471:ひゅうが:2025/04/08(火) 17:58:57 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp
―――RD-1A液体燃料ロケットエンジン(初期型)
全長:4015 mm
直径:3565 mm(ノズル1基あたり1500mm)
乾燥重量:10.30トン
推力:921トン(海面高度)
880トン(真空中)
燃焼室圧力:24.5メガパスカル
燃焼室数:4
ターボポンプ数:1
燃焼方式:酸素リッチ二段燃焼サイクル方式
燃料:ケロシン
酸化剤:液体酸素
運用開始:1958年
【概略】―――ソ連のヴァレンティン・グルシュコが開発した大型ロケット用液体燃料ロケットエンジン
燃料にいわゆる灯油の一種であるケロシンを、酸化剤には液体酸素を用いており主としてロケットの第1段エンジンに使用されている
この時期のソ連のロケットエンジンの特徴として、燃料を送り出すターボポンプを4つの別々の燃焼室やノズルで共有する形状がとられている
これは巨大な燃焼室やノズルを開発するよりもこれら1基あたりへの圧力や負荷を軽減する効果があり、かつ大型のものより燃焼の安定性を高められるために採用されていた
(ただしその分重量は増大する)
本エンジンはエンジンの冷却を兼ねて燃料をノズル外側の配管に這わせて気化させた上で一次燃焼室に送り込み、ここに液体酸素を吹き込み一次点火、さらにそのガスを主燃焼室に送り込み二次点火を行う二段燃焼サイクル方式をとっている
このとき一次燃焼室で発生したエネルギーをタービンで受け止め燃料・酸化剤ポンプを駆動させる方式である
特徴的であるのがこの一次燃焼室で発生した高温ガスは酸素を多く含む酸素リッチ燃焼方式であることにある
これは逆の場合に比べて非常に高い出力を得ることができるが、高温酸素による金属の酸化という問題を解決しなければ実現不可能であった
このためこの燃焼方式をとっているのはソ連およびその技術供与を受けた日本系ロケットエンジンでしか存在していない
むしろグルシュコは開発の困難さを嫌ってわざわざこのノズル4分割方式を採用したともいえる
開発は困難であったものの、日本メーカーの全面協力により計算能力が格段に向上していた点と共に新造されたエンジン試験施設において繰り返された50回以上のテストもあり比較的順調に進捗した
しかし統括マネージャーのセルゲイ・コロリョフが目指していた液体水素燃料方式の実現は計画よりも遅れる見込みとなったことから、燃料の取扱いが比較的容易なケロシン燃料方式のブースター用エンジンが当初は使われることとなった
このため、番号順では「RD-1A」であるが、真空中での性能および技術的難易度は先に設計開始されていた「RD-1」の方が上である
液体水素を燃料とできなかったために本エンジンを搭載した「N-1L エネルギア・ルナ」の高度200キロの低軌道打ち上げ能力は予定されていた100トンから88トンに減少したものの、こちらは打ち上げ回数を増加させて推進用モジュールを別に打ち上げたことから当初計画より月軌道投入量は増大した
1969年時点で後継の「RD-1」および後継の「RD-1B」液体水素エンジンは実用段階に達していたものの、アポロ8号宇宙船遭難事故に伴い実績のあった本エンジンが初の月軌道投入には使用された
その後は改良型の「G-1e エネルギア・ルナⅡ」ロケット側面のブースター用およびそれを転用した「ゼニット」打ち上げロケット用に長く使用されているが、超大型固体ブースターの登場などで大型ロケット用としての使用の機会は減っていった
しかし「ゼニット」系列および小型有人宇宙船用のベースエンジンとして製造は継続されており、前述の「RD-1B」およびその後継、本エンジンを三液推進化した「RD-190」エンジンとともに2025年現在も現役である
総生産台数は比較的少ないものの2500基を超えている
472:ひゅうが:2025/04/08(火) 17:59:29 HOST:flh2-133-204-83-129.osk.mesh.ad.jp
以上になります。短いですが楽しんでいただけたら幸いです
最終更新:2025年06月13日 21:57