453 :ひゅうが:2012/04/12(木) 22:21:18
――西暦1923(大正12)年12月某日 帝都東京 某所
「何なのです?新島が誕生したことは聞いていましたが、突然招集があるなんて…」
ここは
夢幻会の「会合」の席上。
帝都復興に伴い増えている中華料理屋の一角である。
夢幻会の面々は、帝都復興計画にかかりきりの中呼び出されたので少し苛立っていた。
想定外の富士山噴火まで起こっていたから手が足りないのだ。
「いえ、それがですね。」
議長の伏見宮に促され、立ちあがったのは夢幻会には珍しいSFファンの田所という若い学者だった。
外見は某小林桂樹によく似ており、ぶっちゃけた話、某日本沈没(1973年版)の田所博士そっくりである。
嶋田は、いやな予感を覚えつつも彼(ちなみに触手モノが好きらしい。SF的な意味で。)が配布した資料を手に取った。
「なに・・・これ・・・」
「チート資源島きた!これで勝つる!!」
「というかなんで海底遺跡っぽいものまであるんだ!?」
彼の報告に、「会合」は混乱のるつぼと化した。
あの関東大震災の後、演習中だった連合艦隊主力は東京湾へとって返したが、脚の遅い旧式艦はその辺をうろうろしていたらしい。
その過程で、大東諸島沖に新島が誕生していることが判明。日本政府はとりあえずとばかりに領有宣言をして「瑞穂島」と適当に名付けて放っておいた。
そのまま無数の小規模地震を伴って隆起を続けたこの島は、地震から2カ月たった現在四国と九州をあわせた程度にまで広がっているらしい。
しかも、危険を冒して調査に赴いた田所は、この島に大規模な油田の存在を確認していた。
未確認情報では良質な石炭まで出るらしい。
「しかもです!!」
田所がどこかいっちゃった眼で力説しはじめる。
いわく、この島は古い大陸の一部である。
石炭紀の石炭層の生き残りとかがあり、しかも恐竜の時代に形成された中東の油田(あとバクーのあたりとか)と同様の地質を有する部分もある。
埋蔵量はペルシャ湾岸ほどではないものの、北樺太油田を上回ることは確実だ。
おまけにフィリピン海プレートの海底であったため、数千万年にわたって熱水噴出孔から貴金属を含んだ熱水を噴出させたりしていたため菱刈金山に匹敵する異常な高品位の金鉱石もとれるだろう。
その後は形成の過程についての長いうんちくを聞き流しつつ、会合は頭を抱えた。
「先に領有宣言しといてよかったな。」
「というか何でこんなものが?」
「いや、案外史実でもフィリピン海の海底にはこんなものが眠っていたのかもしれないぞ?」
「さしずめ現代のムー大陸ですか。」
「ふふ。ふはははは!!」
「おい辻、どうした?」
「駄目だ。こいつ高速言語で資源チートをほめたたえてやがる。」
「でもどうします?こんなおいしい島、あのべいて~様とか腹黒紳士が放っておきますか?」
嶋田に一言で、場の空気は凍った。
喧々諤々の議論の末、とりあえず先に人を送りこんでおいて、そして改めて資源見つけたといっておくうえ、海外資本にもある程度の参加は許容するということで話はおさまった。
が、夢幻会はこの時想像もしていなかった。
ソ連があっけなく大分裂したり、中華民国が大飢饉の末に内戦状態に陥ったり、世界恐慌が1936年にまで先延ばしになったり、あとヒトラー政権誕生が1939年までずれこんだりすることを。
あと深刻な世界恐慌から第2次大戦が起こる前にローズヴェルトが戦争を吹っかけてくることを。
【続かないw】
最終更新:2012年04月15日 06:24