435:弥次郎:2024/12/12(木) 23:01:18 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「サトゥルヌス祭にはご用心」7



  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地屋外滑走路上



 わずかな空白時間。
 第一梯団を撃破したことで得られたほんのわずかな、しかし貴重な時間に戦場に出場していた面々は急ぎで補給などを済ませていた。
ウィッチ、ウォーザード、モートラート隊などは飛び回って警戒をしながらも、武器や弾薬や燃料などの補給を済ませていく。
夜間で、冷え込んでいる中であろうとも、ネウロイは遠慮会釈などしてくれない。誰もが必死に限られた時間を活用していた。

「管野!?」
「なんだよ、来ちゃ悪いか?」
「どうして直ちゃんここにいるのさ」

 そして、装備の受領も含めて補給を行うために、一時基地近くまで集結したウィッチたちの前に現れたのは、モートラートを纏う管野の姿だ。
パワードスーツの膂力を生かして大量のコンテナを持ってきた彼女は、そう言いながらも手早く中身を手渡していく。
M2やMG42-mod.NATOのほか、使い捨てのM72Bといったオプション兵装、さらにマガジンなどもたっぷりある。
他にも下ろされたケースにはストライカーアームズも複数種含まれていた。
誰もが連戦で使い倒したために銃身の焼き付きなども考えられ、交換が必要な頃合いだったので丁度良いものであった。

「いいから早く、時間ないぞ」
「わ、分かりました」

 管野らしくもないが、必要なこと。
 それなりに付き合いのある面々は驚きを隠せなかったが、急かされるままに武器などを交換していった。
そうしている間にも管野は次の物品を収めたケースを開封していく。
メディカルのマークの入ったそれからは手にもって飲むのにちょうどいい瓶と錠剤の二種類が収められていた。

「エリクサーと拮抗薬だ。飲むか?」
「ああ、もらっておく……」

 ラルの言う通り、差し出されたのはエリクサーと拮抗薬だ。体に負荷がかかるとはいえ、魔力の回復を行うことができるのは大きい。
長期戦になれば否応なく燃料は減るし、ウィッチは魔力を消費して、やがては限界時間が来てしまうのだから。
緊急時であるとはいえ、劇物のそれを服用したことは記録に残さなくてはならず、ウィッチたちは順にサインを済ませそれを飲み込む。

「美味しくない……」
「懐かしい味だね……うぷっ……」
「うまかったらガブガブ飲んじまうからな」
「しかし、ずいぶんと準備がいいな?」

 ほら、水だ、と思わずむせたジョゼやクルピンスキーに水の入ったボトルを差し出す管野は、しかし鼻を鳴らす。

「出撃しようとしたら引き留められちまったからな……で、出来ることをやれって言われてこれだよ」
「ほう、良かったじゃないか。輸送部隊の手伝いは無駄じゃなかったようだな」
「……ああ、そうだな」

 管野とて、交戦中に緊急発進することの危険性くらいは理解している。
 どうやっても加速と離陸、さらに上昇の瞬間は無防備にならざるを得ず、狙い撃ちされるかのせいが高い。
無理に強行しても危ないということで、おそらく他の面々が引き留めてくれたのだろう。
そしてそれを受け入れたあたり、管野もだいぶ柔軟になったというか、頑固なところが減ったものだと思う。

 加えて、こうしたウィッチへの補給作業をスムーズに行えるのも、モートラートの扱いになれているおかげだ。
ストライカーユニットを装着している時ほどではないにしても、ウィッチならば普通の兵士よりもより安全性が高い。
罰則も含めて行われた人員配置は、決して無駄ではなかったということだ。

 そうしている間にも、他の面々により出場できたウィッチのストライカーユニットには燃料補給も迅速に行われていた。
このわずかな時間での補給の方が、交戦中---少なくともネウロイがいる環境下で燃料補給を強行するよりも何倍も安全な状況だ。
ウィッチにしてもそれを行う作業員にしても、安全なのは断然こっちなのだ。

436:弥次郎:2024/12/12(木) 23:02:06 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

 ほどなくして、502JFWのウィッチたちの補給作業はあわただしくも完了した。
 服用したエリクサーによる、魔力の回復と体の中がフル稼働するような熱を感じつつも、ウィッチたちは点呼と装備の最終点検を済ませる。

「よし、終わったら俺は行くからな」
「え?」
「まさか……」
「隊長も言っていただろ、一人でも戦力が欲しいってよ」
「陸戦隊に参加か」
「おうよ」

 M2重機関銃とロケットランチャー---RPGを軽々と担ぎ上げた管野は言い切ると、手を振りながら走っていく。
 恐らくだが対空陣地に合流して、あのまま対空戦闘に合流するのだろう。危険が付きまとうが、彼女ならばという安心がある。

「変わったね、直ちゃん」
「まあ、良い方向だな」

 さて、と仕切り直し、ラルは合図を出す。

「各員、続け」

 飛翔した502JFWのウィッチたちは、すぐには飛び出していかない。
 戦況の報告をAWACSや地上管制から受け取り、配置や動きなどを決めておかなくてはならないのだから。

『こちらAWACSオーカ・ニエーバ、502JFWウィッチ部隊の復帰を確認しました』
「こちらもAWACSとの通信感度良好だ。データリンクも問題ない」

 そこまでやり取りしたところで、502JFW基地から再び極太のエーテルの光線が放たれた。
遥か遠方へと伸びたそれは、ここからでもわかるほどの火球を膨大な数生み出していき、やがて消えていく。

「……思ったより近いか?」
『はい、101W003の偵察の結果、最低でも5つの大群がこのペテルブルク目がけ飛行中です。
 速度こそ遅いですが、接敵して識別した結果、重爆撃機のような個体が多いと情報が入っています』

 各員のHUDにその分布図がすぐに共有されていく。
 膨大どころではない、ペテルブルクの空を埋め尽くさんばかりの数、数、数。
 単純な数もそうだが、重爆撃機タイプのほか、比較的小型な戦闘機タイプも混じっていることがわかる。
それらが群れごとにかなりの数と種類配置されていて、それぞれが独立した集団として形成されているのも。

「タマロ曹長もよくもまあ偵察できたものだなぁ……」
「タマロさんはあれでもベテランですからね、MPFの性能と合わせればできることが多いのでしょう」

 ウィッチとしてほしかったな、と愚痴るラルをロスマンはなだめつつも、思案を巡らせる。
 偵察をしているだけでなく交戦をしていてもなお、敵ネウロイの編隊は崩れていないということは、ペテルブルクに押し寄せるそれらをまとめて相手にしなくてはならない。
さらに言えば、小型の弱い個体ならばともかくとして、重爆撃機タイプに関しては確実な撃破が望ましい。

「業腹だが、防空陣地のキルゾーンまで誘い込むしかないか」
『はい、他の部隊からもそのような上申が来ています。
 まともにやり合っても息切れするか、相手に包囲されて袋叩きにされるという懸念があります』

 ですので、とみちるはコンソールを操作して、地図上にキルゾーンを表示していく。

『細かい個体は無視して、脅威度の高い個体を順次排除するのが望ましいと判断します。
 ただ、ネックとなるのは時間をかけると不利になるにもかかわらず、空戦可能なMPFが少ない点ですね』
「……それはまずいな。戦闘力の高いウォーザードが、それも空戦ウォーザードの数が限られるのは痛い」
『101W005の出撃は間に合いそうにない、と報告が入っています。
 また、W003も交戦を経ているため、こちらに合流後には補給を行うとのことです』

437:弥次郎:2024/12/12(木) 23:03:10 HOST:softbank126116160198.bbtec.net

 AWACSのみちるの戦闘力が装備の関係上落ちていることを考えれば、残る空戦ウォーザードは2名しかいない、ということ。
発揮できるパフォーマンスが大きいウォーザード抜きでもやれと言われればやるのがウィッチだが、流石に厳しいものがある。
 せめて、基地やペテルブルクの防空を任せることができる戦力がいるならば、後顧の憂いなく突っ込めるのだ。
陸戦ウォーザード達もいるが、なにかこう、もう一枚カードになるようなものが欲しい。

 そして、その答えはAWACSのみちるへと通信で届けられた。
 同時に、独特の駆動音と走行音、そして地響きを以て、地上にいるものに出場を知らせたのだ。

『あれは……モルフォW型?デイムラー大尉!?』

 言葉通りのものが、ペテルブルクに出現したのだ。
 空から見てもなお巨大なそれは、センサーや信号灯の光を伴い、

『こちら、デイムラー大尉……FD001、出場しました。
 状況については把握しました』
『それは……』
「そのストライカーユニットで防空を担う、そういうことか」

 ラルの問いかけに、通信回線の先のポーラは肯定を返した。

『はい、主砲の換装作業で手間取りましたが、対空砲台としての役目を果たせると思います。
 戦闘の機会も少なかったですから、タイミングとしても丁度良いかと』
「だが、大丈夫なのか?」
『元より覚悟の上です。今ペテルブルクに被害を受ければ年明けの大規模作戦に支障をきたすのは必定です。
 それを防ぐためならば、十分に出場するだけの価値はあります』
「わかった、任せる。戦闘能力は評価しなくてはならないからな」

 だが、それが危険を伴うことも承知だ。
 あれほどの巨体と戦闘力があるとネウロイが理解すれば、攻撃を集中してくるのは確実だ。
自分達だって相手と同じ状況ならば同じ判断をすることは確実だし、果たしてそれは正しい。
その分だけ、彼女は一人きりで戦うわけではないにしても、リスクを負うことになる。
 だが、それでも。

「聞いたな、ペテルブルクの防空にはデイムラー大尉が加わる。
 これに合わせ、我々は攻勢に出て、敵ネウロイの主力を撃破し、敵の脅威度を下げる」
「了解しました」
「了解です」
「連戦になりますから、皆さん気を付けてください」

 声を掛け合い、502のウィッチたちは飛翔する。
 敵は多数で、強力で、守るべきものは多い。それでも臆する理由にはならない。
翼を萎えさせ、身体を縮め、怯えてしまっていいわけがないのである。

「行くぞ」

 そして、ブレイブウィッチーズは飛び立つ。
 タイミングをほぼ同じくして、他の部隊や戦力もまた、行動を開始した。
 本命となる敵の攻撃をどれほど迎撃し、あるいは被害を抑えることができるかが今後の戦略にまで影響する。
重要度の高さによる緊張や敵への恐怖も乗り越え、過酷な戦闘へと誰もが飛び込んでいった。

439:弥次郎:2024/12/12(木) 23:04:06 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。

準備だけでも結構大忙し。

次回から本格戦闘となりますね。
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最終更新:2025年03月15日 15:54