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182 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/04(月) 23:41:03 ID:softbank126063230178.bbtec.net [10/85]


憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「極上の報酬」




  • 星暦惑星 衛星軌道上 地球連合軍星暦恒星系派遣群 ソレスタルビーイング級コロニー型外宇宙航行母艦「ファントムビーイング」


 コーネリアの副官を務めるギルフォードの仕事は多岐にわたる。
 客将、あるいは傭兵としての将官であるコーネリアが地球連合の麾下で戦うにあたっては多くの仕事があり、それの補佐が必須だからだ。
何も戦働きだけでなく、平時のために何ができるか、あるいは平時の後のことを考えて何をすべきか。それは文民も軍人も全く差別のない問題だ。
軍事というのは、政治の選択肢の一つ。軍人もまた政治に従属し、その要求や要請の元で戦い、求める成果を出すのだ。

(……ふぅ)

 しかし、ギルフォードは、この星系での任務の終わりが近いこともあり、疲労感をぬぐえずにいた。
 よりにもよって、サンマグノリア共和国を担当する羽目になったのだから、その心労は途方もないものだったのだ。
星系外で他文明と接触するのがこれが初めてというわけではなかったが、ここまで悍ましいものは見たことがなかった。
かつての神聖ブリタニア帝国が他者から見て同類だったことも合わせれば、二重にダメージだ。
彼が仕えるコーネリアが理解したように、ギルフォードもまた、これまで自分たちの欺瞞や矛盾、あるいは騙りを突き付けられ、理解させられた。
それらに心労がたまらないわけがない。今でこそ何とか耐性はできているが、最初の頃などかなり精神を抑えるのに苦労したのだから。
 これが仕事だから、祖国のためになるから、自分のためになるから---そう思っていなければやっていられない。
こうして書類仕事をこなしていても、ふと思ってしまう。考えまいとしても、どうしても脳裏をよぎる。
こればかりは時間をかけて適応というか、心の中で整理を付けなければと分かってはいるのだが。

(難しいものだな)

 貴族の自分でさえもそうなのだから、果たして皇族であるコーネリアの心情は察するに余りある。
経緯と理由はどうあれ、彼女は先駆者や尖兵としてシャルル・ジ・ブリタニアやブリタニア帝国の国是を広げたのだ。
穏やかにまじりあい、?がり、あるいは共同歩調をとることはなく、棒を振りかざして壊して回ることを選び、それを是とした。
自分はそれに従った立場だが、コーネリアは実の父親の言いだしたことに乗っかり、積極的に務めを果たした。
挙句に融合惑星に転移してからもその路線を引きついた本国のせいもあって、少なくはない非難の視線を受けたのだ。
側仕えのたちばであるからこそ、その手のうわさや視線や陰口などは聞こえてきてしまうものだった。

 だが、それと同じようなものを見せつけられる苦痛はようやく終わる。
 エクソダスはほぼ完了しつつあり、最後の船団がこの星を離脱するのだ。ここでの得難い教訓と傷を抱え、次なる任地に赴く。
如何に今がアポカリプスとはいえ、流石に酷使が過ぎれば人も物も疲弊し、あるいは弱ってしまう。
これまで働いた分だけ休暇や休息も与えられるので、すぐさまというわけではないだろう。
この惑星で感じた途方もない心身の疲労をしっかり抜くことができるようにしなくてはならないだろう。
 そう考えた時、そのコーネリアがギルフォードのいる執務室に入室してきた。

「ああ、そのままでいいぞ」

 心なしか、嬉し気な、楽し気な様子だ。
 日々の軍務と重なる心労で自分と同じく疲労していたと思っていたのだが、それがないのだ。

183 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/04(月) 23:41:47 ID:softbank126063230178.bbtec.net [11/85]

「いかがされましたか?」
「知りたいか?そうだろうな……ああ、そうだろうな」

 楽しそうなコーネリアは、手に持っていたいくつかのものを卓上に置く。
 なにやらかなり大きめの、しっかりと梱包された荷物。
「壊れ物(フラジャイル)」の表記とテーピングが施され、保護用の外骨格(スケルトン)までされている。

「この惑星で得られた、うむ……報酬だな」
「報酬、ですか」
「本当は直接、と考えていたらしいが、恥ずかしいとのことだ。
 だからこうして回りくどい方法にしたらしい」

 ほら、と手渡しされたそれを受け取り、ギルフォードは少々困惑していた。
地球連合からの報酬ではなく、この惑星から得られたとはどういうことか?と。
各国政府首脳部や軍部から個人的なお礼というものを得たことはあったが、いずれも公式なラインを経由してのものだ。
個人としてお礼を送りたいというのはそれほど深くかかわったということで---

「あ……」
「今日はもういいぞ。
 感謝の言葉を送ってやるのも、勤めだろうからな」
「感謝申し上げます……で、では!」

 やっと気が付いたギルフォードは感謝の言葉もそこそこに部屋を出ていった。
思わず笑みをこぼしたコーネリアは、一度開封して戻しておいたそれを取り出した。
それは、仕事の最中のコーネリアを描いた絵画。単なるスケッチだけでなく、ちゃんと絵具を使い描かれたものだ。
紙も額縁もちゃんとしたものを揃え、正に絵になるようにとしたてられたもの。

「セオがここまでしてくれるとはな……」

 元々スケッチが趣味で、桶のパーソナルマークも彼が描いていたというが、まさかここまでやるとは。
 だが、思い出してみれば、ブリタニア帝国皇女の養子となるにあたっての教育の中で、そういった美術に関する教養も教えていた。
それに影響を受けたとするならば、そこまで不思議ではない話だ。実際、どことなくブリタニアの作風を感じるものがある。
 そして、セオだけではない。スピアレオ戦隊の面々からそれぞれが用意した贈り物が届けられている。
それぞれの個性が窺える、そんな、とてつもなく得難い報酬だ。
願えばいくらか制限はあっても得られる立場にあってなお、コーネリアが得られないモノ。

「……良かった」

 これまでさんざんに人や国や政府の醜い面やおぞましい面を見た---サンマグノリア共和国は極めつけ---だからこそ、この報酬はどんなものよりも価値がある。
戦いばかりで荒む傾向にあったコーネリアにとって、安らぎを与え、これまでの行いを意味付けし、肯定してくれるものだった。
これだけでも、意味があったと、表には出してはいなかったがコーネリアの痛んでいた心を慰めてくれた。
そも、こうしてコーネリアが本国を離れたのは地球連合からの要請もあったが、それを渡りに船と感じたのもある。
人類同士の戦乱を懲りることなく融合惑星で引き起こした祖国から、目を背けたくて、遠くにはなれたくて、志願した。
そんな自分勝手なことも、ちゃんとなすべきを為せていたのだと、ここで確信できた。

「いかんな」

 だから、思わずこみ上げたものを抑えることは、彼女にはとても難しいものだったのだ。
 こぼれるままに、流れる涙は零れ落ちた。

184 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/04(月) 23:42:47 ID:softbank126063230178.bbtec.net [12/85]

以上、wiki転載はご自由に。

久しぶりに星暦惑星の話を。
エクソダスの最後の方の一面を切り取りました。
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最終更新:2025年11月15日 14:16