836 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/02/09(日) 23:18:24 ID:softbank126116178004.bbtec.net [63/109]
日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」証言録「戦後にて」
「誰も彼も傷痍軍人ばかりだね」
「生きて帰ってこれたのはいいが、手足などの体のパーツを失うのは辛いからな……」
「婦長はこれを見越していたのか?戦争前から増産を命じていたし」
「あり得るな」
- フローレンスの抱える医療品メーカーにて。元々労働者向けに質の良い義肢を量産しており、クリミア戦争後は傷痍軍人へそれらを供給した。
「彼らは命じられ、命を賭して戦い、その結果として大事な体を失いました。
戦死者が名誉の死と称えられるならば、負傷兵もまた同じように扱うべきでしょう」
「確かにそうだが……まだ生きているではないか?」
「左様、死んでしまったからには遺族に遺すものが必要だが、かといって生きていて、まだ他の仕事につけるだろうに」
「では、あなた方は腕や足を、耳や目や鼻を失っても、元のままに生活できるとお思いでしょうか?
「それは……」
「……」
「軍人ではいられないだけでなく、まともな仕事に就くことは難しくなる。そうなれば後は死ぬしかありません。
それを放置するなど、兵士として動員した国家の怠慢です、暴虐です。
だからこそ、戦後も生きていけるようにグリニッジ病院が行っていることをより拡張して行うべきなのです」
「……しかし、どれほどの負傷兵がいて、どれほどの予算がかかるか」
「詐称する人間も出てくるだろう。何しろ、激戦だったのだから誤魔化しようはある」
「ならば調査をして行うべきでしょう。こちらでも戦争時に取ったカルテが写本も含め残されています。
それと合致しないならば弾いてもらって結構です」
- 傷痍軍人に扱いについて軍上層部や政府に対し言及するフローレンス。国家による補償という制度を知るがゆえに、自国での導入に意欲的だった。
「本当にカルテの写しを用意してくるとは……」
「確かに最前線から後方での医療に手を入れてもらったのは確かだが……ここまで仕込んでいたとはな」
「まあこれで不正受給者を防げるならいいな」
「彼女が義肢のメーカーを抱えているからと安直に考えすぎたな、あれが不正や利益を貪るとは思えない」
- 同上。後日、フローレンスが用意した負傷者・戦死者のカルテやレポートを見て、あきれるやら驚くやら。
「大日本帝国ではここまでやっていたのか……」
「普通なら悪用されて余計な出費で破綻するだろうにな」
「……婦長が留学しなければ、ここで我らに教えることもなかったのか。
恐ろしい話だな、知らずに置いてけぼりにされていただろう」
- 同上。日本で行われている制度や取り組みを紹介され、その緻密さや徹底ぶりに驚く。
「労働者向けにもこれらを進めるべきと提言があったが、こちらは軍人ほど管理できているわけではないからな……」
「働せ方にも注意しろと言っていたが、生産効率や労働力を削っては採算が取れなくなるだろうに」
「……彼女は経済学者が足しげく通って学ぶほどの人間だぞ?専門外にも一家言あるのだから、うまくいく方法があるのだろう。
それに、彼女の会社では実践されていて、既に結果も出ていると」
「先進的なのはわかるが、何もかも日本の真似ばかりというのもアルビオンの威信にかかわるからな」
「だが、大事なのは結果ではないのか?」
- アルビオン政府関係者の会話。労働者を過度に保護することへの忌避感や既存の利権や制度への執着が未だに根深く存在していた。
「材料費などを考えるとこれでもギリギリですね……」
「問題ありません。傷痍軍人だという証明があるならば、あるいは紹介状を持っているならば、安値にして構いません。
女王陛下からも軍からも結構な額の報奨金が出ていますから、そこから補填できます」
「……それは、ドクトレスのためのものでは?」
「私のためのものならば、私が使いたいように使ってもいい。そういうお金です」
「わかりました」
- 義肢を扱う会社の会議にてフローレンス。傷痍軍人が安価に手に入れられるように、報奨金の一部を使うことにした。
837 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/02/09(日) 23:22:20 ID:softbank126116178004.bbtec.net [64/109]
「……やっと株価は戻りつつあるな」
「ああ、アルビオン関連は下がったままが多いが、ロシア関連が復興景気な分釣り合いが取れている」
「あれほどの市場介入はやりたくはなかったことなんだがなぁ……」
「けど、やらなかったらブラック・マンデー不可避だったし。
アルビオンの経済音痴どもめ、大不況の数歩手前にまで至ったのは許せん」
「サンクトペテルブルク空襲を捻じ曲げて実行しやがった奴らめぇ……!」
「極刑は免れないですし、その分だけアルビオンは弱体化しますが……各国のラブコールが怖い(白目)」
「ほんとそれな。アルビオンが咳をしたら、世界の3分の1が風邪をひく。その影響を避けられる国なんて存在しない。
だからこそ、原因になったアルビオンを処そうぜ、となるのは自然だよな」
「腹が立つから殴りたいが、殴ったら一巻の終わりよ」
- 財務関連の夢幻会メンバーの会話。暴落した株価なども落ち着いて、ようやく一息つけた。
「婦長は戦後も大活躍しているようですね」
「まあ、史実と違って慢性疲労症候群に罹患していないからな。
体力も財力も権力も、一番必要な知力までもあるならば、そりゃあ活躍する。
これでアルビオンにテコ入れを頑張ってほしいものだが……」
「ただまあ、問題なのは財力も権力も比重が上層に偏っているってことだな」
「上が積極的に下にリソースを割こうとしない限り、にっちもさっちもいかないのが難点だな。
そのせいで起こっている損失は国家予算レベルだし、文化風習が産業革命でどれだけ吹っ飛んだか……」
「婦長はそっちにもリソースを割いてはいるが……如何せんやるべきが多いようだしな」
「これまでアルビオンの人々が何もしなかったわけじゃないが、比較対象が悪すぎるよな」
- 婦長の活躍について語る夢幻会メンバー。未だに太いパイプを持つ婦長とは積極的に情報のやり取りがなされていた。
「で、何時アルビオンをやるんです?(意訳)」
「アルビオンをやりたいけど、やっちゃうと影響がね……アルビオンの馬鹿のせいで経済が痛い目を見たじゃん?(意訳)」
「でも、大衆はそれを納得しないんですよ。むしろ怒りをぶつけようとしているんです(意訳)」
「困るなぁ(意訳)」
「何か不満を抜ける何かがあればいいんですがねぇ……一発アルビオン殴れません?(意訳)」
「今のアルビオン、下手に殴ると死んじゃうんだよね。殺したくはあるが死んでほしくはない(意訳)」
「温い対応をすると余計つけあがるのでは?(意訳)」
「だから、欧州諸国にテコ入れしているんだよなぁ……あれで時間を稼げるはず(意訳)」
「それだけじゃ逆効果では?(意訳)」
「それはそう。にらみ合いになってくれれば一番なんだけど(意訳)」
- 大東洋同盟内での会議にて。この時点において、アルビオン脅威論は実情・心情の両方の観点から高まりを見せていた。
「これが航空艦を沈めた兵器か……」
「まさしく戦争の在り方を変えるだろうな。アルビオンも対策しているようだが、無抵抗のままよりも何倍もマシだ」
「ああ。ロシアができて、我々にできないことはない。
とにかく研究を進めなくてはならないな」
「幸い、日本は必要なモノを売ってくれるようだしな……」
「アルビオンの行いを日本が警戒するのも無理からぬ話だ。
だからこそ、牽制の意味もあってばらまいているのだろうさ」
- 欧州の某国にて。特に東欧や北欧諸国はアルビオンの脅威を自前で対処すべく、積極的に航空機や飛行船の導入や研究を進めた。
「……確かか?」
「はい。飛行船がケイバーライトなしに浮遊する原理……それは特殊なガスを袋に詰めたことによるもの。
これはどうやら北米で産出されるガスのようだと」
「どこからそんな情報が……」
「ロシア帝国の輸入品を洗いました。
それによると、日本国籍の荷がシベリア鉄道経由ではなく、船便で北米からロシアに送られています。
そして、気密性の高いタンクで大量に輸送されています。かなり手が込んでいたようで、その為に記録に残っていました」
「なるほどな……わざわざ本土ではなく北米からとなれば、そこで産出するとみるが妥当か。
上に報告しておかねばならんな」
- アルビオンの諜報機関にて。再編された諜報機関は、ロシアがどこからヘリウムを輸入してきたのかをおおよそだが探り当てることに成功する。
838 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/02/09(日) 23:23:09 ID:softbank126116178004.bbtec.net [65/109]
以上、wiki転載はご自由に。
短いですがクリミア戦争後の様子を。
なまじわかっちゃったがために、北米の日本の土地が欲しくなってくる…
最終更新:2025年04月28日 15:50