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368 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/03(金) 22:21:19 ID:sp1-75-74-230.smd03.spmode.ne.jp [4/7]

憂鬱SRW支援ネタ 青春記録世界編SS「ヤシマ今昔物語」【PMC「カーペンターズ」襲撃】3


  • 現地時間午前9時38分 キヴォトス ブラックマーケット


 PMC「カーペンターズ」の敷地に高速で接近していくナギは、ビルの屋上から屋上へと軽く飛び越えつつも疾走していた。
強化外骨格のもたらしているパワーに、ナギ自身の脚力が合わさることで、それは自動車が出す速度を軽く超えていた。
水平方向だけでなく、上下方向への運動でも負けていない。ビルの高さはばらつきがあるのに対し、戸惑いも迷いもせず、減速さえせずに飛び越えていくのだ。
 しかも、その間にも攻撃が続く。弓から放たれる矢はカーペンターズ拠点にいる戦力や周囲に迫るドローンに次々と命中していくのだ。
激しい機動のなかでも連射速度も精度も落ちていないというのはまさに驚異的だ。

「……できるわね」

 だが、ナギはまるで油断していなかった。
 先ほどから断続してドローンによる攻撃を受けており、軌道修正や回避、あるいはドローンの排除を強いられているのを理解していたのだ。
このキヴォトスにおいて武装を施したUAVが普及しているのは知っていたし、こうして何度も戦場に出ていれば何度もぶつかることがあった。
ナギの実力をもってすれば一山いくらのドローンでしかないのだが、確実に時間を稼がれ、あるいは消耗を強いられていた。
矢を放って撃ち落とすのは簡単であるが、そのたびに矢が一本ずつ消費させられているのだ。
そうなったとしても問題はないのであるが、カーペンターズ側が効果があると理解してドローンを差し向けているのだ。
少なくとも、矢がなくなって困るのは確か。技によるフォローもできるが、飛び道具がなくなれば取れる選択肢が減る。
強すぎる相手に対し、ドローン程度で相手の攻撃手段を削ることを考えるのは、相手が場慣れしている証拠だ。
闇雲にぶつけてきたり、出し惜しみをするよりもはるかに考えている。

「!?」

 そして、次なるカーペンターズの一手は集中投入だった。
 これまで巧みにナギの侵攻ルートを誘導したことで、遮蔽物が少ないところでドローンにより包囲することに成功したのだ。
現れたのは機銃を搭載したタイプだけでなく、爆弾を抱えた爆撃タイプまでも含まれている。
待ち受けていて、最大限の効果を狙ったのがよくわかる。

「避けられない、ならば……」

 秘伝・渦雲渡り。
 瞬時に抜かれた太刀をふるえば、発生した真空波があらゆるものを切り裂いていく。
それは弾幕の嵐を切り払い、あるいは発生した爆発を刃がまとった風の刃が吹き飛ばす。
立体的に振るわれた刃による防御は、まさしく鉄壁と言えた。
 けれども、ナギは満足などしない。時間が刻々と稼がれているのだ。
 勝てないであろう相手に対してとるべき選択肢はいくつかあるが、予測されるのが殿を置いて戦力を逃がすという手だ。
殿が時間を稼げば稼ぐほど、カーペンターズの戦力は各地に散り、後に結集することも可能になるわけだ。
当然だが、撤退戦における殿は危険を伴う。命がけになるわけで、どう考えても犠牲者が出る。
とはいえ、ここは人殺しが忌避されるキヴォトスだ。どうやっても手心を加える必要があり、そういう意味では痛い目にあっても死ぬ可能性は低い。
 そして、奇襲効果と衝撃を与える関係から単独での襲撃を行っているナギに対し、これは非常に厄介である。
戦力の漸減が目的であるのに、効果を限定的にとどめられてしまっては意味がないためだ。

369 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/03(金) 22:22:21 ID:sp1-75-74-230.smd03.spmode.ne.jp [5/7]

「……邪魔ッ!」

 だから、ナギの刃は連続した。
 繰り出されるのは、嘉島巴流青巴の「纏い切り」。続けざまに飛んできていた弾丸などを神秘の刃で切り払ってしのぎ切る。
 そして、振り切った反動を利用して、さらに加速をたたきこんだのだ。
 加速して空中に浮かんでいる間に、ナギは弓を引き絞る。彼女の目にはすでにカーペンターズの拠点から離脱していく戦力が見えていた。
 逃がすわけにはいかないから、出し惜しみはしない。

「はぁ!」

 巴の雷を放ち、進路を塞ぐようにして動きを阻害。矢を惜しみなく放ち---連続使用で弦が限界を迎えて切れた弓を矢筒とともに投棄する。
弦を張り替える手間は惜しく、矢筒と合わせればかなりの重量を減らすことにもつながるためだ。
 続けざまに太刀に持ち替え、意識を集中させ---

「---秘伝・竜閃!」

 葦名において無双を誇った剣士の秘伝技を放つ。
 気が付けば飛んでいくようになったそれは、空中から一直線に伸び、逃げようとしていた機甲戦力を切り裂き、足止めをする。
それなりに道幅のあるブラックマーケットといえども、先頭を走っていた戦車がいきなり立ち往生すれば、自然と後続も足が止まる。

(時間がない……高位戦力に絞って撃破をする……!)

 優先順位を決めつつも、疾走し続けたナギはついにカーペンターズをとらえた。
 襲い来る弾丸を、しかし、怯むことなくはじく。キヴォトスの神秘を抜きにしてもこの程度の銃撃では怯むことさえない。
飛び道具が発達した分だけ、それをどうにかする技術を磨くのが近接武器の使い手というものだ。

「まずは一体……!」

 標的になったのは指揮官が乗っていると思しきゴリアテだ。
 こちらに武装を向けて、今にも引き金を引こうとしているのがわかる。
 だが、あいにくと遅すぎる。

『な、なんだと……!?』

 次の瞬間には、ゴリアテの頭部にナギの投擲した太刀が深々と突き刺さっていた。
武器を手放すはずがない、飛び道具はない、そういった思い込みをぶち壊す一撃だ。
 そして、無手になってしまったナギだが、いくらでも戦いようはあった。

「……スゥ……ハッ!」

 着地したのは、ゴリアテに随伴していた装甲車のすぐ脇。
 高高度から華麗に着地を決めたナギは、一瞬の溜めの後、その足で鋭く打ち抜く。
 面白いように装甲車が吹っ飛び、弾丸のごとき勢いで動きが止まっていたゴリアテの隊長機の胴体をぶち抜く。
その衝撃で抜けた太刀は空を舞い、飛び上がったナギの手に綺麗に収まった。

「……まとめて薙ぎ払います」

 そして、再び巴の雷が炸裂。ゴリアテや戦車、装甲車などがまとめて餌食となり、一帯の建造物もろとも大打撃を受けた。

370 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/03(金) 22:23:24 ID:sp1-75-74-230.smd03.spmode.ne.jp [6/7]

  • ブラックマーケット カーペンターズ指揮車両


「6号機、通信途絶!」
「ダメです!足止め部隊は壊滅的被害の模様!」
「ええい、ヤシマの教員はやはり化け物か!」

 隊長の叫びは切実だった。
 ドローンで相手の飛び道具を消耗させ、あるいは集団でぶつけて足止めをさせている間に、殿以外の部隊を逃がす。
その算段を立て、実行に移したまではよかったのだ。戦術的には負けたとしても戦略的な勝利は勝ち取れると考えての行動だった。
 だが、それをひっくり返したのだ。規格外なほどに強すぎるからという、とんでもない不条理で戦略を崩されかけている。
分散させていた部隊が次々と攻撃を食らい、逃げ出せているのが歩兵ばかりという事態に陥っているのだ。
その歩兵にしたって、組織的に撤退しているとはいいがたい。そもそも、無事に歩いて基地から出れた数が少ないのに、装甲戦力をたたく余波で打撃を受けているのだ。

「仕方がない、残存部隊には既定のパターンでの離脱を優先させろ。
 最悪歩兵だけでも逃がせばいい。戦車やゴリアテ、ヘリは囮にしてかまわん」
「ですが、それでは一矢報いることもできません!」
「馬鹿がッ!抵抗することさえ難しい相手だぞ、アレは!」

 戦闘能力の差があまりにもひどいからこそ、戦略的な勝ちを取りに行ったというのがわからんのか、と隊長は嘆くしかない。
とにかく必要なのは戦力を逃がすことだった。そのために時間を稼ぎ、殿部隊を用意していたというのに。
力のあるなしで、ここまで一方的になってしまうか、とため息をつくしかない。

「マーケットガードの戦力は?」
「ダメです、まとめて撃破されているようです!」
「っち、的を増やしただけか!」

 先ほどから絶え間なく雷鳴が聞こえ、あるいは破壊音が轟いているのは、どう考えても尋常な状況ではない。
戦闘音というよりは蹂躙の音だ。どちらが蹂躙しているかなどわかりきっている。

「隊長、巴ナギ、接近中!」
「近寄らせるな、弾幕を張れ!とにかく拘束するんだ!」
「りょ、了解!撃て、撃てーェ!」
「隊長、今すぐ撤退しましょう!」

 だめだ、とそれを否定する。
 腰のホルスターから拳銃を抜いて、チャンバーチェックを行い、弾倉を確認する。
この拳銃程度で勝てるとは思っていない。それでも、戦う意志だけは捨てたくはなかった。

「ここで戦わなければ、臆病者のそしりは免れない。おめおめと逃げて行き場を失えば本当におしまいだ。
 復帰がかなわないどころか、カイザーの圧で再就職もできなくなる。戦わなければ最低限の義理も通せないぞ……うぉっ!」

 その時、装甲車がいきなり真横にスライドしていった。
 壁面を見れば、なんとそこには人の足の形が穿たれている。

「……化け物がぁぁぁぁぁ!」

 そして、装甲車の装甲を切り裂いて乗り込んできた相手に、人とは思えない恐ろしい怪物に、部下たち悲鳴を上げ、逃げようとした。
 それでも、隊長はひるまずに拳銃を打ち続けた。太刀が一閃し、意識を失うその時まで。

 かくして、PMC「カーペンターズ」は襲撃により定義上の全滅を超えた被害を受け、消滅。
マザーカンパニーたるカイザーのもとに合流できたのは歩兵や一部の兵科の兵士たちばかりであった。
これを受けて、カイザーが企図していたヤシマ派遣学園への軍事的行動計画の一つはつぶされてしまうこととなった。
 同時に、改めてヤシマ派遣学園とその教員の力が裏でも表でも誇示されることとなり、より一層畏怖を抱かせることとなった。

371 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/03(金) 22:24:59 ID:sp1-75-74-230.smd03.spmode.ne.jp [7/7]

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決着ゥ!(フウカの声で

短くまとめ上げることができました。
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最終更新:2026年01月02日 20:02