98:ライスイン:2025/04/03(木) 23:14:09 HOST:g220-215-87-72.scn-net.ne.jp
西暦2021年10月31日の衆議院議員選挙は異例尽くしであった。
2015年頃に結成された新興政党の夢幻党、彼らは現状に不満を持つ各党の若手や改革派を取り込みながら地方を中心に勢力を拡大。重工業業界再編で誕生した倉崎重工などの支援を受けつつ2019年の第25回参議院選挙では改選議席124議席の内、70議席を獲得し国政への影響力を獲得。その後も勢力拡大は続き、遂に2021年の第49回衆議院議員選挙では驚異の465議席中335議席という圧倒的多数の議席を獲得。そして同日に首班指名選挙を得て総理に就任したのは2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件において迅速に対応し船長を起訴に至る道筋を作り、そのお陰で中国政府の圧力を受けた当時の民主党政権によって退職に追い込まれた後に政治家に転身していた元第十一管区海上保安本部長の神崎博之であった。
「漸く世間を獲得出来ましたね嶋田・・・神崎さん。」
「そうだな辻、だが急がなければ。」
首相官邸での閣議の席で神崎総理は財務大臣に就任した腐れ縁の辻との会話で焦りを露わにしていた。
「来年の4月にロシアはウクライナに侵攻する予定でしたが、どうやら目標を我が国に変更した様です。陸上兵力だけでなく揚陸艦や輸送機も相当数が配備されつつあります。」
内閣情報調査室長の田中が苦々しい表情で報告する。それによるとロシアは来年にウクライナ侵攻を計画していた。しかし主要な外貨獲得手段である石油や天然ガス価格やフランスから購入予定のミストラル級の追加購入(※1)への影響など様々な事案を考慮し日本への侵攻に変更したそうだ。
99:ライスイン:2025/04/03(木) 23:14:42 HOST:g220-215-87-72.scn-net.ne.jp
「ウラジオストクとセヴァストポリの2隻はキーロフ級1隻や空母アドミラル・クズネツォフと艦隊を組んで訓練航海と称してウラジオストクに向かっています。」
「金に目がくらんだカエル喰い共め。」
金目当てにクリミア問題での世界の対ロシア批判を無視して揚陸艦を売却し、さらに追加で契約を受注したフランスを罵る神崎内閣一同。
「だがこうなると
アメリカも頼りに出来ませんね、米露の軍事外交関係者が盛んに接触している様ですし。安保を発動せずに調停にのみか、最悪安保を破棄して在日米軍撤退とかもありえますね。」
「F-35も真面に運用できるか不明ですね、戦争拡大を防ぐ名目でキルスイッチ(※2)を起動とかバイデン政権ならやらかす可能性が高いな。」
外務大臣の吉田と防衛大臣の伏見宮が米国への不信を露わにする。
また現在配備が進んでいるF-35もこのままだと使用できなくなる可能性があり、何か対策を行う必要も出て来た。
「安心してくれ、心神の改良型に偽装してテストを繰り返していた烈風(X-02A/S ※3)が完成した。現時点では増加試作機を含めて12機が出来上がった。間も無く飛行教導群で訓練が開始されるだろう。それと島嶼防衛用高速滑空弾のブロック1(射程500Km)の出荷が開始し、ブロック2A(射程2500Km)の試作も完了したぞ。」
自信満々に語る倉崎重工社長の倉崎重蔵によって安心材料が提供された。
「ですが弾薬に関しては如何します?」
「12月に計画している北海道での大規模演習に向けて官房機密費などを用いて予定よりも“大幅に多く”調達します。各種物資も同様に。」
神崎の懸念に辻が答える。
「対中警戒も必要だがとりあえずはロシアだ。侵攻が起こる前提で行動を開始しよう。」
「あとアメリカが日和る可能性を考慮してアトム計画(※4)も開始しませんと。」
総務大臣の近衛の言葉と辻の不穏な言葉を受けて行動の指針が決定した。
そして12月6日・・・
「此処に2021年度冬季演習、“決1号演習”の開始を宣言する。」
名寄駐屯地での神崎総理の宣言により決1号演習が始まった。
北海道各地の演習場だけでなく立ち入り禁止にした海岸をも使い、仮想敵に扮した水陸機動団や富士教導団の強襲上陸を迎え撃つ内容で海自や空自も参加した自衛隊単独かつ最大規模の演習だった。
またこの演習にて正式に21式戦闘攻撃機「烈風」がお披露目された。
「日本はいつの間にこんな高性能な機体を開発したんだっ!!」
「ステルス性能はF-22より劣る様だが速度や機動力は上回っている。
商売敵になる前に対策を打たなければ。」
演習に招待された米軍関係者は烈風の高性能ぶりに驚愕し、今後の自国製戦闘機の販売に影響が出ないか懸念する。一方で
「ヤポンスキーは我が国の計画に気が付いているのか。急いで本国に報告しなければ。」
同じく招待された駐日ロシア武官は日本が自国の対日侵攻計画に気が付いている可能性がありと本国に報告した。
だがプーチン大統領を始めとしたロシア政府首脳は新型戦闘機は張子の虎であり、演習も政権浮揚を目的としたイベントだと判断。侵攻計画を変更することは無かった。
100:ライスイン:2025/04/03(木) 23:15:13 HOST:g220-215-87-72.scn-net.ne.jp
そして時が経ち2022年2月24日・・・
「極東ロシアの各空軍基地から空挺部隊を乗せたと思われる輸送機及び爆撃機が飛び立ちました。」
「北海道各地でロシアの潜入工作部隊を発見、警戒中の陸自が交戦を開始しています。」
「ウラジオストクよりロシア艦隊が出向、空母及び揚陸艦を含みます。」
「津軽海峡でロシア潜水艦を撃沈しました。」
首相官邸にロシア軍の侵攻および自衛隊の応戦の報が次々と舞い込んだ。
「只今をもって防衛出動を発令します、アメリカにも連絡して安保発動を要請して下さい。また予備自衛官を招集します。それと臨時国会の開催準備も。」
矢継ぎ早に必要な指示を出す神崎総理。更にJアラートを通じてロシアにより侵攻を国民に伝え警戒と落ち着いた行動を呼びかける。また
「本日未明より北海道各地にロシア軍による攻撃が始まり、自衛隊が応戦しております。宣戦布告も無く暴挙に及んだロシアに対話の意思なしと判断し総理大臣として国民の生命と財産を守るべく防衛出動を命じました。」
緊急で行われた記者会見で神崎総理が映像付きで防衛出動に至る状況を説明する。いつもは政権批判をする左翼マスゴミも宣戦布告なしで攻撃され犠牲が出ている事実に沈黙する。
「昨年12月の演習がロシアを刺激したのではないか。」
「犠牲が出る位なら降伏すべきだ。」
と夢の世界に居る記者が許可も得ずに発言するも即座に摘み出される一幕もあった。
この日以降も戦闘は止まる事無く、一部の空挺や工作部隊を除いて北海道への上陸は阻止していた。同時に海上自衛隊は濃密な対潜網を作り順調にロシア潜水艦を撃沈していく。
しかし・・・突如として悲報が舞い込んだ。
「アメリカが安保発動を拒否、バイデン大統領が日露双方に対話による解決を呼びかける談話を発表しました。」
「空自より緊急連絡、F-35が起動せず、三菱の技術者も原因が分からず。キルスイッチが起動した可能性あり。」
と予想されていた、しかし起きて欲しくなかった事案が報告される。
「直ぐにアメリカに連絡して事実確認と調査依頼、それと安保を発動する様に伝えて下さい。」
伏見宮防衛相と吉田外相にアメリカ政府と接触する様に伝える神崎総理。
しかし翌日、極めつけの凶報が舞い込んだ。
「ハバロフスク沖のロシア原潜が複数のSLBM発射しました。目標は北海道北部と思われます。」
とロシア原潜によるSLBM発射が報告された。神崎総理は即座に迎撃を命令。北海道地域に展開していたイージス艦やPAC-3が迎撃を開始。
SLBMは順調に迎撃され安堵の空気が舞い込む中、R-30から分離したたった一発のMIRV弾頭が迎撃をすり抜けて知床半島の無人地帯に着弾。
150ktの出力を解放し、雄大な大自然が多くの動植物と共に消滅したのだった。
101:ライスイン:2025/04/03(木) 23:16:29 HOST:g220-215-87-72.scn-net.ne.jp
※1:ミストラル級の使い勝手の良さに歓喜したロシアが追加で2隻を発注。フランス側も利益になる事やロシア産の石油や天然ガスの購入に影響が出る事を気にして批判無視で受注を決定していた。
※2:現実で噂されていますが本作ではあるという設定で展開します。
※3:「21式戦闘攻撃機 烈風」
倉崎重工が空自と協力し、心神の発展型に偽装して極秘裏に開発していた機体で中身はエースコンバットのX-02。
試作型の烈風A型(X-02A)と正式型(戦闘攻撃機型)の烈風C型(X-02S)があり、北海道演習でお披露目された際には招待された米軍関係者を高性能ぶりで驚愕させた。
空自では本機をF-15の後継機と位置付けている。兵装も射程200Km越えの長距離AAM「闇炎改」や超音速ASM「星光」などを搭載。また密かに本機専用の展開式電磁投射砲「雷切」が開発中。
※4:いわゆる核関連計画。国産核兵器の開発及び、極東ロシアの核保管庫を襲撃して核弾頭を強奪する2つからなる。
設定1:神崎内閣(一部)
内閣総理大臣:神崎博之(嶋田) 財務大臣:辻正信
総務大臣:近衛文麿 外務大臣:吉田茂
防衛大臣:伏見宮博恭 法務大臣:堀貞吉
文部科学大臣:東条英機 農林水産大臣:北一輝
内閣情報調査室長:田中隆吉 国家公安委員長:阿部信行
統幕議長:閑院宮載仁 陸上幕僚長:杉山元
海上幕僚長:山本五十六 航空幕僚長:福留繁
陸自北部方面隊司令:トミー
設定2:倉崎重工
2000年頃より将来の防衛産業衰退やそれに伴う中小零細企業の倒産による技術の喪失などを懸念した防衛産業企業が集まって設立された新興企業。
当初は下請けに専念したがAH-X計画において三菱と共にAH-1Zのライセンス生産を受注したことが切欠で躍進。更にT-6練習機/軽攻撃機の開発と受注でジェット機にも参入。高い技術力と信頼性が評価され夢幻党や各転生者の力添えもあり空自と共に烈風の開発企業に選ばれた。
設定3:T-6練習機/軽攻撃機
倉崎重工が開発した軽攻撃機を兼ねる練習機。
T-4の発展型の様な機体で最大の特徴は補助ロケットを使用するがASMを2発搭載可能な点。但しレーダーの性能がF-2程ではないので長射程を活かしきれない。なお自民党政権下で輸出も進められ、フィリピンとポーランドへFA-50を破って輸出契約が成立し、お隣さんをブチ切れさせている。
全島:13.5m 全高:4.2m 翼幅:9.2m 空虚重量:3.5t
動力:F3-IHI-30S ターボファンエンジン×2(18KN×2)
最大速度:M0.9 巡航速度:M0.7 航続距離:1300Km
固定武装:M197 20mm機関砲×1
搭載武装:最大3t
爆弾・各種誘導弾他
(ASM-2など大型ASMはRATOを使用した場合、最大2発)
=あとがき=
鉄槌の会話が闇堕ちしそうになったので、趣向を変えて夢幻会政権下の現代日本がロシアの侵攻に立ち向かう内容です。
本作ではいくつかのバフとデバフを付加しており
バフ:
〇倉崎重工などによるある程度の技術チート
(烈風、島嶼防衛用高速滑空弾、練習/軽攻撃機など)
〇攻撃ヘリが早期にAH-1Zに決定した為、機数が充足。
デバフ:
〇フランスがロシアにミストラル級2隻を売却、そして極東配備。
〇アメリカが日和ってF-35のキルスイッチオン&安保発動せず。
〇ロシアが序盤で核兵器使用。
〇FA-50の顧客を奪われたお隣さんブチ切れ。
などです。数話で終わらす予定でエタらない様に頑張ります。
掲載お願いします。
最終更新:2025年06月14日 21:26