アットウィキロゴ
538:earth:2024/09/22(日) 23:30:22 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 転生者、令和の地で斯く戦えり  第8話


 西暦202X年、日本標準時にして4月1日午前9時。
 この時、ユーラシア大陸、北米大陸、豪州大陸各地に合計8つの巨大な円錐状の黒雲が唐突に出現した。
 どの地域もそのときは晴天であり、何の前触れもなく突如として出現した異様な雲は人々に不安を与えたが、昨今の異常気象の経験から、
「異常気象の一環だろう」程度に思う人間も少なくなかった。
 各国軍も、突然出現したソレについて訝しみながらも、それが敵性存在などと早々に断じるようなことはしなかった。

「まずは情報収集だ」

 そのような命令が各国空軍部隊に伝達され、偵察機やドローンが動き出す。
 彼らの動きはあくまで平時のソレだった。接近した報道機関のヘリコプターや航空機がレーザーによって撃墜されたという報告が飛び込むまでは。

「雲の中から照射されたレーザーによって接近していたTV局のヘリが撃墜されたと!」
「何だと?!」

 各地の黒雲周辺の空軍基地に対し、スクランブルが掛かるが・・・・・・突然として無線通信が遮断され、有線電話すら酷いノイズが混じるようになる。
 当然ながら、各地の基地司令部は大混乱に陥った。

「各隊との通信が途絶!」
「周辺基地との通信途絶! 応答ありません!」

 続いてレーダーが使い物にならなくなったとの報告が飛び込み、司令部のモニターに映し出されていた筈の黒雲の映像さえも突然途絶える。
 このとき、世界中の無線通信が遮断され、携帯電話、GPSなども使い物にならなくなった。
 しかしそれはただの始まりに過ぎなかった。

「一般回線も遮断されています。有線回線もノイズが酷く・・・・・・」
「馬鹿な、どうやって有線回線を妨害して・・・・・・」

 バゴットビル空軍基地司令官は前例のない異様な事態に冷や汗を流した。

(一体、何なのだ・・・・・・まさかSF映画にあるような宇宙人の侵略とでも言うのか)

 何はともあれ、レーザー兵器を民間機に無警告で使用した(らしい)存在がケベックシティの目と鼻の先にあるレービに現れた以上、一刻の猶予もない。
 動かせる航空隊を洗いざらい出撃させていく。そんな中、オペレーターの一人が勢いよく司令官に振り返る。

「映像が回復します」
「何? モニターに回せ!」

 そこに映されたのは、彼らにとっては【朗報】とは評しがたい【火の海になっている市街地】の光景だった。

「「「?!」」」

 だがその驚愕から彼らが立ち直る暇はなかった。
 その直後、無数のレーザーが彼らの頭上に降り注ぎ、基地を焼き尽くす。
 出撃するために滑走路に並んでいた戦闘機隊は、飛び立つ暇も無く焼かれ、辛うじて飛び立てた戦闘機も、次の照射によって羽虫のように落とされていく。
 この日より、人類にとって地獄が始まることになる。

539:earth:2024/09/22(日) 23:31:01 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 4月1日、この日をもって世界各地の無線、レーダーが使い物にならなくなった。
 更に低軌道に配置されていた人工衛星、国際宇宙ステーションが地上からのレーザー攻撃により次々に破壊され、人類は低軌道を失うことになった。
 勿論、人類もやられっぱなしという訳ではない。彼らは何とか体制を整えて反撃に出る。
 一部では慎重論もあったが、ここまで敵意を明確に示す存在に対して、何もしないわけにはいかない。
 8カ所(フランス・リヨン、ブルガリア・ブダペスト、豪州・ポートヘッドランド、カナダ・レービ、メキシコ・コアツァコアルコス、ロシア・ブラゴエスチェンスク、
イラン・マシュハド、中華人民共和国・カシュガル)に出現した黒雲に対し、各国は派遣できる戦力を差し向け、これの撃破を試みた。
 その黒雲からは、まず巨大な黒い円柱が出現。彼らは雲を守るかのように円陣を敷く。
 各国はレーダー、無線誘導を無効化されたものの、誘導兵器はそれだけではないとして、別の誘導方式の兵器で撃破を試みたが、その大半は正確無比な
レーザー攻撃によって大半が撃墜され・・・・・・ごく僅かに円柱に命中した数発のミサイルでは円柱に傷一つつけられない始末だった。

「化け物め!」

 カナダの黒雲を攻撃するため、米海軍の空母打撃群から攻撃に参加していたF-18のパイロットはそう毒づくが、彼らにとっての悪夢は終わらない。
 黒雲からは、「今度はこちらの番だ」と言わんばかりに人類の全翼機を模したような大型飛行物体、その周囲に黒い小型円盤、リングなどが飛び出てくる。
大型飛行物体こそ両手両足で数えられる程度だったが、他の機体は数えるのも馬鹿馬鹿しい数であった。

「?!!」

 巨大円柱、大型飛行物体から、発射された無数のレーザーは前線に展開していた人類の航空戦力を瞬く間に焼き払った。
 更にぱっと見で武装がないように見えるリングはレーザーの向きを偏向し、生き残った戦闘機にレーザーを直撃させていく。

「撤退しろ!」

 慌てて撤退しようとするが、黒い小型円盤群に包囲された戦闘機部隊は片っ端から撃墜されていく。
 そればかりか追撃してくる巨大な全翼機から放たれたレーザー攻撃は原子力空母【ハリー・S・トルーマン】の装甲をあっさり貫き、その船体を焼き切った。
 燃料、弾薬に誘爆し、原子炉の閉鎖も間に合わず、原子力空母は轟沈した。数千人の乗員と共に。
 通常兵器では有効打を与えられないと判断した米軍上層部は、大統領に対し核兵器の使用を上申することになる。

「馬鹿を言わないで。アメリカ東部と目と鼻の先で核を使えと?! それもカナダ政府は了承していないのでしょう!?」

 まともに無線通信が使えない状況のため、エアフォースワンでは指揮が執れないということでシャイアン・マウンテン空軍基地で指揮を執っていた米国初の
女性大統領は、隣国かつ友好国に核兵器を撃ち込むことに躊躇した。
 まぁそれは道義的問題云々というよりは、後日になって己に降り注ぐであろう難事を予想できたからこその反応であったが。

「しかしこのままでは・・・・・・」

 軍高官の反論を彼女は遮る。

「そもそも今回の攻撃でミサイルが大半が撃ち落とされているのでしょう!?」
「ですから飽和攻撃を行います」
「東部を放射能塗れにするつもり!?」
「ですが、メキシコにも【敵】が出現している以上、放置は出来ません。このままでは南北から挟撃を受けます」
「・・・・・・メキシコは?」
「状況は芳しくないようです」

 軍高官から差し出された最新レポートに目を通すと彼女は顔を青くする。

「・・・・・・もう手はない、と」
「何より時間がありません。このままでは東部が連中の地上侵攻を受けることになります」
「・・・・・・」

 かくして米国は隣国かつ友好国のカナダの領土に対し、カナダ政府の許可を得ることなく飽和核攻撃を行うという一種の暴挙に出ることになるが・・・・・・
そんな彼らは【核弾頭が起爆しない】、【各地の原子力空母、原子力潜水艦が機能停止】という前代未聞の報告を受け取ることになる。
 それは既存の世界秩序を支えていた柱がたたき折られたことを意味していた。

540:earth:2024/09/22(日) 23:34:37 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
勢いとノリで仕上げた8話・・・・・・この世界の人類の難易度はかなり高めになりそう。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2026年01月09日 22:04