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520:earth:2024/07/05(金) 21:25:56 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 踊るアウトサイダーズ 第4話


 極秘裏に建設された月面基地では大型人型兵器の開発計画【V作戦】が開始されていた。
 しかし全高18mを超える人型兵器の実現には多くの障害があった。

「実験中止!」
「回収車を持ってこい!」

 地下に建設された実験施設。その中で人型歩行ロボットは腰が破損して派手に転倒していた。
 そして転倒したロボットの周辺では実験施設に勤める者達が事態の収拾に当たっている。

「リアルに近い世界では重量問題、重心問題はネックだな」

 実験施設のモニター室の壁に掛けられたモニターから、ロボットの様子を見ていた冬月は溜息をつく。
 この背の高い老紳士の横に立っていた金髪の背の低い幼女が「ゲンナリ」した表情をする。

「本当、創造主はこんな兵器で世界と戦争するつもりになったものだ。あんなの只の的。あれに投じる資源があるならMAのほうがマシだ」
「確かに、現状ではな」
「ただ歩かせるぐらいなら何とか出来る。だが漫画やアニメのように軽やかに動かすとなると・・・・・・」

 人型ロボットは、その内部に納められたフレーム、可動装置、動力源、そしてこれらを制御するためのコンピュータなどを全て二本足で支える
必要があるのだ。そして18mを超える人型ロボットを兵器として使う場合、材質を見直して軽量化しても重量は60tを超える見込みだ。
 このロボットは歩行するだけでも、瞬間的に腰やかかと等に総重量を遙かに超える負荷が掛かってくる。 
 ましてそれを2m足らずの生身の人間と同様に軽やかに動かそうとするのだ。各部に掛かる負荷は跳ね上がり、金属疲労で部品が破断する
ことは目に見えている。

「下半身を強化するにしても限界がある。となれば、上半身を如何に軽くするか・・・・・・」
「仮に何とか出来ても、今度はその重量を二本足で支える。しかも足底の底面積が小さいときた。砂漠や沼地どころか、舗装されていない道でも
 十分に歩けるのか?」

 金髪幼女は冷え冷えとした視線をモニターに向ける。

「あの創造主、メンタルやられすぎて現実が見えていないのでは?」
「ははは。言い過ぎだ。まぁあの地獄を経験すれば多少は精神に不調をきたすだろうが」
「そんな創造主に、【そうあれかし】と望まれて生まれた我々には深刻な問題と思うぞ?」

 冬月が「だが我らに他に道はないだろう」と返すと、この幼女は溜息を漏らす。

「私の原型になったキャラだったら、神を名乗る存在への罵倒を口に出すところだな」
「創造主も神などいないと言っていたから、そのあたりは似たもの同士ということだろう」

 幼女は露骨に顔をしかめたあと、話題を変える。

「とりあえず原因を調べるとしよう」

521:earth:2024/07/05(金) 21:26:41 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 試行錯誤でいくつかの案が出たが、その多くは失敗に終わり・・・・・・現状考えている二足歩行する大型人型ロボットは
兵器としては落第という意見が幹部の中でささやかれるようになった。

「二本の足で全ての重量を支え、更に高速で起動する。この両立は著しく困難、か」

 冬月(赤蜘蛛)、芹沢(緑獅子)、そして金髪幼女を含む数名の幹部が円卓形式の会議室に集っていた。

「やれやれ創造主の無茶振りにも困った物だ。そうは思わないか?」

 太った金髪の男は愉快げに嗤う。
 芹沢は「無駄な事業はさっさと整理したい」という考えを隠そうともしない顔で言い放つ。

「軍の主体はMAや従来兵器、人型兵器は開発中のラムダドライバと組み合わせた少数精鋭運用、これが妥当だろう」

 ラムダドライバでベヒモスの巨躯を支えたようなやり方をとることを芹沢は提案していた。
 更に言えばラムダドライバが無かったとしても、強力な攻防能力があるMAを多数揃えれば問題ないというのが芹沢のスタンスだった。
 幼女も内心でこれに賛同していた。

(これ以上、無為に時間と資源を消耗するほうが害悪と思うが、下手に芹沢に賛同すると拗れるから、機をうかがうか) 

 幼女は創造主の意向に理解を示しつつも、既存の開発計画に消極的姿勢を示し・・・・・・太った男はそれを面白そうに見つめている。
 芹沢はここぞとばかりにたたみかけるが、冬月は苦い顔をして反論に転じた。 

「確かに理屈としてはそれが正解だろう。だがそれで何とかなるのかね?」
「何?」
「理屈が正しいなら物事がうまくいく・・・・・・世界がそれほど単純明快なら、あの創造主は地獄を味わってはいないと言うことだ」
「「「・・・・・・」」」

 自分達に刻まれた創造主の歩んできた人生。
 理論的に考えれば「負けない」はずの局面にて「ひっくり返される」。理外の何かが、それを望んでいるかのように。

「数値と合理性のみで考えれば、我らは過去の失敗を繰り返すことになる・・・・・・赤蜘蛛、いえ、教授はそう仰る、と」

 太った男の言葉に冬月はうなずく。
 芹沢は渋々だが、方針転換の提言を先延ばすことに同意する。だが具体的にどうするかの結論が出ない。
 幼女は「いっそのこと、バルキリーのガウォークモードもどきでも作りますか。現状だとMAにおまけの手足を生やした感に
なりますが・・・・・・飛んでおけば問題ないでしょうし」と切り出す。
 そしてその言葉を聞いた冬月は何かに気づいたかのような顔をする。

「・・・・・・だが銀牛の言うように、確かに【現状の構想】のままでは二足歩行兵器は実現できないのも事実だろう」

522:earth:2024/07/05(金) 21:28:00 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 この言い回しに幼女が反応する。

「【現状】、と?」
「そうだ。我々は既成概念に囚われすぎてないかということだ」
「君はこの手のガンダムのような二足歩行兵器の構造と言えばどんなものが頭に浮かぶ?」
「それは勿論、装甲やフレームで自重を支えきる・・・・・・うん?」

 幼女の脳裏にこれまでの創造主とのやりとりに関する記憶が浮かぶ。

「あの創造主はそんなことを一言も言っていない?」

 そして一つの解決案が浮かぶ。

「ガンダム・・・・・・あの世界のコア技術、ミノフスキー粒子が再現可能・・・・・・まさか?!」

 冬月は教え子が正解を導き出したことに満足する。

「君の思うとおりだ、銀牛、いやデグレチャフ君。試してみる価値はあるだろう?」

 遅れて太った男も同様の結論に至ったのか面白そうな顔をする。

「いやはや、さすがだ。いつごろその案を?」
「先ほどだよ。彼女の言葉を聞いた瞬間だ」
「ははは、創造主が様々な思考パターンを与えた意味があったという物ですな」
「だな。さて、諸君、仕事に取りかかろう」

 そしてこの数週間後、この人型兵器には厳しい法則を持つ世界において、実用に耐える見込みのある大型の人型ロボットがその姿を現すことになる。

523:earth:2024/07/05(金) 21:29:07 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
次回、いよいよ「ガンダム()大地に立つ!」を予定。
大型の人型ロボットを実用化する道は険しい・・・・・・。

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最終更新:2025年12月26日 19:40