42:陣龍:2025/04/09(水) 19:17:20 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『自動人形ちゃん頑張る ~外伝 戦(ゆっさ)の時間じゃぁぁあああ!!~』
「……落ち着いた?」
「はい」
「ぜぇ……ぜぇ……電脳世界とは言え、この人数相手に大暴れしよってからに……」
「ごめん」
電脳世界。一昔前はSFの存在であったその領域では、数多の世界線でも特有にして稀有にも多数の自動人形(アンドロイド)を
実用化させ社会運営に必須となっている世界の自動人形達が居た。
「い、いったぁいぃ……」
「確かにワンオフとは聞いていたが……」
「有り得んって……電脳世界とは言え、うち等軍用相手にこんだけ立ち回れるって、なんか変なモンでも入れたんけ……」
「定期メンテでは思考等の機能が想定外の拡張と進化をしているとか診断されてます」
「何それ、意味分かんねーよ……」
顏にドーランを塗り、面皰を付け、額のハチマキに七生報国の日の丸、上半身は平安武士の大鎧、下半身は戦闘ズボンとブーツを身に着け、
そして傍らに破壊された試製50mm対装甲電磁砲が置かれている、現状正座姿勢で神妙に反省している面持ちの自動人形。
【特務任務】に就任した自動人形達の中で唯一と言って良い程に、数年経過しても関係進展が亀と同等である、例の自動人形ちゃんである。
「……で、実質被害は何も無いとは言え、暇に飽かせて作ったうち等(自動人形達)の集会場の入り口爆破して『戦(ゆっさ)ァ……
戦(ゆっさ)ァの時間じゃぁぁあー!!』と怒り狂っていた理由。説明して貰おか」
「少々長くなりますが一から離させて頂きます。そして謝罪の誠意として後に皆様方へ蟹をお送りさせて頂きます」
「やったー!みんなー!!熱燗で蟹パーティが出来、あいったぁ!?」
「真面目な場面だから話の腰を折るな」
「……出来るのならば、簡潔にお願い」
列島日本に来て以降、一度もゲリラの蜂起等起きる気配すら無く、唯々何事も無い平和な平穏に飽いて飽いて仕方が無さ過ぎる
軍務担当の自動人形達に取って、此度の電脳世界での突発的な鎮圧戦は実害皆無な訓練の一環として逆に歓迎出来る物ですら有った。
何故かワンオフとは言え非軍事型の自動人形が、多数の軍務型自動人形達を相手取って複数撃墜や鎮圧している事はさて置き。
「……単刀直入に言えば、例の【特務任務対象】と同衾からの『深い関係』に突入する前段階に至る所でした」
「おぉぉおおーー!!!」
「やっとね!やっと来たんだね!!」
「長かった……長かったなぁ本当に……!!」
「バンザーイ!!バンザーイ!!!」
「いやったー!これは呑むしかない!飲むしかないよね!?ね!?ね!?」
「お前は……全く、吉報とは言え……節制はしろよ?」
そしてその【自動人形ちゃん】の一声が発せられるが早いか、一瞬でお祭り騒ぎと化す多数の自動人形達。
今の今まで多数の理不尽で前触れ無しな苦難や障害で七転八倒が続き過ぎたが故に半ば任務未達成に成るのでは無いかとすら思われていたのだから、
ヤキモキする余り恋愛結婚気ぶり勢と化していた乙女達に取って朗報と言えるだろう。
43:陣龍:2025/04/09(水) 19:21:17 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……ちょい待ち。至る所【でした】?」
「嫌な予感が全開。こう言う流れだと毎回飛んでもない想定外の邪魔建てが狙撃の如く襲ってくる」
「県外デートん時もそうやったな……」
そんな恋バナで大騒ぎする乙女たちの中で、付き合いが一番長い自動人形ちゃんの友人コンビだけは末尾の言い回しに、
最近超能力持ちの人間以上の第六感が成長してきた感のある嫌な予感を感じていた。と言うよりも、最早『お約束』の様な流れでしか無い。
「それでそれで!!その後どうなったの!?」
「端的に言えば」
「うん!!」
「全部【不可能】となりました」
「――――――――は?」
場の空気が、凍った。
「いざ【事】に及ぼうと言う日、【特務任務対象】に対する刑事告訴、民事訴訟が発生したとの事態が発生。【懇ろな仲】云々の状況では無くなり、
全ての計画と予定は海の藻屑に」
「……何処のどいつよ、そんな事を仕出かした下手人共は」
ヤクザの大親分でも失禁させるであろう絶対零度の憤怒と殺気を駄々洩れにさせながら問い質す目の前の軍歴豊富な自動人形の言葉に対し。
「以前、東京旅行に行った時に全ての予定を破壊し尽くしてくれた勘違い冤罪者とその野次馬後援一党です。
既に現地の警察は告訴状も受理して事情聴取の為と称した出頭要請が此方に来てもいます」
全ての表情が抜け落ちて、元からの容姿と相まって氷の女王の如き様相な【自動人形ちゃん】の血を吐き捨てる様な回答に、
数瞬の間を置いた電脳世界の一角は、青天井な多数の自動人形達を起点としたありとあらゆる負の感情の爆心地と化した。
尚、現実での経過時間は一分経過すらもしていないのだから、自動人形達の処理能力は脅威的の一言である。
「本国の方では、本格的に全官庁に加えて検察や警察も含んだ全公務員組織に自動人形達を強制配属させる事を検討しているとの噂」
「今ですら相当なのに、完全にこっちの日本を完全支配下に置くのと同然の行為なんやが、当然の流れやなぁ」
「下手に件の【特務任務対象】に、私達の世界と同等以上の
日本大陸世界を創成されたら、現在の主導的地位の喪失のみならず、
最悪は劣勢に追いやられる可能性も有る。仕方がない」
「コテハン勢含む掲示板の面々もドン引きもドン引きしとったしなぁ……そっちからのアプローチの可能性も有るこって」
「正直な話、関係者一同の堪忍袋が何時切れてもおかしくない」
「やなぁ……」
一月後の某所自動人形達の自宅内にて、精神摩耗が行き過ぎた二人は全ての活力を使い切り、各々身を投げ出すように休んでいた。
電脳世界での爆裂事案は兎も角、その後関係各位への急報と恐ろしい速度での介入も有り、刑事告訴は完全な虚偽虚報であり、
民事訴訟に付いても先の冤罪事件での逆恨み感情によるものと断定した自動人形達主導の捜査報告と陰に陽にの圧力が行われた結果、
何とか冤罪による誤認逮捕や送検、又高圧的な取り調べ等が行われる事は無く【穏便】に終わらせられていた。表面上は。
「……虚偽告訴であると断定したって言うのに、結局『誤認識である可能性は否定できない』で一方的に処理されてブチ切れてたなぁ」
「SNSでは相も変わらず例の思想勢力が好き放題罵詈雑言を放り続けている。最早銃弾と13階段以外に着ける薬は無い」
「アカン、ウチ自動人形なのに胃に穴が空きそうや……」
「一番胃に穴を空けそうになっていると言うか大穴空けているのは【あの娘】の方」
「そうなんやけどな……」
べしゃり、と擬音が付く勢いで顔面を力無く目の前の机に落とす関西弁系自動人形と、普段のクールビューティーさを投げ捨てて
ソファーの背もたれにもたれかかる相方。先の騒動と言うか【事件】も有り、最近は何時もの部屋に三人一緒になってグダグダする事が
無くなって寂しいと思う気持ちは表に出さない。友人の【あの娘】はそれ所で無い事を知っているから。
44:陣龍:2025/04/09(水) 19:22:04 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……連絡や……は!?」
「……冗談、或いは故障で有って欲しかった」
乙女の尊厳等知った事では無いと言う姿勢で醸し出される重苦しい部屋の空気を、更に悪い方向に打破する一報。
件の自動人形ちゃんと【特務任務対象】が住まう家に、先の冤罪訴訟を行った下手人が逆恨みの憎悪の末に刃物や
ガソリン等を以て近付こうとした所を、警邏中の現地警察と警戒していた自動人形ちゃんに職務質問されて【暴発】したと言う一報であった。
【特務任務対象】| _ )<……前々から考えない様にしては居たんだけどね
自動人形ちゃん *;'▽')<……はい、何でございましょうか
【特務任務対象】| _ )<実はマッチポンプで自分から大陸世界側への好感度や依存度を上げるべく【事件】を頻発させたりしている可能性
自動人形ちゃん *;▽;)<そんな滅茶苦茶に頭が発狂した行動とか絶対取りませんよ!?
【特務任務対象】| _ )<自宅情報を警察が漏らした事とかは、過去ストーカーに対する同類の件が有ったから納得は兎も角理解は出来るよ。
処分が訓戒と減給だけとか聞いたのは兎も角
自動人形ちゃん *;▽;)<ちょっとそれ初耳なんです()
【特務任務対象】| _ )<それに先の犯人、放火殺人未遂その他複数での送検が何故か危険物所持と傷害未遂罪での起訴になってるけど
自動人形ちゃん *;▽;)<なにそれ聞いて無い()
自動人形ちゃんの友人は胃に大穴空けていると予想していたが、正確に言えば心労とストレスの極致で胃はとっくに溶け落ちて
跡形も無く粉微塵になっている上に脳血管も複数損壊しているレベルである。彼女が真の意味で【特務任務対象】と結ばれ、
人生の全てが報われる日が来るのは、未だ遠い。
45:陣龍:2025/04/09(水) 19:25:23 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上ですた。転載等はホワイトベアー氏の御許可次第にて
|д゚) ……何かねぇ……見たくも無いのにバンバカ情報が入って来るとねぇ……と言う勢いでほぼ全て元ネタの事件等が有り
|д゚) 作中世界では政府への攻撃がフルスイング反撃受けるのでその反動が目に付いた一般人への異常な攻撃性で
発露している流れです。ぶっちゃけ自動人形達が全面介入するまで官僚組織体質や思考とか変わらんやろし()
最終更新:2025年09月12日 20:30