341 名前:弥次郎@お外[sage] 投稿日:2024/12/28(土) 22:11:48 ID:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [4/97]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ペテルブルク大戦略」2


  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 北方空域

 ペテルブルクを中心とした対空砲火の嵐は、激しさを増していた。
 ネウロイの集団が人類側の勢力圏に踏み込んでいるのだからある種当然とさえ言える。
ネウロイが大集団で攻め込んでくることを前提として、人類側は防衛戦力の配備に余念がなかったのだから。
中心地といえるペテルブルクとなれば、その防空体制の厳重さは語るまでもないだろう。
多種多様な対空砲、高射砲、機関砲、ミサイル、ロケット---近づくにつれて密度は激しくなっていく。
 だが、ネウロイはひるまない。自殺でもするかのように弾幕の中に飛び込んでいき、もがきながら接近をころ味て、そして撃ち落とされる。
そんなのが十数を超え、何十となっても、それでも続行されていく。人ではありえない、しかし、ネウロイならばという動き。
無駄に見えるそれは確かな意味を伴っていた。

「CP、こちら101G002、敵戦闘集団と触接、この動きは……!」

 その意味を看破したのは、補給を済ませた後に陸路で進出し、敵集団とエンカウントとしたリカルダだ。

「ネウロイは対空砲配置をあぶりだしている……!すぐに来ますよ!」

 そう、ネウロイは突撃させた個体の犠牲で対空攻撃の範囲などをあぶりだしていたのだ。
 どこまでならば安全か、どこまでならば防ぎきれるか、どこならば崩していけるか---とてつもない力技だった。
 そして、警告通りの動きが生じた。護衛戦闘機型のネウロイが、質量弾を超低空から切り離して落とし始めたのだ。
それらは大型の対空砲では仕留めるには数が多すぎて、それゆえに立体的に配備されている終末迎撃の機関砲な度に委ねられる。
その迎撃の嵐が激しいとはいえ、絶対無敵というわけでもなく、さらには爆弾に続いて捨て身の突撃までしてくるネウロイには捻じ込む隙間があった。

「Scheisse!」

 地上に爆発の花が咲き、地上の対空設備が吹っ飛んだのだ。HUDに表示される情報はCDC経由でもあるから間違いない。
範囲としてはさほど広くはない---しかし、ネウロイからすれば上々の成果だ。
先ほどまでは隙間が狭いどころではない対空攻撃の嵐に、今ではちゃんとした隙間ができてしまったのだ。
勿論、そういった脱落なども見越した配置になってはいるとはいえ、完全に防ぎきるのは不可能。

「CP、こちらG002、これより対空陣地のフォローに入る!
 触接は継続するので情報処理をよろしく!」
『CP、了解』

 そして、リカルダは加速した。
 各部に搭載している武装を解き放って、作り上げた傷口を広げようとするネウロイの動きを阻害していくのだ。
控えめに言っても焼け石に水ではある。MGFといえども、搭載できる火器の量には限界があり、補えるエリアは案外狭いのだ。
 さらに、自分めがけて攻撃をしてくるネウロイも捌かなくてはならないし、カバーできる範囲でネウロイの対空砲潰しの動きを見張らなくてもならない。
まったく楽はない。

『101G001より、G002へ。砲撃に注意して』
「了解ッ!」

 だが、リカルダは一人ではない。
 次の瞬間には、ペテルブルクから伸びてきたハイ・マギリング・バスターランチャーの光がまとめてネウロイの集団を焼き尽くす。
余波だけでも小型のネウロイがもがくようにして撃ち落とされる、そんな大出力砲撃だ。
数秒の照射は一度に百以上のネウロイを消し飛ばした。防空陣地に殺到していたネウロイのほぼすべてを、だ。

「G001へ、射撃成果は上々。
 けれど---次は多数の箇所で仕掛けてくるわ」
『G001了解……やっぱり楽はできないのね』

 状況を俯瞰できているからこそ、リカルダもジナイーダも楽観視はしていない。
 今は防空陣地が壊されて穴が一か所空いた程度で、ここは人員によるカバーが間に合っている範囲。
 だが、フォローしなくてはならない箇所がこれ以上に増えたら?同じような方法で、ネウロイが防空網をこじ開けてきたら?
出場できているウィッチやウォーザードの数には限度があり、フォローできる範囲と数には限界がある。
やがては徐々に防空網は虫食いにされ、本命の爆撃機タイプがなだれ込んでくる隙間が生み出されるだろう。
そうなればさすがにウォーザードでも、陸戦戦力をもってしても捌ききれなくなる。
モルフォW型で防げる範囲も限られるはずだし、ごり押しされたらじり貧になるのはこちらだ。
 なのでやるべきは、ひたすらにわいてくるネウロイをちぎっては投げちぎっては投げを繰り返し---

342 名前:弥次郎@お外[sage] 投稿日:2024/12/28(土) 22:13:32 ID:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [5/97]

『何とか相手を殲滅させること……かしらね』
「楽じゃないですね……次が来ました、小隊長」
『こちらでも確認したわ。これでも削ったはずなのに、まだ多いわね』

 派手さのない、地味で、それでいて気が抜けない戦い。
 この手の消耗戦が人類側が不利なのは火を見るよりも明らかだが、それでもやらざるを得ない。
 どっちが先に根を上げるか……あるいは人類がしのぎ切れるかの勝負といったところだ。
 まだ接近をしてくるネウロイの集団を遠方に見て、リカルダは忌々しげにつぶやく。

「せめて、集団の中核をなす爆撃機タイプを潰せれば……」
『そっちは対処の準備が整っているわ』
「……と、いうと?」

 爆撃機タイプは重武装で尚且つコア持ちというのがわかっている。
 飛翔能力を持たせるために搭載火力に限度のある航空ウォーザードでも肉薄しての格闘戦を強いられる相手を効率的につぶす方法があるのか?

『まあ、そこはおいおい伝えるわ。
 陸戦隊は引き続き迎撃と敵の動きの観測を』
「了解」

 そして、事実として対応戦力はペテルブルクから出撃していた。
 ペテルブルクとペトロザボーツクを結ぶ陸上艦艇群---ペテルブルクに駐留していた部隊が動き出したのだ。
ネウロイの第一波が撃退されて稼がれた時間で準備を整え、モルフォW型ともども出港した彼らは、戦列を整えて迎撃態勢に入ったのだ。
もとより、ネウロイとの係争地域を踏破し、物資を送り届ける役目を担う陸上艦艇だ。
その武装と防御システムなどは現状況では垂涎のレベルに位置している。
 勿論、元々の任務のことを考えればここで戦闘に参加するのは望ましいことではない。
本来ならばより最前線へ、あるいはこれから後方へと下がる予定であって、ここで戦って消耗するのは差しさわりがある。
 だが、どの艦艇の艦長も部隊長も意見は一致していたのだ。ここで対応しなくては元も子もないのだ、と。
それを通信越しに聞いたラルが承認。戦闘に参加することになったのである。
直掩戦力としては控えていた502JFWのウィッチたちが付くことが決定され、ひかり・ニパ・定子が送り出されることになった。
さらには陸戦のモートラート隊も艦艇に便乗することで戦力の一翼が担うということも即座に決定された。


  • オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地 滑走路

『進路クリア、101W005、発進を許可します』
「了解。それじゃあしっかりつかまってくださいね、レーナ」
「はい!G006、行きます……うぁお!」

 そしてほぼ同時に、502JFW基地からはブースターを追加したブライト・リッターをまとったエマが出撃した。
その背にはなんとフル装備のクリスタル・ランツィーラーのレーナの姿があった。
確かにブースターも付けた空戦用MPFならば多少の荷物は問題にはならない。
 だが、送り出した側としても、無茶というか危険の付きまとうものという判断をせざるを得なかったのだ。

「……大丈夫かな、あれ?」
「多分……訓練はしていたっていうし」

 通信マイクを切った地上管制のオペレーターたちは心配そうにつぶやく。
 ちょっと悲鳴を上げているが、それでもしっかりと増設されたクリップを掴んで離さないあたり、レーナも訓練されたウォーザードだ。

「次は……ポイントエレナから帰還ね」
「疲弊しているし、着陸の瞬間を狙われるかも……誘導準備急いでもらわないと」

 そして、次の仕事が舞い込んでくる。
 オペレーターたちもまた、休む暇などないのだ。

343 名前:弥次郎@お外[sage] 投稿日:2024/12/28(土) 22:15:22 ID:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [6/97]

  • オラーシャ帝国 ペテルブルク 北方空域



 そして、接近してくるネウロイの集団がその構成する個体数を減らしながらもペテルブルクとの距離を詰めたころ、さらなる迎撃が始まった。
前述したように、ネウロイを迎撃するための防空システムはペテルブルクに近いほど充実し密度が高くなるのだ。
そこで上乗せされたのが、砲台などよりは動ける陸上艦艇とモルフォWによる対空砲火。
直掩戦力がいることで懐に飛び込まれても十分に迎撃できる体制が出来上がっていたのだ。
 ネウロイは、それに分散して対応することを強いられた。数によって飽和させていたが、局地的だがやり返された形だ。
空と地上両方からの触接と迎撃により、シュレッダーにかけるようにして端から食われていくのだ。
やられている分だけやり返しているのだが、それはさておき、そこにこそ付け入るスキが生じたのである。

『こちら101W003、W005に合流するよ』
『了解です、タマロ曹長』
『よろしくお願いします!』
『うへ、本当に来ちゃったよ……賛同しておいてなんだけどさ、大丈夫?』
『やらきゃならないなら押し通すまでですよ』

 そう軽く言うが、レーナも目や表情は軽くない。
 そも、ここにいる面々はオーバーロード作戦で地獄を乗り越えているのだ。
さらにその上で、ティル・ナ・ノーグでの教育・訓練を経たうえで、このオラーシャの激戦を生き抜いてきた。
オラーシャ方面の最前線を担う502で生き抜いて実働として残り続けているのは決して伊達や酔狂ではない。
肝が太いとかそういうレベルではない。そういうレベルを通り越した、本当のエースの姿だ。
 それじゃあ、と武器を構えなおし、バルバラは加速を開始して号砲とする。

『お手玉と参りますか』
『どちらかというと、サーカスのような……』
『陸戦ウォーザードなのに曲芸をやらされる私の身にもなってください!』
『大丈夫だよ、ちゃんと拾うからさー』

 レーナの叫びにバルバラは笑って返した。
 そう、陸戦ウォーザードを疑似的とはいえ空戦させる理由。
 固有の魔法「衝撃魔法」を有するレーナが「お手玉」されるという言葉の意味。
 すなわち---MSでいうところのドダイ履き。本来空戦能力のない戦力で空中戦をさせる、地球連合では実例のある手法だ。
陸戦ウォーザードの育成を担うティル・ナ・ノーグでは、空挺投入などを想定した訓練の延長で施される、ある種の特殊技能。
その特殊技能を、502JFW麾下部隊に配属される実力を持つと判断されたレーナは、当然学んでいたのだった。

『さあ、行きましょう』

 ここでいかに削るか。特に危険な爆撃機タイプを潰せるか。
 戦力と戦法を絞り出した人類は、まだまだあがこうとしていた。

344 名前:弥次郎@お外[sage] 投稿日:2024/12/28(土) 22:16:51 ID:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [7/97]

以上、ウィキ転載はご自由に。

ドダイ履きってSFS役がいればできるんだよなぁ…

というわけで、ちょっと自由落下しながらアサルトアーマーやってみようか。
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最終更新:2025年03月16日 21:51