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368 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/08(金) 00:31:07 ID:softbank126063230178.bbtec.net [28/85]


憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「ネットワーク性自己免疫疾患」



 レギオンの無差別作戦行動は、極めて徹底されていた。
 通信衛星の破壊とケスラーシンドロームの蔓延、各国を結ぶ通信ケーブルの切断、阻電攪乱型と対空砲兵型の蔓延による空路の封鎖。
それらはすべて、各国を分断に追いやった。人も、物も、情報も、何もかものつながりを断ち切った。
各国の移動を制限するだけにとどまらず、連携を阻害することで、各個撃破に持ち込んだのである。
レギオンだけで勝てるとは考えずに戦略面でも行動をきちんと選んでいたことが窺えるだろう。
これによって各国は自分達だけで自国を守る必要に迫られ、混乱の中で必死に抵抗する羽目になった。
情報の共有がされない、あるいは阻害されるというのは、それだけで軍事という点においてディスアドバンテージだ。
特に近現代の軍事において情報による繋がりは過去に類を見ないほどに高まっている。過去の戦訓から、戦場の霧を晴らすことに注力しているからだ。
そこにクリティカルな個体の大量投入というのは、まさに正しい戦略であり、非常に有効なものだった。

 しかし、地球連合の来訪でこれらの分断は解消された。
 レギオンの妨害をものともせずに星系外から来た彼らは、インフラを回復させ、レギオンを打ち払い、行き来も通信も回復させた。
失地奪還やレギオンの群れや軍団の排除はそういった方面でも大きな進捗を齎したのだ。
 だが、?がりを回復すれば、それで終わりなのではない。繋ぐことは手段であり、目的ではない。
 また、その手段によって、目的以外のことも果たされてしまうのも事実であった。


  • 星暦惑星 衛星軌道上 地球連合軍星暦恒星系派遣群 ソレスタルビーイング級コロニー型外宇宙航行母艦「ファントムビーイング」 BRFルーム


 星暦惑星の国家間インフラは、現状、地球連合の敷設したものに星暦惑星各国が相乗りする形で活用されている。
故にこそ、国家間を結ぶネットワークの情報を地球連合は当然のように傍受ができていた。
 星暦惑星各国が結ぶネットワークもあるので完全に掌握しているわけではないが、往時の通信量を賄うには地球連合の手を借りる必要があったのだ。
衛星などを打ち上げるのにもコストがかかるし、地下の通信ケーブルの復旧とて時間もかかってしまうのも理由のに含まれる。
尚且つ、宇宙怪獣の襲来による母星の放棄があり得る関係上、供給側が積極的になれないというのもあった。
 ともあれ、そうしたオープンソースインテリジェンスを行う中にあって、地球連合の派遣軍は気が付いてしまったのだ。

「かつては村ごとに愚か者がいた。インターネットが彼らを繋いだ……という言葉があるけれど、まさにそれね」

 会議室の上座、将官級の軍人たちが並ぶ席で、深いため息とともに言葉を吐き出したのはアルビーナだった。
 地上方面---星暦惑星各国との折衝も管轄する彼女は、必然的にその問題にぶつかることになったのだ。
 即ち、10年近く分断されていた各国が繋がりを取り戻した結果、良い効果が齎された一方で、悪しきものも生まれてしまっていたのである。

「ネットワーク内における悪意の出現……陰謀論や風説、噂話、流言飛語と吹き荒れているのは看過できないな」
「左様。各国が情報共有などが可能となり、連携をできるようにはなったが、同時に国家間の衝突が再開されてしまった」

369 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/08(金) 00:32:08 ID:softbank126063230178.bbtec.net [29/85]

 将官たちも眉をしかめるしかない。
 その言葉の通り、ネットワークを通じ、人は再びネットワークによって生じる害を被り始めたのだ。
 地球連合に対する根も葉もない噂に陰謀論。ギアーデ帝国の後進たるギアーデ連邦への攻撃。
あるいはレギオンの元になったマリアーナモデルを作ったロア=グレキア連合王国への誹謗中傷。
戦争を長く続けたにもかかわらず、地球連合が来るまで状況を打破できなかった政権への批判。
サンマグノリア共和国やサンマグノリア共和国民やそのコミュニティへの度を越した圧力。
その他国家間---もっと言えば個人間や小さいコミュニティ同士の諍い。
それらはネットワーク上で発生し、現実においても間接的に影響を及ぼしているのが確認されていた。

「エクソダスへの不参加の表明、地球連合との協力へのボイコット、提供された物資などへのラッダイト運動の焼き直し。
 このままでは、現地駐留の将兵に対する直接的な被害に発展するのも時間の問題かもしれません」
「現地のマスメディアも乗っかっているようで、中々沈静化の気配は見えませんしね……」

 参謀たちの提示する資料やデータは、その言葉を裏付けるものだ。
 エクソダス反対のデモ、居座り、ハンガーストライキ、落書き、ビラのばら撒き、アジテーション染みた記事の流布。
地球連合の人員が現地の国家に対して無茶な要求を強いたという与太話、あるいは害を受けたという真偽不明の証言。
どれもこれもが、ネットワークの回復から少し間をおいて蔓延しだしたのである。
 参謀からの視線を受け、分析官の一人はさらに資料を展開し、状況をさらに補足した。

「ネット上での声も含めて統計分析にかけたところ、世論傾向は部分的にラディカルに傾きつつあります。
 我々地球連合への不信、不満、あるいは疑心。戦争が終わると信じていたからこそ、アポカリプスに反発を覚えてしまうようです」
「彼らからすれば、我々こそがこの星に宇宙怪獣を呼び込んで、滅びを持ち込んだ。
 あるいは宇宙怪獣と戦うためにこの星や国々を支配するつもりだと、そう映っているようです」
「植民地支配の時代のように、か」
「なまじこちらが技術水準などが上であることもあって、その傾向は強いようです。
 類似例は、この星暦惑星に限らず発生していますね」

 それらは連合からすれば失笑ものだ。宇宙怪獣は見境なく生命体に襲い掛かるし、制御しようとしてできるものでもないのだ。
少しでも自分たちの星系を守るため、そして外宇宙にいる他の文明を守るためにこうして外地に展開しているのが実情なのだから。
 とはいえ、これは地球連合の都合でしかない。他の文明、この場合星暦惑星で暮らしていた人々からすれば、そんな事情は侵略のお題目にしか見えないのだろう。
この星暦惑星には星暦惑星の文脈と文明と言葉があり、それは地球連合の物とはまた違うものなのだ。
始まりも積み重ねも経過も傾向も違い、たまたま類似している箇所があるだけで、本来ならば交わることもなかった。
 そして、異なるもの同士が接触した時に起こるのは文明的な、あるいは本能的な抗原抗体反応に他ならない。
今星暦惑星の各国で反発が起こっているのもそれの証左と言えるだろう。
人は、分からないモノ、未知のモノを怖がる。たとえ現代になろうともそれは本能的なものだから、どうしても発生するのだ。

370 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/08(金) 00:34:19 ID:softbank126063230178.bbtec.net [30/85]

 これについては積極的な情報の発信や交流といった手段で漸進的に解決を図ることができる。
各国政府とも共同で、無知や妄信や風聞を取り除こうと動いていくことで、

「問題は……」

 口を開いたのは、このファントムビーイング号を旗艦とする地球連合星暦恒星系派遣軍の総司令官たるジョセフ・ノイマンだ。
これまでの星外派遣における前例を見返していた彼は、同時並行で起こっていることを、この場にいる者達同様に理解できていた。

「これが星暦惑星各国の内側の火種になることだな」

 そう、攻撃的な排外運動は、時として国家や国民をも傷つけることになる。人体で起こりうる、自己免疫疾患のように。
何しろ、人というのは集団になると途端に知能が下がる。0か1か、白か黒かの極端な判断を行うようになってしまうのだ。
難しいことを理解しようともせず、とにかくわかりやすく都合がいいものに飛びついて、対立していると思い込んでいる相手を正義感から攻撃する。
やがてそれは国家という大きなコミュニティ内部を大きくかき乱すことになり、意見や意思の分断の火種となるのだ。
 後顧の憂いを断ち、納得と理解の上でエクソダスを行いたい地球連合派遣軍からすれば、それは大問題となる。
エクソダス中もそうであるし、エクソダス後に新しい母星に文明を根を下ろすプロセスが躓きかねない。
いや、それ以前にこの惑星からの脱出さえも拒否するかもしれない。そうなれば、起こることは一つしかない。

「最悪の場合、見捨てることも選択肢として選ばなくてはならない」
「……はい」
「無論、最後まで努力は続けよう。同時に、彼らの意志を尊重する。
 両立は難しいが、最大限の努力はすべきであるからな」

 その結果は、見捨てるという選択だ。
宇宙怪獣が接近しつつある中にあって、逃げ出さなければ惑星ごと滅びるしかなくなるというなかで、それは非道と言える。
そんな選択を、地球連合は時として選ぶことがあった。接触した相手とどうしてもコミュニケーションが成立しない場合もある。
そもそも対話を拒否されたこともあれば、猜疑心から殆ど文明を逃がすことができなったことも。
救えた数よりも、救えなかった数の方がはるかに多く、そのまま宇宙怪獣に飲まれるのを見てきた。

 だが、ジョセフが述べたように、エクソダスは同意と納得を得て、提示した選択肢を選んでもらうことで行うべきことなのだ。
自分達は支配者ではなく、同じ生命体を助けに来た救援者であって、尚且つ文明国らしく互いを尊重し合う必要がある。
一見矛盾していることだ。救いたいという動きと、いざとなれば見捨てるというのは。
 だが、実際は矛盾していない。選択肢を与え、相手の意思を尊重しているのだ。
生きるか、それとも死ぬかを自ら決めてもらうことで、地球連合も自身の尊厳を守っている。

「各国との共同でのエクソダスへの理解を呼びかけは継続をしてほしい。
 それと、将兵たちにも、無自覚に傲慢に振舞わないように改めて訓示を」
「かしこまりました」
「では、次の案件です……」

 次の議題が提示され、会議は進む。
 少しでも多くを救うため。火種とならないようにするため。そして、地球連合自身のため。
異なる文明との接触と交流を続ける地球連合に、停滞は許されていなかった。

371 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/08/08(金) 00:35:38 ID:softbank126063230178.bbtec.net [31/85]

以上、wiki転載はご自由に。

まあ、こういうのは起こるよねという感じです。
今宵は返信せず寝ます。
おやすみなさいませ。
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最終更新:2025年11月15日 14:22