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憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編 短編集3
Part.6 よく訓練された兵士
- 平成世界主観2008年 ファルマート大陸 アルヌスの丘近郊 地球連合拠点内 歓楽街
平成世界からも物品を仕入れているという、ある意味では連合の視点では異端的な歓楽街。
それはここを訪れることもある平成世界の人員のためであり、あるいは平成世界という過去の時代を楽しみたい連合の人員のためであった。
あるいは、特地---ファルマート大陸に暮らす人々が許可を得て物を売りに来ることもあった。
その為、異世界と過去と未来が混在するという、一種のカオスが形成されている状態。
まさにそれは、このファルマート大陸の縮図といっても過言ではなかっただろう。
そして、その歓楽街において、自衛隊の面々は訓練の合間の時間ということで羽を伸ばしていた。
根を詰め過ぎても意味がないという理由で、平時からみれば、そして特地との接触というある種の非常事態時では考えられないほどの余暇を得ていたのだ。
とはいえ、彼らが悠々と楽しめたかというと微妙なところであった。彼らからすれば、連合の傭兵たちによる鬼のシゴキの負荷は重たかったのだ。
「…………」
故に、歓楽街のカフェに入って死んだようにぐったりしてしまっても、無理のない話であった。
彼らはある意味で天国と地獄を経験していた。
過酷な訓練を受けて心身ともに疲労したと思えば、その後のケアを受けて一気に疲れなどを抜かれる。
これを反復横跳びしているうちに、感覚が狂うというか、ジェットコースターに翻弄されている感覚を味わっていた。
故にこそ、疲れていないが疲れている、という状態だった。
「なんだか、休んでいるのに休んでいる気がしないな……」
やっと一人が口を開いて漏らした。
注文していた飲み物を喉に流し込み、誰もが無言で肯定している。
だが、と声が漏れた。
「だが、なんか癖になるよな」
「ああ……わかる」
「訓練とはいえ、熱中できたよな」
そう、なんだかんだでロボットを操縦する、という夢を叶えられているのは充足感があった。
一度は夢に見たことがあるであろう、空想の中にしかない存在を自在に動かせた。
正確にはそのための訓練の最中なのであるが、夢のようで、楽しくて、ついつい力が入る。
「癖になるというかな?」
「わかる。ロボットに乗れるっていうのもあるけど……訓練が楽しい」
「きついけど、ちゃんと教えてくれるのはいいよな。
原隊だとかなり精神論の奴がいたけど、こっちだとそれもいないし」
一度口に出すと、止まらなくなる。知らずに笑みがこぼれ、会話が弾む。
きつかったが、楽しかった。得難い経験だったと、そう思えてくる。
だが、彼らは気が付かない。軍人になれたということは、きつい訓練を楽しめる気質ということ。
そういう未知のものからの刺激に快楽を見出せるマゾヒストということを。
ひいては、そんなマゾヒストが巧妙な飴と鞭によって、うまく誘導されているということを。
簡潔に言えば、彼らは非常に良く「訓練」されていると、そういうことであった。
143:弥次郎:2025/02/17(月) 00:29:01 HOST:softbank126116178004.bbtec.net
Part.7 頭を使え
- 平成世界主観2008年 ファルマート大陸 アルヌスの丘近郊 地球連合拠点内 シミュレーションルーム
その日も、シミュレーターのおかれた部屋では傭兵たちによる自衛隊及び米軍への教導が行われていた。
時に苛烈に、時に姫をあやすように、時に焚きつけるように。傭兵たちの訓練は、生き残るための手段を教えるものであった。
傭兵というからには、一つしかない命を張って戦場に出て金を得る職。
故にこそ生きて帰ることが第一義であり、その為の術を叩き込んでいた。
とはいえ、常識も考え方も違うものだから、どうしても齟齬というものが発生する。
言葉が通じているだけマシであるが、言葉を使ってもどうにもならないディスコミュニケーションは悲劇である。
なまじか両方が自分が正しいと判断しているために、平行線となりやすいので、余計に厄介だ。
なので、解決手段としては一つの方法が提示される。その理論をシミュレーションで実践して証明せよ、である。
「足を止めると隙だらけになる。被弾面積が大きいのにどうして攻撃を耐えきれるかといえば、足の速さと小回りの良さだ。
何のための腕部だと?あるいは操縦を補正するOSやFCSだと思う?」
「それは、そうですけど……」
「操縦でやることがいっぱいで……」
自衛官側の相談を、しかし、甘えを許さずに受け入れ、指摘する。
「そこは慣れてくれとしか言えないな。だから練習するんだし……」
「ある程度の操縦は指示を出せばオートで熟してくれる。
逆に言うと、次々に判断して絶え間なく指示を出してやらないと、途中で間抜けな止まり方をする。
つまり、硬直が発生してやられるのは、パイロットが思考を停止させて、操作を止めているからなんだよ」
確かに理に適っている。
そのように講義されたし、読み込んだマニュアルにもそのように書かれていたし、仕組みも説明された。
けれど、それで納得しきれるかといえば微妙であって、それを素直に実行出来たら苦労しないのだ。
「それができたら、苦労しないんですが……」
「お、言うねぇ。けど、これ以外にはないんだよね。
練習して、勉強して、どのように動けばいいのかを頭と体に叩きこむしかない。
そうじゃなきゃ、死ぬよ。一個しかない命を失って死ぬ」
容赦のない言葉。思わず息がおぼつかなくなるほどの、説得力と重みのある言葉だった。
「それができない人間から戦いの中で脱落していくんだよ。
そうやって何人も何十人も、何百人も死んでいる。同じ轍を踏みたいかい?」
「……それは、いやです」
「よろしい。ならば、頑張ろう。
大丈夫だよ、人間なんていつでも成長期だから、成長して適合できる」
「まったくだな。ただまあ、漫然と練習しても意味がない。
自分の力を磨くことを考え、考えて、判断して、行動して、その責任を負うしかない」
そして、と教官の傭兵は端的にやるべきを伝える。
「頭を使え。死なないために、生きるために、必死にね」
命を張って生きること、それは戦うこと。
もはや、平成という時代を生きていられない人々は、身を以て学ぶしかないのだから。
144:弥次郎:2025/02/17(月) 00:29:32 HOST:softbank126116178004.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
やろうと思えば人間なんてなんぼでも強くなれますからね
まして、国を守ることを仕事に選んだならば、研鑽を死ぬほど繰り返すしかないのだ。
まあ、どんな職業でも同じなんですけどね。
最終更新:2025年05月18日 15:18