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616.
ひゅうが
2011/11/22(火) 19:11:46
ネタSS――英国造船官の憂鬱
――1943年 某日 英国
「なぁ・・・どうする?」
「どうするったって・・・なぁ?」
「空飛ばしましょうよ。戦艦。」
「シュートは黙ってて!!」
男たちは、頭を抱えていた。
彼らが頭を悩ませていたのは、海軍上層部からあるオーダーがあったからだった。
いわく、「新型戦艦の建造について実務作業に入れ」と。
現在彼らの祖国は、北米大陸に進駐しつつあり、それにドイツを巻き込めたこともあってドーバー海峡の緊張状態は幾分和らいでいた。
が、それを揺るがす動きが地中海とカエル食いどもの国で起こりつつあったのだ。
ヴィシー・フランスとイタリアが新型戦艦の建造を発表したのである。
太平洋での戦闘で空母機動部隊の威力が証明されたとはいえ、戦艦の整備を怠るわけはいかない。
正規空母を6隻ならべて航空攻撃をやるなんて芸当は欧州の国には無理だし、今の英国でもほとんど不可能に近い。
それに、欧州と大西洋は狭い。
カナリア諸島沖で日本海軍が示したような航空攻撃に対する強靭な防御力と対空戦闘能力をもってすれば、目標地点や泊地に殴り込みをかけることさえできるのだ。
そういったわけで、水上艦艇の整備は第1次大戦以来の旧式艦が多い英国海軍にとり重要なものとなっていた。
この頃の英国海軍の戦術を要約すると以下のようになる。
いわく「空母がそろえられないなら思い切って防空用にして空襲をしのぎ、高速水上艦を突撃させる」。
まさに、金がないからこそできる英国らしい決断だった。
「なら・・・どうする?速力は30ノット以上はいるな。」
「巡洋戦艦だとジェットランドの二の舞になる。ナガト型のような高速戦艦がいいな。」
「防御力も無視できないだろう。バルジを装着して対水雷防御を・・・」
「対空火器も外せないからな・・・主砲は威力で数を補おう。装填を自動化してだな・・・」
「待て待て。6門?せめて9門は搭載してくれ。かわりに副砲を廃止して両用砲にする。」
「ポンポン砲はいろいろアレだからな・・・ボフォースの40ミリを積もう。あとアレがあったろ?ほら、ソ連軍からもらった多連装ロケット。あれを応用して弾幕を補おう。」
「なるべく高速がいいからなぁ。高圧缶が必要だろう。航続距離を稼ぐためにディーゼルも積みたいが、信頼性がなぁ。いっそ日本から輸入するか?」
「欠点の修正はあの38センチの余ったのを積んだKGV級3番艦のを洗い出そう。」
「空軍が試作レーダーをくれるっていってます。」
「ありがたい。そうだな。機関部が大きくなるから後部艦橋も大型化しよう。これで電子機器スペースがとれる。」
「主砲は、やはり46センチか?」
「それしかないだろう。数を作れないんだから・・・」
「集中防御方式を使えば、7万トン級にまで圧縮できる目途がたった。これなら何とか建造できる!」
そうして計画が進みはじめた、その矢先・・・
「ぎゃあああ!なんだあの高性能!?」
「誰だよ日本人が伊吹型で戦艦をあきらめたって言ったの!」
「あの富士型巡洋戦艦だって、うちのKGV級より防御力は上なんだぞ!これ以上どうしろって言うんだ!」
「いっそ51センチ6門にするか?防御力はそのままで。」
――後日、困り果てて日本に図面を見せた英国設計陣に、日本海軍の某高官はこう言ったという。「これなんて史実大和型?」と。
これもまたある種の収斂進化というべきだろうか。
どっとはらい。
617.
ひゅうが
2011/11/22(火) 19:16:08
【あとがき】――憂鬱版小沢機動部隊と大和型に振り回される英国のお話でした。
レーダー提督が幽鬼のようになって「まともな戦艦」を作ろうと総統に詰め寄るかもしれませんw
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大英帝国
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最終更新:2012年01月14日 18:50
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