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日本大陸連合 Salty Style

2009年1月1日、俗に列島日本などと言われている人口1億人強の島国に、突如として異変が降り掛かった。

それは、此処とは異なる世界へと繋がる空間異常…………いわゆるゲートの出現だった。
関東近海に出現したゲートによって、関東一円が一時は混乱に包まれるかという処まで来たものの、ゲートの出現以降に何かが現れる等という追加の異変が無かった為、一旦は落ち着いた。
数日後、落ち着いたはいいものの、明らかに不自然かつ異常なゲートを放置しておくこともできない為、日本政府と防衛省が中心となって仕方なく調査を開始した。
そして、各種の事前調査の後に、探査用に仕立て上げられたUAVがゲートへと突入する。

そのゲートの先は………………


…………同じ「日本」だった。


これには数多の“日本国家群”達も大混乱に陥ったものの、列島日本等の一部を除けば早期に事態を把握して冷静さを取り戻し、列島日本の混乱を尻目にお互いに連絡を確保し合い、共同歩調を取ることを確認。
この繋がりが、後の「日本連合」の礎となる。

こうして各日本国家達は、混乱を乗り越えつつも足並みを揃え、協力して次の一手に乗り出せる…………と思いきや、そう簡単にはいかなかった。



なにせ、列島日本である。
説明は不要だろう。



武力をちらつかせても、支援というエサをちらつかせても、全くもって実りある話にならない。
その上、列島日本内の反戦だとか平和だとかうるさい勢力が度々邪魔しようと騒ぐ。
政府は政府で外患誘致紛いの行為を重ねていった。
そして…………一向に進まない交渉に対して、日本連合は列島日本への一切の期待を捨てた。



ゲート開通から数ヶ月後、アメリカおよび中国、そして欧州主要国で、政府や民間の重要人物のスキャンダル等を含む“情報爆弾”が炸裂。
ハッキング等によってこれら情報が収集されたと推測されるが、各国のサイバーセキュリティシステムはこれを一切感知できなかった。
この先、長ければ数年間ほど、各国はスキャンダルへの対応と人事的な混乱によって身動きを封じられることとなる。


その間に、日本に本社を置く新興企業が新たにSNS事業を開始した。
このSNSは瞬く間にシェアを広げ、サービス開始直後のTwitterを圧倒して世界中に拡大。
後に日本では、人口のほとんどがアカウントを持っているとも言われる程の人気を持った。
そして、このSNSの運営のバックに居るのは……日本連合だった。
超アメリカ級(複数)の資金力と、情報工作能力がバックに着いている以上、この成功は当たり前といえる。
金と力さえあれば、魅力的な情報などいくらでも用意できるし、なんならインフルエンサーでさえちょっとした工夫で“作り出せる”。

702:奥羽人:2025/01/16(木) 20:03:45 HOST:sp49-109-101-155.smd02.spmode.ne.jp


…………さらに言えば、SNSの情報拡散傾向を少し操作してしまえば、然り気無い世論操作も、決して不可能ではない。


同じような目的で、別のフロント企業から動画投稿サイトを発表。
こちらも、順調にシェアを伸ばしていたYouTubeを容易く抜き去り、瞬く間にトップへと踊り出ている。



同時期に、日本国内の政治・思想団体では奇妙な事件が連続していた。

組織の自壊である。

ある反戦団体では、とある幹部が「事故死」した直後に現トップのスキャンダルが発覚し失脚。
二番手の有力者がトップを引き継ごうとしたところで、三番手以下の反対者達がそれに反抗。
彼らの間を取り持つ“潤滑油”となるべきだった筈の存在は、先ほど事故死した者だった。
故に、落としどころを失ったその団体では内ゲバが激化。
互いが互いを罵り合う袋小路へと落ち込み、組織としては自然消滅していった。

この反戦団体だけではない。

ありとあらゆる“日本連合に不都合な団体”が、全くの偶発的に起きた「一番起きてほしくないタイミングで起こる一番起きてほしくないこと」によって連鎖的に崩壊していった。

そう……これも、日本連合の工作の結果である。

AIや高性能コンピュータなどを用いた情報戦能力を磨き上げていった結果として、連合を構成するいくつかの日本においては、団体一つの組織力学をまるごとシミュレーションすることに成功していた。
それはつまり、とある団体の「誰を」「いつ」「どのように」すれば何が起こるかを、完全に把握できるという事だ。

勿論、正確なシミュレーションの為には綿密な情報収集が必要であるのだが……
情報的に懐の緩い列島日本人相手の場合、連合にとって必要なものを手に入れる障壁など無に等しい。




そうして日本国内が静かになっていくのと歩調を合わせ、数年かけて大手のマスコミが「自浄」されていった。


元々、日本連合がバックに着くフロント企業が新たに作った新聞社やテレビ局の魅力的な情報に圧されて衰退気味だったオールドメディア勢は、誰に騒がれることもなく静かに、その方針を転換していった。
それは、ゲート開通時に入社した「有望な新人達」によって成し遂げられたものだったが………なんて事はない。
これら有望な新人は、日本連合から送り込まれたスリーパーエージェント(浸透工作員)だったのだから。

連合の工作員は、選び抜かれた者故に優秀であり、連合の資金力と情報力をバックに社内の出世争い、権力闘争に圧勝。
上層部の「都合のいい失脚」にも助けられ、いつの間にかオールドメディア勢力を内部から乗っ取ることに成功。

嘗ての偏向報道は見る影もなくなった。
いや……連合に都合のいい情報を流す点では、未だに偏向メディアと言うべきなのだろうが。

この後、列島日本の世論は静かに、しかし急激に転換していく。

軍事への容認、核武装への理解、愛国心という概念の見直し。
それらの動き全てが、列島日本をゲートの守護者足り得る存在に進化させていく。

結局のところ、一列島日本人の視点からは、ゲートが開いたこと意外、何も重大な事は起こらなかった。
ただ、自分も含めた周りの“考え方”が変わっただけである。


一番好ましい支配とは、被支配者に「自分の意思で選んだ」と思わせることである。

列島日本の平和は、連合の見えない糸によって成し遂げられたのだった。

703:奥羽人:2025/01/16(木) 20:07:35 HOST:sp49-109-101-155.smd02.spmode.ne.jp
以上となります。転載大丈夫です。
ゲートという不安定なものを通して軍事力を派遣するのは不安とは度々聞きますが、では、そもそも侵略に軍事力などいらないのではないだろうか。
という発想から出発した思考実験でした。

そしたら見事な塩対応となりましたので、ソルティスタイルです。

日本政府?身体に金という綿を詰め込まれ、スキャンダルという糸に吊るされて工作員の手さばきで踊ってますよ。

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最終更新:2025年07月13日 21:21