145:陣龍:2025/03/25(火) 20:42:14 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

『冷戦時代の静かなる勝者 ~アメリカ文化帝国の落日~』


 冷戦時代。それはソ連率いる共産主義陣営と、アメリカを中心とした資本主義陣営による武力と経済力を用いた世界覇権争いであると、教科書及び表面上語られる事が多い。そしてその冷戦時代、インドシナ戦争にてアメリカは、民間都市を含む核兵器の大量実戦使用や九州地方に置ける文化、物理両面でのジェノサイド行動等と言った自業自得の所業にて大きく国際評価や信頼を失墜させると言う事態に自滅的に陥りつつも、少なくともソ連が政治的に発展解消し冷戦終結が宣言された時、アメリカの勢力圏は地図の上では大きく変化する事は無かった。冷戦後の米国プロパガンダで、勝利したとは到底言えないものの、少なくとも負けなかったと喧伝した事は、過去の繰り返された世界政治・戦略レベルの惨敗を覆い隠す為だったとしても、言い分としてはそれなりの物であった。


 だがこの時、否冷戦時代華やかなりし時の真っ只中から事実上始まっていた、アメリカの支配者層である資本家や彼らに支援される政治家が全く気付いていないか見向きもして居なかった一つの【脅威】は、必死に自らが受けた傷を癒しに走る者達の認知外にあった。
その脅威とは、冷戦時代に様々なニュース映画やプロパガンダで悪し様に罵られ又恐れられた巨人機や戦車軍団であったり、アメリカ国内向けに行われた、虚構の中の宣伝工作以外では徹頭徹尾アメリカ側の劣勢であった宇宙開発の為のロケットや宇宙ステーション等では無かった。
それは後にその余りの拡大規模と影響力から『ソフトパワー』等と称された、主に日本が源流として生み出され続けていた、所謂サブカルチャー文化であった。


 冷戦時代、ハリウッド映画やアメコミ等のアメリカ製カルチャー文化は、例外無く【アカ狩り】の容赦のない抑圧、そして【アカ】と何かしらの理由で認定された人材も逮捕や社会的制裁による業界追放が相次いだ事も有り、当然の流れで完全に自由なコンテンツ作成が行える状況に無かった。これには後のインドシナ戦争での世界政治的自滅を、国内的にも少なくとも誤魔化し国内政治的失点を抑えると言う政治的目的の遠因も有って、ほんの僅かでも共産主義に寄った様に見える描写は須らく排除されるのが当然とされた。そしてこの排除される描写の対象には当たり前に日本の事も含まれており、ある意味共産主義陣営盟主のソ連よりも憎悪や侮蔑等の負の感情をぶつけ易かった事も有るようで、ブラックジョークを好むイギリス人すら、皮肉どころか何一つ言葉を出さなくなる、出せなくなる様な作品が粗製乱造されても居た。
後にこの時期のカルチャーの大半が、アメリカでは【無かった事】にされて居たのも当然な程に。

 当然ながら、必然的にアメリカ人の購買者達は何処を見ても大差も小差も無い同系統のアニメやコミックだらけの状況に長期的に晒され、しかしそれに代わる自国製のコンテンツが出て来る事は無いと理解していた事で一種の絶望的な諦観と共に強制的に受け入れていた。
薬物乱用者がこの時期増大していた一因に、冷戦時代と言う時期特有の世界最終戦争の恐怖やインドシナ戦争での騒動による人心荒廃のみならず、カルチャー文化の貧困化による娯楽の停滞が有ると言う研究結果が出された程である。だが、冷戦時代を通してアメリカの政財界は、共産主義陣営が見せる宇宙開発や様々な軍事力の躍進、強大化の方に遥かに関心が上回っていた事も有り、アメリカ国民のその様な状況を極度に軽視か無視していた。彼らに言わせれば『世界に誇るアメリカ文化は世界一』である以上、それに迎合しないアメリカ人はアカ同然、と言う事であろう。何より彼らは、普段から仕事や業務に忙しい事や、上流階級向けの娯楽であるゴルフ等を気軽に勤しめるも有ってカルチャー文化の事を深く知る余裕もその気も無かったのだから、理解する事は困難であっただろう。加えて言うならば、アメリカ資本主義的にライバル的存在の出現をマトモに許容もしないので、アメコミやアニメの登場人物や舞台は全く変化が無いも同然だった。飽きられるのが当然だろう。

146:陣龍:2025/03/25(火) 20:44:02 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

 アメリカのカルチャー文化が屋台骨に軋みを上げだしている中、対極的にカルチャー文化が昇竜の如く爆発的成長を遂げていたのが、日本であった。アメリカによる一方的な奇襲戦争による本土決戦、そして九州地方の割譲と言う大きすぎる痛みを被った日本であったが、その怒りと屈辱をバネとした超大規模の国内再開発、そして日本製巨大戦艦や正規空母の輸入、更に相互条約締結で一気に親日姿勢を明確化させたソ連の各種支援と言う援護射撃も有り、年を経るごとにその国力は極めて巨大な物へと変貌して行った。
その為に、自業自得による日本の反米感情や対ソ戦略等の関係で九州地方の返還する約束をアメリカに反故にされるばかりかアメリカ領化宣言と植民強化されると言う想定外も発生したが、その分国民感情が更なる殖産興業と国力増進の方向性に傾いた事は良き材料でもあった。そして国民生活に余裕が出て来るに連れて、極々自然と日本産の各種カルチャー文化が興隆を始めるのは、当然の話であった。


 元から日本人の民族気質的に娯楽文化に対する熱意や研究開発速度は目を見張る物があるが、折よく時の政財界が、アメリカが【アカ狩り】で社会的運動を巻き起こしている対抗として、一定の倫理等の制約を守る事を前提に自由な創作活動を奨励した事も有り、雁字搦めに縛られ窒息しつつあるアメリカカルチャーを横目にあらゆるジャンルが開拓・開発され、特に漫画分野では日本全土に週刊誌、月刊誌、四コマ漫画等様々な形式で刊行され、その後テレビが大量生産され日本全土に普及するが早いか日本製アニメーション作品も多数生まれ、現代でも激化しつつ継続している無数の漫画・アニメ作品の興亡が巻き起こる事となった。
そして漫画の躍進に触発されたかのように、既存の娯楽の代表格である映画、更には日本古典芸能である歌舞伎等でも一部変革が発生した程である。

 アメリカが冷戦時代と言う事も有り日本の影響を強力に遮断している事で直接アメリカに乗り込む事は叶わなかったものの、それでも黎明期を過ぎて一定度洗練された日本の漫画やアニメは、友好国であるソ連を筆頭とした共産陣営に輸出や流出され、その強烈な【異文化】にソ連圏全体へ大きな衝撃が齎されると共に一大ブームが巻き起こされた。
スターリンの死後、ソ連の対日姿勢の変化による親ソ感情の拡大やアメリカの暴挙に対する反感と言う背景も有り、ロシア人や共産圏ドイツ人が物語の主人公やヒロインとして活躍する作品が相応に含まれていた事が、この一大ブームを支えた一因とも言える。日本人製作の為に、現地の人間が見ると描写や設定が色々微妙に頓珍漢であったり珍妙なズレが見られる事も有ったが、それでも自国の人間が架空世界で活躍する姿は受け入れやすいのも当然であろう。
そもそも面白ければ多少の粗は目を潰れるものである。

 共産圏の日本産漫画・アニメの大ブームが拡大する中、勢いそのままに大英帝国を維持していた英連邦に対しても日本産のポップカルチャーが大挙進出。押し付けがましいアメリカカルチャーの進出に対抗、と言うより食い合わせるべく受け入れた日本産カルチャーは、受け入れ許可したイギリス人らの予想を遥かに超える規模と勢いで雪崩れ込んだ。
円熟を増して少々停滞感が否めなかったイギリスのカルチャー文化に対し、日本産の独特な人物表現や擬音等の描写は大きすぎる衝撃、日本産の【黒船】の如しであった。その為英連邦全体で日本のカルチャー文化に対抗する作品の制作が精力的に行われた程で、その努力は後にとある魔法使いと魔法学校の物語や英国諜報部員の活躍を描く映画等で大いに報われる。
当然イギリスだけでなく、日本の漫画やアニメに影響されたロシアやドイツも各々が多種多様な作風の作品を制作発表し、時折関係者から【魔窟】と言われる日本市場に殴り込む作品すら出て来る程になっていた。

148:陣龍:2025/03/25(火) 20:46:17 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

 後世から、一種の文化爆弾と言われた日本産ポップカルチャーが世界に齎した衝撃と大成功を他所に、アメリカの影響圏は相変わらず文化的停滞感が否定出来ない状況が続いていた。都合の悪い事に、アメリカ本土での停滞感のみならず、アメリカの勢力圏或いは属国状態に近い、欧州の最前線国家であるフランス、そしてアメリカの裏庭でもある南米も、アメリカの一方的善意を込めた押し付け進出と抑圧が発生しており、要らぬ反米感情の増幅と更なる反米対策の抑圧やピントのズレた援助攻勢のサイクルが起きる事態にすらなっていた。
その様な状況であっても、現場を知らず多忙であるが故に、未だ尚過去の印象と記憶そのままにアメリカカルチャーの絶対的優位を信奉しているアメリカの上層部は、共産圏の強力な軍備や躍進し続ける宇宙開発の方を恐れて着目し続けるばかりで、世界規模での極めて熾烈なカルチャー文化戦争が発生しつつある事をマトモに認識出来ていなかった。

 そして現状認識が余りに不足しているアメリカ上層部に対し、自国のカルチャー文化の集大成にして象徴の一つでも有った筈の、アメリカゲーム市場が行き過ぎた粗製乱造の末に市場崩壊と言う異常事態が発生して漸く、アメリカのカルチャー文化に異常が発生している事態の一部を少数が認識するも、全ては手遅れであった。
開発された時期こそアメリカより後発では有ったが、日本国内だけでも極めて熾烈な競争で急激に発達と進化を遂げた日本産ゲーム機は紛れも無く世界最先端であり、その性能から軍事転用の危険性も危惧された程のゲームが齎す娯楽性はある種核兵器寄りも尚巨大だった。電子産業でも一角で有った筈のイギリスですらゲーム機本体の開発競争を、【当面】と言う正し付とは言え対抗を諦めた程の完成度は、仮に日本との関係が良好で多数輸入出来て居た場合、自業自得で壊滅したアメリカ製ゲーム機市場に取って干天の慈雨となり得たが、冷戦と言う時代が日本産の製品がアメリカ市場に【侵入】する事を無条件に否定していた為に、最早叶わぬ夢であった。



 ゲームソフトのみならず本体にもコピーガードを施された日本産のゲーム機が、英連邦のカナダから行われた密輸業者の密輸で暴利も暴利な利益を叩き出し、そして日本のゲームの存在が知られるに連れてアメリカ人が大挙英連邦にテレビゲームをするべく旅行や出張など様々な理由を付けて民族大移動と揶揄される規模のアメリカ人が移動し、連動した無視出来ない規模の外貨流出にアメリカ政府が泡を吹いたり、アメリカ国内のギャングやマフィア等の犯罪組織が設置した地下隠蔽式ゲームセンターや密輸した日本産ゲームの余りの利益に複数がゲーム屋に【転職】する等の、ある種滑稽な状況が冷戦末期にアメリカ本土で展開された後、冷戦終結と共に万里の長城よりうず高く積み上げられた【壁】が取り払われたアメリカ人が目にした物は、アメリカ産コンテンツが如何に【時代遅れ】かを思い知らされる、百花繚乱にして無尽蔵の如きポップカルチャーの【大洪水】であり、そして日本人特有とも言われるアルカイックスマイルの下に、アメリカのポップカルチャー市場を日本製の漫画やアニメ、ゲームで完全支配しアメリカのカルチャー産業の再起の芽を土壌規模で根こそぎ抹殺する仄暗い思惑を秘めた、日本のセールスマンたちであった。その後の情け容赦の無い日本産カルチャーの大進出でアメリカがどうなったのかは、言うまでもない。

149:陣龍:2025/03/25(火) 20:51:00 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上ですた。転載等は御髄に

冷戦期は基本的に経済戦争や武力の誇示、宇宙開発の先端技術開発戦争が槍玉に上がるもんですが、それとは別にカルチャー文化についても結構影響力有るよねって夜勤中に思いついた勢いの産物でした
夢幻会の中の人らも居ますしゲーム機開発速度の加速も出来るでしょうし。漫画はレジェンドに丸投げとして

それで、アカ狩りに加えて国情や国威の急降下も有って締め付け強まるアメリカは確実に現実と同じくアメコミの内容が貧相化と言うか固定化でしょうし、そこに暴流とかした日本カルチャー文化が雪崩れ込んだら、こうなるんじゃ無いかなって。多分XB〇Xとかこの世界生まれる前に死んでるか二段型落ち機とかに成るんじゃ無かろうか

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最終更新:2025年06月17日 22:23