883:新人艦長:2025/03/22(土) 23:00:03 HOST:182-166-38-132f1.osk2.eonet.ne.jp
アメリカ夢幻会世界2
「ニューディール計画」
「世紀の悪法を葬った事を祝って!」
「「乾杯!!」」
ホワイトハウスの一室、夢幻会メンバー=ルーズベルト政権の長官クラスのほぼ全員が揃って、1919年生産のワインとウィスキーを山のように用意して「世紀の悪法」禁酒法撤廃を祝っていた。
「全く、酒税まで一緒に葬る世紀の悪法でしたな」
財務長官として大鉈を振り始めて、一瞬にして株価を上げたと既にウォール街で大評判のモーゲンソー(辻)が美味しそうにワインを飲む。
「全く、この10年禁酒させられて気分が悪かった!」
「酒!酒!酒!フォー!!」
隠し持っていたシャンパンを開けて上機嫌のハルにキング海軍省航空局長。
「流石に下品が過ぎる」
部屋中で騒ぎまくるメンバーに流石に頭を抱えるルーズベルト。
「まあ、10年の禁酒ですからねぇ。
多少はいいでしょう」
その横でスティムソン(東条)が興味深そうにワインのラベルを見ている。
頭を抱えながらルーズベルトがスティムソンに聞く。
「それで、海軍と陸軍と各州に即送りつけた各計画の進捗は?」
「陸軍はまあ上から下まで泣いてますよ。
念願の予算増額と軍備増強ですから。」
当時の米陸軍は貧弱そのもの。
それを足腰から鍛え直す軍事費増額と軍備拡張計画の基本骨子は陸軍の人間を全員感涙に咽び泣かせるほどだった。
つい数日前まで反民主党の陸軍将校もほとんどが一夜で親民主党に鞍替えするほどだった。
そしてノックス海軍長官(大角)と共和党議員なのにいるヴィンソン下院議員(加藤)、フレッチャー海軍長官補佐官(草鹿)は海軍の状況を伝える。
「海軍も大騒ぎです。」
ノックスが言う。
「やはりパナマ運河拡張でしょうね一番は。
非公式ですが、拡張に関しては商船会社の方も手ごたえはいいです。」
ノックスの言う通り、パナマ運河拡張計画案が最大の話題になっていた。
「将校たちも似たような感じです。
戦艦閥も航空閥も水雷閥もより大型の艦艇を運用できる目処が立ちそうだとウキウキです。」
「造船会社や鉄工所も新型艦艇の増産の噂に興味津々ですよ。
海軍に詳しいと言うだけで私のところにも彼らのロビー活動家が来てます。」
ヴィンソンがうんざりしたように言う。
「辻、今はモーゲンソーか、がこんなに大盤振る舞いしてくれるのが信じられないよ。」
「この不景気だから我々の予算もカットかなぁって思ってましたよ。」
フレッチャーとスティムソンがモーゲンソーを見るとバーボンを一気飲みしたモーゲンソーが答える。
「この世界の今の米軍は貧弱そのもの。
無意味にアメリカン・ボーイズの血が流れるのは利益になりません。
今のうちに打てる手は打てるだけ打っておくのがお得でしょう。必要な時に準備していないと弾も銃も船も湧いてきませんから。」
今の時代ならこの守銭奴の靴を舐めれるだけ舐めていいと思うフレッチャーとスティムソン他。
それほどまでに当時の米軍は貧弱だった。
それを補うため、兵士の給与アップに始まり、食事の見直し、待遇改善、装備改善など予算を使うための洗い出しの予算が必要なほどだった。
1933年軍備計画と題された夢幻会一派による軍隊の大改革は着実に進みつつあった。
1933年軍備計画はさらに壮大なプラン即ちニューディール計画の一環だった。
この世界のニューディール計画はテネシー川開発や各種金融政策などだけではなく、さらにパナマ運河拡張、商船隊の再編成、インターステートなどの州間高速道路建設などの大規模インフラ投資、テキサス油田などの資源開発、民間投資の拡大など経済面では非常に多岐に及んでいる。
そして次が社会保障体制の充実であり、年金制度、史実日本に近い国民皆保険制度、労働規制強化、解雇保険などの整備、障害者年金制度、退役軍人の保障制度の強化など一から全米規模の社会保障制度を作るつもりだった。
また戦時体制の構築も含まれており、国防予備戦隊の構築、各種動員体制の整備、デフコンシステム導入、統合参謀本部の設置などが構想されている。
そして一連の計画の集大成とも言えるのがチューブ・アロイズとして最上級秘密文章に指定されている計画、マンハッタン計画である。
884:新人艦長:2025/03/22(土) 23:00:39 HOST:182-166-38-132f1.osk2.eonet.ne.jp
「不満は出てくると思いますが、そこはフーヴァーさんの出番です。」
モーゲンソーが言う。
フーヴァーの仕事は反対する政治家や活動家やジャーナリストや資本家などの弱みを握り脅迫し、場合によっては抹殺する事である。
この時代、誰もが疑われるような弱みを持っている。
ヴィンソンは仲間内でもそういう反ニューディール派が減っているのに気がつく。
「ニューディールに批判的な共和党議員が減ってるのも、フーヴァーさんの暗躍ですかな」
「ええ当然。何人かの議員は今年中には政治的に抹殺されます。」
前世と比べればよっぽど穏便ですよ、と付け加えるモーゲンソー。
前世の所業を考えればよっぽど穏便だな、我々はアメリカを滅ぼしたのだからと皆が揃って思っていた。
「まあ今はこのアメリカの腐ったゴミどもを排除してもらうのが先ですが。」
「今何をしてるんです?」
フレッチャーが聞く。
それにルーズベルトが答えた。
「マフィア狩りだよ。徹底的にしてもらってる。」
フーヴァーは先にマフィアを徹底的に炙り出して排除する仕事をしていた。
既に数十のマフィアのボスが捕まって勾留中に「不幸な病死」を繰り返していた。
例えばラッキー・ルチアーノやルイス・バカルターなどなど。
彼らの考える理想のアメリカに少なくとも犯罪者は要らないのである。
「マフィアはこの国の暗部。少なくとも禁酒法時代は彼らが大っぴらに出過ぎていました。
少しここらで壊滅していただきたいと。
少なくとも彼らは納税をしていないのだから」
もう一杯混ぜ物なしのストレートでバーボンを飲み干すモーゲンソー。
マフィアの報復など少しも恐れていないこの男に軍人ですら恐れ慄く。
「海軍の将来目標はやはりモンタナ級の建造。
これに尽きます。」
話題を変えてフレッチャーが切り出した。
海軍内部の夢幻会閥は秘密裏にモンタナ級建造に動きつつあった。
ノックスが続ける。
「現在は条約の縛りで作れませんが将来的な建造のために研究を命じてます。」
「巡洋艦クラスでもデモイン級とウースター級を1945年までに揃えれるように研究を開始しています。」
さらにフレッチャーが補足した。
巡洋艦クラスではデモイン級、戦艦ではモンタナ級、空母ではフォレスタル級が夢幻会の建艦における目標だった。
「アメリカは兵器では正解を選び続けてるから我々は指針だけ示せばいいのは楽だ。」
ルーズベルトが思いを馳せる。
兵器や技術で放っていても正解を選び続ける。
アメリカのこういうところは楽だなと、ルーズベルトは前世を思って感心した。
この正解を選び続ける強さを末長く末長く維持する事こそ、彼らアメリカ夢幻会の使命だと再確認するのだった。
885:新人艦長:2025/03/22(土) 23:03:34 HOST:KD106146084212.au-net.ne.jp
以上です。
夢幻会メンバーの大半が1890~1910年代に来ている設定なので彼らが最初にしたことはとにかく酒を買い集めて禁酒法に備えることです。
結果、禁酒法時代は必死で禁酒して解禁された瞬間会合が大宴会です。
ニューディール計画は経済だけじゃなく軍事面の投資も拡大、さらに全米規模社会保障制度導入も追加という感じ。
そしてその究極目標は原爆開発、モンタナ建造、国防総省設置、空軍の独立です。
最終更新:2025年06月12日 21:03