681 名前:陣龍[sage] 投稿日:2025/07/17(木) 18:59:35 ID:softbank060083066015.bbtec.net [32/35]

『 飯崎鈴夏の戦後日本探訪記  ~日本の夏、怪談の夏~ 』


「……想定外の内容だったわね、電」
「なのです……鬼〇郎なのだから、と安易に考えていたのは……早計だったのです」
「間違い無く世紀の名作だけど、でも何度も見る?と聞かれたりしたら『絶対嫌です』の一言よ」
「なんであのDVDが流れ着いたのです……」



 神代列島日本。幾多の世界で多種多様な面倒ごとに巻き込まれたり問題解決の為に介入したりの末、
野放図に日本神話の神が権能を振るい日本列島を巨大化させて別世界より異種族を拉致同然に招聘した世界であったり、
対中露戦争が勃発し内部テロで政府が一時的全滅後幕府化統治状態に陥ったゲート日本列島世界であったりを、
半ば年中無休に近い状態で駆け回っていたこの世界の艦娘と深海棲艦達は、明くる日ようやっと纏まった
長期休養を取得する事が出来ていた。

 使う暇が無く溜まりに溜まった給与を散財するべく友人や姉妹艦らと街や飲み屋等に繰り出す者、
骨身にまで染み付いた疲労を取るべく神崎島内の名湯と最高級羽毛布団の行き来を繰り返す者、
ワーカーホリックの如く常と変わらず訓練や仕事をしようとして近くの誰かに観光地やエステ等へ強制連行された者。
様々な休みを取る艦娘や深海棲艦が各々帰島し始めた頃に、電が未来の期日が記載された日本が誇る妖怪物語のDVDを
食堂大型テレビ下部のラックにて発見。酔っ払い連中や旅行帰り等でハイテンションな面々が勢いよく促す為に
細かく調べる事も無く再生した結果、騒がしかった食堂はお通夜よりマシ程度に鎮まる羽目になっていた。



「年齢制限がナンボのもんじゃいって態度だった天龍さん、龍田さんと一緒になって薙刀振り回して大騒ぎしてたのです」
「こっちのグループだと、ポーラさんや那智さんが沈痛な顔をしてお酒飲まずに返していたりしていたよ」
「まぁ……あんな【人の業】と言うとしても烏滸がましい有様や理由とか、酒の肴に出来る訳が無いのです」



 大して中身を確認もせず再生を煽ったのは同輩や巡洋艦勢以上の面々で有り電に責任は無いとは言え、
上映会終了後に久方ぶりの長期休養でリフレッシュし意気軒昂な艦娘と深海棲艦達が酷くローテンションに
なっているのを見てしまうと、少なからず思う事は有った。



「……あの世界、と言うより、あの村のあの娘達。どうやったら助けられたのかな?」
「作中の状況からすると、多分あの結末以上の最善は不可能だと思うのです。情報を得たタイミングや、戦力不足、
その他多数の難点の解決手段が足りなさ過ぎるのです」
「そうね……そうだ、私達の誰かが介入したとしたら?」
「諸々に対する戦闘力関係は兎も角、あの閉鎖的な村で直ぐに最低限の信用や情報を得る事が出来る程度の交渉術とか自信無いのです」
「……うん、電の言う通り。何にも事前情報が無いとしたら、戦闘力だけで無くて、交渉術等で効率良く情報を集められる人じゃ無いと無理」
「そんな都合良く『丁度良い』人間なんて、早々居ないのです……」


 獣耳と尻尾があれば間違い無く垂れているのが目に見える程にしょぼくれる長女の暁。終わりの無い無限の生き地獄すら
生ぬるい【首魁】や外道極まりない所業に関与していた連中はどうでも良いが、何も知らない純然たる被害者達ですら
『死が救済』と言う末路な事に付いては、思う所が多々あるのが正直な所であった。例え創作物の世界の事であっても。

682 名前:陣龍[sage] 投稿日:2025/07/17(木) 19:00:55 ID:softbank060083066015.bbtec.net [33/35]



――――もし


 この時、この映像作品を見た多数の艦娘そして深海棲艦達は、同床異夢の正反対である異床同夢に、一つの考えを自然と脳裏へと浮かべていた。


――――もし、あの世界に、あの時に、あの村に


 そして例外無く、彼女達は幾度も『神』『神格』による異次元の権能執行を見聞きしていたが故に、ある一つの事を完全に忘れていた。


――――『飯崎鈴夏』が居たら?



 ……艦娘も、深海棲艦も、付喪神の一種に近しい、多くの人気と言う名の信仰を集める歴然とした【神様】でも有ると言う事を。







「電ァァァァーーー!!緊急警報ダァァァーー!!!」
「ぴゅぃあぁあーー!?え!?何?!なに!?」
「……騒がしいのです、エーレルさん。一体何事なので…」
「『飯崎鈴夏』ガ消エタ!状況ト反応カラ見テ、確実ニうま娘ノごーすとト同ジク異世界転移事例ダ!!緊急配備ト探索ダ、急ゲ!!」
「……は?」








「……はい、このマスク使って下さい。煙草の煙も、コレでちょっとは吸わなくて済むでしょうから」
「あ…有難う御座います。ですがお礼の方は…」
「気にしないで下さい、手持ちに有っただけですから」
「……お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。お大事にね」



 遠く別世界の地球にて、事態を把握した電の神崎島全域に轟く絶叫にて鳥たちが全て飛び立ち艦娘と深海棲艦が引っ繰り返り、
続けざまに全ての伝手を用いて各世界の関係機関やティ連に緊急事態要請が大量に乱発されていた頃。
『飯崎鈴夏』は乗客の多くが平然と車両内でタバコを吹かして足下で吸い殻を踏み消している、全てが古臭い車両の中で座席に座りながら揺られていた。



――――浮いている、か。この恰好


 どう考えても『平成レトロ』所で無い、昭和中期以前頃な列車の中。人々の装いも白黒映像で見た事がある様な昭和期の服装で有る中、
唯一『飯崎鈴夏』は現代基準のファッションセンスにて、動き易さ重視且つかなりラフな格好で有り、そしてリュックサックを膝上に抱えていた。
因みに対面で座っているのは昭和前半期標準とも言えるシンプルな服装の母親と日本人形を持ったその娘さんである。
対比的にも目立つ事この上無い。



――――……気付けば何故かこの列車に乗っていて、頭の中も何処か少しばかり靄が掛かっている感覚。一体何が起きている事やら



 寝巻でも室内着でも無く、外で運動する事を前提とした服装であり、以前神代列島日本世界の電からフルパワー魔改造全方面保護機能全盛り
特注PVMCGを身に着けている事は幸いであったが、何故自分が推定数十年前の日本の列車で揺られているのかと言う疑問は何にも解消されていなかった。



「……一体、なんだって言うの」


 『飯崎鈴夏』にインプットされていた情報は唯一つ。


「……その村に、何があるって言うのかしら」




――――【哭倉村に行け】

683 名前:陣龍[sage] 投稿日:2025/07/17(木) 19:03:07 ID:softbank060083066015.bbtec.net [34/35]







……それから数日後。

主さん ^―^)<ただいまー。いやぁ、今回はちょっと疲れた…
電 #´〇ω〇`)<かぁぁぁくぅぅぅほぉぉぉーーーー!!!(銭〇警部並の絶叫)
(#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)(轟く鬨の声と共に突撃する全身ふわふわ装備艦娘&深海棲艦軍団)

主さん ^―^)<……え?え?え?(見る見る内に担ぎ上げられ)
電 #´〇ω〇`)<飯崎さん、今すぐティアマト様とかその他諸々の神格集団の下でお清めとか何かそう言う事全部やって貰うのです
            異論は認めないのです今直ぐ行くのです!(息継ぎ無し)
主さん ^―^)<何だか凄く動揺してるけどちょっと落ち着こう。それにその他諸々って言い方不味くないの?(周囲のカオスに一周回って平静)
電 #´〇ω〇`)<うっさいのです!万が一ヤバくヤバい怪異とかと殴り合ったりしてたら洒落に成らない事をいい加減自覚して欲しいのです!!(ガン切れ)
(#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)(胴上げしながら同意している艦娘と深海棲艦達の図)

主さん ^―^)<いやでも、怪異と殴り合いとかもうやっちゃってるけど五体満足で元気なんだけど
電 ´〇ω〇`)<…………パードゥン???
主さん ^―^)<裏鬼道とか言うのも面倒だったけど、『狂骨』とか言うのが結構手強かったね。鬼蜘蛛討伐の経験が役立つとは思わなかったけど経験はして置くものだよ、
          本当に
( ゚д゚) ゚д゚) ゚д゚) ゚д゚) ゚д゚)(唐突炸裂の爆弾情報に騒めく担ぎ手の艦娘と深海棲艦一同)

電 ´〇ω〇`)<……(思考再起動中)
主さん ^―^)<……あの、電ちゃん。呆けていないで、取り合えず降ろす様に行って欲しいんだけど
電 #´〇ω〇`)<……やっぱり兎に角ティアマト様の所に連行するのですーー!!!
(#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)#・∀・)(電の一声で〇塾の如く神域へ直進行軍して行く艦娘と深海棲艦集団)
主さん ;^―^)<電ちゃん!?怪異って言ったら寧ろこっちの方が怪異だよ!電ちゃーん!?



 『飯崎鈴夏』の周囲認識からすると、『前触れ』も無く唐突に居なくなり、その後異世界戦後日本から愛バと同じく唐突に戻って来た彼女は、
網を張って待ち構えていた神代列島日本世界の電と配下()の艦娘と深海棲艦により即時捕縛され、神域深まるティアマト様神宮等へ強制連行されて行った。
神域フルコースでお清めや除霊その他を神霊や神格直々に一般人(特定一名)相手に行われるこの光景は、割かし久し振りでもあった。
本来何度も有って良い事では無いのだが、最早あらゆる意味に置いて今更である。

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最終更新:2025年07月17日 21:46