628:弥次郎:2024/12/15(日) 23:26:06 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「サトゥルヌス祭にはご用心」8.5
- F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地
『こちら101W003、帰投しましたー、このまま着陸します』
『こちら地上管制了解。滑走路は既にクリアなのでそのままどうぞ。
着陸後は補給作業に入ってください』
『了解』
『格納庫の中はだいぶ混雑しているのでその点にも留意を』
はいはい、と返事をしつつ、バルバラは愛機を見事に操縦、地上へと着陸させた。
激しい交戦の末、あちらこちらに被弾して損傷もあるが、致命傷などはもらわなかったのは良かった。
この分ならば簡易なチェックと武装の換装、武器弾薬の補充だけで短時間で出撃できるだろう。
ポイント「エレナ」での迎撃はあくまでも数の漸減でしかないので、手早く航空戦力をペテルブルクの直掩に送り出さないとならないので助かる。
厄介なのは、周辺の小規模な基地からも増援要請が来ている、という点だ。
第一波を凌ぎきり、相手の群れが迎撃で足止めを受けている間ならば少数を送り出せるかもしれない。
ウォーザードでなくとも、準備が整えばウィッチを送り出せる可能性があるのだ。飛び出した直後に迎撃される可能性もまだ捨てきれはしないのだが。
「ただいま」
そして、格納庫内に速やかに戻ったバルバラを迎えたのは、多くの整備士たちと周辺機材の山であった。
「タマロ曹長、お帰りなさい!」
「急ぎで補給します、すぐに出力落としてください!」
「あ、こっちだ急げ!」
「目立った被弾は……余りありませんね。自己診断の結果からしても問題なし。流石です」
「こっちに武器を預けてください、もう取り替えます、ご要望は?」
「わぁお……」
わっと浴びせられる言葉の嵐に、バルバラは目をしばたたかせた。
準備が整っているとは聞いたが、ここまで用意されていて、即座に送り出せるようにしているとは。
一先ず順番に、と武器を手放し、あるいは連結を解除して作業アームに預け、ステータスチェックも行っていく。
ほんの十数メートルを進んだころにはあらかたの武装を取り外し終えて、ドリンクを手渡され、武装と装甲の交換準備がなされていた。
「おかえりなさい、カルガモちゃん」
「カルメン?」
隣の整備用のハンガーには、クリスタル・ランツィーラーを纏ったカルメンの姿がある。
そういえば、ハイ・マギリング・バスターキャノンを背負って砲台となっていたんだったか、と思い出す。
その砲撃を潜り抜けながら射撃諸元を送り続けていたのも。
「大丈夫だったかしら?」
「うーん、デンジャークロースがあったけど平気だね」
「よかったわ……と」
その時、上から衝撃が押し寄せてくる。
それは建物の崩壊などではない、何か聞き覚えるのある音と振動のパターンがある。
何よりも、窓からちらりとエーテルの光の柱がネウロイのいる方向へと伸びているのが見えた。
「今のは……」
「ジナイーダ小隊長ね。私は砲撃を続けて流石に砲身とかが持たなくなったから交代してきたの」
「そっか……ポイントエレナにいるネウロイへの攻撃?」
「そういうことよ……今は鏡子ちゃんが触接しているから、それを基に、ね」
629:弥次郎:2024/12/15(日) 23:27:04 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
交戦中でフレンドリーファイアの可能性もあるが、距離がある群れを狙う分には問題がない、という判断だろう。
観測機の役割を果たすウォーザードもいるならば、他のネウロイの群れの数を削り、あるいは足止めができるはずだ。
「地上も大忙しだね」
「ええ、この後が本番なのだし……」
そうだ。カルメンが言うようにここからが本番。
こちらの拠点までに撃滅することが難しいから、引き寄せてキルゾーンで仕留めるというリスキーな選択をする羽目になったのだ。
可能な限りの被害を抑えるとはいえ、絶対というのは存在しないのだ。
「曹長、装備換装しますよ?」
「あ、お願いします」
整備士が一声かけてきたので、一時おしゃべりを中断し、サイコ・エミュレート・デバイスを通じて魔導コンピューター魔導を操作する。
操作内容としては至極単純、上から吊り下げられて接近してくる背部武装ホーミングレーザーキャノン「ゲシュテーパー」の接続処理だけである。
専属のメカニックでもないのでバルバラの知識はそこまで深くはないが、これが途方もないことだというのは理解している。
連続した金属音と通電およびエーテル供給ライン構築の音が数度繰り返せば、完了となる。
あっという間にFCSやOSと連動したことを告げる表示がHUDに表示された。
「あとは……」
航空戦、しかも圧倒的大多数を相手にしつつも、大型種の対処も検討しなくてはならない。
戦闘継続能力も考えてということを思えば、選択する兵装は絞って弾薬などを多く積んだ方がいいかもしれないのだが---
「ええい、仕方ない……」
結局、バルバラは一気に武装を決める。
手持ち武装としてステープラーとマギリングマグナムとレールスマートガン。
翼部にはマギリング・ガトリングガンの「ソウ」と複合兵装の「シェキナー」を2つずつ、腰部には予備弾倉と予備の装備を詰め込んでおくことにした。
ややかさばり、動きには少々不都合になるのだが、とにかく武装の数が必要と判断した。
その操作に応じ、次々と武装が運搬されてきて、各所に据え付けられていく。
「各部チェック、よし」
「こっちでも確認したよ。装甲の交換も完了したから、このままいく。地上管制、いいかな?」
『こちら地上管制、了解。出撃を許可します。
対空砲火が既に上がっていますし、散発的に攻撃してくるネウロイがいる可能性があるので注意を』
「了解と。じゃあ、すぐ上昇するね」
『お気をつけて』
見れば、カルメンも装備の換装作業と補給を終えて出撃するようだ。
腰部には魔導式レールスマートキャノン、背部には60ミリ対地対空両用連装型マギリングガトリングガン。
そして、手持ちに30ミリアサルトライフルとマギリング・スナイパーライフルという対空戦闘と手数重視の構成だ。
『カルガモちゃん、いいわよ!』
「ありがと!」
先にカルメンが出て周辺を確認したのちに、合図を送ってくれたのでそのまま出撃。
高度を上げて周囲を確認すると、ペテルブルクの北方方面へとモルフォW型が移動しつつも砲塔を旋回させているのが見える。
630:弥次郎:2024/12/15(日) 23:28:34 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
「あれがモルフォ……あれでストライカーユニットなんだからためげるねぇ」
思わずごちる。確かにウィッチが操縦するのには変わりないからストライカーユニットなのだろう。
ただ、列車砲というか陸上戦艦というかそんな感じで、ものすごい存在感を放つ。
あれに搭載されている火器による防空はさぞかし強力なのだろう。ここから見える限りでも、割とすごい数見えるのだから。
さらに驚くべきは、あれはウィッチを一人載せ、制御を任せるという途方もない操縦を可能としていることだ。
あれほどの列車砲を制御するとしたならば、普通ならば数十人から百人単位での人員が必要なのは明白なのに。
「決戦戦力扱いも当然だよね……」
何しろこちらの数は少ない。
だからこそ、一人当たりの戦闘能力や戦闘続行能力を追求しているのが現在の軍事的なドクトリンの傾向だ。
加えて言えば、戦場の歩兵と言えるウィッチやウォーザードには不可能な、戦術級の攻撃力を持たせているのも特徴だ。
歩兵に対し、こちらが自走砲や列車砲のようになり、大火力でもって敵を蹴散らす。それを実現してしまえるのが本当にすごくもあり、恐ろしくもある。
「さて、と……AWACSのミッチー、聞こえる?101W003、戦線復帰したよ」
『こちらAWACSオーカ・ニエーバ、確認しました。
W003は少しばかり進出して迎撃をお願いします。座標はこちらから転送しますので、そこで可能な限りの漸減を』
「単独ではきついと思うんだけどなぁ……それより密度を上げた方が良くない?」
『ポイント「エレナ」は抜かれる前提ですから……それに、相手が空爆以外も仕掛けてくる可能性がありますからね』
「了解」
なるほど、確かに考えてみればそうだ。
律儀に真上まで来てから空爆するというのがネウロイとは限らないので、念のために安全な距離で迎撃しようというのは間違っていない。
『カーチャ隊長も間もなく装備換装と補給に入って、戦線に加わる予定です。
それまでは何とか凌ぎつつ、ネウロイの数を減らしてください』
「任されたよ」
さて、と一つ伸びをする。
戦闘時間が長くなれば集中力が落ちてくるのは確実で、自分もまた少なくはない疲労を感じている。
だとするならば、敵を倒すこともそうだが、それに夢中になりすぎて他がおろそかになる可能性を考えないとならない。
持ってきていたドリンク---カフェインなども含んだそれを飲み干し、興奮しつつある自分を自覚する。
「やろうか」
そして、バルバラは加速を叩き込み、迎撃地点へと前進を開始した。
631:弥次郎:2024/12/15(日) 23:31:08 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
間に挟む短い話のつもりが長くなりましたね…
最終更新:2025年03月15日 16:11