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踊るアウトサイダーズ 第8話
幾多の世界で敗北し、放逐され続けてきた敗北者・駒田拓久。
彼が敗者である以上、勝者も存在する。
彼らは巨悪に勝利し、その栄誉をほしいままにしたのだ。
だがその輝かしい勝利の時で全てが終わるわけではない。むしろ、輝かしい勝利を得た後を【どうするか】が重要だった。
栄光を元にして更なる栄達を手にする者、一時の栄光の後に転落する者、栄光に興味も無く、なすべき事をなした後、世間から
隠匿した者、身の振り方は様々だった。
しかし更なる栄誉を得られた者、平穏を得られた者はそう多くはなかった。
「なぜだ、なぜ、こうも上手くいかない!」
周辺国に喧嘩を売り続けて膨張を続ける専制国家を牛耳る黒幕を打ち倒した革命政府は、周辺国との関係改善に乗り出すも失敗。
守旧派や敵対勢力残党との両面作戦を強いられ、革命以前よりも国民に窮乏をしいてしまい、見放された。
魔法使いと魔法を使えない人間との融和を目指した、気高き魔法使いは、厳しい現実を前に打ちのめされた。持つ者、持たざる者の
確執はどこまでも大きく、世界の争いを煽っていた黒幕を打倒した際の麗しき協力関係は消え去った。
醜い争いを続ける愚かな人類を粛清せんとした宗教国家の皮を被った独裁国家の影に潜んでいた諸悪の元凶。それを排除し終わった
後に始まったのは元凶が残した高度な軍事技術を巡る争いであり、遺産を手にした野心あふれる者達が軍閥化し、かつての戦争が
生やさしく思える規模の大戦争が引き起こされた。
「ああ、【あれ】がいたことは良かった。人々は対立を抑えて、一致団結できた」
誰もが嘆いた。
誰にもわかりやすい巨悪。【倒すべき敵】。
その敵と戦う際には誰もが協力できたし、犠牲を抑えることができた。かの黒幕の策動を逆手にとって悲劇を防ぐこともできた。
しかし今や、人々の対立は無秩序に拡大し、膨大な犠牲を世界に強いている。
かつて、黒幕を打倒する際に活躍した者達も、かつてほどの冴えはなかった。
「英雄達も耄碌したのか?」
そんな疑問さえささやかれた。
だが尤も辛いのは当人達であった。
かつて【出来た】ことが出来なくなった。技能、技術が衰えた訳ではない。
ただ以前よりも、物事が上手くいかなくなったのだ。まるで何かの加護が消えたかのように。
そして加護が失われたかつての【主人公】たちに、次々に仲間を失う悲劇が襲う。
「まるで【あの男】の呪いのようだ」
世界に深い傷跡を残した男の呪い、そう思う人間が現れるのも無理はなく、それはある意味で正解でもあった。
それらの悲劇は、本来は事態を解決する過程にて現れる悲劇であり、それが本来の意味で事態を解決に導く鍵、道しるべに
なる、或いはその悲劇が、世界の融和をなすための土台になるものだった。
それらの重要なイベントは、巨悪の存在によって消え去った。
短期的に見れば、悲劇は抑えられ、かの巨悪が全ての問題を呑み込む形で消え去ったことで【めでたし、めでたし】で終わったのだろう。
だが短期的には多くの人を満足させた一時の結末は、多くの揺り戻しを世界に齎し、揺り戻しで多くの涙と血が流れている。
そして・・・・・・この一時の結末を批判的に見る者も存在した。彼ら当事者の与り知らぬ世界に。
「あの作品途中まで面白かったんだけど」
「途中からご都合主義臭くなったというか、何というか機械仕掛けの神様が現れたというか」
「作者が飽きたんじゃない?」
当事者達が感知できない高次世界。
一連の出来事を物語として見る者達は、完結した、あるいは完結させられた物語を、電脳空間にて酷評した。
「曇らせイベントは欲しかった」
「盛り上がりがね・・・・・・」
だがそれらの語りもいずれ消える。
観測者たる彼らにとって、それらの出来事は物語でしかなく、飽きたら次の話に移る・・・・・・その程度なのだ。
世界を観測していた者達の後押しは消え、残されたのは【普通】の人々。
残された者達がどんな歩みを見せるか、それを知る者はまだいなかった。
688:earth:2024/07/13(土) 21:54:32 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
悲劇はある意味、成長イベント。
そして悲劇がないと、作品として面白くないこともあるという話。
曇らせがあるから、面白い話もあるのだ・・・・・・。
(ないと凡作に終わる話もありますからね)
最終更新:2025年12月26日 20:07