353:戦車の人:2025/10/01(水) 00:37:42 HOST:110-130-196-35.rev.home.ne.jp
イージス艦狂想曲 いずも型護衛艦

諸元

船体全幅:21メートル 船体全長175メートル 喫水:6.5メートル 乗員数:320名
基準排水量:8500トン 満載排水量:11000トン
主機:LM2500IECガスタービン4基2軸(COGAG) 主機出力:112000馬力
発電機:ガスタービン式3基 発電量:9000キロワット
最大速度:30ノット 航続距離:20ノットにて6000海里以上
武装:Mk41垂直発射装置64セル(SM-3/SM-2/VLA)
   :90式艦対艦誘導弾4連装2基
   :Mk45mod4 62口径5インチ速射砲1門
   :Mk15mod25 高性能20ミリ機関砲2基
   :3連装短魚雷発射管2基等
C4I:OYQ-51洋上ターミナル1式
  :イージス武器システム1式(ベースライン7+BMD4.0)
  :SQQ-89(v)15J対潜情報処理システム1式
レーダー:SPY-1D(V)多機能型レーダ4基
    :AN/SPQ-9B対水上レーダ1基
    :OPS-20C航海用レーダ1基
ソーナー:AN/SQS-53Cバウソーナー1式
    :AN/SQR-20曳航型ソーナー1式
電子戦:NOLQ-2D電波探知妨害装置1式
同型艦:「いずも」(DDH181)「やくも」(DDH182)「あさま」(DDH183)「ときわ」(DDH184)


16DDHの名前でネームシップが予算化され4隻が建造されたヘリ搭載護衛艦、はるな型及びしらね型の代艦に該当する護衛艦である。
2000年の東京湾ミサイル着弾事件以来、海上自衛隊は急速なイージスBMD拡大強化を民意と政府から求められた。
結果としてあたご型護衛艦建造数を4隻に増大。全てのDDGをイージス艦としBMD能力を付与したが、時の民意はさらなるを求めた。

ミサイル護衛艦の配備が佐世保、舞鶴、横須賀に集中しており、それ以外の地域の有権者が強い不安を抱いたのだ。
防衛省はイージス・システムとSM-3を用いた広域防空、陸海空統合運用による効率化を説いたがこの場合は感情が勝った。
事実、当時のBMD4.0システムとPAC3初期型では、数量を増やさねば対応困難な一面が存在していたのも事実である。

しかし史実と異なり自衛官の充足率が高いとは言え、ミサイル護衛艦の配備数を急増させることは困難であった。
故に民意と現実を前に懊悩した防衛省及び海上幕僚監部は、次世代ヘリ搭載護衛艦をあたご型ベースで再設計を実施。
ヘリ搭載能力をはるな、しらねと最低でも同等とするイージスDDH建造を採用せざるを得ず、予算も順調すぎるほどに承認された。


全通甲板DDHによる哨戒ヘリによるASW能力向上を企図した航空集団等は、痛恨事とさえ記すこともしばしばである。
一方で新型哨戒機P-1)(後の開発及びSH-60K哨戒ヘリ配備予算は増額され、ある程度のバランスは保とうと努められた。
当時の海自ではLink16が標準的なデータリンクとして配備が進み、基地航空集団や空自との連携で補完は可能とも判断された。

かくして予算承認を受けた後のいずも型であるがイージスBMD拡張が喫緊故に、あたご型からの再設計は最小限とされた。
SH-60K哨戒ヘリコプター3機の格納及び整備を行うスペースは、後部VLS撤去及び船体10メートル延長で確保。
それ以外は当初より備えられていた複数のヘリ展開用レール、RAST(Mk6)着艦支援装置をそのまま流用している。

ヘリデータリンクはむらさめ型で採用されたORQ-1Bデジタル式を改善したORQ-1Cを搭載、画像データ転送などにも対応する。
システム構成自体はしらね型と大差ないが各種艤装を新型へ更新し、ある程度の運用能力向上を遂げている。
複数の哨戒ヘリに必要な時間も15分から5分まで短縮され、けして従来の焼き直しというわけではない。


船型の変更も最小限とされたが護衛隊群旗艦たるを求められFIC区画が拡張され、基準排水量は8500トンと大きい。
満載排水量は11000トンに至り「ミサイル巡洋艦」と類別されることもしばしばである。
主機もあたご型同様にCOGAG方式だが燃料制御をデジタル式としたLM2500IECに更新し、ある程度の省力化を果たしている。

C4I及び武器システムも基本的にはあたご型に準じ、ベースライン7相当のイージスAWSを根幹としBMD4.0システムを付属。
ASWも一部で三菱電機や日本電気等が開発に関わっているが、基本的にはSQQ-89最新型に準じたものである。
一方で洋上指揮ターミナルは完全なCOTSで構築された、映像通話可能な衛星通信にも対応した国産品を搭載している。

搭載武装は後部VLS32セルの撤去を除けばあたご型と完全に同一で、特に対空戦闘及び対BM戦闘で高い能力を発揮する。
前部甲板のVLS64セルにはSM-3Block1B、SM-2Block3B、垂直発射アスロックを用途に応じ配分搭載を行う。
VLSは竣工当初より光ファイバ接続が行われ、特に瞬時情報能力が必須のSM-3への運用に最適化している。

354:戦車の人:2025/10/01(水) 00:38:29 HOST:110-130-196-35.rev.home.ne.jp
基幹定員数は司令部人員を含め330名で、航空機運用や機関運転の自動化で既存DDHより省力を達成している。
当初より女性乗員居住区を独立して備えており、水洗トイレの改良を施すなど居住性は概ね及第点である。
少なくとも合衆国海軍のように寝台を複数乗員で使い回す、食事が画一的で不味いということは厳に戒めている。

かくして概ね早期建造とBMD能力向上、既存蒸気タービン型DDH更新という要件を満たしたいずも型は建造を推進。
三菱重工長崎造船所、ジャパンマリンユナイテッド磯子工場、日立造船舞鶴造船所等で建造を実施。
平成21年から23年にかけて4隻が完成し各護衛隊群旗艦に就役、東日本大震災でも災害派遣部隊旗艦として活躍している。

直接の航空機運用能力はDDHの範疇であるが高度な分散処理システムとネットワーク、FICは十分に有用であった。
また状況に応じてH-60系列のヘリコプターだけではなく、MCH-101輸送ヘリの離着艦と整備にも十分な能力を見せた。
他の艦と同様にここが踏ん張りどころとばかりに、多くの輸送された被災者に温かい食事も提供している。


そして2010年代。日米の防衛技術交流が深まる中でイージスBMDもCOTS主体で、世代更新を成し遂げた。
UYQ-70の分散処理を踏襲しつつオープンアーキテクチャを推進した標準型コンソール、コンピュータへ更新。
IRBM迎撃に完全に対応したBMD5.1をインテグレートし、艦隊防空とBMDを両立可能なベースライン9シリーズを開発。

いずも型もあたご型と並び本システムをNIFC-CAと共に導入し、より高度な共同交戦能力を獲得している。
それに伴いSM-2を共同生産契約に基づき三菱重工が生産を行うSM-6に段階的に更新。
BMDの要であるSM-3もBlock2Aへ更新を行い、IRBMまでならば完全な対処能力を獲得するに至っている。

また自衛隊法および憲法改正に伴い敵基地攻撃能力も合法化され、必要とあらばトマホークSLCM運用も可能である。
本クラスはDDGと比較すればVLSセル数が少なく、一方で対空戦闘及びBMDを両立せねばならぬため、優先順位は乏しいが。
しかし必要とあらば即時に運用可能な能力は抑止力として大きく、周りを固める汎用護衛艦の高性能化もあり不可能ではない。


勿論、イージス武器システムのベースライン9への更新及び共同交戦能力拡張は、護衛隊群旗艦としての価値も高めている。
また陸自及び空自が多用する自衛隊デジタル通信システムに対しても、洋上無線ルータを備え相互通信能力を獲得。
同システムはSH-60最終型であるSH-60Lにもデジタルヘリデータリンクの代替として機能し、Link16と併用し高い汎用性を持つ。

武器システムについてであるが、自衛隊の海外派遣増大に伴いリモートウェポンシステムを用いた海賊船、ドローン等のチープキル対応実施。
合衆国海軍の戦闘艦、そして陸自装甲戦闘車でも多用される30ミリチェーンガンを、日本製鋼所開発の国産RWSへ搭載。
国外派遣における低脅威度目標への主眼武器としており、有効射程や破壊力、命中精度でも要求以上を満たしている。

それ以外の武器システムとしては艦対艦ミサイルが陸自の08式をベースとした新型に置き換えられ、全般性能が大きく向上している。
有効射程は400キロ前後に達し誘導アルゴリズム、対電子妨害能力、ステルス性などが顕著な性能改善を果たした。
将来的にはCIWSをSea-RAMへ換装する計画も存在するが、洋上目標対処を含む高い汎用性から現状は検討段階である。


あたご型の焼き直しと言えばそれまでであるが、複数の哨戒ヘリ運用を含めた護衛隊群旗艦かつ広域防空、BMD能力を両立。
その上で建造単価1500億円に収めたと考えれば、十分に所期の目標と民意の要求に応えた護衛艦と評価できる。
Link16を筆頭とするネットワークシステムにより陸自や空自、海自航空集団との高い共同交戦能力を含めれば尚更である。

面白みや新奇さは乏しいが実用性に高い自衛隊装備という通例に漏れず、護衛艦隊でもいずも型の評価は概ねにおいて高い。
空自がF-4EJ改代替として導入したF-35Aとの連携も良好で、ステルス第5世代戦闘機と護衛艦隊の共同交戦能力を確立している。
民意がパニックに等しい過剰反応を起こした時代に、常識を積み重ねそれに応えたというだけあり、今なお有力な水上戦闘艦である。

なお近年、航空自衛隊のF-35Aとの共同運用におけるリモートセンサとしての有用性実現から、次世代航空護衛艦も検討されている。
満載排水量3万トン以下の陸上部隊輸送にも対応したF-35B空母であり、隊員確保増大を含め防衛省で運用研究が進んでいる。
また従来の護衛艦隊と掃海隊群を「水上艦隊」して統合化し、イージス艦12隻と複数のF-35B空母運用を両立の意向も強いとされる。

355:戦車の人:2025/10/01(水) 00:39:06 HOST:110-130-196-35.rev.home.ne.jp
このいずも型、面白みと呼べるものは全くありません。竣工段階では00年代前半で最新のシステムをあたご型と同様に搭載。
2010年代の近代化ではやはり史実のあたご型、まや型相当にシステムを更新した拡大あたご型に過ぎません。
FICをあたご型より拡大しており、早い段階で対水上レーダや曳航ソナー、洋上ターミナルを前倒することで旗艦機能を保っていますが。

そしてイージス艦定数を増大するにあたり原動力としたのは「関東や九州は兎も角他の地域は?」という民意でした。
勿論常識に基づけば空自高射群やLink16を介したイージス艦の展開で、かなりはMRBMやSRBMの阻止は可能です。
しかしこの世界では東京湾という首都の直前に北朝鮮の弾道ミサイルが落ち、誰もが恐慌状態です。

技術や軍事から考えれば常識的な意見も民意、感情を前にすれば屈せざるを得ないという背景を元にイージスDDH4隻を竣工させてみました。
恐らくですがイージス・アショアシステムも本世界線では、事実上の日米共同開発という形で実用化されているんじゃないなかなあ…と。
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最終更新:2025年10月27日 16:29