547:戦車の人:2025/03/15(土) 00:06:08 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
当初、日本海軍は2000年の九州返還と海軍軍備制限解除を前に、白根型を巡洋艦と考慮していた。
基準排水量12000トンの堂々たる戦闘艦であり、これを6000トン級駆逐艦と組み合わせた艦隊の刷新。
広域防空SAMシステム、長射程ラムジェットSSM、共同交戦能力による接近阻止能力の構築を考慮していた。
しかしながら政府及び国軍から同艦隊計画に修正が要求された、それも縮小要請ではなかった。
当初の6000トン級駆逐艦を廃止。白根型を「量産型駆逐艦」と位置づけ、巡洋艦に2万トン級の大型艦が必要である、と。
この点は米国が東側陣営に遅れを取りつつも、熱核弾頭搭載の弾道ミサイルを実用化し、大量配備していること。
弾道ミサイルの本格迎撃を行うには、より大型の艦対空誘導弾が必要で、白根型では搭載数に限りが出てしまう。
本土や同盟国を守る盾として、弾道弾迎撃を含むより高い防空能力と、共同交戦能力を有する巡洋艦が必要と判断された。
海軍もその点について異存は存在せず、これまでの造艦技術ノウハウを用いて「巡洋艦」の再設計を開始した。
一義となる弾道弾迎撃システムについては、防空軍が運用している大射程SAMの艦載化に踏み切った。
海軍艦艇が用いている同種兵器に比して大きく、飛翔体重量は1トンを大きく超え、巡航ミサイルに近い規模である。
しかしそれ故に400キロを超える大射程、1ユニットで10個の弾道飛翔体迎撃能力を実現している。
幸いにして海軍が共通規格として開発した垂直発射装置に、限界に近いが装填も可能であった。
また窒化ガリウム半導体を用いる白根型と同系統の、多目的アクティブフェイズドアレイレーダシステムとも互換性を有する。
白根型のシステム自体が防空軍のそれを原型としており、一種のファミリー化を果たしたことが幸いしている。
但し弾道弾迎撃のため、フェイズドアレイレーダのアンテナ及び出力は大幅に大型化、大出力化された。
また弾道弾迎撃誘導弾を最低32発常備し、なおかつ艦隊防空誘導弾や巡航誘導弾を並行して多数搭載が要求。
最終的に垂直発射装置は艦首甲板、後部構造物それぞれに96セルが搭載されることになる。
白根型を駆逐艦として従え、さらには防空軍とも協働する以上、指揮通信設備も他国の大型軍艦レベルに達している。
戦闘指揮所、艦隊指揮所ともに後に竣工を果たした軽空母や戦艦に匹敵し、防空軍や陸軍向けコンソールさえ準備された。
処理系統には富士通製商用ターミナルを原型とした、共通規格コンピュータ多数が光ファイバケーブル経由で接続。
戦闘時においては弾道弾迎撃、艦隊広域防空、巡航ミサイル攻撃、何より艦隊指揮を平然と両立処理可能である。
ネットワークシステムは三菱電機製の国軍共通デジタルデータリンク、衛星通信システムを搭載。
処理速度相応の高い通信能力を有し、戦時のみならず激甚災害にも対応した汎用性も、やはり付与されている。
政府及び国軍は漫然と2万トンと拡大を求めたわけではなく、かなりコンセプトを修練させた上で要求したことがうかがえる。
艦政本部などでは「まるで未来を見た人間が求めたような諸元」と、技官が感心したという逸話さえ存在する。
その未来を見た人間が政府、国軍上層部に存在するかは…確認する術はない(なお転生者は普通に存在した模様)。
548:戦車の人:2025/03/15(土) 00:06:46 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
かくして2万トン級に拡大した巡洋艦兵備であるが、駆動系に関して原子力を用いる案が一時期は強かった。
改良型加圧水型原子炉ならば、巡洋艦クラスの戦闘艦にも搭載可能で、電子制御により安全性にも優れている。
被弾した際のダメコンもけして不可能ではなく、長期にわたる作戦行動能力を含めて魅力的ではあった。
しかし最終的には-如何に2万トン級巡洋艦の予算が通るとは言え、原子炉搭載艦は余りに高コストであった。
最大の仮想敵、日本にとって必滅の仇敵であるアメリカ海軍ですら高コスト故に、空母への搭載は相当躊躇したものである。
何より整備維持においては蒸気タービンと同様、艦を半ば解体するレベルの工事が必要なことも、デメリットと判断された。
また海軍兵備が制限された代償として、超大型攻撃飛行艇や超音速爆撃機の発達。あるいは旅客機や輸送機の輸出実績。
それに伴い実用化された高効率大型ターボファンを用いた、ガスタービン主機多数が揃っていることも大いに影響した。
どれほど大規模でもガスタービンエンジンであれば、艦のメンテナンスハッチを経由し、モジュール交換で済んでしまう。
問題となる燃費についても多数の輸出艦艇、あるいは商船建造に伴い、統合ないし複合電気推進を日本は既に確立していた。
このような経済及び技術背景から、後に金剛型と呼ばれるミサイル巡洋艦は、ガスタービン/電気複合推進方式を採用。
低速域ではガスタービン発電推進方式を、高速域ではガスタービン機械推進を用いる、面白みはないが堅実な推進系となった。
なお艦内電力供給と駆動系は独立しており、ガスタービン発電機4基合計で16000キロワットを独立して供給している。
当初は統合電気供給も検討されたが、弾道弾迎撃と艦隊旗艦を行うに当たり、電力供給は別個に用いるのが妥当と判断された。
無論、推進系と艦内発電は相互に融通が可能だが、基本、独立系として開発した方が、冗長性でも優位である。
何よりガスタービン発電は枯れた技術であり、モジュール交換で将来の発達余裕を十分見込めるメリットも大きかった。
なおこの大電力は戦闘艤装のみならず、居住性改善にも援用され、司厨設備は完全電化されている。
生鮮食料を収める冷凍庫も大容量であり、まるでレストランのようなという潤沢な食事提供能力にもつながっている。
なお垂直発射装置に装填された誘導武器以外の兵装は、概ね白根型と同等で、量産に必要な割り切りも行われている。
130ミリ速射砲1門、高性能30ミリ機関砲2基、対潜魚雷発射管2基、遠隔銃座複数は、既に必要十分であった。
一方で電子戦装置はフェイズドアレイアンテナに統合され、完全なデジタル化により、艦隊全体の広域電子妨害を効率化している。
航空機運用能力も哨戒ヘリコプター2機と、やはり過大なものは要求されず、金剛型がミサイル巡洋艦たるを一義としていることが伺える。
乗員数は基幹人員及び艦隊司令部を含めて300名と、相応に省力化と自動化も施され、徴兵制停止の実情に沿っている。
何より過去数十年、世帯の小さな海軍として過ごしてきた実情から、日本海軍の新隊員・新米将校教育能力はそれほど大きくなかった。
かような政府や国軍上層部からの要求、艦艇勤務者の拡大がこれからという実情に、金剛型は概ね適切に応えた軍艦と言える。
建造コストも排水量に比較して低廉に抑えられ、最終的には20隻以上が日本海軍において竣工することになる。
日本海軍においても切り札となる巡洋艦故、白根型と異なり同盟国に輸出は行われず、本国防衛艦隊に集中配備となった。
549:戦車の人:2025/03/15(土) 00:12:22 HOST:110-130-205-29.rev.home.ne.jp
リデル級とイージス・システム搭載艦初期案、その双方の特徴を用いた大型巡洋艦です。
当初は原子力推進もありかな…と思いましたが、航空産業も盛んな鉄槌世界の日本。
当然、ガスタービン機関や発電機も高性能なものは多数存在すると、通常動力推進といたしました。
弾道弾迎撃SAMはS-500相当で、AESAは大型化したFCS-3の系譜です。
嘗て九州を民族浄化したヤンキーの弾道弾攻撃、それを阻止することを一義とした大型巡洋艦です。
無論、米CVBGを相手とした際の接近拒否打撃力も有しておりますが。
白根型でもそうですが、理性を失った米国の手段を問わない攻撃を阻止する。
そのようなコンセプトを一義とした水上戦闘艦で、同時に駆動系を通常型として整備数増大も企図しています。
最後にひゅうが様、有難うございます。ウィキへの転載はご自由にでお願い致します。
最終更新:2025年06月11日 21:07