286:earth:2024/08/25(日) 00:56:10 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
転生者、令和の地で斯く戦えり 第4話
緑の制服を吐瀉物塗れにし「あのクソ野郎・・・・・・」と呪いつつも、七道は何とか元の場所(司令部)への帰還を果たした。
勿論、そのあと大騒ぎになり、七道本人の精密検査や司令部周辺の調査などが大々的に行われたが、特に異常は発見できなかった。
安静にするため、病室のベットに横たわっている七道は天井を眺めて溜息を吐く。
「・・・・・・大言壮語するだけはある、か」
あの白い空間における交渉に要した時間は決して短いものではなかった。
だが司令部に残された映像では、彼の変化が起きたのは一瞬だった。
「時間と空間を自在に操る・・・・・・怪物と言っても過言ではないな。その程度のことが出来なければ、上位存在など気取っていられないか。
問題はその上位存在に無茶ぶりされることが確定していることだが・・・・・・真っ当な人生は、あの甘い話に乗った時に消えたという訳か」
「最初の転生で舞い上がっていた自分を殴りたい」と思いつつ、七道は頭を切り替える。
「とりあえずは、新兵器の開発と量産か・・・・・・地球環境再生して、バカンスは当面無理だな。まぁそんな気分にもなれないし、息抜きは
仮想空間で我慢するか。それに嗜好品も多少は生産できるからな。それで気を紛らわせることも出来るだろう」
その気になれば本物も同然の仮想空間(フルダイブ式)が用意できる。
御使いに言い放ったように、本物に拘る必要は無い。敢えて己の手で再生した地球環境で色々アウトドアを楽しむことに拘ったのは、これまでの
地獄のような環境から解放されたことを体感したかったという気分の問題だった。
だが今や諸悪の元凶と再度契約した上で、己の尊厳と命をかけた戦いが始まるというのだ。下手したら本土決戦で再び環境が汚染されるリスク
さえある・・・・・・この状況で地球環境を積極的に回復したいという気分にはなれなかった。
何より、そんな余暇を楽しめる時間はない。
「いや、一刻も早く復帰して・・・・・・新兵器開発で缶詰かな」
精密検査に入る前に、七道は秘書役のセラに「生産力増強の前倒し」を厳命していた。
しかし数だけ増やしてもすり潰されるだけの世界に行く可能性もある以上、質の強化は不可欠だった。
「とりあえずヒュッケバイン系を作るか。重力兵器満載のMkⅡは生産と配備に時間と手間が掛かるから量産型を先行するしかないか。ラムダドライバ、
他のオカルト関連の技術もぶち込めば何とかなる・・・・・・か。場合によっては大型MAも」
数を揃えるため、慌てて整備したウィンダムはバッテリー式だが使い勝手がよく、量産しやすい機体であったが、単独では力不足なのは否めない。
ヒュッケバインは前の世界では生産され、ダウングレード機(量産型)の配備計画があったが、彼(准将時代)の手元には回ってきていない。
何とかデータを入手したが、それらの機体の製造、運用体制については主人公陣営に敵対した陣営所属で色々と柵もあったこと、また時間的制約から
宇津帆島(元メリダ島)では整えきれなかった(ウィンダムが容易に生産出来たのもブルーコスモス系の派閥との協力関係があった為)。
このため、当面は量産しやすい機体とオカルト技術(これまでの輪廻で得た知見も活かせる)の合わせ技を七道は考えたのだが・・・・・・もはや、そんな
甘いことは言っていられない。
「母艦もそれなりのものがいるな。生産ラインの見直しがいるか。ああ、将兵、特に搭乗員も高い技能持ちがいるか・・・・・・手間の掛かる高性能な
演算能力持ちの人造人間ではキツいから、それなりに数が揃えられるタイプか・・・・・・怪人というか亜人の量産。いやはや、GPMの第五世代かな」
やらなければならないことを脳内で列挙していく度に、七道の顔色は悪くなる。
下手したら平行世界の地球をまるまる支配した連中と喧嘩する可能性もある上、敵との戦いで後ろから足を引っ張られないように、現地勢力との
交渉、場合によっては何かしらの支援(飴)が必要なケースも想定できる。
「多くの主人公がやるように悪い奴ぶっ飛ばしておしまい、で済ませてくれないか。これからデスマーチ、72時間働けますか、を実践しなくちゃいけないのか。
どこぞの世界征服を目指した悪の科学者殿の無茶ぶりより酷い。折角、学生時代まで若返ったのに、やることはサラリーマン時代と変わらない、
いやそれより過酷とか・・・・・・うん、都合の良いお優しい神とかいないんだな。ああ、目から塩水が」
どこか疲れたサラリーマンのような哀愁を漂わせつつ、今この瞬間だけは眠っておこうと七道は目を瞑った。
287:earth:2024/08/25(日) 00:57:30 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
天災によって荒廃した世界にて、蓬莱機関が狂ったかのように軍事力と生産力増強に奔走する頃、七道のように異世界に転生した者達による
騒乱もまた拡大しており、その様子に御使いを名乗る者達は冷めた視線を向けていた。
『やはり上手くやれるのは【限られた一部の個体】だけ、か』
『折角やり直せる好機をくれてやったというのに、私利私欲に溺れるとは。あの手の個体には、暫くは畜生としての生が相応しいな』
『力を与えたにもかかわらず、三大欲求に従って獣同然に成り下がる愚か者。承認要求を拗らせて自滅する者。己の思想、信仰を押しつける者。
・・・・・・或いは、これが押さえ込まれていたヒトの本性ということか』
『己は紳士的、或いは理性的に行動していると錯覚している個体も。いや、こちらはまだ救いがある個体もいるようだが』
人間では知覚できない空間にて会話が進む。
『己を哀れな子羊、被害者と思っている者は、痛みを知っているにもかかわらず、貸し与えられた力で異界の弱者に傲慢に振る舞うか』
『その果てに失敗すれば、我らに助けを求めるとは』
『その程度ということでしょう。奴らは猿から多少進化した程度の存在、【動物】でしかない』
『ただ一部だけでもまともな個体があるだけでも、それなりの成果と言えるのでは?』
『個体の成果は、個体の周囲の環境にもよる、と』
『平和な時代では、平凡な官吏にしかなれない男が、乱世では救国の英雄にもなり得る・・・・・・他にも少数の事例ながら、成果があったのですから
決して無駄なことではないかと』
『ふむ・・・・・・』
『或いは記憶を保持させたまま、長い時間、罰を与え続け、過酷な環境で精神を鍛え直させるというのも有効かも知れませんな』
『最近、確認された個体だったか』
『こちらとの契約を守るため、力を蓄えることに奔走しているようですが』
『確か、あの個体には今、力を貸し与えてはいない筈だな』
『はい。ですがあの個体は、長く続く償いの生の中でも、ヒトとしての精神を維持し、最後に多少の幸運を掴んだようで』
『ヒトの底力、か』
『無意識下に我らへの反骨心であったとしても、その結果、魂の強度が上がったとも』
『それでも英雄と言われる者達には届きませんな。あれの【格】はせいぜい、英雄譚を縁の下で支える者の一人程度かと』
『ただの凡人が、英雄譚でわずかでも名前付きで登場できる程度にまで昇格できたと考えれば、それなりの成果だろう。時間はかかっているが』
『この程度の成長、もう少し短時間で成して貰いたいものだが』
『成長が見られなかった個体でも、多少の時間と手間を掛ければ成長することが実証できたと思えば、よき前例かと』
『貴君の担当だから庇っているのではないのか? それとも情が移ったか?』
『まさか』
『いずれにせよ、多少は観察に値する個体ではあるだろう』
『左様。償いの過程で得た知恵と技術、そして最後の幸運で得た資産を抱えた、我らが直接、力を貸し与えていない個体。どこまで伸びるか』
『初陣相手の獣、ああ故障した作業機械でしたか。あれはうまく対処したようですが』
『確か、平行世界を認識した【作業機械】だったか。まぁあれは我らが力を貸し与えた個体が愚かな失敗をした為に生まれたが・・・・・・』
『拡散した【作業機械】へぶつけるというのも手か』
『失敗作はまとめて処理するという手もあるのでは。新たな試練の難易度の調整にもなるかと』
『だが舞台はどうする?』
『都合の良い場に心当たりが』
その後、膨大な情報がやりとりされ、その内容が精査され・・・・・・賛同を集めた。
『反対はしない』
『良いだろう』
『世界の理の調整は?』
『不可能ではないかと』
『なら問題は無い。あの個体、【七道】と言ったか。あの者の手札がそろったなら改めて通達を出すとしよう』
『おや、即刻、動かすことはしない、と』
『そこまで急かすようなことでもなかろう。それに・・・・・・多少待った方が良き結果を見られるやも知れん』
『その間に、場を整えるのも良かろう』
『墜ちた個体の成れの果てと這い上がってきた個体の生存競争。見るに値する見世物となるように期待しよう』
289:earth:2024/08/25(日) 01:01:01 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
というわけで次回以降、本格的戦闘に持ち込みたいですがどうなるか。
とりあえずバトルフィールドは決まった・・・・・・。
七道側の戦備はスパロボのリアル系ですかね。
もう少し整ったらヒュッケバインのガンナーは出したいですけど。
あとは戦艦(母艦)か・・・・
最終更新:2026年01月09日 21:48