30 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/04/01(日) 17:51:46
 ××××年、大日本帝國、帝都東京は大本営。

 そこでは政官財軍のトップ達による極秘の、そして緊急の会合が開かれていた。


「なぁ……これって何かのジョークか?それとも外道作戦を立てていた罰なのか?」

 帝國の宰相、嶋田繁太郎はSAN値をマイナスに突入させながら呟く。
それを見た大蔵省の魔王、辻政信が窘めた。

「既に枢軸・連合・南極の全勢力がデフコン1を発令しています。
 この荒波を乗り切ろうとう時にうわ言を言っている暇はありませんよ。」

 海軍のトップである永田らも、何とかして嶋田のSAN値を立て直そうと必死だ。

「そうですよ嶋田さん。それに"この世界の"日本には、
 元いた世界にさえ無かった超々々巨大造船所や、SFに分類されるような技術の研究所まであります。
 勿論敵も同じように強化されているでしょうが、史実に比べればずっと恵まれた環境ですよ?」

 流石にこのままではまずいと思ったのか、嶋田本人もついに顔を上げた。

「しかしなぁ……何だってよりにもよって『鋼鉄の咆哮』世界なんだ?それもWSC3……」



        提督たちの憂鬱 ネタSS ~憂鬱の咆哮・序章~



 始まりは唐突だった。最初異変に気付いたのは辻である。衝号発動前夜、
彼は例によって海軍艦艇の運用費に無駄が無いか計算していたのだ。しかし……

「………おかしいですね、計算が………合わない?」

31 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/04/01(日) 17:52:30
 計算の結果弾き出されたのは、彼のこれまでの経験からすると余りに"少ない"支出。

「そんな馬鹿な………今持ってる艦艇でさえ、その出費はかなりの高額になっている筈……
 ………………まさか!」


 ただでさえ金食い虫の海軍に、こんなにも拡充の余裕がある世界……

 嫌な予感を振り払いながら、本棚にあった『極秘・帝國海軍所属艦艇一覧』を開いた時、
彼の顔は瞬時にして凍りついた。そこにあった文字は…………

『播磨級双胴戦艦 播磨』
『近江級双胴航空戦艦 近江』
『荒覇吐級ドリル戦艦 荒覇吐』


 その後、夢幻会メンバーは次々と身の回りで起こる異常事態に翻弄された。

「所有艦艇が激増しているぞ!一体いつ増殖したっていうんだ!?」

「南極に独立国家!?聞いたこともないぞ!?」

「ドイツ第三帝国と同盟!?我が国はいつから枢軸の一員に!?!?」


 最終的に、夢幻会の面々が鋼鉄の咆哮WSC3の日本に転移したこと、
それに伴って国家の首脳陣も総入れ替えになっていること、そして、彼らが転移した時期が、
丁度WSC3のストーリーが始まる直前であった事が明らかになったのだった。

32 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/04/01(日) 17:53:56
 ……場面を大本営に戻す。さすがの辻も、
転移初期に受けた『カルチャーショック』が未だに抜けきらない様子だ。

「本当にこの世界は狂っていますよ。何なんですか?ここの日本は?
 我々が元の世界で苦心して揃えた数倍の艦艇、さらに奇想天外な超兵器群、
 一番おかしいのはそれを問題なく運用できてしまう予算が確保できてしまう所ですよ。」


 この世界では辻政信さえ理解不能な謎の補正が働いており、海軍の整備において何時も取りざたされる、
『予算の壁』『人的資源』の問題が9割がた緩和されていた。陸空軍も海軍には遠く及ばないが問題は緩和されている。
経済の要素に至っては最早『何それおいしいの?』状態だ。HLG建艦システムは勿論標準装備である。

 かいつまんで言えば、とにかく気持ちよくドンパチすることに特化した、
色々な意味で恐ろしい事この上ない世界となっていた。

 これに海軍の人間達は喜んでいたが、そうも言っていられないと諜報を司る田中が諭す。

「喜んでばかりもいられませんよ。こんな補正がある以上、連合軍には以上の生産能力があると考えなくては。
 それに超兵器の存在も……そうそう、南極国家のプレイヤー補正も忘れてはいけません。」

 嶋田は元々の世界でWSC3を一通りプレイした事があるため、その事はよく分かっていた。

「そうだな……では、当面の目標は南極国家との同盟か?」

「その為には播磨などを沈めて劣勢値を稼がなければいけません!
 長期的に見れば確かに安全な策かもしれませんが、それまでの犠牲を考えると……」

「いくら予算が大丈夫とはいえ、自軍の艦をぽこじゃか沈められるのは気に入りませんね……艦魂的に」

「それに元のゲームと全く同じ路線を辿るのは面白くない。ここは1つ、日本の底力を見せないか?」

 嶋田の提案に海軍の多くが反対する。辻や杉山らもあまり乗り気ではないようだ。

33 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/04/01(日) 17:54:28
「否定的な意見が多いみたいですね……。まぁまずは情報収集を急ぎましょう。
 この世界の補正やら何やらはまだ大まかにしか分かっていません。何ができて何ができないか明確にしなければ。
 それと我が国におけるHLG建艦システムの分析もしましょう。現状どういった艦が作れるか興味があります。」

 嶋田は彼らの反対を聞き入れると、夢幻会としての基本方針の協議に移った。



 彼らがどのような鋼鉄の咆哮をつむぎ出すのか。それはまだ、誰も知らない…………



             ~To be continued…?~

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最終更新:2012年04月08日 19:21