855:戦車の人:2025/03/11(火) 13:33:47 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp

共産陣営においてソ連についで大きな陸軍兵力を有する日本、満州が共同開発した、戦後第三世代の主力戦闘戦車。
これまでの日本陸軍主力戦車が、基本的にはソ連製のライセンス品を改良し、より低コストかつ高品質を達成。
一方で兵器としての本質に変わりはないことに対し、90式は東側技術を継承しつつも、根本から大きな進歩が施された。

日本、満州陸軍はかの太平洋戦争-日本本土決戦で、我が機甲部隊の中戦車、砲戦車による機動打撃の成功。
ひいては上陸軍そのものを包囲殲滅し、首都圏などの防備に成功した戦訓を基本に、機甲と機械化を推進してきた。
共産陣営への転向。あるいは修正社会主義へ移行してから、自動車や製鉄など重工業が著しく成長した地盤も大きい。

故に日本製の赤い戦車は、特にソ連本国製より同盟国や友好国に好まれる傾向があり、自然と兵器でも市場競争が生まれた。
無論、売却先は日ソともに慎重に見極め、常に協議して策定してきたが、独占市場でなくなったことは技術向上を自然と招いた。
ソ連の産業効率化は米国の暴挙、そして日本と満州との市場競争が育てたという評価さえ、今は存在している。


T-72戦車を76式戦車として用いてきた日本陸軍は、大火力と重装甲に満足しつつも、戦車兵の生残性や操縦の習熟性。
何より変速機が基本、T-34やT-54の焼き直しに留まり、加速や後退、超信地旋回などの運動性に不満を覚えていた。
米国では第二次世界大戦当時のM5軽戦車から、自動変速機を用いてきたことに比べ差は大きい。

勿論自動車産業の発達により民間車両や軍用トラック、装輪装甲車や歩兵戦闘車などは自動変速機を備えるに至った。
だが重量40トンを超える主力戦車を軽快に動かし、なおかつ高い耐久性と信頼性を獲得するのは、未だ困難であった。
故に米国の次世代戦車に対抗するべく開発された新戦車は、現行のT-72系列の改良版で一時期決定しかけていた。

火力発揮はFCSの完全デジタル化と劣化ウラン弾芯徹甲弾、防御力は大型増加装甲とアクティブ防御システムの搭載で改善。
エンジンこそ水冷4サイクル8気筒で1000馬力以上が見込め、コンパクト化を果たしたが、変速機は半自動式に留まっている。
なおソ連式水冷ディーゼルのコンパクト化、効率化には満州国軍造兵廠や同国重工業集団との技術交流も大きい。


しかし1960年代から70年代のインドシナ紛争における、戦略・戦術熱核兵器20発を用いた米国の防御と大虐殺。
これは共産陣営だけではなく、未だに国際通貨としてポンドを維持している英連邦ブロックにさえ、深刻な恐怖を与えた。
日満ソは言うまでもなく英連邦すら、新大陸の野蛮人は言語が通用しない明確な仮想敵と、カナダ防衛を含め認識した。

この時代から共産陣営と英連邦の経済、技術交流や友好関係が構築されるが、それは奇しくも主力戦車開発にも影響が及んだ。
彼らはやはり大火力重装甲の戦車を好んでいたが、日ソとは逆に変速機ではなく車載水冷ディーゼルで伸び悩んでいた。
全自動変速機は実用化して久しいが、高効率な車載水冷ディーゼルで難航し、発電機用水平対向エンジンを用いたことさえあった。

米国の暴挙を前に軍需部門でも交流の深まった両陣営は、自然と次世代戦車開発において問題と利害の一致を確認。
相互の技術交流と協力により、互いの問題を解消し、迅速な機甲戦力の近代化による抑止力向上を行い始めた。
また共産陣営で規模ならば第二の陸軍、そして人口相応の工業力が育った満州国も、何時しか参画することになる。

856:戦車の人:2025/03/11(火) 13:34:20 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
共産陣営と英連邦共通の駆動系問題は、日本、ソ連、満州、英国の機甲関係技術者、技術士官が結集。共通企画開発を実施。
この段階から共産陣営と英連邦は、合衆国が三度目の狂を発した際には、同盟関係構築さえ視野に入れていた模様である。
英連邦特有のヤード・ポンド法、多国籍の言語の壁など問題はあったが、技術素地が高さと利害一致が功を奏し、開発は進捗。

最終的に東側式の水冷4サイクルV型8気筒1200馬力ディーゼル、英国式の多段自動変速機をパワーパックとして一体化に成功。
装軌試験車体を用いた各種機動試験は良好な結果を収め、東側はようやく実現した迅速な後退や超信地旋回などの高い運動性に。
英連邦側は東側が営々と培ってきた信頼性と耐久性に優れる大出力ディーゼルに、概ね満足を示した。

また日英はもう一つ、共通の技術の頭打ちを抱えていた。それは戦車砲の分離弾薬方式ゆえの、威力工場の頭打ちである。
大口径砲で装填の迅速化を容易にする一方、弾薬規格の変更が困難で、特に徹甲弾の弾芯延長が大きな壁となっていた。
当座は問題ないとされているが、仮に陸上兵力でも隙を見せれば、米国は熱核兵器と並行し侵略を行うと両陣営は認識。


この分野でもかなりの技術交流が行われ日本側からは日本製鋼所とダイキン工業、満州からは重工業集団、英国は王立造兵廠。
ソ連は半官半民に移行しつつある機甲関係研究所より人材を出し、問題の改善をどちらかといえば民間企業主導で実施。
最終的に従来の分離薬包を燃焼式素材薬莢に切り替え、既存の120ミリライフル砲や125ミリ滑腔砲でも、弾頭大型化を可能とした。

弾薬自体も分離式から一体型に改められ、これにより従来に比べて格段に装填動作。もしくは自動装填装置の単純化に成功。
装填手段こそ異なるが砲塔後部に即応弾薬庫を設け、砲尾に直線的に装填を行えるメリットは非常に大きかった。
また、砲塔後部という被弾しやすい点はダイキン工業、満州重工業集団がブロウオフパネルを開発。やはり生残性を向上させている。

後に日満の90式、ソ連のT-90、英国のチャレンジャーとなるこれら要素技術を持つ各国新型戦車は、驚くほど似通った存在となる。
主砲やサスペンション、FCSなどは方式や装備品が異なり、複合装甲などは根本から異なる技術形式を用いている。
だがコア技術はほぼ同一の存在で、手堅い要素技術の共同開発成功により、何れも高性能かつ低コストに収まった。


日本陸軍で90式として正式採用された新型戦車は、2A46系125ミリ滑腔砲の搭載、鋳造砲塔への複合装甲の適用。
枯れたトーションバー・サスペンションの採用などは、従来のT-72系列を踏襲しているが、それ以外は殆どが別物となった。
高効率ディーゼルと自動変速機は、戦闘重量48トンの車体に必要十分な速度と航続距離。何より俊敏な運動性を与えた。

熱線映像装置、YAGレーザー測距儀、砲・照準器2軸安定装置、デジタル弾道計算機からなる射統装置も高性能だった。
東側では最初の自動追尾機能さえ有しており、信頼性の高いバズル式自動装填装置を併用し、高精度な行進間射撃を達成。
弾芯を拡大した装弾筒付翼安定徹甲弾も、射距離2000メートルで550ミリ以上の貫通力を発揮している。

装甲防御は従来の鋳造砲塔への複合装甲適用だが、外装式の大型パッシブ増加装甲とアクティブ防御システムを併用。
少なくとも米軍が多用する長砲身105ミリ砲、あるいは第二、第三世代対戦車誘導弾には十分な生残性を発揮している。
2020年代現在でも段階的な各種改良と新型弾薬適用を施された上で、予備込で4000台が装備されている。

857:戦車の人:2025/03/11(火) 13:36:35 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
  • M1主力戦車(米国)

失敗に終わったMBT-70計画、あるいはM60戦車の作り変えに等しい大改造を乗り越え、80年代に実用化された米軍新型戦車。
無拘束セラミックとチタン合金を主体とした複合装甲を備え、東側陣営とは異なり直線的な砲塔構造が特徴。
また駆動系には大出力だが燃費劣悪なガスタービンと自動変速機を用い、腐っても自動車大国の意地を見せ、機動性は高い。

一方で120ミリ級の主砲開発に失敗し、英国よりM68の名称で導入した105ミリ戦車砲を62口径まで砲身延長、薬室拡大を実施。
砲身寿命を代償とした初速増大と新型弾薬により、射距離2000メートルで460ミリ以上の貫通力を達成している。
装填速度も最短5秒と早く、共産陣営や英連邦に比べ劣るとは言え、デジタル化FCS導入もあり侮れない性能を有している。

だが105ミリ砲ゆえの威力向上の頭打ち、運動エネルギー弾に対する複合装甲の性能不足、ガスタービンの燃費劣悪等弱点も多かった。
スペインやイタリア、フィリピンなどを除けば孤立している彼らは、技術開発が歪なものとなり、これらを解消する手段が乏しかった。
最終的に劣化ウラン主体の複合装甲を用い、相当な防御力向上を果たすが、同時に重量は軽く60トンを超える結果も招いている。

90式やT-90と比較した場合は機動性で同等、装甲ではやや優越し、火力で劣後。兵站負担は激甚というMBTである。
故に調達維持双方で相当なコストを要求されてしまい、M60系列の戦車を完全に代替するには至らなかった。
後のイラン出兵においては共産陣営から供与された第三世代MBTを相手に苦戦し、最終的に叩き出される敗北を喫している。



  • あとがき

T-90の皮を被った赤いチャレンジャー戦車のようなMBTです、発狂米国を相手にみんな怖かったんやなって…
日本とソ連だけでなく満州も積極参加しているのは、陰山琢磨氏の旭日シリーズのオマージュです。
外見はT-90みたいな戦車ですが90式めいた自動追尾行進間射撃、あるいは迅速な後退や超信地旋回が可能です。

装甲防御はあえてソ連風味を残すため、拘束セラミックは見送りましたが、米国の戦車砲開発遅延を前に十分と判断しました。
鉄槌世界ではドイツは完全に共産陣営に入り、米国にラインメタル120ミリ滑腔砲が渡る可能性は皆無です。
そしてM3系列の90ミリ戦車砲を最後に、実は米国。戦車砲は外国製のライセンス依存です。この世界では尚更厳しいでしょう。

それでもFalloutめいた熱核兵器大量投入と並行し、軍事侵攻を行う危険性は常にありますが、一応米戦車に優位に立てると思います。
特にFCSを史実90式相当に底上げし、完成弾とバズル式自動装填装置を備え、威力と射撃速度、精度で何とかなるかと。
後々にサーマルセンサを車長用照準器にも、第2世代に更新して備え、弾道計算機もCOTSコンピュータに変わるでしょう。

なおライバルのM1は概ね史実の初期型エイブラムスで、62口径105ミリ砲搭載も試案で存在していたのでモチーフにしました。
とはいえ電子装備などでは史実米国より遅れ、大口径戦車砲の国産化にも失敗しており、M1A2には至りません。
後、劣化ウラン装甲適用型はおもすぎるので、同盟国が購入するのは装甲に問題のある初期型になるかもしれませんね。

満州、ソ連と共同で開発すること。スケールメリットにより低コストになっているので、やはりかなりの輸出商品としても扱えます。
その場合のライバルは、やはり分離弾薬の弱点やディーゼル頭打ちを解消したチャレンジャー系列かもしれません。
ウィキへの転載はご自由にお願いします。なんか微妙に中華99式めいた戦車になってきたなあ…何でやろ。

858:戦車の人:2025/03/11(火) 13:37:19 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
以上となります。長文投下失礼いたしました、ご笑覧頂ければ幸いに存じます。

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最終更新:2025年06月11日 20:31