571:弥次郎:2024/12/14(土) 23:01:20 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「サトゥルヌス祭にはご用心」8
- F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルク周辺空域
ペテルブルクを中心とした防空システムが、特に長射程の高射砲や対空砲群が火を吹いた。
狙うのは遠方、接近しつつあるネウロイの爆撃編隊を組んでいる集団である。
真っ向からぶつかって排除するには数が多く、また四方に分散してペテルブルクを狙っている関係上、まずは漸減が必須であったのだ。
MPFなどが装備するよりもはるかに大きい、最早要塞砲に分類されるそれらは、大出力のエーテルの砲弾を次々と送り込んでいく。
ストライカーユニットを吐き出し、あるいは比較的小型のネウロイ達が割り込むことで、強引にそれらは相殺されていく。
だが、それでも確実に数は減らされているし、本命たる爆撃機タイプに直撃弾も得られていた。
『デンジャークロース!』
その射撃を支えるのは触接を続け、砲撃の合間を潜り抜けながらも歓声を上げるバルバラだ。
彼女が常に張り付いて、狙うべき集団やその速度・高度・進路などの諸元をリアルタイムで送り続けていることで効果が齎されている。
さらにそこに精密砲撃を叩き込むカルメン、さらには格納庫から危険を承知で長射程砲を引っ張り出して陸戦モートラート隊が加わることで密度は上乗せされていた。
『カルガモちゃん、はしゃいでる場合じゃないよ!』
『アイマム!カーチャ!』
まったく、と言いつつも触接を続けられている腕前を発揮するバルバラには感嘆するしかない。
最低でも5つの大群が押し寄せている中にあって、自分の何倍もの数のインターセプトの個体に襲われているだろうに。
MPFの性能、ウォーザードの実力、そして積み重ねられてた経験値がモノを言っているというのは言うまでもない。
とはいえ、である。浮かれてもいられないのも事実だ。バルバラが触接を続けられるのも有限であるし、うかうかしていると防空圏を突破される可能性がある。
近接防御能力に関しても十分に備えているとはいえ、完全に防ぎきれるわけでもないのだし、飽和攻撃を受ければ犠牲者や損害を受けることは十分に考えられる。
現在、ペテルブルクとその周辺には年明けのヴァナディース作戦に備え、物資や戦力が集められているのだ。
それに被害が出てしまえば、作戦に支障をきたすだけでなく、作戦そのものの遅延などが起こる可能性が高い。
(迎撃地点でどれほど削れるか……それが勝負ね)
周辺の地図をHUDに呼び出す。
彼我の戦力の速力や進路などから計算された結果、ペテルブルクの北方での交戦が見込まれており、そこが迎撃地点「エレナ」として定められた。
出場できた502JFWのウィッチ部隊と鏡子の混成による迎撃のため、鏡子がウィッチたちをけん引して飛翔することで、本来よりも遠方で安全に迎撃できる。
だが、送り出せたのはそれだけだ。自分は装備を一部変えてAWACSのみちるの護衛につかなくてはならなかった。
エマにしても、シフトの関係などもあってMPFの準備が間に合わないとの判断からシェルターへ退避させられている状況。
残りは陸戦ウォーザードのマーコールがいるのだが、戦力の展開速度と送り出せる数から考えて、ペテルブルク周辺に配置されている。
大規模集団以外にも散発的にネウロイが迫ってきていることも考慮に入れれば、迎撃地点にほぼすべてがかかっていると言っても過言ではない。
自分達もここで備えることになるが、ここでの迎撃の難易度に関しても関わっているのだ。
「幸運を祈るわ」
カーチャにできることは、こうして祈りつつも、ネウロイの迎撃を続けることだけだった。
彼女らが削り、終末迎撃を如何に楽にできるかが問題だ。
572:弥次郎:2024/12/14(土) 23:02:26 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
- オラーシャ帝国 ペテルブルク周辺空域 迎撃ポイント「エレナ」
『ポイント「エレナ」に到達、牽引ワイヤーから手を放してください』
「了解」
「予定より早く到着できたな」
『はい、おかげで少しばかり余裕があります」
鏡子が予め制動をかけておいたので、速やかにウィッチたちは通常の戦闘速度にまで減速することができた。
とはいえ、このまま空戦に入ることを考えれば、加速はある程度あった方がいい。
「とはいえ、浮かれている暇はない。もう一度確認しておくぞ」
編隊を組みなおしながら、ラルは迎撃に参加する戦力に改めて通達する。
「迎撃の作戦は道中で話した通りだ。敵は本命の爆撃機タイプを守る布陣と行動をとってきている。とにかくこちらを数で迎撃する構えでもあるな。
そこで、ジェットストライカーの2名---クルピンスキーとエディータを取り付かせることを優先する。とにかく本命の爆撃機タイプを排除する」
「真っ向から相手の策に飛び込むんだね……」
「あれこれと策を弄することで状況の打破は難しいからな」
そう、お膳立てはされているから、あとはガチンコでぶつかるしかないのだ。
みちるを本命へのアタッカーとして起用する案もなくもなかったのだが、数の多い雑魚を捌き切る能力も高い鏡子を雑魚散らしに使う方が良いと判断したのもある。
「既に砲撃などで敵の戦力は目減りしているし、相手が万全というわけでもない。
後はその時の状況に合わせて対応するしかない」
『了解しました。弾薬と武器についてはこちらでも運搬してきてありますから、減ってきたら声をかけてください』
それと、と高度を上げていく鏡子は付け加える。
『AWACSの代理くらいはできますが、こちらも戦闘で手一杯になる可能性があります。各員は連携と通信をしっかりお願いします』
「わかりました」
「あとはペテルブルクからの砲撃に注意、だね」
「ああ、レーダーにも注意を払っておいてくれ」
そして、即座に鏡子は武装を構える。
第一波を迎撃し終えた後に急遽武装を乗せてきたのでやや重たいのだが、それはそれ。
長射程且つ高威力の兵装も持ってくることができたので、先制してやれるのだ。
『射程に捉えました、バルバラちゃんの情報通り、6つのグループが接近!』
「先制攻撃を許可する。各員、続け。まずは端から食い破っていく」
「了解です」
鏡子のレールスマートガン、そしてロスマンとクルピンスキーの抱えたマギリング・イェーガー・ライフルの射撃が迎撃ポイントでの号砲となった。
573:弥次郎:2024/12/14(土) 23:03:27 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
長射程の先制攻撃は突き刺さり、複数の爆撃機タイプが深い一撃を喰らう---が何体かはすぐに回復を開始した。
『ッ!やはりコア持ちです!』
「コアの位置はわかるか?」
『胴体部分に一つ視認!ロスマン先生、クルピンスキー中尉、狙いはそこでお願いします』
「了解だよ」
「任せて」
『予定通り、こちらでコアの確認を試みます。同定しましたら情報は共有するのでよろしくお願いします』
「ブレイク!」
だが、そんな悠長をネウロイが許すはずもない。
最初にターゲットとなり先制攻撃を与えた集団---向かって左方向から高高度を維持している群れが即座に反撃してきたのだ。
数えるのもおっくうになりそうなスウォームユニットと小型ネウロイによるインターセプト。
更には爆撃機タイプネウロイからのビーム攻撃が襲い掛かってきた。
ラルの言葉より先に、誰もがすぐに反応して散開。反撃を放ち、向かってくる個体の排除を開始した。
「この動き……!」
「分断するつもり……!?」
「各機、離れすぎるなよ!」
連続する鏡子のレールスマートガンおよびサブアームの保持するホーミングレーザーライフル、さらに背部のホーミングレーザーキャノンの射撃。
そしてウィッチたちの攻撃を受けてもなお前進してくるネウロイは、明らかに回避運動で生じた隙間を広げようとする動きをしていた。
至近に飛び込んでくるネウロイを次々に撃ち落としても、それは止まろうとしない。
「飛び込むしかないよ、いくよ先生!」
「ああ、もう!」
それでも、道は開かれている。それを認識したクルピンスキーは止まることなく加速を叩き込んだ。
ジェットストライカーを使用しているだけはあり、速力も迎撃で放っている火力もストライカーユニットを軽く超えている。
ネウロイの側も、特に爆撃機タイプもそれを察知したのか火力をぶつけてくるが、それを強引にシールドなどで弾いていく。
「そこだよ!先生!」
クルピンスキーが一瞬でトリガー。すれ違いざまのマギリング・イェーガー・ライフルの拡散モードでの連射を浴びせる。
それは割り込んできたスウォームユニットを撃ち落とし、表面装甲を食い破り、ネウロイの防御を崩していき---
「言われなくとも!」
そして、スイッチしたロスマンの射撃が、むき出しになったコアを貫通した。
コアは一つだったのか、爆撃機タイプネウロイは一瞬で崩壊を始めてしまう。地面とキスする頃には
「次ぃ!」
クルピンスキーは止まらない。
崩壊するネウロイからすぐに距離をとりつつも、回避運動を挟んで追いすがってくる戦闘機タイプを躱す。
それを先読みしてラルの放った30ミリの徹甲榴弾が打ち砕き、フリーハンドを与える。
一瞬の連携に、余計な言葉などいらない。それを証明するように、クルピンスキーは次の個体に突撃していた。
拡散モードでの連射を再び重ねて、複数の爆撃機タイプネウロイを牽制、損傷を与えていく。
そして、手近な一体目がけ一気に肉薄。
「それ!」
コアの位置がほぼわかっているからできる、ピンポイントで狙うマギリングブレードの一線。
横腹から内部のコアまで一息に突き破られたことで、ネウロイは形状崩壊を起こした。
574:弥次郎:2024/12/14(土) 23:04:50 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
「まっず……」
「させません……!」
だが、ネウロイもただで終わらない。
振りぬいて離脱しようとするクルピンスキーに、最後のあがきでスウォームユニットがもはやぶつからん勢いで飛び掛かる。
とっさにシールドを張り、さらに衝撃に備えつつもエーテルバリアを展開。それを見越し、ジョゼの正確な射撃がクルピンスキーの離脱ルートを開く。
とっさの判断での、正確に届くか怪しい射撃であったが、見事にスウォームユニットの足止めに成功していた。
フレンドリーファイアもあったが、前述したバリアとシールドがしっかりと受けて弾く。
「まったく、無茶をして……!」
そして、ロスマンのマギリング・イェーガー・ライフルの収束射撃がそれでもなお追いすがる個体をまとめて蒸発させる。
その射撃は照射を維持したまま、次の爆撃機タイプネウロイへと向けられる。
マギリング・イェーガー・ライフルがうなりを上げ、エーテルの柱にぶつかったネウロイが次々と四散していくのも無視し、ひたすらに狙う。
「エディータも無茶をする……!各務原!他のを近寄らすな!」
『そんな無茶なぁ!』
「こっちもやっているんだ……!」
当然そんな隙をさらけ出すのはリスクがあり、実際に狙われる。
即座にラルは割り込む形でシールドを張りつつ、MG42-mod.NATOの連射でロスマンをフォローする。
『わかりました、よ!……!コアの位置を特定しました、各員に共有します!』
「でかした!」
『それと、時間がありませんので、こっちで叩きます!』
MPFに内蔵されている、コアを見抜く固有魔法の魔眼を再現したセンサーがついにネウロイを丸裸にする。
即座に共有しつつ、自分はマルチロック機能を一瞬で立ち上げる。ネウロイのコアの位置と射撃諸元がわかるならば、一掃できる。
HUD上で表示される複数の爆撃機タイプネウロイを、そのコアの位置を次々とサイコ・エミュレート・デバイス越しにロックオン。
『出し惜しみはしない!発射!』
そして、全兵装が一斉に解き放たれる。
レールガンの砲弾、ホーミングレーザー、さらには懸架してきたマギリングマグナムまでもが、動員された砲撃。
精密且つ正確な狙いと威力を以て、とっさに守るためにと割り込んだ個体ごと消し飛ばし、コアや武装を吹き飛ばす。
まさにそれはフルマークス。交戦していた集団の中核をなす爆撃機タイプネウロイを全滅に追い込んだ。
「このまま次に向かうぞ」
だが、誰も喜ぶ暇などない。
ペテルブルクへの距離は着々と迫っているし、こちらが交戦している間に加速をした集団もいる。
まだ一つしか潰しておらず、残る集団は5つ。あるいはこの後にも出現するかもしれない。
迎撃ポイント「エレナ」での交戦は始まったばかりだ。
575:弥次郎:2024/12/14(土) 23:09:41 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
当初の予定よりだいぶ長丁場になりそうです。
だいぶだいぶ長丁場だ(ノッブ笑顔
最終更新:2025年03月15日 16:05