861:陣龍:2024/11/11(月) 18:21:17 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『日蘭世界に別世界から【客人艦隊】が来訪しました。これより、情報提供を開始します』
海鳥が鳴き始め、暁色に染まりつつある港湾の一角。その堤防に座って海を眺めている男の下へ、一人の少女が歩み寄っていた。
「……朝っぱらから黄昏れるのなら、せめて書置き位は残して置いても良いんじゃない?」
「……霞か」
「隣座るわよ」
返事も聞かずに「よっこいしょ」等と少々年寄り染みた言葉と共に座る、銀色の髪をサイドテールに結わえた少女は、
ほぼ間を置かずに無防備な欠伸と背伸びをした。
「……交渉は、こっちの申し出をほぼ丸呑みされたし、コッチの世界の天皇や各国の政府による妥結宣言と署名もされているわ。
【私達の世界】じゃ欠片も意味が無かったけど、こっちなら幾らかは信用しても良いんじゃない?」
「そうだと願っているけどね……ただ、幾ら何でも衝撃受けたとは言え、雪より真っ白な顔色になって交渉の席で倒れるとかまで起きたら、
色々思う所は有ると言うか」
「アレねぇ……【コッチの世界】の朝潮姉さん曰く、倒れた首相は相当海軍と言うか軍艦好きな性分だったらしいわ。
加えて、天皇への忠誠心や愛国心も厚い、と」
「それが、【別世界の自分の同位体】は丸ごと正反対で、その所業全てが心構え無しに見せ付けられた。尊厳破壊と言うには少し……エグイな」
「でもフランス人の人達よりかはマシだったわね」
「夜戦禁止令三ヶ月後の川内以上だったな……」
先の【交渉会議】の場に置いて巻き起こった『大騒動』を思い返し、何とも言えない表情になる二人。何でも元陸軍の将軍だったと言うフランス人女性の政府首班が
てんかん発作の如き痙攣を発症した事例を筆頭に嗚咽や卒倒者が相次ぐ有様に、何とも【外交交渉】とはもう少し丁々発止と言葉尻を浚いとる戦いでは無いのかと、
政治もマトモに知らないド素人ながらに思う。
「心配しなくても大丈夫よ、司令官。私達が居るから」
「……霞」
「アンタが、ずっと……私達の為に戦ってくれたのは知っている。【軍人でも何でもない、行き成り連れて来られて押し付けられた一般人】なのに」
そう言い終わると共に、【司令官】の肩へ頭を預ける霞。
「……今度は、私が守るわ」
視角上、男性からは霞の表情こそ窺い知れぬ者の、とても良い雰囲気に包まれている、暁に染まる防波堤。
862:陣龍:2024/11/11(月) 18:23:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……で、リエラ。何のぞき見してるのよ」
「……分かっててやってたのか」
「何よ、文句ある?」
頭を預けたままながら、少しばかりムスッとした事は窺い知れる霞の言葉と共に、
防波堤の目の前の海面から多数の気泡と共に浮かび上がる人影。
「デバガメも許さんのかよ、霞よー」
「……羨ましいのならリエラも司令官の所に来たら?」
「ん、そうする」
類別区分【レ級】と称され、白色の肌と銀髪、そしておどろおどろしい獣の如き尻尾を持つリエラと呼ばれた少女。
そんな彼女も、犬の様な身震いで海水を弾いてからは霞の言葉に乗って、霞とは反対に座って『司令官』の肩へと頭を預けていた。
「……」
その気になれば、人一人軽くくず肉に変えられる少女に挟まれつつも、当の『司令官』は自然体であった。
まるで何も考えていないように……まるで、何も感じていないように。
大日本帝国 帝都【東京】 某会議室
「……パラレルワールドからの来訪。確かに、転生と言う不可思議現象が有るならば、そんな事も起こりうると言えばそれまでですが」
「よりによって、考えうる最悪を遥かに超えたルートを突き進んだ、私達の前世の並行世界線に置ける【現実化艦これ世界】とは、ね……」
「首相は今日一日休養を取られるとの事です。明日には必ず復帰すると」
「御労しや首相上……あの人軍艦大スキー勢筆頭格だもんな……」
唐突に出現し、世界に爆弾情報をMIRVの如く無差別に意図せず撃ち込んだ『令一島』にて、そんな『てぇてぇ』青春な出来事が起きている事等知らぬ
日本の大人共は、改めて情報整理と対応策協議等に努めていた。
「……やはり一番の難点は、彼の勢力に国際政治・大概外交の素養や能力が極めて未知数で有る事と、【前世界】の経験で国際条約や協定の効力や確実性、
継続性等が皆無と思い込まれている点でしょう」
「二つも有るのに一番の難点とはこれ如何に…何て、ふざけた事は言えないな」
「同情するしかない経歴と経緯ですからね……寧ろ、警告なしに攻撃されなかっただけ幸運だったと思うべきな程に」
「何度見ても頭割れそうな位に頭痛がする情勢であるからな」
二週間前、文字通り前触れ無く突如、関東沖合に巨大な島が出現し、日本のみならず世界も騒然とするか驚かれている中で、
調査に向かった海軍が『アイオワ』を名乗る、記念艦化されている松島とは似ても似つかぬ様相と装備をした戦艦から【日本国海上警護団】なる
まるで意味の分からない所属を主張され、相互の会話が全くかみ合わない中で、同じく【海上警護団】を名乗る駆逐艦秋月と重巡洋艦鈴谷が直接海軍と接触し
情報交換を行った事で、この(日蘭)世界に取って余りにも驚天動地にして狂気と言うには余りある別世界の事が知られた。
曰く、我々は軍人でも軍艦でも無く、政府直属の外郭団体である事。
曰く、我々は日本が大陸では無い弧状列島世界の存在である事。
曰く、我々の『司令官・提督』は、政府命令により強引に据えられたオリエンテーション一時間履修のみの一般人である事。
曰く、我々の日本国政府は、東京空襲で壊滅した与党議員に成り代わり革新派議員が政権宣言し、『特例・臨時』
『超法規的措置』『緊急事態』の連呼にて日本国を【統治】している事。
曰く、メディアは完全に革新派議員政権の【犬】として【餌付け】され、歓喜と賛美の政府提灯記事と情報操作に反自衛隊、
反艦娘報道を狂喜の連呼を続けている事。
曰く、我々は深海棲艦との戦争を終結させるも、直後天皇陛下へ終戦のご報告をしていた自分達の『司令官』が内乱罪適用を一方的宣言され、
処刑寸前だった所を襲撃し脱出している事。
曰く、島…『令一島』へ脱出後、日本国内で暴動寸前の大規模抗議が行われている中、日本政府が正式に【日本国海上警護団】を
反乱軍と指名宣告宣言して来た事。
曰く、日本政府の宣言を大義名分に、通商警護や資源輸送関係で友好的だった筈の中国政府の意向を無視したと思われる中国軍原潜の核攻撃を
一方的に複数受けた事。
曰く、曰く、曰く、曰く――――
溢れ出て来る情報の飽和に、この時立ち会った海軍軍人は揃って卒倒できればどれ程良かったかと述懐した位の有様な中、
『令一島』の近隣海域の調査や警護に出撃した艦艇に、その特徴性から子供でも分かる戦艦リシュリューが居た事や、
またビスマルク、グラーフ・ツェッペリン、ガングート等と呼称する日本国外の艦艇が多数存在していた事からも、
事は日本が気付いた時には収拾が付けようのない状況へ拡大していた。後に色々な意味で死んだり死に掛けるフランスの某人が、
恐ろしいまでのフットワークの軽さで極東へ飛んで来た位に。結果はお察しの通りである。
863:陣龍:2024/11/11(月) 18:25:19 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「正直、個人的にあの島の名前で気になる事が有る」
「藪からスティックになんだよ」
「『令一島』…向こうから聞いた所によると【年号・和令】になって一番目に領有したから令一島となったそうだが」
「ああ」
「…本当は『霊地島』なんじゃ?敵地に孤立した地域に活躍している『司令官』やその配下の艦娘等を押し込むには丁度良いとか、
この世界の革新派議員とか考えてそうだが」
「おい……じゃあ、なにか。こんなデカい【霊地】が消えた向こうの世界って……」
「……考えるの、やめるか」
「そうだな、そうしよう」
恐ろしい考えに辿り着いた日本が某人の会が、その考えをなかった事にする事に決めた同時刻。
「Jean Bart!」
「駄目よ、姉さん……痙攣している」
「(一心不乱に人工呼吸と心臓マッサージ中Gloire)」
「大丈夫です…Commandant Testeは、此処に居ますよ」
「どうしてこうなったのかしら……」
改めてフランス政府の要人たちが宿泊する某所へ表敬訪問したフランス艦娘達は、別世界の自分達が彼女達へ余りにも無体で口汚い罵倒と共に
泥と石と火焔瓶を投げ付ける事を嬉々として正義と掲げていた有様を各種資料映像の直視によって、地獄の尊厳破壊による精神的打撃を立て直す前に、
その別世界の自分の同位体が無体を働いていた当人らが来訪して来た事で二度目の精神均衡が吹き飛び大惨事()と化した要人らの介抱をしていた。
何時彼女らが正気に戻るのかは不明である。
「……その……元気、出して?」
「……Thanks」
また同じ頃、『世界の覇権大国』になった事は兎も角、その後の【ポリティカルコレクトネス】なる政治思想を大義名分とした破壊主義者が
大手を振って北アメリカ大陸を跋扈し、そして深海棲艦との全面戦争と言う国難に有りながらそのポリコレ主義者は【分断と断絶】を叫び続けて変わらず、
挙句は理解不可能は【差別撤廃】等を叫んでコンスティテューションを焼き払った動画と各種資料を見せられて諸々が死んだ
某北アメリカ大陸人が確認されたと言う。因みにその後、その世界のアメリカ唯一の巨大工廠が艦砲射撃で建物の基礎レベルから破壊されたそうな。
「(死人の表情で思考停止)」
「(泡を吹きながら仰向けに)」
「(どうしようかしら、と言うBismarckの視線)」
「(どうしようもないわ、と肩をすくめるWarspite)」
そして同じ頃。自ら招き入れた多数の移民と難民の巨大な圧力に晒され、そして深海棲艦との世界的全面戦争と言う異常事態による
物流や資源・物資輸出入崩壊の結果、欧州の国が複数内紛や実質的内戦、治安崩壊の拡大による統治機構の崩壊を引き起こし、
その中に最早軍事強国の面影等皆無なドイツも存在した上、ドーバー海峡トンネルで難民が更に殺到したイギリスは
過激なイスラム系の主導で不満の八つ当たりとしてイギリス王室を強硬に殺気立った圧力でイスラム教へと改宗させるべく、
深海棲艦との戦争そっちのけで既存政権と争い続ける中で元から絶滅危惧種だったイギリス海軍がヒッソリ殲滅されたと言う
あんまりにも惨たらしい末路の異世界欧州事情を伝えた欧州戦艦娘達は、無言の阿鼻叫喚を見せる彼らの慰めの言葉は思い付かずにいた。
864:陣龍:2024/11/11(月) 18:30:48 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上、ある意味『名誉』が極めて重んじられている日蘭世界に真逆の敗者と等価の勝者達が紛れ込んだような雰囲気になり申した()
|д゚) 一応、この素人司令官以外にも世界各地、何なら日本にも多数艦娘の指揮官が居たりしましたけども、その尽くが国内争乱の影響であったり
ポリコレ()とかその派生な思想主義の政治家や政権の無茶振りでマトモに戦争出来ずに追い込まれたり壊滅したりしてた模様
|д゚) まぁ唯一マトモに深海棲艦との戦争してた様な日本も『自衛隊に艦娘を与えればクーデターが発生する』と本気で信じている革新派議員の命で
艦娘の指揮官は一般市民から無警告で承諾無しに捩じ込んで稼働させてる訳なんですが。脱走阻止の督戦隊付き且つ外部連絡全遮断で
最終更新:2025年06月13日 21:11