの声に次いだのはオーカ・ニエーバのみちるの声。
 見れば、格納庫からスカイ・リッターが飛び立って、急速に高度を上げていくのが見える。
AWACSによる情報の管理や管制による効率的な部隊運用が可能になるのはこの状況では大きいだろう。
何が何だかわからないうちに呑み込まれてしまうのを防止できるというのは非常に大きい。
 そして、回線で短くも役割分担が行われたのか、AWACSのみちるから通信が入った。

『こちらAWACSオーカ・ニエーバ。101G003、応答願います』
「こちら101G003、感度良好」
『よかったです。状況報告をお願いします』
「報告するわ。今のところ、主兵装のハイ・マギリング・バスターランチャーは冷却中。
 安全を期すためにもまだ使用はできないわ。しばらくは基地の直掩として防空しかできないわね」
『承知しました。隊長からは、現在地を維持し、砲台としての役目を果たしてほしいとのことです。
 目標は状況に合わせて指示する、と』
「了解……ちょっと休息するわ、何かあったら連絡を」
『了解しました』

 ふぅ、と一息をつく。
 濃密な対空戦だった。この後も続くと考えると、本当に体力勝負となりそうである。
 まあ、オーバーロード作戦での撤退戦の時から比較すれば状況は何倍もマシであるので、用意していたドリンクを飲むくらいは余裕がある。

(怖いのは、本命に何が来るかね)

 そう、消耗を強いられた後に叩きつけられる本命の第二波、あるいは第二梯団がどういう戦力なのかの情報が乏しい。
既知のネウロイならばともかく、ここでも新種が出現して来たら苦戦をする可能性が高い。
そして自分たちが苦戦すれば、ペテルブルクやそこにいる人々などが被害を受ける。

(真っ向から迎え撃つしかないなんてね……)

 それが最適解、というか、それしかないのというのが、相手に嵌められているという感覚を抱かせる。
 けれど、踏み越えなくては。カルメンは覚悟を決めていた。

325:弥次郎:2024/12/10(火) 21:45:41 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。

登場した兵器については追々。

まだまだ戦闘はこれからですぞ
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最終更新:2025年03月15日 15:39