93:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:06:56 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp

 鉄槌世界戦後史ネタ


――日本宇宙開発事業団/ソ連宇宙庁 トラック宇宙基地(ミクロネシア連邦領租借地)


【概略】―――1962年に開設された日本およびソ連(主権国家連邦/北ユーラシア連邦)の宇宙基地
所在地は、日本領南洋庁から独立したミクロネシア連邦内のトラック環礁に存在する
元々は大日本帝国海軍の南洋における一大拠点であり、第一次世界大戦後の信託統治領である南洋諸島の中心部でもある
2025年時点での発射台数は超大型対応のもの3(うち現役2、改修中1)、大型8(うち現役4)、小型ロケット用は現在あまり使用されていないものの観測用ロケット打ち上げ施設が2つ現役である
また、環礁外周を埋め立てて造られた5000メートル級滑走路3、7000メートル級滑走路が2つ(中心部の夏島にトラック国際空港があるがこちらは3000メートル級滑走路2)あり、名実ともに太平洋上における宇宙開発の中心地である


【歴史】――ヴェルサイユ条約によって国際連盟発足前に日本軍が占領していたことを理由として国際連盟脱退後にも統治を継続した大日本帝国は、この地を軍事基地化して対米迎撃作戦の中枢のひとつと位置付けていた
世界最大の環礁であるトラック環礁には最盛期には軍民あわせて3万人が居住、連合艦隊をすっぽり収納できるだけの広大な環礁湖(ラグーン)内は他の南洋諸島の諸小島同様に日本本土からの移住者が圧倒的多数派になっていた
ことに満洲を除く中国大陸からの撤退以後は、景気がなべ底を打っていると称された日本本土から復員兵40万人のうち4万人がサイパン以南に移住したことから全人口17万人のうち13万人あまりが日本人という状況(1942年時点)となっていたのである
状況が変わったのは1944年、米国による日本侵略に伴い北マリアナ諸島のサイパン島が陥落し日本が本土決戦に突入したことによる

この結果、辛くも独立を守り通した大日本帝国は、国際社会復帰の一環として1945年12月、国際連盟に復帰
1947年の国際連合への改組に伴っては米軍占領地域である北マリアナ諸島の一部を除いて信託統治の継続を勝ち取ることになった
この過程でサイパン島の日本人口4万人が米軍により追放され、さらに荒廃した日本本土から主に北九州出身者や西日本各地を含めて32万名が移住
1952年には南方のニューギニアの3分の1程度の人口である人口50万人を数えるに至った
だが、小島の集合体であるこの南洋諸島は主要産業として製糖業や漁業・農業が主体であったことから外側のパラオやマーシャル諸島に比べて中央部の特にトラック環礁においては人口に対して産業規模がどんどん縮小するという空洞化現象が発生しはじめていた
特に大日本帝国海軍の外洋艦隊消滅に伴い、彼ら相手のサービス業に従事していたトラック環礁の苦境は著しかった
そんな時、世界を衝撃が襲う
1955年1月、人類初の人工衛星がソ連から打ち上げられ、さらに次は人間を打ち上げようという機運が高まっていたのである
世にいう、宇宙時代の到来にアメリカはもとより日本も対応しようという動きが出てきたその波は、南洋にまで波及した
トラック環礁の住人達は、巨大なロケットを擁する宇宙基地の誘致という夢をもって復興の進む帝都東京に陳情団を送り出した
そして、予想外の成果を持って帰ってくる

94:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:07:27 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp
彼らはまったく考えていなかったのであるが、宇宙ロケットの打ち上げにあたっては地球の自転を利用することから極軌道を除き赤道に近い方が経済的に優位なのである
しかし北緯10度以北に位置する日本近海は台風による打ち上げ時期の制限を受けるし、ソ連が打ち上げに使用した同国でも最も南方にあるカザフスタンのチュラタム発射場(のちのバイコヌール宇宙基地)はなんと北緯45度の位置にあった
さらに降水量こそ多いものの、最低・最高気温の差は年中通じてほとんどない
台風が通過するときなど、数年に1度しかない

トラック環礁の緯度は北緯7度
対してこの海域における台風発生地帯は北緯10度から15度
赤道無風帯とはいかないものの…まさに完璧であった

既に数万人単位を養えるインフラが存在し、さらに拡大の余地がある
位置がパラオやマーシャル諸島のごとくアメリカ勢力圏からやや離れた部分にあることもまた都合がよかった
この位置関係を見た日本側担当者がたまたま日本側における宇宙開発機関設立準備も兼務していたことから話は一気に具体化しはじめる
停戦講和時に押し付けられた、空港以外の要塞設備設置禁止という条項(ただしこれは国連委任統治下の条件と合致しており、そういう意味では自国領編入後に戦略地域などという屁理屈をこねて北マリアナ諸島を要塞化していたアメリカの方が自分本位であった)もまた問題にならない
彼らが設けるのは、北海道のような弾道ミサイル基地ではなく、単なる「ロケット打ち上げ基地」だからだ
日本政府は抜け目なくこの計画を、新たに同盟関係を結んだソ連に告げていた
そして、その際にフルシチョフ書記長のお気に入りとなっていたセルゲイ・コロリョフ博士は是が非でもこの提案を受け入れるべきだ、と述べた

ことは決した
1957年、日本政府はいち早く宇宙開発事業団の設立を宣言
その目的として「宇宙での非軍事活動」を掲げ、陸軍戦略兵団(あまりにも小規模であるが弾道ミサイル運用部隊)や海空軍とまったく別物であることをアピールしつつ、ソ連との合同事業としてのトラック宇宙基地の設置を発表する
てっきり、沖縄本島か台湾あたりに設置されるだろうとたかをくくっていたアメリカが面食らう中で、工事は極めて迅速に進行していった

その場所、春島には、工事があまり進まず放棄されていたかつての軍用滑走路群が存在しており、さらに戦後も軍用地のままであったことで民間の開発が進んでいなかったことから疎開後には住民が存在していなかったのである
翌、1966年12月には春島北東端部のソ連区域の工事が完了。ついで1967年1月には南部の日本管理区域の初期の建設作業が完了した
そしてこの宇宙基地には、当初から大きな使命が課せられることになる

――ソ連初の月ロケットの打ち上げ、そして日本発の人工衛星の打ち上げであった

95:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:08:49 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp
というわけで、思いついたものを投下

なに?ソ連の宇宙開発が大変だって?
逆に考えるんだ。10の設計局で30個も計画が同時進行していたソ連が問題だっていうなら、一本化するための動機を作ればいいやって

96:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:20:26 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp
というわけで、チュラタムことバイコヌール宇宙基地の自転速度900キロメートル毎時に対して、赤道近くであることから毎時1650キロメートルという好条件のトラック環礁に、海軍というお得意様が消えた後の産業を誘致しました
簡単かつ単純にいえば、同じ重量を地球周回軌道に投入するのに地上から750キロメートルの速度に加速するまでの燃料が不要になります
多段式ロケットの場合、必要燃料量が実に3分の2まで低減可能ですな

種子島が米軍に占領されたまんまな上に台湾じゃ米国勢力圏に近すぎるんで、思い切ってトラック環礁使おうぜ!という提案が通った次第
ここ、雨が日本本土の3倍近いことから真水の入手が容易(というか古い島なんで湧き水も豊富)
台風発生地帯の南にあるので、キリバスほど好条件ではないものの打ち上げを邪魔されることもほとんどありません
なんと、最大瞬間風速ですら10メートルを超えることがほとんどなしです

これは打ち上げないわけにはいかんでしょう…!

97:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:40:20 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp
※ 簡単に解説

人工衛星を打ち上げるには、地球に対して秒速7.9キロメートルを出す必要がある
だがこれは地面にたいする見かけ上の速度であることから、地球が勝手に回っている速度を上乗せしてやればその分燃料が節約できる

しかも高度を上げれば上げるほど空気が薄く空気抵抗が減るし、使い終わった燃料タンクやロケットを切り離していけばどんどん加速に必要な燃料の量は減っていく
この原理を考えれば、地球の自転というカタパルトを利用してロケットという名の艦載機を打ち出すようなイメージが近い
ということは、自転速度が理論上最も高速である赤道から東に向かって打ち上げるときと、北極圏の北緯60度以北から同様にするときとでは、自転速度がなんと半分も違う

カタパルトの出力が2倍になるようなものである
このため、各国は南に宇宙ロケット打ち上げ基地を作りたがる
だが、南にいけばいくほど、種子島のように台風の通り道になったり赤道から北上してくる雲や低気圧による天候悪化が生じるので、打ち上げができない期間が増えてしまう

しかしこれを解決する手段もある
赤道無風帯の利用である
地球には、赤道直下にこれら風がまったく吹かない無風帯が季節による変動での位置変化を経ても存在しているのだ

最もこれにあてはまるのが、キリバス
だがここは高低差があまりに低く、さらに真水の供給に不安がある
そこで、北緯7度と誤差範囲でありながら、最盛期は5万人を太平洋戦争中に養ったトラック環礁に目を付けた――という流れとなります

98:ひゅうが:2025/03/13(木) 00:46:04 HOST:FL1-27-127-13-252.okn.mesh.ad.jp
訂正。地球の公転軌道に対する、ですね
「自転速度の差により、地面に対する見かけ上の速度は低下する」というのが正しいです

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最終更新:2025年06月11日 20:47