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日米枢軸ルート日常編 

日本の体育の授業は、私にとって少しだけ苦手な時間だった。

私はアリーナ・スコット、今年の春にアメリカからこの国に来た、いわゆる留学生だ。

日本の学校は何もかもが新鮮で、アニメで見るだけだったフィクションの世界を体験できているようで驚きの連続だった。
ただやっぱり慣れないことや苦手なものもある。
中でも体育の授業の「跳び箱」は、どうにも慣れない。跳び上がって、前に転がるだけ。そんな単純なことに、何度も心がつまずいていた。

「スコットさん、次お願いしまーす!」

「……はい!」

私は思いきって走った。踏み切って、跳ねた——今度は成功した!!そう思ったのもつかぬま。

着地の瞬間、右足が滑った。

体勢を崩したまま、跳び箱の端に肩から落ちる。
そのまま地面に叩きつけられる感覚、腕から響く鋭い痛みに時間が引き伸ばされ、周囲の声が遠くなるように感じる。
痛みのなか、飾り気のない体育館の天井が目に焼きついていた。

「アリーナ!? 先生、誰か呼んで!」

視界の端に、慌てて声を掛けてくるクラスメイトの影が揺れていた。
大丈夫、そう言おうとしたが息がうまく吸えない。
右腕が、まるで燃えているように痛む。

そんななか、制服のスカートが視界に入った。近づいてくる人影。整った前髪。優しい瞳が、何故か痛みのなかで微かな安心を与えてくれる。

「皆、動かさないで。すぐに処置するから」

声の主は天音。霧島天音、クラスで誰にでも分け隔てなく接してくれる、クラスの代表格のような存在で、アニメにもよく出てくる風紀委員に属しているこころ優しい私の友達だ。

「アリーナ!大丈夫? 意識はある?」

「……あ、あ……痛い……けど…大丈夫……」

「大丈夫。落ち着いて。今、私が治してあげるから。安心して、ね?」

彼女の声は驚くほど冷静で、それでいて優しかった。
どこかの看護師さんみたいに慣れた手つきで器具を広げていく。ポーチの中には簡易骨折診断スキャナや、消毒剤、そして細い注射器が並んでいた。

 「アリーナ、肩が脱臼してる。あとね、前腕……骨にヒビが入ってると思う」

 その声は落ち着いていたが、私の心はざわついた。骨が折れてる? 脱臼? 病院に行くまで我慢しなきゃいけないの?
 そんな私の不安を察したように、彼女は広げた危機から透明なシリンジを取り出した。

 「痛みを和らげる麻酔を打つね。少しチクっとするけど、すぐ楽になるから。じゃあ、3、2、1——」

 細い針が皮膚に入ったのを感じた瞬間、わずかにチクリとしたが、すぐに感覚が鈍っていくのがわかった。天音先輩は私の右腕を持ち上げ、そっと肘を曲げながら確認していた。

 「よし、肩の整復からいくよ。肘を固定して、少し引っぱるから——深呼吸して」

 私は言われるままに息を吸い込んだ。目を閉じた、その瞬間だった。

 カクンッ。

 肩が何かに収まったような感触とともに、右半身全体に響いていた鋭い痛みがふっと消えた。

 「入ったよ。偉い、ちゃんと力抜けてた」

 天音はそのまま滑らかな動きで私の腕を体側に戻し、即座に固定用のバンドを巻きつけた。

 「まだ終わってないよ、次は前腕。ちょっと触るね」

 彼女の指先が、骨のズレた場所を慎重に探り、わずかに角度を調整した。

 「うん、ズレは軽いから、ここはあえて整復しないで固定優先にする。腫れが出る前にね」

 そう言うと彼女は銀色のケースを開け、真っ白な固定ギプスを取り出した。私の腕にぴったり巻きつけ、冷却スプレーをかけて数十秒後にはカチリと硬化していた。

 「よし、これで応急処置は完了。あとは病院に搬送して、しっかり診てもらおうね」

彼女の指先はまるで機械のように正確だった。それでいて、触れる手は優しかった。あまりの手際の良さに、痛みと驚きと、そして安心が一緒になって、私はぽろりと涙を流していた。

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「……泣いていいよ。怖かったよね」

霧島さんは、私の背中をそっと撫でながら言った。

「こういうときに一番大事なのは、誰かがそばにいるって思えることだから。アリーナが一人じゃないってこと、ちゃんと伝えたいの」

私は頷くことしかできなかった。こんなとき、英語の単語がうまく出てこない。けれどそれでも、彼女には伝わっている気がした。

やがて救急車のサイレンが聞こえてきた。

「隊員の方が来るまで、私がずっとそばにいるよ。だから、もう心配しなくていいよ」

「……ありがとう、天音」

「お礼なんていいよ。あたしにとって、ううん、私たちにとってアリーナは大事な“友達”なんだから」

その言葉に周りを見ると、心配そうに声をかけてくれていたクラスメイトの安心したような表情がはっきりと見えた。
天音からの言葉とクラスメイトの皆の表情に、また涙があふれた。私はただの「留学生」じゃなかった。皆の、クラスの一員としてここにいたのだ。

搬送されるストレッチャーの上から見た天井は、倒れたときと同じなのに、どこか違って見えた。

その日から私のなかで、日本という場所に感じていた「疎外感」が薄れた気がした。

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以上、21世紀日米枢軸日本の日常を記した短編となりなす。wikiへの転載はOKです。

ちなみにこのときアリーナの手当をした天音は各クラスに2人ずつ配置されている風紀委員の1人で、現実のアメリカ陸軍が設定するMOSの中でもトップレベルにヤバいMOS18Dに相当する技術と能力を有しております。

そして東京都は各公立学校の学級に1人ずつ彼女と同じ程度のスキルと能力を持った風紀委員を配置し、保健室に専属の風紀委員を配置しております。

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最終更新:2025年12月28日 22:36