650 名前:ナイ神父Mk-2[sage] 投稿日:2025/06/03(火) 23:22:37 ID:p758105-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp [144/184]
憂鬱スパロボ 融合惑星ネタ
戦後サブイベント 都市伝説の陰で
融合惑星のとある自治区に存在する香福市では、数か月前に再発した笑み男事件の発生が街に暗い影を
落していた。一度は18年前の被疑者であった男性の死亡が確認され犯人であった事が確定したのであるが、
その後に再度、過去の事件と同じ手口の事件が行われた事で世間では一気に混乱が広がり俄かに警察への
批判が殺到したのである。
当の警察としても、既に容疑者の死亡は司法解剖を含めた各種調査によって証明されており、警察の
不祥事も関わる事案で有る事から早々に片づけて世論を収束させたい事件でもあった。
同時に、被害者に残されていた痕跡は確かに死亡した犯人の痕跡と一致しており、何故それが起きている
のか警察の理解の範疇を超える事態が起こされていたのである。
この事件の捜査に協力していた空木探偵事務所の面々も又、再び始まった連続殺人事件の捜査に協力して
おり事件の調査を進めていた。しかし、犯人にたどり着き実際に命を落とす現場まで見ていた人間がいる
空木探偵事務所でもこれ以上の調査と言うのは困難と言えた。何せ、実際に犯人が死亡した事を知っている
にも関わらず同じ犯人の痕跡が残る事件現場が増え続けて居るのである。奇怪な事件に関わってきた彼等
とは言えコレには流石に頭を抱えざるを得ない事となっていた。
今日もまた、調査を終えた空木探偵事務所の所員の一人である高田直哉も、疲れたような顔で事務所に
戻ってきていた。先に戻ってきていた同じ所員の橘あゆみが迎えた、彼女の顔にもここ数か月の調査で
若干の疲れの色が見えている。所長である空木俊介も電話で話を続けていたが視線で直哉の帰りを確認
しており、電話に再度集中した。
「おかえり、直哉君。鎌田警部からは何か聞けた?」
「相変わらずだよ。警察は模倣犯を疑ってるけど、出てくる痕跡は全部都築の物らしいんだ。」
「そう…けど、死んだ人がそんな…」
「あゆみちゃんの方は?」
「轟モーターズにもお邪魔したけど、あの時の事件以上の情報は無さそう。」
その言葉には直哉も黙らざるを得なかった。実際に笑み男こと都築実の死を事務所で確認したのは彼である
、少なくともその時に見た死に様を思い出すと、とてもでないが生きているとは思えない最後であった。
それなのに彼が犯人としか思えない事件が続いている。普通ではあり得ない事件としか言えない事態で
あった。
「そうですか…鎌田警部の心情、お察しします。」
「先生、電話は鎌田警部からですか?」
「ああ、今後のことにも関わるから、全員が居る今説明しよう。」
香福警察署の鎌田警部は以前の笑み男事件でも依頼して来た警察官であり、今回の事件でも協力を続けて
居たが、空木の電話で話して居た時の表情をみると良くない情報が齎された事が見て取れた。
「鎌田警部からの情報では、警察は捜査を模倣犯が行って居る方向で行う事を決定したらしい。それに
よって、都築関連の捜査は完全にやめるようだね。」
「でも、都築の痕跡は確かに残されているんですよね?」
「その通りだ。けど、死人に犯行は不可能、しかも、都築が犯人であった事は世間には公表されて
いない。」
「…」
651 名前:ナイ神父Mk-2[sage] 投稿日:2025/06/03(火) 23:23:22 ID:p758105-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp [145/184]
それはある意味当然と言えた、死人に事件は起こせない以上、都築が犯人と言う事はあり得ない。警察が
そう結論付けるのも当然であった。そして、それに続けるように空木は衝撃的な言葉を事務所のメンバーへ
と向けて発した。
「俺達は黄泉学園からの依頼で笑み男の調査を行っている。香福市に同じ事件を調査している探偵が居ると聞いて訪れたんだ。」
「そうだったんですか…」
「ああ、笑み男の事件に関しては生徒達も恐怖している。安心させるためにも事件の概要の共有を頼み
たいん「それに、鎌田警部も確信は持てていないが、どうにも警察上層部はこの件を迷宮入りとして処理する
気の様だとも話していたよ。」
「そんな…」
「此処まで広がった混乱を収束させるためだろうとも話していたけど…どうにも余所からの介入に対して
上層部が警戒を始めているとも…」
「介入?」
「地球連合政府からの圧が掛かったらしい。」
「なんで地球連合が?」
現在香福市を含む自治区の設置と自分たちを、此処に避難させたのは連合である。しかし、だからと言って
一地方の怪事件に首を突っ込んでくるのは場違いとも言える。
「理由は解らないが、連合政府は外交筋から度々こうした不可解な事件へと、干渉を試みる事があるらしい。」
「その通りだ。」
事務所の面々の声に混じって突然、何者かが口を挟んできた。玄関を見ると見た事のない二人の男が
立っている。片方は顔色が悪い以外は何処にでもいる様な特徴の薄い悪く言えば冴えない中年、声を発した
と思われる方は鋭い目つきをしたただ物では無いように見える男であった。
「貴方達は?」
「話にあった連合の人間、と言えばわかるか?」
「!」
男の言葉に対して俄かに緊張が走る。何せ、空木の言葉通りであれば彼等は大国の政府に連なる者と言う
ことになる。事件に介入してくるような力を持った相手が居るともなれば、自然と緊張が走るがその緊張を
解いたのはもう一人の冴えない中年からの声であった。
「真下余り相手を脅すな。確かに連合出身だが、お互い組織に属してる訳じゃないだろ?」
「えっ?」
「ちっ、そう思って貰った方がスムーズに行くものを…」
中年のその言葉と共に鋭い目つきの方の男の方の威圧感も一気に薄らいだ。とは言え、元々の目つきの
悪さは変わっていないが、雰囲気と言うのは変わる物である。俄かにほぐれた緊張の中、中年男の方が
話を始めた。
652 名前:ナイ神父Mk-2[sage] 投稿日:2025/06/03(火) 23:25:15 ID:p758105-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp [146/184]
「俺は連合から、この自治区にある黄泉学園に赴任した八敷一男と言う者だ、こっちは私立探偵の真下。」
「…真下悟だ。」
中年…八敷からの紹介によって、渋々と言う形で自己紹介を行う。黄泉学園は直哉でも聞いた事のある
高校である。同じ自治区でも有数の大規模な高校で有り、その為生徒数も目を見張るものがあり昨今の
笑み男事件の連日の報道でも生徒が不安を露にするインタビューをよく見る。
「俺達は学園からの依頼で、独自に笑み男に関する調査を行っている。その過程で、この探偵事務所が
笑み男の事件を調査しているという事を知って来たんだ。」
「そうだったんですか…」
「…」
「突然の訪問で驚かせてしまったが、生徒達の不安を早く解消してやりたいというのが学園からの依頼だ。
できれば、あなた達の調査した情報の共有を行いたいんだ。勿論、此方の調査情報も開示するし謝礼も
出す予定だ。」
八敷の言葉を聞いていた直哉は所長である空木に目を向けると彼も頷いたことを確認し、今まで空木探偵
事務所で集めた資料を八敷へと提供している。資料を受け取った八敷は安堵した様に一息付くと、改めて
事務所の面々へと顔を向ける。
「ありがとう。コレで此方の調査も進める事が出来る。」
「余計な時間を食ったな…行くぞ。」
「行き成りの訪問失礼した。貰った情報の報酬は後日払わせてもらう。」
その言葉と共に二人の男たちは事務所のあるビルの階段を下りて雑踏へと消えて行った。暫くその様子を
眺めていた、空木探偵事務所の面々であったがその沈黙を破る様に空木が手元にあった携帯を取ると、
玄関へと向けて歩き出した。
「先生、出掛けるんですか?」
「少し気になることがあってね…」
それだけ言うと空木も又、ビルの階段を下りて出かけて行った。残された二人の所員も八敷から
受け取った資料を含めて改めて事件の資料を整理する為に、再度書類へと目を落とし始めた事で
事務所は再び平穏な空気へと包まれている。一方、空木探偵事務所から資料を受け取った、
八敷は雑踏の中で引き続き真下と話を続けていた。
「言わなくて良かったのか?」
「…何をだ?」
「事件で死んでいる都築は既に怪異、笑み男に成り果てている事を…」
後ろを歩く真下の言葉に対して、八敷は振り返るが、その顔には若干の怒りが含まれていた。
「軽々しく、怪異に触れさせるのは危険だ。連合からもあくまで内密な調査とされている以上、
明かさないに越したことは無い。」
「そうか…、しかし、奴らは相当に怪異の生前に近い。ともすればシビトの時の様に…」
「その為にも直接接触したんだ。少なくとも彼等に怪異に接触された兆候はない。とは言え、急がないとな…」
八敷の言葉を聞きながら真下はちらりを後ろを振り返る。先ほど事務所を出てから付いてきている気配の
主が動揺する事を感じながらも接触してくるようなことは無い為、相手の動きにも警戒しながらも、
そのまま気配は付かず離れず一行が黄泉学園へと戻るまで付いてきており八敷達の素性を確認後に
引き上げている。
この数日後を境に笑み男事件の被害者は急に報告されなく成り、最終的にこの事件は犯人死亡後に模倣犯に
寄って起こされた事件による未解決事件として幕引きを図られる事になり。空木探偵事務所としても無念の
まま調査は打ち切る事になっている。この陰に人の法では裁く事を出来ない人知を超えた事象が関与
している事を知っているのは極わずかな人間のみとなっている。
653 名前:ナイ神父Mk-2[sage] 投稿日:2025/06/03(火) 23:26:09 ID:p758105-ipxg03001akita.akita.ocn.ne.jp [147/184]
以上です。WIKIへの転載は自由です。途中の中断失礼しました。
やはり、怪奇物と探偵は中々動かすのが難しく成りますわ…
最終更新:2025年09月08日 21:36