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639:earth:2024/09/28(土) 01:15:21 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 転生者、令和の地で斯く戦えり  第9.5話


 人類から【黒災】と名付けられた侵略者による大攻勢により、人類の戦線は総崩れとなった。
 黒災の航空戦力は生き残っていた軍事基地、上級司令部、政府機関、重要な、通信・交通インフラを徹底的に狙い撃ちにし、念入りに頭から潰していった。
 シャイアン・マウンテン空軍基地に逃れていた米国大統領と政府機関は難を逃れたが、ロシアなど一部を除く欧州諸国は、国家中枢の多くが攻撃を受け炎上。
少数の例外を除き国家機能は半ば麻痺状態に陥った。
 さらに情報を発信しようとしたマスメディアも徹底的に叩かれ、入念に人類側の目と耳を潰していき、生き残った者達も、ほぼ断片的な情報しか手に入れられなくなる。
 最後にパニックに陥った民間人の暴動で各部隊の移動すら侭ならなくなった頃、【黒災】はついに地上侵攻を開始する。
 多脚の多砲塔戦車(外見はT-35に近い)が尖兵として黒雲の下に立ちこめる霧の中から出現。更にその後ろには全高が40mに達する鋼鉄の蜘蛛が現れ、形骸化した
防衛ラインを突破すると、そのまま市街地を存分に蹂躙した。
 フランス・ブールジュ近郊では、生き残ったフランスの主力戦車・ルクレールを操る戦車兵たちが敵戦車(ここでは多脚戦車とも判らない)を撃破しようと出撃する。

「化け物共が! くたばれ!!」

 もはや近くの友軍がどのような状況かさえ判らないため、ヤケクソ同然の出撃だった。
 放った主砲弾(APFSDS)は、多脚戦車の前面装甲をえぐり取ることに成功し、フランス兵は喝采を挙げたが、それは短い物だった。

「元に戻っていく?!」

 映像を逆再生するかのように、修復されていく多脚戦車。
 周囲の生き残りの車両も自分達の攻撃が効かないことを認識したのか、及び腰になる。
 そんな反応をあざ笑うかのように、多脚洗車群から無数のレーザーが放たれ、戦車正面の複合装甲を瞬く間に焼き切り、ルクレールは炎に包まれる。
 それでも諦めない兵士は対戦車ロケット弾(APILAS)を撃ち込むが、有効打にならない。

「連中、不死身か!」

 生き残っている将兵は必死に司令部や友軍に状況を知らせようとするが、その多くが妨害されるか、通信相手が物理的に灰燼に帰していたので、その努力が報われる
ことは殆ど無かった。仮に幸運にも回線が繋がり、状況を知らせることが出来たとしても、通信相手も似たような状況であることを知る位が精々だった。

「逃げろ!!」

 戦意を喪失し、指揮も統制もなく、ひたすら生き延びようとする兵士達は北を目指したが、そんな兵士達をその巨躯に似合わぬ高速で移動する鋼鉄の蜘蛛が踏み潰していく。
 あまりに非現実的な光景にうつろな目をして地べたに座り込む者、現実を認められず、壊れるように笑う者。最期まで戦うとばかりに残った拳銃片手に応戦する者、と
様々だったが、結末は皆同じだった。
 もはや遮るものなどいないとばかりに、黒災は周囲を呑み込んでいき、先の大戦では戦禍を免れたパリも炎の海に沈むことになる。
 そしてこの手の悲劇は世界中で起きていた。

640:earth:2024/09/28(土) 01:15:58 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp

 アメリカ合衆国では自由の女神像がたたき折られ、世界経済の中心地だった大都市・ニューヨークもパリのように炎に沈む。
 かつて繁栄の象徴とされた高層ビル群は崩れ落ち、至る所で黒煙が立ち上る。
 祖国を守らんとした合衆国軍は排除され、もはや黒災の跳梁跋扈を止める者は存在しない。
 東部各地の都市には放置された遺体が転がり、辛うじて生き残った者達は安全な場所を求めて右往左往した。更にアメリカが銃社会であったことも、被害を拡大させた。
 黒災に向けて撃った弾の流れ弾に当たるのはマシな方で、安全な場所、価値のありそうなものを巡って争いが起きた。

「かき入れ時だ!」
「奪え!」
「女は犯せ!!」

 未曾有の大混乱を好機とみて、一部の輩は様々な店を襲撃して物品を略奪していく。
 空港などが真っ先に潰され、空路での脱出もできない金持ち達はシェルターに避難してこの危機的状況で命を守ることに成功したが、それも黒災の地上侵攻が始まるまでであった。
 本格的に侵攻を開始した黒災の攻撃は今まで以上に執拗であり、人間が逃げ込んだ施設を徹底的に潰して回ったのだ。
 金の力が一切通用しない化け物が問答無用で襲ってきた以上、彼らに出来ることは隠れ家を捨てて逃亡することだけだったのだが・・・・・・命からがら脱出した金持ち達は、
これまで見下してきた貧者に囲まれ・・・・・・これまでの鬱憤をぶつけられることになる。 
 そんな地獄のような光景を笑って見つめる男がいた。

「黙示録って奴かい・・・・・・全く、長生きするもんじゃないな」

 札束の入ったトランクケースを抱えて死んでいる老人の骸の横で、ボサボサ髪のホームレスのような外見をした初老の男は嘲るような顔をする。

「はっ、こんな状況でそんなもの、ケツを拭くぐらいにしか使えないぜ」

 かつて男が必死に求め、家族崩壊の原因となった【紙幣】の束。
 しかしこの状況下では、ただの紙でしかない。にも関わらず、それを頑なに離さない人間の結末に男は嗤う。

「全て滅ぶというのに、欲深いことだ」 

 そう言って男が視線を回りに向けると、様々な遺体が転がっている。
 老若男女、富める者も、貧しい者も、白人も、黒人も、黄色人種、様々だ。驚くべき事に彼らの大半は、黒災ではなく、同族であるはずの人類に殺されていた。
 そして彼らの多くは、恨めしげな表情で息絶えている。せめて家族に連絡を取ろうとしたのかスマホを握りしめた遺体もある。

「・・・・・・・こんな異郷で死ぬとは思わなかったって目だな。くっくっく、そうにらむなよ、俺ももうすぐそちらに逝くからな」

 世界各地に黒い死の津波が押し寄せていた。

641:earth:2024/09/28(土) 01:18:21 HOST:KD106172122062.ppp-bb.dion.ne.jp
あとがき
短いですが、各地の様子でした。
・・・・・・在留邦人とか酷いことになってそうですね。

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最終更新:2026年01月09日 22:11