325:弥次郎:2025/01/09(木) 22:56:33 HOST:softbank126116178004.bbtec.net
憂鬱SRW ファンタジールートSS 「ペテルブルク大戦略」4
- F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルク
包囲網の完成は、ポーラ・デイムラーの操るモルフォW型が主軸に行われていた。
そも、ネウロイとて馬鹿ではなく、包囲を作ろうとしてもそれを察知して行動してくるものなのだ。
下手に迂回して包囲しようとしても、分断されて各個撃破に持ち込まれてしまうのがオチというものである。
だから必要だったのは、ネウロイの注意と攻撃を引き受け、味方にフリーハンドを与える何かだったのだ。
その点において、走攻守の3分野に不足がなかったのがモルフォW型であった。
ネウロイの群れを継続的に消し飛ばす火砲と防御機関砲を持つ。
さらに、ネウロイからの反撃を受け止める装甲とシールドを持つ。
止めに、その巨体に反して展開力や運動性や小回りも効き、ネウロイの集団を引き寄せながら排除し、キルゾーンに誘い込むことができたのだ。
「せわしないわねッ!」
モルフォW型のコクピット、半ば磔にされるような形で収まるポーラは、強化されたその反射能力と思考で、よどみのない操作を続けていた。
数十門に及ぶ火砲の制御、飛んでくる攻撃に対するシールドの展開、機体そのものの制御---一人では不可能と思えるそれを、容易く行う力があったのだ。
フェルドレスとしてだけでなく、ストライカーユニットの延長としての能力も持つからこそできることだ。
考えたことがコンピューターと連動してダイレクトに操縦に反映されるので、文字通り自分の手足のごとく扱える。
ネウロイがモルフォW型を狙う理由もそこだ。
あまりにも脅威過ぎる。対空戦闘において下手な陸上艦艇や地上設備を超える被害を与えて回っている。
そのくせ、攻撃を浴びせてもほぼすべてを防いでしまうか、巨体に見合わぬ動きで回避してしまう。
挙句にネウロイが取り付こうとするのを足で捌くのだ。ネウロイの意識が向かうのも当然。
すでに出場してからのポーラの体感戦闘時間は3時間は過ぎている。
いや、正確に計ろうと思えばコンピューターと連動した時計でわかるものなのだが、休む間もなく戦闘継続をしているために体感はどうしてもずれていた。
『デイムラー大尉、次はポイントE-51へ』
「了解……!」
通信に応えつつ、ポイントへの移動コースを算出。その際に生じる対空攻撃の隙間を埋める動きを事前に割り出し---
「後進一杯!」
足のさらに先にある無数にある脚で、地面と雪と氷を踏みしめて走り出す。
直線ではない、計算された蛇行と加減速を交えた複雑怪奇な動き。
しかもその中でも射撃の精度と頻度は落ちていない。近寄ってくるネウロイをバルカン砲やエーテル式バルカンが叩き落し、レールガンが火を吹いていく。
「その程度!?」
機体は揺れるが、致命打は食らっていない。
ネウロイが攻めあぐねているのがよくわかる。攻撃を集中させなくては撃破できないのがわかるが、その分だけ主目標に向ける分を失う。
かといってフリーハンドをとらせればネウロイ側の被害を徒に増やすだけ。ジレンマに追い込んでいる、その実感がある。
だからというように、コクピットの中でポーラは叫ぶ。
吠える声に応じるように、主砲たるレールガンは大口径砲で爆撃機タイプをまとめて吹き飛ばす。
連射速度などを抑えつつ、味方の航空機との兼ね合いもあるとはいえ、その火力は十分を過ぎるほどだ。
326:弥次郎:2025/01/09(木) 22:57:44 HOST:softbank126116178004.bbtec.net
『モルフォを孤立させるな!』
『艦艇乗りの意地を見せろ!』
そして、そのモルフォの動きをフォローし、フォローされるのが陸上艦艇群だ。
着かず離れずの距離を保ち、モルフォのそれと連動する形で対空攻撃を行うことで、次々とネウロイを撃ち落としていく。
撃ち落とすだけではない、相手の進路を制限し、あるいは回避を強いて動きを抑制するのだ。
そうすることで幾重にも伸びる火力で絡めとることを容易なものとしている。
あるいは、大雑把に削るモルフォW型の攻撃の隙を埋めるように火力を投射することで、数を着実に減らしているのだった。
『回避運動に入る、モルフォとの距離を誤るなよ!』
当然、ネウロイもモルフォよりはと考えて攻撃を浴びせるが、そんなのは百も承知だ。
モルフォほど出鱈目な回避運動はできないし、装甲に関してもモルフォほど極まっているわけではない。
だが、モルフォがカバーするように動き、艦艇同士で即興ながらも連携しているため、被害やリスクは分散されていた。
結果として言うならば、こちらに対してもネウロイは攻めあぐねていた。
そう、ネウロイは圧倒的な数を叩きつけてきたものの、防がれてしまっているがゆえに、叩きつける先を急遽変更しなければならなかった。
大雑把に攻撃しても効果が低いから、より正確に狙わなくてはならなくなったが、それだけ精密さが要求された。
結果、ネウロイは無為にその数を減らし、反対に人類側は理想形へと持ち込みつつあったのだ。
- オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地 CDC
「対空迎撃施設、北部側Eブロック損耗率30%を超えます!」
「北部側Fブロックも同様です!」
「無理に支えようとするな、他のエリアの施設で支える。
ギリギリになるが、ペテルブルク市街に突入させなければいい!」
基地に帰投した後、CDCでサーシャから指揮を引き継いだラルは全体の戦況を見守っていた。
戦場の状況は、当初立てた目標へと徐々に向かいつつある、狙い通りの状況だ。
問題としては、予想以上に防衛設備に被害が出ているという点だろうか。
(いや、それは考慮の内だ……そのはずだったが……)
勿論のこと、防衛設備に被害が出ることは当たり前のことで、考慮されていたことである。
では何が問題化といえば、ネウロイが最後っ屁とばかりに攻撃を放ち、あるいは自爆まがいの特攻を仕掛け、損害を少しでも増やそうとしていることだ。
包囲網を閉じた後に如何に早く殲滅できるかは、稼働している防衛設備の状態にも左右されること請け合いだ。
それだけでなく、この夜間襲撃の後---すなわち明日以降の防衛体制を考えると、爪痕を残されすぎるのは痛手となるのだ。
今夜を防げたところで、復旧や債権が間に合わなかった場合、明日や明後日の攻撃で被害を受けては元も子もない。
相手はたった一回の幸運があればいいが、こちらはかなり多くの幸運が必要になる。
どうしようもないじれったさ、あるいは焦燥感。戦いの終わりが見えるからこそ、この後のことが気になってしまう。
ラルはどうしても表情を緩めることができないまま、包囲網の構築に向けて指示を出し続けた。
327:弥次郎:2025/01/09(木) 22:58:50 HOST:softbank126116178004.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
短いですがご容赦を。
今宵はこのまま寝ますので悪しからず。
最終更新:2025年03月21日 13:21