512 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/09/20(土) 21:02:39 ID:softbank126063230178.bbtec.net [40/103]
憂鬱SRW支援ネタ 青春記録世界編SS「ヤシマ今昔物語」【PMC「カーペンターズ」襲撃】2
- 現地時間午前9時29分 キヴォトス ブラックマーケット 廃ビル屋上
ナギの攻撃は何も巴の雷を放っただけでは終わらなかった。
跳躍し、直線状にいるターゲットを狙い撃った後は、曲射による対地攻撃へとシフトしたのだ。
調整して放てば、それは迫撃砲にも似た運用が可能となるのが弓矢という武器なのだ。
無論のこと、遮蔽物をぶち抜いてしまうのも簡単ではあるが、それではブラックマーケットが更地になってしまう。
ダメージは与えてもいいのだが、全部を0に帰してしまっては駄目なのが厄介なところだ。
「---ふぅ」
連射で10発あまりを撃ち込んでから、ナギは一息を入れる。
雷を叩き込み、曲射砲弾や迫撃砲弾の如き矢を放って、次に叩きこむのはさらなる技の一つだ。
呼吸を整え、体の波長を合わせ、身にまとうテクスチャを隆起させ、キヴォトスの神秘と合一し、現象としての形を結ぶ。
「---巴の大渦よ!」
それは、巴という文字が持つ、雷以外の意味。
それは渦。それは水流。それは捻じれ。それは力の本流。
放たれた矢は、雨と風の中を飛び、込められた力を元に周囲の水と空気を巻き込んで、大渦を作り、現象となる。
大きくなっていくそれは、長ずれば大渦を超えたモノ---竜巻へと変貌するのだ。
「是即ち---秘伝・渦雲落とし」
着弾。そこからナギのいるビルからでもわかるほどの破壊が生じた。
打ち込んだ矢を中心に、水と風の刃と圧力が周囲の物を無差別に切り刻み、破壊していくのだ。
それも一瞬ではなく、竜巻が自然消滅するまでの間、衰えこそするが断続的に発生するのだから恐ろしい。
対人というよりは対軍や対城といった方が良い、一歩間違えば本当に更地をいくつもこしらえてしまえる大技だ。
「破ッ!」
そして、着弾した。
PMC「カーペンターズ」の保有する敷地は広いが、竜巻が一つ着弾して暴れ出して無事でいられるほどではない。
ましてや、風だけでなく水までも含んで暴れまわる竜巻なのだ。神秘を含んでいるということもあって、威力は絶大。
破壊された建造物の断片などが巻き上げられて空を飛んでいくのが見える。
PMC側の混乱は当然だろう。突如として落雷が直撃し、矢が砲弾のように降り注いで、竜巻がピンポイントで発生して暴れまわった。
これに対して、キヴォトスの住人であろうと無力でしかなかった。相手は制御もしようがない暴力なのだ。
できることはそれが収まるまで安全なところに引っ込んでいるしかないのである。
しばしの時間が流れ、落とした竜巻は勢力を弱め、強い風の流れ程度にまで落ち着いていった。
普通ならばありえないが、これはナギが起こしたものだ。竜巻が力を失うように加減するのも不可能なことではない。
では、突如襲った災害が去ったように見える場合、一体どのように行動するだろうか?
「動きましたね……」
ナギの視線の先、カーペンターズの拠点からは、まだ無事だったゴリアテや装甲車や戦車といった戦力が格納庫などから現れていた。
その他に散見されるのは歩兵やPS歩兵や通常車両など。どれもが集結して点呼を行い状況確認を進めているようである。
同時に、偵察用のドローンを放って周囲の状況の確認を行いつつ、明らかに誰かを捜索しているようであった。
相手からすれば襲われる理由があるからこそ、荒唐無稽だとしても、どこかの勢力からの襲撃と推測したのだろう。
果たしてそれは正しい。母体のカイザーを経由しているとはいえ、ヤシマと事を構えることになっていたのだから、先制攻撃なども考えられる。
襲撃の可能性があるならば相手が何を仕掛けてくるかもわからないわけで、その為の情報収集は欠かせないというわけだろう。
513 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/09/20(土) 21:04:01 ID:softbank126063230178.bbtec.net [41/103]
しかし、とナギは言葉を胸中に作る。
事前の情報---カーペンターズがこれまでに行っていた業務内容の調査から導き出された戦力を超える物量が見えるのだ。
(事前の情報以上の戦力……やはり、カーペンターズはヤシマに軍事行動をとるつもりだったようですね)
これまでカイザーは手持ちの戦力を差し向けてはいたが、ヤシマの抱える戦力に勝てていなかった。
それを打破するためにカーペンターズにも戦力を供給して増強を図っていたのだろう。
表向きにはつながっていないから、大々的に理由もなく供給はできない。
カーペンターズが明らかに公表されている資本以上の投資を行っていれば、動きが察知されてしまうわけなのだから。
カーペンターズの施設や格納庫を破壊するような攻撃を行ったのは、これが理由だ。
引きこもるためのねぐらを叩いてやれば、よほどのことがなければ顔を出してくる。
直接殴り込んでもいいのであるが、今回の場合は自主的に出てきてもらってそれを叩いた方が都合がいい。
そうすれば、ブラックマーケットにいる住人達にヤシマの教員の力を見せつけることができるからだ。
加えて、この騒ぎを聞きつけて駆けつけてくるであろうマーケットガードもまとめて叩くことができる。
巴の雷だけでなく、矢による攻撃も行っていたので、自然現象ではなく人為的なものだと推測する可能性がある。
そうでなくとも略奪や火事場泥棒などを避けるためにもマーケットガードに一報を入れるくらいは当然行うはずだ。
そういう目で見ていると、マーケットガードもカーペンターズもどちらも動きがスムーズだ。
未曾有ともいえる大災害を受けてショックの影響こそ見えても、それでもパニックを起こしたりしていない。
動きはきびきびとしているし、点呼や状況確認なども抜かりなく行っている。なるほど、練度がお粗末ということはないらしい。
まあ、そうでなくては倒す価値もないのだ。
弱い相手ということは分かってはいるが、それでも少しは歯ごたえがなくては、自分が出張ってきた甲斐がなくなってしまう。
それを思いつつも、ナギは矢をつがえ、引き絞った。
カーペンターズが抱えていた戦力を吐き出してくれたのだから、あとはここから叩くだけだ。マーケットガードも含めて。
「……ふぅ」
速射。凄まじい速度で放たれた数本の矢は、空中を飛び回っていたドローンを見事に貫いて破壊する。
だが、それは当然こちらの存在を教える行為だ。
それでもいい。むしろ、それがいい。
「参ります」
にわかに騒ぎ出したカーペンターズやマーケットガードに一声かけるようにつぶやくと、ナギは前進を選んだ。
514 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/09/20(土) 21:05:19 ID:softbank126063230178.bbtec.net [42/103]
ナギの移動は、ドローンを適宜撃ち落としながらも、ビルの上を突っ走る形でなされた。
矢を放つ音は銃火器ほどではないにしても発生するし、ドローンもすべてを撃墜できるわけではないので、その存在が露呈するのは案外早かった。
「隊長、接近してくる敵衛を補足しました!」
「どこのどいつだ!」
「ドローンからの映像が……こちらに!」
タブレットでドローンの送ってきた映像を見たカーペンターズの隊長は、ナギの姿---正確には強化外骨格に描かれた校章を見て目を見開く。
その校章は知っているどころではない。視界の確保のために露出している部分から見える顔も、資料で見たことがあったのだ。
「巴ナギ……ヤシマの教員か!」
「資料にありましたね……やはり狙いは!」
「間違いなくここだ。
総員戦闘態勢、ヤシマの連中が攻めてきたぞ!
ゴリアテと戦車を起動!搭乗急げ、総力戦になるぞ!くそ、このタイミングで……!」
隊長は思わず悪態をつく。
規格外の戦力と聞いている巴ナギであったが、天候までも操るとは聞いていなかった。
そういう情報がなかったわけではなかったが、あまりにも非現実的すぎて信じきれていなかった。
だが、こうして状況があまりにも出来過ぎているとあれば、非現実的だったが本当なのだと認めるしかない。
「弓矢と思って油断するなよ、相手はドローンも撃ち抜いてくる。
装備の少ない人員は射線が通らない位置に退避急げ」
そうして、自分は指揮所を兼ねる装甲車両へと全力疾走だ。
先ほど部隊全体に指示を出したように、相手は弓矢を使ってはいるが、その威力や射程はもはや銃火器と変わらない。
どういう理屈なのかは謎だが、大人であるにもかかわらず、生徒たちと同様の力を有しているのだ。
だとするならば、例え弓矢だったとしても油断は全くできない。まして、尋常ではない数の矢を持ち込んでいるのだから恐ろしい。
先ほど発生した施設への攻撃が矢によるものだとするならば、その威力は野戦砲などにも匹敵するのだ。
そして、カイザーから回ってきた資料によれば、巴ナギは刀で戦車や装甲車を破壊---というか切り裂いたという情報もある。
いよいよを以て生徒のように恐ろしい戦力だ。なおかつ大人なのだから頭も回るし、積み重ねなどが恐ろしい。
(厄介どころじゃないな)
とはいえ、手の打ちようがないわけでもないとも理解している。
だから、とインカムを装備し、データリンクを確認し、指揮車両の内部に据えられたモニターを見ながら指示を飛ばす。
「総員、勝ちに行くぞ」
その声に、一切の油断はなかった。
515 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/09/20(土) 21:06:38 ID:softbank126063230178.bbtec.net [43/103]
以上、wiki転載はご自由に。
続きますぞい。
あと1話か2話くらいでケリを付けたい。
最終更新:2025年12月27日 23:13