727:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:30:07 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp


  鉄槌世界戦後史ネタSS――――「咲き誇れ、金木犀(アポロ8号遭難事故 1965年)」


1.事故とアメリカ側の事情


――西暦1965年4月13日(アメリカ東部時間)、それは起こった
アメリカ大陸東岸フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地から打ち上げられた月宇宙船アポロ8号において重大な爆発事故が生じたのである
といっても、打ち上げ後に大気圏内で爆散するというのちにアメリカが味わう苦痛に満ちたものではない
第1段の非対称ジメチル・ヒドラジン推進系は開発当時制御を危ぶまれていた「8基の」メインエンジンを完璧に動作させていたし、第2段の「同エンジン4基」もまた動作は完璧だった
大気圏から離脱するための第1段に続き、地球軌道に乗せるための第2段もまた堅実な設計が幸いして動作を完全にこなしている
続いて、月周回軌道に有人宇宙船を乗せるための第3段の噴射がはじまった
こちらは、宇宙空間での推進効率がいい液体水素・液体酸素(LH-LOx)系エンジンである
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、このエンジンの大出力化に大きな困難を抱えていたことから、まだ安全に取り扱える第3段としてこのエンジンを採用していた
ケロシン(灯油系)・液体酸素系?
論外である
腹の立つことに、対立国たるソヴィエト連邦やあの憎たらしい敗戦国の日本国(連中はソ連の庇護下に入るとともに国号を変更していた)ですら実用化したこのエンジンは、大推力化に大きな難があり、数十回もの試験場での大爆発を起こして実用化工程が頓挫していたからだ
解決に時間をとられた結果、第2段用に開発されていたLH-LOx推進系エンジンはこれまた大爆発を繰り返しながらまだ試験段階のままであった
大気圏内で必須の大型の固体ロケットブースター(要するに巨大な打ち上げ花火そのもの。火薬から燃料自体は進化しているが)に至っては、試験機が吹き飛んで多くの(軍用)エンジン技術者を道連れにしてから図面の段階を越えてすらいない
これでは、地球低軌道に着々と地歩を築きつつあるソ連に先んじて月へ到達するという目標が果たせない

そういったわけで、NASAは無難な方針をとることにした
大陸間弾道ミサイル用に開発して実績を作っている常温保存が可能な燃料と酸化剤である非対称ジメチル・ヒドラジンと四酸化二窒素を使った大出力エンジンを、それも8基という同時運転のギリギリ近い数採用することで第1段を構成したのである
当初の予定通り、6基の液体水素エンジンと加速用の直径360インチ(9.14メートル)の補助ブースター4発を同時制御するよりはマシという判断だった
これであっても、予定されていた月面着陸は1基のロケットでの打ち上げて余分な部分を切り離し続けて帰ってくる「直接着陸方式」は諦められている

しかしNASAとて、必要な技術開発と実証は諦めず、宇宙船を月軌道に乗せる噴射を行う第3段と、月軌道において即席の宇宙ステーションとなる司令船には液体水素系エンジンを採用している
実際、効率がよい水素系燃料の第3段は力を入れられただけの能力を発揮できていた
だがそれが後から考えれば間違いの元だったのかもしれない
この時代のアメリカ合衆国は、東側諸国(の中でも日本国が筆頭)の高度な半導体製造技術に大幅に後れを取っていた
ソ連の大規模な流通管理用のコンピュータ・ネットワークシステム「OGAS(全国家経済自動化システム)」において大々的な採用が公表された大規模集積回路(LSI)はもとより、ソ連版月面着陸計画用に製造された大型太陽電池パネル、さらには宇宙用LSIに至っては実験室段階の技術である
(真っ先にこれを実用化した日本はこれを人工サファイア基盤と複数基盤よる多数決によって回避していたがその存在自体を秘密特許に指定しており公開されるのは80年代に入ってからであった。なお同時期に実用化された光ファイバーケーブルに至っては90年代にようやく機密指定が解除された)
つまるところ、必要な電力量が大きく不足していたのだった

このためにNASAは努力し、ある技術を実用化する
燃料電池技術。液体水素と液体酸素を用いた高出力の発電システムである
サイズが制限される司令船内に原子炉を積むという最終手段よりはマシな選択である
宇宙空間は真空であるから熱を生じるよりも排熱こそが問題であるからだ
なお我が世の春を謳歌するアメリカ空軍自体は有人軌道実験室において普通に宇宙で使っていることを付記する

728:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:30:56 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp

これにて問題解決――というあたりで油断した。それこそが今回の事故の原因であった
燃料電池は、液体水素と液体酸素という宇宙船の燃料を電力に変換して水を生み出せるという一石二鳥のシステムだったが、そのためには燃料タンクからの配管系統が2重になるというある種の無理がかかるのだ
零下200度以下という超低温であることは宇宙空間自体が超低温であることからむしろ利点と考えられており、断熱材の容量削減に一役買っている
だが、ここで生じたのが「燃料電池での使用温度の制限」だった
この時代の技術では、液体酸素と液体水素をそのまま燃料電池内部にブチ込むのではなく固体高分子を使用する形式であるため超低温では作動できない
このため燃料を気化させる必要があったのである

だが、これには別の補助充電池システムから供給される電気を用いた発熱ヒーターが必須となる
このヒーター自体も異なる出力で駆動させる必要がある
液体水素も液体酸素も、融点と沸点の温度が異なるからである
これで電気系統も二重となった
そして、このシステムこそが、月宇宙船アポロ8号に生じた爆発事故の元凶であった
発生プロセスは以下の通りとなる

燃料電池駆動のために液体水素と液体酸素を加熱するヒーターの電源を入れたとたんに、電源系統の調整システムの接合ミスから打ち上げ時の振動により生じた亀裂(長いな)から火花のスパークが生じた
さらに、これが同様に生じた燃料配管からのごくごく薄い燃料漏れ(実際、超低温の液体水素も液体酸素も少しずつ気化するし、燃料タンクからわずかずつ漏れる。こればかりは原子レベルの問題なので変えようがない)に着火
極小の爆発が発生する
これが燃料電池向けの配管を分断し、今度は大量の燃料漏れを発生させる
運が悪いことにさらにこの段階においても電源系統は火花を散らせていた
2度目の爆発は、大爆発となった

「ヴァンデンバーグ(飛行管制センター。空軍と共用)。問題が発生した」

それがフランク・ボーマン船長からの第一声だった
この時点で燃料の4分の1と共に、司令船の下部のエンジンのある機械船部分側面の3分の1近くの外壁を宇宙の彼方へと吹き飛ばしていた
燃料電池系に至っては全損である
確認手段がないためにこの時点で把握されてはいないことだったが、エンジンや燃料タンクへの配管系統にも大小の損傷が発生しているのは明らかだった


ここでアポロ8号の任務を説明しよう
月面への着陸ではない
月軌道を周回して地球へ帰還することである
ソ連および日本国(ならびに後から参加した東側諸国および国際連合)が展開するルナ計画が月面着陸の前段階となる特殊軌道への月軌道ゲートウェイと称される宇宙ステーションの建造を完了しようとしている段階にあって、ソ連に先んじての月面着陸の実行は不可能と判断されたのだ
しかしアメリカ国民向けの公約である「有人での月への到達」を果たすためには「史上初の月軌道を周回して『着陸ではないけれども月に到達した』」という実績を作る必要がある
アポロ8号はこの目的のために突貫作業で建造され(これも事故原因である)3日をかけた月面への投入を予定されていた
その初日において事故が発生したのであった
なお、NASA側としては、政府の公約を果たすために行われたこの「愚挙」に反対していた
実証されきっていない技術の塊であるこのロケットで生還する可能性は半分程度だと公言する者もいるくらいに無茶苦茶なスケジュールであるのだから当然だろう

しかし、当時の国防長官および国務長官と副大統領はリチャード・ニクソン大統領を説得
無茶を強行した
それがこの始末であったのだ
もちろんニクソン大統領は激怒した
そして、後年の判断力の低下した彼とは思えないほどの英断を下す
現状、宇宙空間に単独で人間を送り出している国は2か国のみ
アメリカ合衆国およびソヴィエト社会主義連邦(フルシチョフ憲法の施行に伴いやや国号が変更されている)のみである

――アメリカ合衆国大統領として、ソヴィエト連邦に対し1960年に成立したばかりの国連宇宙条約に基づく救助の実行を要請したのである

729:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:31:48 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp


2.ソ連および日本側(あと国連)の事情


ここで目を東側諸国、中でもソヴィエト連邦(以下ソ連)に転じよう
ソ連は宇宙計画を基本的には東側諸国および国際連合との共同事業と定義し直していた
国威の発揚という目的はもちろんあったが、国内世論に押されて有人宇宙計画を単独で強行する羽目になっていた日本国が人類史上初の打ち上げ失敗による墜落事故を起こしたのをみれば「責任の分散」こそが巨大事業においては必要であるというフルシチョフの意見は一面の真理をついていたからだった
日本側がごく短い期間で国内の開発体制を立て直して有人宇宙計画に関しては技術提供を含む合流を提案してきたことも彼らを満足させていた
特に海軍分野や電子技術分野において東側どころか世界最先端を独走している日本国から技術を得られる機会
実のところこの理由が(特に閣僚会議やソ連海空両軍にとって)最後の決め手であるがそれはひとまず置いておこう

日本委任統治領であるトラック環礁への宇宙基地建造がすんなりソ連側に承認されたのはこうした理由だった
これまで打ち上げを実施していたカザフスタンのチュラタム発射場(のちのバイコヌール宇宙基地)よりも、北緯9度という低緯度にあるトラック環礁で打ち上げを行う方が経済性が良いことはいうまでもない

こうして進行したソ連の有人宇宙計画は、順調な進捗をみせた
計算能力において当時の世界の8割以上を独占していた日本国を味方につけたこともあり、技術開発の大幅なショートカットが可能となったからだ
日本側がCADと名付けた、電子的な設計支援システムと、空間を電子再現した電子風洞の導入がその解答だった
日本側から特別に機械本体をそのままセットで輸入する
これ自体はスターリン政権時代の第2次5か年計画においてソ連国内に重化学工業を導入するときにやった焼き直しである
だがそれを今期の5か年計画の目玉となるOGAS(全国家経済自動化システム)と組み合わせたこと自体はフルシチョフ政権における政治的大勝利であった
このシステムは現代におけるインターネットの直接の先祖となっているからである
しかも当初から、「貨幣の電子化」までも考慮したシステム設計を行ったことから、主要部分は現代でも運用されている
まさにオーパーツである
システム設計自体は東京芝浦電気工業と東京電気通信工業(のちのSONY)と東京大学の高橋秀俊研究室(の和田栄一ら)が産学連携で開発したものの焼き直しであったが、このシステムをのちに日本側も採用していることを考えればフルシチョフらソ連指導部が目を付けるのが異様に早かったと言わざるを得ない
ともあれ、こうして計算能力の飛躍的増大を自己に、さらには膨大なソ連国内の電子化需要に目がくらんだ日本側が自己の優位性維持のために強制することで東側陣営の計算能力は飛躍的に増大する
さらに、当時開発されたばかりの光ファイバー通信システムが北海道から南樺太経由でソ連に接続されたことも大きな成果を生み出した
日本本土に建造されていた複数の巨大計算機群、のちにスーパーコンピューターと称されることになるシステム群とソ連技術者陣がネットワークで接続されたのだ

「なにこれすごい。くれ。お代は色をつけるから」

となるのに時間はかからなかった。ついでに評判を聞きつけた日本側技術陣の舶来物信仰を大いに煽り日本国内でもネットワーク化が促進された
当初は穀物資源と石油資源の流通管理で実装されたばかりであったOGASよりもこちらの方がソ連に貢献したとさえいわれている
レーザーおよび、超長尺光ファイバーの製造および通信技術を日本側が独占していたこともあって、電話回線に依存していた西側通信ネットワーク技術よりも可能な通信速度技術が桁違いであったためだ
以上が(長い)導入となる

730:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:32:34 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp

こうして実行に移された東側の有人宇宙計画は、まず強力なコンピューターシミュレーション能力を駆使して最適化した設計能力をもってエンジン開発の試行錯誤をまずショートカットした
さらには機体制御系も小型化。製造と量産工程を徹底して見直すことでのコストダウンを進行させる
そうしてもなお巨額の予算をかけて開発された「エネルギア」と呼ばれるロケットはまぎれもない傑作となった
基本的に大陸間弾道ミサイルの改造で済まされていたアメリカの宇宙計画と異なり、最低数十年間の使用を前提として余裕をもって設計されたロケットはバリエーションに富み、かつ発展性にあふれたものとなっていたのである
開発リーダーがフォン・ブラウン、ロケット設計統括をセルゲイ・コロリョフ、エンジン開発をヴァレンティン・グルシュコ(あとニコライ・クズネツォフ)という黄金コンビにコンピューターシミュレーションとCADを与えたらまぁ、こうなるといういい見本である

このエネルギアロケットを用いてソ連は、後世から見れば月軌道輸送システムというべきものの建造を主体とした有人月面着陸を構想した
計画は主に3段階に分かれる

第一段階、地球の低軌道への安価な打ち上げ手段の確立と宇宙空間での有人長期滞在の実績確立
第二段階、地球近傍を通り、1週間程度で月面に最接近してまた地球近傍に戻る特殊な軌道へ投入する大型宇宙ステーションの建造
第三段階、大型宇宙ステーションを無人のまま長時間の噴射をもって上記軌道に乗せ、月着陸船と有人宇宙船を搭載し、月面着陸を実行に移す。以後はこのルートを使うことで長期探査に移行する

計画完遂の暁には、人類の活動圏は初期は月の安定的な利用に、さらには地球の引力をあまり気にしなくてよくなる月および月軌道上から太陽系の各惑星への有人宇宙船派遣までもが可能となることだろう
計画が立案された1959年という時点で極めて野心的である、といえる
エネルギアロケットの設計グループと日本側技術者たちの間の雑談に始まり、やがて軌道計算で実行可能でわかった数日後には日ソ両国間での予備協議が始まる勢いをもってトントン拍子で事態は進行
その月のうちに東側陣営の公式構想として採用され、やがてスイスの国際連合本部にも話が伝わる
極秘の提案は、ほぼ即決レベルでGOサインが出された
なにしろ彼らからの持ち出しはほぼゼロで、宇宙空間に置いて国際連合の影響力が高められるのだ
なお時の国際連合事務総長は中立国スウェーデン出身のダグ・ハマーショルドであり基本的に親英ではあっても親米ではない
こうして発表された「ルナ計画」
アメリカ合衆国側が宇宙空間での領土主張の凍結と核兵器の常時配備禁止を含む「国連宇宙条約」を提案するくらいに、それは衝撃的であった


こうして始動した「ルナ計画」は西側諸国が唖然とする速度で進行し、1960年には新型宇宙船ソユーズの地球軌道上への打ち上げに成功
既に存在していたサリュート宇宙ステーション(アメリカ空軍が打ち上げた有人軌道実験室への対抗のため同年打ち上げ)による滞在実験と宇宙工学実験が進行
翌1963年には地球の低軌道において月軌道ゲートウェイステーション「ミール」の建造が(主としてドッキング作業メインで)開始され、1965年4月段階ではほぼ完成
あとは月軌道へステーションを遷移させるための大型ロケットブースターの打ち上げとドッキングを5月に行い、8月までには有人月面周回が予定される段階に達していたのであった

ここで重要なのは、「国連宇宙条約」の締結に伴い、米ソ間で宇宙空間での万が一の事故の際の相互援助方針が明文化されていたこと
さらには、この目的のために宇宙船のドッキング装置の規格が相互に共通化されていたことである
将来的な日本などその他の大国からの宇宙船打ち上げを見越した措置として米ソが共に譲歩し規格を統一していたのだ

731:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:33:10 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp

3.救助作戦「桂花(オスマンサス)」


再び視点をアポロ8号に戻そう
アポロ8号は、第3段ロケットと司令船の切り離し後に爆発事故を起こした
これは、MLO、すなわち月軌道投入噴射の後にあたる
つまりは、そのまま司令船を月軌道に投入できる噴射が完了している
しかしながら、司令船には重大な損傷を負っている
ということは、司令船のエンジンの全力噴射を前提とした月軌道から地球軌道への帰還噴射(LEO)が極めて困難となったことを意味している
開発がまだ進行中の月着陸船が存在していたのならばこちらのエンジンを噴射しての軌道変更が可能であったかもしれない
しかし物理的に存在していないのである
ということは、

「アポロ8号は司令船が今度こそ爆発する覚悟でエンジン噴射を実施しなければ、月軌道を半永久的に周回し続けることになる」

のである
なお上記はヴァンデンバーグ空軍基地に併設されたNASA管制センターからの通告の台詞である
この状況を知ったNASAは別の宇宙船での救助を構想する
しかし、NASAは空軍の有人軌道実験室(当時の宇宙ステーションは「ミール」を除いて基本的に1年以内の寿命しか持たない。このためアメリカ空軍は数か月に一度ペースでの打ち上げを実施していた。主任務は東側領内の偵察である)の打ち上げを延期してまでアポロ8号の打ち上げを間に合わせており、数日以内に月に到達できるサターンⅤ型ロケットの在庫は払底していた
さらに小型の有人宇宙船は有人軌道実験室との連絡用の旧式のジェミニ宇宙船であったが、これにしたところで打ち上げ準備に数週間程度はかかる
そして、準備している間にアポロ8号は確実に酸素が尽きて飛行士3名は二酸化炭素濃度の致命的な上昇で窒息死する

この段階に至ったことで、ニクソン政権はこれを「悲劇」として済ませることができるある種の言い訳を兼ねてソ連側へ救助を要請するという挙に出た、といってもいいかもしれない
あるいは、藁をもつかむ思いでソ連側も有人宇宙ミッションのうち極秘の軍用部分での打ち上げロケットが残っていないかという期待も多分に含んでいたのはこの当時のニクソン政権の良心であったともいえよう
一方、ソ連側は救助要請に当惑し、そして頭を抱えた

彼らにはあった。救助手段が
というのも、ほぼ完成している「ミール」月軌道ゲートウェイ宇宙ステーションの完工とともに、月軌道への遷移を可能とする噴射エンジンの設置のための打ち上げ準備が公開情報として進行中であるのは事実であるが、その段階で既に軌道遷移用の噴射に使用する使い捨て燃料タンクの取り付けが可能であったのだ
さらには、トラック環礁宇宙港には、エネルギアロケット3基が組み立て棟内に搬入設置済みである
さらには今後の打ち上げ用に、段の組み立てを完了した機体が複数機連結前である

「と、いうことは、予定を前倒ししてトラック宇宙港の設備損耗を覚悟で連続打ち上げを実施し、さらに『ミール』月軌道ゲートウェイを月軌道へ遷移させてしまえば、酸素が尽きるギリギリでのアポロ8号への接近が可能となる」

のである
ソ連宇宙庁技術陣が取り急ぎ工程表を確認しシミュレーションを行った結果に、ソ連および国連宇宙機関首脳陣は色めき立った

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しかしここで問題がある
エネルギアロケット2基はエンジンおよび燃料タンク設置用の輸送用仕様である
しかし1基は、これら工事を補助しつつ滞在試験用の乗員を輸送するための有人仕様なのである
この強引な計画前倒しがもし可能となっても、当初7人の打ち上げを予定していたソユーズ改、通称クリーベル宇宙船の重量分を取り換えるだけではエネルギアロケットの追加での燃料注入分の重量を打ち上げられないのだ
そして、確実にトラック環礁宇宙港の設備はダメージを受けて数か月からことによると年単位の修復が必須となる
何より、この打ち上げでは計画に当初から参加している「日本初の宇宙空間での長期滞在」を前提とした「日本で2番目の宇宙飛行士の打ち上げ」が予定されていた

順を追って説明しよう
「ミール」月軌道ゲートウェイは今回取り付け予定のエンジンを複数回噴射し数週間以上をかけて徐々に軌道を上昇させ、今度は月の引力を利用して月軌道に接近
今度は逆に月軌道に十分近づいた段階でのエンジン噴射により接近を停止させて運用軌道への投入を完了する予定であった
しかし、今回のごとく数日で月軌道に達するほど燃料を噴射してしまえば、月軌道上での逆噴射が行えなくなり軌道を周回するたびに月面へ接近
最終的に月面に激突することになるのである
しかも、前述の通りに設備損耗を無視しての連続打ち上げで、トラック環礁宇宙港は数か月単位ではあるが打ち上げ不能のダメージを負うことが確実である
ということは、今回の打ち上げで「ミール」が月に激突しない程度の追加燃料ないしは、

「月軌道遷移のための燃料を節約するための『補助ロケット』を取り付ける必要がある」

現実的に考えるならば、宇宙空間でのサイドの燃料補給をテストなしに行うのは愚策であるからこの場合は「補助ロケット」を追加するのが上策といえるだろう
だが、それは

「同盟国である日本が初の『ミール』滞在を諦めた上で仇敵であるところのアメリカ人を救援し、なおかつ乱れた打ち上げスケジュールを回復するまでの間、日本側に打ち上げ枠を譲れといっているに等しい」

のである
普通は交渉だけで数か月を要するだろう
下手をすれば上述のごとくソ連ならびに東側陣営に多大な貢献をしている日本の陣営離脱を招きかねない
フルシチョフをはじめ、ソ連指導部も、公然の情報となっている日米の確執を知る国連宇宙機関も一時ためらった
だが、米国からの救援要請および工程表シミュレーション完了のわずか1時間30分後、日本側からの連絡が入る

「陛下の御意志により、今回の救援作戦に喜んで協力させていただく」

昭和天皇が動いたのだ
軌道シミュレーションを日本側スーパーコンピューターに依頼した時点でトラック環礁宇宙港から日本本土に対して海底ケーブルを介して緊急連絡が入り、これが昭和天皇の耳に入ったことで電光石火で事態が動く
なんとか救援する手段はないのかと問われた日本政府首脳陣は、憲法上の国家元首の問いに内心はどうあれ検討を約束
これを受けて、隷下に位置する国策研究機関、「日本国総合研究機構」通称「総研」に対して諮問を発したのである
そしてその奥座敷には、とある転生者の一団がいることを知っていたのは…

733:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:34:53 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp

ともあれ、「総研」いや「夢幻会」はこれを是として即座に答申を発する
考えてみれば当然であった
あのアメリカが頭を下げ、そして事あるごとに敗戦国、あるいは宇宙開発史上初の飛行士死亡を伴う打ち上げ失敗という不名誉な記録をアメリカに嘲られ続けた日本国である
この不名誉を上書きする絶好の機会が向こうからやってきたのだ
おまけに明らかにソ連側にも恩を売れる
国内世論は今回の「尊い犠牲と臥薪嘗胆」の名誉の方を選ぶだろう。この当時の日本人はアメリカ人が日本同様の失敗をしたと嘲笑するだけよりも、同じく笑いつつ恩義を押し売りする愉悦の方を選ぶだろうからだった
あるいはそれだけの恨みをアメリカは(意識的無意識的を問わず)日本人相手に買っていたともいえるのかもしれない

ことは決まった
あとは計算だけである
日本本土から軍事有人宇宙任務用に製造されつつもお蔵入りになりかけていた有人宇宙カプセルを輸送機により輸送
これをソユーズ改「クリーベル」を取り去り設計上の性能限界ギリギリまで燃料を積み込んだ本来は次々回打ち上げ用に組み立てがようやく完了したばかりの第2段を利用した「仮の第3段ロケット」と連結。「有人宇宙カプセル」ごと「ミール」月軌道ゲートウェイに連結して即席の補助ブースターとして使用するという手段をとる

この日本製有人宇宙カプセルには、ドッキング作業前倒しを有人にて補助する要員が1名乗り込む

「ミール」には緊急脱出用の「クリーベル」宇宙船が連結済みである
これを用いて月と地球軌道の中間付近でこの作業および「ミール」の運用軌道遷移を監督する飛行士は離脱
残りは地球上からの操作により月軌道上での逆噴射を行い、月軌道上のアポロ8号へ接近
可能であればドッキングにて、不可能であるのなら宇宙遊泳(既に米ソは共に行っていた)をもって「ミール」に乗り移る

複雑な手順であるが、これにより既に酸素供給システムや生活システムを有している「ミール」に乗り込みつつ、運用軌道上を1週間以上かけてそのまま地球近傍軌道へ帰還することができる
あとは、米ソいずれかによる救援宇宙船打ち上げで乗組員を収容するか、「アポロ8号」本体のカプセルを用いるかをして帰還すればよい
幸い、「ミール」内は既に1気圧状態が維持されており数か月程度の滞在は無補給で可能な状態が維持されている
「アポロ8号」本体のカプセルが使用不能で、なおかつ1週間程度での救援宇宙船打ち上げができずとも「何週でも運用軌道を経て月と地球を回りつつ打ち上げを待機すればいい」のである

要約すれば

「ミールを救命ボートとして使用するべく前倒しして月軌道へ強引に投入する」

事は即座に動き出した
地球上空250キロを飛行する軌道上の「ミール」は90分で地球を一周するためチャンスは多い
しかしながら、計算上は月軌道上で「アポロ8号」の酸素が尽きるのまでの最大8日以内で可能な救援作業はこれ以外には存在しなかった
なお、「ミール」搭載の脱出船「クリーベル」を月軌道へ投入するという手段や輸送ミッション用のロケットから荷物を取り外し「クリーベル」を連結することも考えられたがシミュレーション段階で計画は放棄された
輸送用ロケットは直径自体が有人輸送用ロケットと大幅に違い、打ち上げには空気の流れを整える整流覆いが必要となる
製造自体が間に合わないのだ
さらに有人輸送用ロケットはその仕様上、「クリーベル」も「日ソ共通規格で輸送用エネルギアにあわせて設計されている日本製有人輸送カプセル」も月軌道と1週間以内に往復できるだけの推力もその期間をもたせられるだけの酸素も食料も搭載できないのである(計算上は1か月あまりがかかるはずであった)

この作業には、熟練の宇宙飛行士でありなおかつ軌道上での作業実績がある者が相応しい
白羽の矢がたったのは、ユーリ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン
人類初の宇宙飛行士であった
ただし、日本側が喜ぶべき提案もあった
シミュレーションによれば、「クリーベル」による帰還地点をやや地球近傍にすれば2名の乗船がギリギリ可能である(そのかわり相対位置関係により軌道遷移の時間が伸びるため乗船時間は1日前後増加する)

734:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:35:31 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
そして、日本製のお蔵入りしていたカプセルは2人乗りで設計されていた
これを聞いたソ連宇宙庁は、ガガーリンの意向を確認した上で「一人で操縦や作業すべてをこなすよりも補助人員が必要」との即答を受けて決断する

「日本人宇宙飛行士を船長として迎える。ついては本作戦の名についても命名権を日本側に移譲する」

後者は国連宇宙機関側の決断だった
双方ともに、即断を下した日本側を高く評価し、訓練が既に完了していた飛行士の技量を信頼していたのだった

作戦名は「桂花(けいか)」すなわち伝説上で月にあるとされる月宮殿の庭に植えられた桂の木に咲く花が由来として選ばれた
月宮殿の別称を「桂花宮」といい、「月天子」が在するとすることや京都の桂離宮から今回の救援への協力を即断した昭和天皇への敬意を込めた命名だった

時に西暦1965年4月14日、前段階としてエネルギアロケット群への緊急整備を開始していたトラック環礁宇宙基地に国連宇宙機関の指令が飛ぶ

「『桂花作戦(オペレーション・オスマンサス)』発動。人類の総力を挙げて『アポロ8号』を救援せよ!」

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4.咲き誇る桂花(金木犀)


それからのことを語ろう
西暦1965年4月15日夜半、トラック環礁宇宙基地にて前代未聞の連続打ち上げ作業が開始された
確認手順を最大限省略するとともに「日本発の有人宇宙船打ち上げ」が開始
アメリカと異なり1気圧の空気を用いているソ連方式打ち上げの本領発揮であり、戦略空軍用の超音速爆撃機を用いたマッハ3巡航でソ連および日本本土から派遣された2人の飛行士はロケットなみの最低限の確認作業の末に3時間程度の休息を経て「かぐや1号」と命名されたエネルギアロケット有人仕様に搭乗する
船長は小林照彦大佐 操縦士はユーリ・ガガーリン中佐である
実際のところは、2段目ロケットを2基連結したものに近く飛行特性が変化したエネルギアロケットの「ミール」への接近にガガーリンの経験が必要だったための建前ではあったが、宇宙では新人である日米戦のエースパイロットの小林をベテランのガガーリンが無邪気にからかう関係がすぐに成立し、彼らは終生よい関係を築くこととなる
打ち上げ後、消火完了後の射点において3時間後、エネルギアロケット輸送型の打ち上げが実施
この段階で打ち上げ設備に大規模損傷が発生するも、工事中であった輸送用ロケットのための第2射点へ打ち上げ点を緊急に変更
5時間後に2機目のエネルギアロケット輸送型が打ち上げられる。ただしウォーターカーテン設備や火道が回復不可能なほどに損傷しており完全復旧まで1年余りを要することとなった
トラック環礁宇宙基地ならびにソ連「星の町」での打ち上げ管制に加え、日本の茨城県筑波市の建設中の管制センターの能力をフルに利用してのタイムスケジュール管理により、まず「かぐや1号」が「ミール」へドッキング
続いて「ミール推進モジュール(エンジンユニット)」および中身がフルに詰められた「ミール推進モジュール(タンクユニット)」が自動ドッキング
最初の打ち上げから10時間後のことである
これだけで本来あるべき3日間を短縮している
休む間もなく、「ミール」本体に向けて推進ユニットが接近
初のランデヴー・ドッキング方式(宇宙ステーション本体に直接接触するのではなく、ステーション近くに静止したところをロボットアームにより宇宙ステーションに連結する。衝撃が少ない)を実施する
このときのためにガガーリンは以前から訓練を積んでおり、それが彼が必要な理由であった
この間、小林は「ミール」本体の機能の緊急確認や英訳説明書の配置、そして食料や水、消耗品の配置などの雑務を「初代ミール船長という名の雑用係として」行っている
そして4月16日午前1時、ドッキングシーケンス完了
2時間あまりの確認作業の末、ガガーリンの操作により「ミール」は姿勢を180度変更
「かぐや1号」に連結されたままの「仮の第3段ロケット」の全力噴射を実施した
このとき、「アポロ8号」の飛行士たちには深刻な問題が発生していた
前日の姿勢制御用エンジンの連続噴射(こちらは燃料タンクも別系統のヒドラジン系エンジンである)による軌道微修正には成功した
だが、飛行時間が伸びたことにより予定よりも酸素消費量が増えることが判明
同時に、搭載していた二酸化炭素吸着用の活性炭ユニットの吸収量を3人の飛行士が吐きだす呼吸気に含まれるそれが上回ることも判明したのである
これでは、どう見積もっても二酸化炭素中毒により「ミール」接近の半日前に飛行士たちは失神すると予想された
そこで彼らは非常手段をとる
万が一のための自決用に致死量分の麻酔薬と注射器が搭載されていると口走ったNASA職員の言葉を問い詰め、乗組員に医師が含まれていることを利用することにしたのだ
まず、宇宙空間に接している冷暖房などの空調系を最大限にまで稼働させられることをマニュアルで確認
これにより「飲料水と冷却水用の水タンク」内に即席のチューブ(宇宙食パックに付属)を通して空気をちょうど熱帯魚水槽のエアのように出すようにしたのである
即席の水上置換法(無重力のため実際は少し違うが)により活性炭だけでなく水中に二酸化炭素を溶かし込むようにしたのである
ただしこれにより飲料水は極端に節約する必要がある
このため、3人は睡眠薬の投与量を調整、極端に代謝を落とすことにした
賭けであった
普通は麻酔薬の投与は慎重に調整される必要があるからである
そして彼らは1日の呼吸量を約30%程度低下させた
一方の「ミール」は、全力噴射後いったん「かぐや1号」のエンジンを停止しつつ地球軌道すれすれを通過する
「重力ターン」と呼称される地球の重力を利用した砲丸投げの要領での速度増加手段である

736:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:38:22 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
完了後に「ミール」は180度姿勢を反転させ、今度は推進モジュールを全力で噴射した
これにより、推進モジュールの燃料19%程度分と推定される燃料節約が完了しつつ地球軌道からの脱出に成功する
同時に、予定されていなかった補助用の電気推進器(ホールスラスター)の全力使用が可能と判明したことからこちらも全力稼働
船内での電源を極限まで落としつつ化学反応ロケットでは不可能な数日単位での加速を実施した
推力が微小であり軌道維持のあくまで補助用とされたものではあったが、構造が単純であり補充が容易なこの推進機の補助により、わずかではあったが到達予定時間も早まる
4月18日、月地球中間点の手前においてガガーリンと小林は「クリーベル」に乗り込み、あとは地上からの操作に「ミール」をゆだねて離脱する
4月20日、月軌道接近に伴い主推進モジュールによる第一次逆噴射が実施
直ちに、月軌道を周回中と思われる「アポロ8号」のレーダーでの位置確定作業が開始される
彼らはついていた
予想距離との誤差はわずか20キロメートル程度
ここで、地球側は新たな手段をとる
予定にはなかったが月軌道での姿勢制御に切り離し廃棄予定だった「かぐや1号」を用いることにしたのだ
わずかとはいえ、「かぐや1号」の下部にある第3段には燃料が残存しておりこれを幾度か噴射することで「アポロ8号」に最大限接近しようとしたのである
姿勢制御用エンジンおよびリアクションホイール(ジャイロ効果を利用した姿勢制御系、要するに3方向に軸をとったコマである)により180度ターンが再び実施
ぶっつけ本番の地上からの制御であったが、彼らはスーパーコンピューター群の支援によりほぼ完ぺきにやり遂げた
「ミール」は運用予定軌道から数キロ程度外れたものの「アポロ8号」を追う軌道に乗った
朦朧とする意識から無理やり叩き起こされたボーマン船長らは、おそるおそる主電源を入れると歓喜した
相対距離および速度はほぼ完璧
宇宙遊泳を長期間行わずとも、距離数十メートルにランデヴーが可能となったのだ
3人は宇宙服を着用し、「軽い宇宙空間での修理を前提とした遊泳実験」という名目で月の裏側で行われるはずだった宇宙遊泳用に装備されていたピストル状の姿勢制御ユニットを取り出す
3基しか生き残っていない姿勢制御用エンジンでは足りない部分を、自ら宇宙空間に宇宙服ごしに身体をさらして彼らの愛すべき宇宙船を姿勢制御するのである
このためには、「アポロ8号」の空気をいったん全て抜く必要がある
このために余分に酸素が積み込まれていたため、宇宙服内部の酸素はフル充填で残存していた
ただし活性炭による二酸化炭素吸着機構は既に船内で使ってしまっているためほぼ一発勝負である
そして、ジム・ラベル飛行士は完璧に宇宙船を操縦してのけた
複数あるドッキングポートのうち下部に位置するドッキングポートへ30分あまりの作業の末にドッキングに成功したのである

「スター・シティ(星の町)、アクエリアス(アポロ8号のコールサイン)はオスマンサス(金木犀)の香りに満ちている」

その声が月軌道から約2秒遅れで地球に届いた数瞬後、全世界の人々の歓声が爆発した

彼らの10日後の地球帰還までは米ソはもとより日本も祝意と温かい感情を隠そうともしなかったし、実際、ダグ・ハマーショルド国連事務総長はこう述べている

「かくも少数の人々たちにより、かくも大きな世界がひとつになった瞬間は、今この時を除いて過去に存在しないだろう」

この時だけは、世界はひとつだった


アメリカ合衆国が旧宗主国およびアメリカ軍事顧問団数個師団と断続的な交戦を続ける仏領および蘭領インドシナ地域への全面軍事介入を開始するのは、この1年後のこととなる

737:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:47:46 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
【あとがき】――大変お待たせしました。予告の通り、「アポロ8号遭難事故」の本編をお届けいたします
知らない人のために説明しますと、本作は橋本純氏の「鉄槌 迎撃1944!本土決戦!!」(のち『日本本土迎撃戦』と改題)の戦後史にいつもの面々をぶち込んだ架空の戦後史を描くものです
この世界では1941年のハル・ノート受諾という大きな歴史変更点とそれ以前の細々した歴史変化により、緒戦で連合艦隊が壊滅した日本が九州を要塞化し本土決戦を実施
なんとか日米停戦に持ち込むも九州の3分の2あまりと奄美諸島をアメリカ占領状態になる結末を迎えた世界です
その後日本はソ連と共同歩調をとることで事実上の東側陣営に入った、のですがこちらにはとある偉人たちがフルシチョフとアンドロポフの中の人に…
最終的に第2次世界大戦はドイツの敗戦により終結するも、様々な理由で海軍力を大幅に制限された上に米ソ冷戦の発生により九州が分断状態になってしまった、という内容となります

そんな世界における冷戦史の一断面は、まとめwikiの専門項目がございますのでそちらからご覧くださいませ
まとめwiki 鉄槌世界
ttps://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/9631.html

きちんと九州も返ってきますし、冷戦中も後もアメリカはひどい目に合いますのでご安心のほどを(苦笑)

738:ひゅうが:2025/09/11(木) 10:51:47 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
727-737
「鉄槌世界戦後史ネタSS―――『咲き誇れ、金木犀!(アポロ8号遭難事故 1965年)』」投下いたしました

1万4600字超えの長編となってしまいましたが、お楽しみいただければ幸いです
wiki掲載は自由です。ただし題には上記のごとく「!」字を追加していただきたく存じます

743:ひゅうが:2025/09/11(木) 13:57:39 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
742
ありがとうございます
ちなみに書いてませんが、この世界のアポロ宇宙船の司令船には普通に太陽電池パネルもあるため燃料電池システムを落としてもギリギリ司令船の予備バッテリーをバイパスしての生命維持系統は動きます
(配置は、史実のスカイラブ宇宙ステーションの側面太陽電池の完全展開状態に近い)
また、生命維持系統の液体酸素タンクは史実同様別個に設置されていることから飛行士全員が即座に窒息死ってのは免れました

これが「おそるおそる主電源を入れると」のバックグラウンドです
月の裏側に入っても司令船の電源系統と燃料電池本体に近く損傷してるかもしれないメインバッテリーは温存して予備バッテリーにその都度切り替えてました
なのでレーダーや測定計器類が一切使用不能でコンピューターも電源落とした状態です

このためミールとの相対距離測定と船体制御のために主電源を入れた、という描写になりますね
それまでは船内の計算尺ほかで手動制御しながら高度を指示された位置に保ってました
なにげにすご技ですが実際のアポロ13号でジム・ラベル船長が地球帰還噴射時にやり切りつつ再突入角度まで誤差2度以内におさえる離れ業を同時にやってます

744:ひゅうが:2025/09/11(木) 13:59:30 HOST:opt-123-254-9-3.client.pikara.ne.jp
743
※ 手動で

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最終更新:2025年09月15日 21:49