603:ひゅうが:2025/03/29(土) 03:53:23 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp


 鉄槌世界戦後史ネタ


―――ソ連/主権国家連邦海軍 装甲航空母艦「オリョール」級


全長:320.1メートル
全幅:40.1メートル(船体) 78メートル(最大幅)
喫水:11.2メートル(最大)
基準排水量:6万2800トン
満載排水量:8万5010トン
機関:艦本式ロ号缶改八(1基2万8800馬力)×10基 艦本式反動タービン4基4軸
出力:288000馬力
速力:34ノット(公試時35.2ノット)
航続距離:22ノットで1万2000カイリ
     20ノットで1万5000カイリ
武装:70口径130ミリ単装両用砲8基(後、SAM8連装発射機に換装)
   100口径57ミリ機関砲単装8基(後、自動照準CIWS化)
   23ミリ機関砲(回転銃身式)連装16基32門(後、30ミリCIWS連装10基に換装)

搭載機:最大80機(露天繋止含む。大戦時レシプロ機換算で150機程度)

同型艦:「オリョール(鷲の意)」「ソーカル(鷹の意)」「ポベーダ(勝利の意)」「レトヴィザン(正義の意味のスウェーデン語 戦利艦の名にちなむ)」


【概略】――ソ連海軍が冷戦期に保有した初の超大型航空母艦
前級の「ボストーク」級から大幅に設計を変更し、傾斜煙突2つをはさんで2つに分かれた以後のソ連および日本空母の基本形となる艦形を確立したことで知られている
また、建造中に設計を変更した前級に対して当初から傾斜式飛行甲板(アングルドデッキ)の採用を前提として設計されていたことからその飛行甲板は極めて広大で、同時期の米国「チャールズ・リンドバーグ」級(旧称ユナイテッド・ステーツ級)航空母艦よりもやや小型の船体に対し飛行甲板面積は1.3倍に達している
冷戦期は2隻ずつが太平洋艦隊および大西洋艦隊に配備され、2つの大洋を積極的に巡航することでその威容を西側に見せつけた

【前史】――ソ連海軍は、1950年までに「ボストーク」級(日本側設計番号G20あるいは超G14型)3隻を入手し、その性能に大いに満足していた
それはそうだろう
基準4万7000トンを誇るその空母は、米軍が就役させつつあった「マリアナ」級装甲空母よりも巨大で、なおかつ当初からアングルドデッキと蒸気カタパルトを有する最初の航空母艦だったからだ
おまけに荒海の日本沿岸で運用することを前提に日本本土決戦前の日本海軍が計画を進めていただけあって乗り心地は再建途上の海軍将兵をして「極上」といわしめるものだった
この点は、「モンタナ」級戦艦の船体設計の拡大版として急造された「マリアナ」級がその舵のききが極端でかつ高速航行時の船体の上下運動という問題を抱えていたこととは対照的である
とはいえ運用していくうちにいくつかの改善点も見つかっていた
まずは、起工後に最低限の改装でアングルドデッキを追加したことからこの部分に当時の大型蒸気カタパルトが設置できず、のちに重量制限つきの中型のものが追加されたものの当初は艦首に並列して2基しか蒸気カタパルトがついていなかったことによる急速発艦能力の制限である
運用側はできれば4基程度のカタパルトの装備を要望していた
第二に、航空機の主として着艦誘導時の問題である
高速化が進行していた当時の艦載機は着艦誘導灯により位置を把握しながら着艦してくるのであるが、これに指示を出す航空管制の部分が艦橋だけでは間に合わなくなりつつあったのだ
特に深刻だったのが誘導を目視確認する甲板員(ウォッチャー)の立ち位置で、航海性が高い密閉の島型艦橋の最後部から誘導を行う管制官たちがオーバーワークを強いられたことから臨時に吹き曝しの飛行甲板側面のスポンソン(張り出し)から管制官の補助を行う人員が臨時で割り当てられる羽目に陥っていたのだった
この部分を改善してほしいという以外は、日本側が基本設計を冷暖房完備の上に北方での運用もできるように海防艦で培った暖房技術を採用していたことなどもあって特に不満は上がっていない
強いていえばたとえばガソリンエンジン搭載機用燃料タンクの防御がマリアナ沖海戦(日本名を硫黄島南方海域海戦)での空母機動部隊壊滅の教訓からコンクリート注入や強力な換気システムと注排水システムとあわせて変質的なまでに防御しているあたりが「過剰防御ではないか」といわれたくらいだった
このままでは超音速機の時代にはこのクラスでも能力がやや不足気味になりかねない

604:ひゅうが:2025/03/29(土) 03:53:55 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp

そこでソ連海軍は1952年、「ボストーク」級の調達を3隻で止めた上で、日本側に新たなる航空母艦の建造を打診する
泡を食ったのは日本側だった
彼らは、個人的な信任を日本国側に与えていたフルシチョフ独特の考えからのちの13万トン級戦艦「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級の建造も予定しており、そこにいきなりこの予定をねじ込まれるような状態になってしまったのだ
しかし、この数年間ですっかり日本製大型艦艇の虜、いわばファンになっていたソ連海軍側としてはいくらか譲歩してでも、それこそ価格が高騰しても日本側に発注をしたいとの内々の申し出があったことから日本政府も建造を決断する
このために新造ドックを予定を早めて2つ突貫工事で作ることになった(そうでなければ新造戦艦の建造予定が納期に間に合わなくなってしまう)が、これの影響はたとえば新幹線計画が1年後ろ倒しになったことから当初予定の機関車方式ではなく動力分散方式の開発が間に合うなど最小限にとどまった(大本営発表)


【解説】――船体は、日本型空母伝統の全長対全幅比が大きい細長いものである
艦首水面下は前級同様の高速域最適化バルバス・バウ(球状艦首)
喫水線上は飛行甲板および蒸気カタパルトと一体化したハリケーンバウで、これは悲運の空母「大鳳」や「ボストーク」級と変わらない
船体は空母であるためやや加減されてはいるものの地中海や多島海での運用や航空機搭載の大型ロケット弾、のちにはミサイルに対応するために装甲化されているがこちらは戦艦ほどではない
それは後述の理由による

機関は艦本式ロ号缶の最新型を10基搭載しているが、これは先に設計が進んでいた「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級用缶のさらに改良型で、定格出力が1基あたり3%ほど程度大きいが、逆に過負荷全力出力については前者の方が大きく、高出力の安定的発揮による高速巡航とその際の燃費の向上を図っているからである
これが水上戦闘艦である前者と、本級の機関面での最大の違いであるともいえよう
機関配置自体は戦艦である「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級のそれを踏襲していることからのちの大改装時にやや手間がかかる結果とはなったが、これは核魚雷に対する防御力を重視するという当時の方針からくるもので防御力の面では吉と出ている
スクリュー形状も「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級用に開発されていた新型大口径スクリューを用いているが、操舵に関しては同級のような複雑かつ被害上等なものとは異なり、予備を1系統用意したほかは引き込み式予備舵が1組用意されているのみである

本級は、直接防御力に重点を置いた前級の「ボストーク」級に対して、徹底して間接防御力に拘っている点が特徴的である
というのも、密閉型格納庫を採用し、後付けで舷側エレベーターを設けた「ボストーク」級に対して本級はあえて重心を下部に置くことで飛行甲板を装甲化し、船体装甲はやや加減する一方で、ロケット弾程度は受け止められる直接防御力と誘導弾の命中時にはあえて受け流す対処をとることで船体規模の際限ない増大を阻止したのである
このため、積極的な装甲シャッターつき舷側エレベーター採用と「翔鶴」型の反省をいかして爆圧をあえて受け流せる脆弱点をあえて設けることで格納庫内の爆発や火災を外へ受け流すという基本構造をもって設計されている
舷側エレベーターを採用したのも、こうしたダメージコントロール時に危険物の塊と化した誘導弾や機体を迅速に海上に投棄するための「ゴミ捨て口」という意味が強い
(重心面やエレベーターの許容出力、さらに運用面からいえば艦の中心軸線上に設置した方が本来はよい)

605:ひゅうが:2025/03/29(土) 03:54:31 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp
結果、舷側から突入した誘導弾は通常クラスでははじき返され、超音速で飛来する超大型誘導弾は逆に「突き抜ける」
命中前に急上昇し甲板を狙った誘導弾はトップヘビー化を免れつつ重装甲化された甲板に阻まれる
運悪く格納庫内で炸裂した場合は、爆圧を限定して艦外に逃がしつつ誘爆しそうな機体や兵器群を迅速に投棄するというのが本級のコンセプトである
ただし、このコンセプトの結果核兵器の至近距離での炸裂時における艦内の陽圧化防御といったことは難しく、これについては防護服などの多数配備と海水ポンプによる迅速な洗浄で対処することとなっていた
このため、格納庫よりも船体バルジに装着された液層防御や装甲の方がやや重防御で、魚雷攻撃に対しては「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級同様の三重底構造や水密構造、さらには機関配置をなるべく艦の重心にもってくることを踏襲することで積極的に対処していた

外見上の大きな特徴としては、「艦橋が2つある」という登場当時特異にみられた構造が挙げられる
これは、艦を操るにはなるべく艦橋が前にある方がいいのに対して、特に航空機の着艦時には後ろに管制室があるといいという理由から実際に分割がなされた最初の例である
この当時のアメリカ海軍の空母乗りたちにいったら集団で殴り掛かられるような贅沢な設計であるが、このために発着艦能力は格段の向上を見せた
誘導装置や誘導灯は日本海軍が使用していた方式が21世紀現在も標準のものとなっていることから速度対応域を拡大するだけで済んでおり、電波誘導系や赤外線誘導系を強化するだけで済んでいる(逆に艦から直接指示する方式だった米軍はこのあと年間数百機単位で事故を発生させたことから日本式に誘導灯を改めていた)

対空火器については、艦対空誘導弾を装備しても数的優位な米海軍相手に用いるにはまだ小型化が足りないと判断されたことから艦対空誘導弾の搭載場所をあらかじめ設置しつつその部分に「ヴェーチェ・ノヴゴロド」級同様の対空火器を搭載している
ただしトップヘビーを避けるためにその数は船体の規模にたいしてやや少なめであり、護衛艦艇と一緒に行動することが前提と割り切られていた
だが近接防御火器に加えて超長砲身57ミリ機関砲の威力は対空・対水上用として好評で、最後まで強化されつつ装備が続けられていた

搭載機については、当初はターボプロップとジェット機の混載であったが、雄大な船体が幸いしてカタパルトやアレスティングワイヤー換装以外はさしたる支障もなくSu-27のような大型機やさらに巨大な早期警戒機を運用できており、冷戦終結前に予備役入りするまでの約半世紀の間現役を続けることができている
この点は、機関出力において無理をした「チャールズ・リンドバーグ」級がそのGE製機関の故障頻発に苦労して1995年頃までに実質的に退役していたのと対照的である
ただしいいことずくめではなく、艦載機の大型化が予想を上回る規模であったことや特に対地攻撃という陸上部隊援護のために洋上に長期間とどまる場合には長大な航続距離と引き換えに導入当初は十分以上と考えられた弾薬庫が手狭となったことで弾薬不足に陥ることが運用後期には増えていた
このためにソ連海軍はこれも日本が先鞭をつけていた艦隊随伴型の高速統合補給艦を増勢して対処することとなったのだが、これがのちの艦隊の海外展開能力の向上に寄与したのだからけだし塞翁が馬であろう

本級の出来に満足したソ連海軍は1965年までに4隻を発注した後、満を持して熟成を重ねていた原子力動力への移行を決意することになる

606:ひゅうが:2025/03/29(土) 03:57:31 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp
以上になります
前々から予告していた「オリョール」級、ついに投入です
コンセプトとしては、ミッドウェー級のちょっと後の頃にキティホーク級を作ったら?
なので核兵器に対する完全防御力を与えるよりはダメコン能力に重点を置いています
ただし限定戦争における直接火力の「持続性」については戦艦に軍配が上がったことからソ連海軍も原子力動力採用による弾薬庫拡張を目指すことになります
楽しんでいただければ幸いです

607:ひゅうが:2025/03/29(土) 03:59:03 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp
おそらく、2010年代までには全艦が予備役入りしており、このあとを原子力空母が継いでいる、という感じですね

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最終更新:2025年06月12日 22:09