222 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2025/01/21(火) 15:23:34 ID:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp [29/92]
――西暦1890年、とある物語とは異なりやや遅れた時間軸
分かたれた一つの家ではなく、2つの超大国がしのぎを削る世界
「NHK(ナイチンゲール放送協会)より正午のニュースをお伝えします。
明日、大日本帝国から女王陛下への特使として前首相の堀河公爵がポーツマス軍港に来訪するにあたり、現地では歓迎式典の準備が急ピッチで進んでいます。現場からの中継です」
「はい。これを受けまして急遽女王陛下の名代として第3皇女シャーロット殿下の御臨席を賜ることとなりました」
「次のニュースです。昨夜11時頃、南北ロンドン境界線、チェックポイントN付近において複数の爆発が発生。国際停戦監視機構の発表によりますと、停戦反対派によるテロとみられますが、内務省王立騎馬警官隊は共和国側の潜入工作の可能性も含めて慎重な調査を要求――」
「内務省検閲局は、『学問のすゝめ』の暫定出版監視図書からの削除を正式に決定しました。これによりNHK『今日の読書』コーナーにおける注意喚起が公式に廃止されることとなり、聴取時間が1分ほど短くなることに――
一方、『共産党宣言』については禁書目録に据え置かれることとなり、ケンブリッジ大学王立ロンドン校の教授陣が連名で抗議の声を――」
電波に乗るラジオの声という「原作」にはなかった光景
そんな分断都市ロンドンでは、奇妙な事件が続いていた
「ロンドンの壁」の境界付近、外国人街において爆弾テロ事件が連続していたのだ
しかも、いずれも犠牲者はゼロ
大日本帝国から久方ぶりに大物特使が訪英するという時期に起こったこれら怪事件に、共和国側の情報統括組織「コントロール」は王国側による共和国側のテロを装った策謀の影を見る
「つまりは、共和国側の浸透工作を装った王国内務省の仕業?」
「あまりに見え透いています。ノルマンディー公なら現場に死体くらいは用意しておくわ」
「つまり、第三者の手による犯行説が濃厚、と」
「どちらにせよ、共和国に濡れ衣を着せつつも一切証拠を残していないこの手口、見過ごせないというわけだ」
「というか、わかっているのだろう?大佐。東西戦争で君はさんざん見ていたと思うが。大日本帝国特殊作戦群。こんなことができるのは奴らぐらいだ」
「だからこそ解せんのだ。大日本帝国の各軍はまさにド平時状態のまま。それに堀河公爵は首相を退いたとはいえ共和国(われわれ)との宥和派筆頭。いまの伊藤博文首相や康有為外相のような王国派としても『共和国側による犯行に見せかけた暗殺』などという手を使わずとも女王と会見させるだけで政治的な屈服の儀式にはこと足りるだろう」
「つまりは、大日本帝国内の反体制派、噂に聞く開戦派の暴発というわけだ」
「面倒なことを――我々としては、堀河公爵の護衛陣に協力するしかないというわけだな
女王はいつもの出不精…というよりはノルマンディー公が差し止めたんだろう。ホストの威厳というやつだ
落ち目の王国側としてはせめて威厳だけでも取り繕おうというわけだ」
「だが、それゆえ我々は手を打てる。チーム白鳩を投入する。ほかは無駄だとは思うが『壁』周辺を探るしかなかろう」
「わかっているとは思うが」
「『婦長』に手は出さんよ。委員のお歴々の心配も大概にしてほしいものだ…」
――そして、共和国側と共に、王国側も動き出す
「共和国側としてはあまりに見え透いている。これは警告だろう。日本人どもめ舐めおって」
「ならば、どうなさいます?」
「業腹ながらも日本側の警護に協力せざるを得ん。うまくすれば貿易協定での譲歩のひとつも勝ち取れるだろう
それに、北米ミシシッピ川線の兵力削減は急務だ。この大ロンドンを王国側に維持するなら、な」
「さっそく日本大使館と連絡をとります」
「そうしてくれ。特使は共和国(あちら)側と親しいとはいえ、あの国でも少数派の対アルビオン穏健派だ
日本の現政権は王国側(われわれ)派とはいえ、経済問題ではむしろその反対
ここは公爵に恩を売っておくのもバランスオブパワーには重要だよ」
「北米のリチャード殿下のためにも?」
「そういうことだ」
223 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2025/01/21(火) 15:24:10 ID:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp [30/92]
――そして、大日本帝国特使一行とチーム白鳩とプリンセスを乗せた列車は分断されたロンドンへひた走る
そこへ現れたのが…
「ちせ殿。あなただったか」
「公爵。突然の非礼をお詫びいたします。しかしどうしてもお知らせしなければならないことが――閣下におかれましては、『蜂1号』という言葉にお心当たりがおありでしょうか?」
――そして同刻
「目標は堀河公爵の暗殺に非ず」
「なんと!」
「お歴々。『蜂1号』は単なる超兵器ではない。『それを制するもの、世界を制する』おそるべきものなのだ
閣下にはそれらへのアクセス方法と、なぜそれを封印しているのかを吐いていただかなければ…困るのだ」
「承知」
今、偽りの平穏を謳歌するアルビオンに、波風がたちはじめる…
プリンセス・プリンシパル×大陸日本 劇場版「Bee hive」予告より
224 名前:ひゅうが[sage] 投稿日:2025/01/21(火) 15:40:52 ID:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp [31/92]
とりあえず昨夜のネタをちょっとだけ形にしてみました
時系列的には第5話。ただこっちでは劇場版相当になっていますねw
襲撃者の大半は「蜂1号」を開発中の超兵器か何かだと思っていますが、藤堂兵衛は狂ってなどおらず自分の死も前提として強引に時代を進めようとしているタイプの確信犯、としておきましょうか
楽しんでいただければ幸いです
最終更新:2025年04月28日 15:33