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『真壁次男、発つ!』 - (2013/06/19 (水) 00:52:53) の最新版との変更点

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*『真壁次男、発つ!』 #style(line-height:23px;font-size:15px){ 職場休憩室。 そこは簡素でこそあったものの、ソファーにテーブル、衝立、僅かばかりの調度品が設えられた必要最低限の空間は、真壁次男の好むところであった。 せかせかと部屋に入ると、座り込むでもなく携帯の通話を開始する。画面には「ロゼ」の表示。 「あ、繋がった。もしもし、兄貴?」 「おう、ロゼ。……どうした?」 勤務時間中は、基本的にロゼ子から電話を掛けることはない。彼女からの着信があった時、それは即ち緊急の連絡を意味する。 そして此度の着信もその例に洩れなかった。 ――マリアが忽然と姿を消してから、どれ程経っただろうか。いくら捜せど、その足跡は辿れなかった。 いつまでも家族を失う悲しみに足を止めていたわけではない。 けれどどこかで平和を讃える声があがる度、何に向けられるとも知らぬ怒りが心の内で沸々と燃え上がった。 世界の平和を享受する権利は、我ら兄妹には与えられなかった。次男は、そんなふうに考えいた。 学校へ行くロゼ子を送り出し、会社へ向かう。帰り、飯を食べ、他愛もない会話をし眠り、また朝が来る。 月に二度、二人でマリアを捜しに出る。手掛かりはなくとも、進展が無くとも、最早やめることの出来ない日常となっていた。 たまの麻雀も、なんとなく、どちらも平和で和了る事はしなかった。 「それじゃあ……今、希望崎にマリちゃんがいるのか……!?」 「うん……多分ね。だからさ、あたし番長グループに入るよ。今、番長Gの友達と向かってるところ。一般生徒はなかなかあの辺うろつきにくいから」 「そっか……」 マリアが、生きている。 転校生として。 例えそれが次元を違えた存在なれど、そんなものはどうだっていい。 また会えるのだ。家族三人が、揃うのだ。 なんだか、頭の整理が追いつかない。 目頭が熱くなる。 「兄貴?」 「ああ……はは、悪い。でもロゼ、大丈夫か? 転校生の身内が無事に受け入れられンのかな……少し心配だ。俺も一緒に行くから、その子には悪いけど、時間潰して待っててもらってもいいか? 学生の頃は俺も番長グループ所属だったしな。OBだ」 「ほんとに? 兄貴がいてくれたら心強いよ! じゃあお願いしてみるから、ちょっと待ってて」 ロゼ子が携帯を口元から離す。数秒程待つ。 なんかガバガバ聞こえるが、一体何の音だろう? 「もしもし! オッケーだって。……あ、でも仕事は?」 「んー、そうだな。ンなもん休職届でも出して、まァ……どうとでもするさ」 「そういうの、急に取れるもんなの? ……あんま無茶なことしないでね」 「なァに、心配すんな。マリちゃんが生きてるんだ、そうとわかればこれくらい屁でもねェ!」 「ん……そっか、そうだよね! わかった。じゃあ、あたし学校で待ってるから。また後で連絡して」 「おう、わかった!」 そう、これくらいの事は屁でもない。 また三人で暮らすのだ。 次男は休憩室を後にした。決意に燃える、男の背中であった。 ◆◆◆ 「あ゛あ゛あ゛!? 休みたいだあ!?」 そそり立つリーゼントがビヨビヨと全方位にしなり、真壁の全身を容赦なく叩く。 部長、人情敦。投げやりなネーミングに違わぬ、人情に厚い男であった。 だからまあこの先続く会話劇はぶっちゃけ茶番みたいなものなのだが、省略する理由もないので以下に全文を掲載する。 「ええ。いつまでになるかはまだわかりませんが」 「ふざっけんなよ!? おめー、今大事な時期なのわかってんだろうが! 残ったタスクどうすんだ! ほっぽり出すのか!(ビヨビヨ)」 「今回は……そういうことになります。ですが、帰ってきたら必ず埋め合わせを……」 「そうっっじゃねーよ!!(ビヨッ)今!(ビヨビヨッ)今おめーの抜ける穴が埋まんねーの!!(ビヨンビヨン)後でいくら頑張ろうが今の穴は埋まらねーんだよぉぉ!!(ビヨヨ~ン)」 「…………すみません」 「ハァーッ、ハァーッ! ワケを……言ってみろ……!(ヘニョリ)」 「……行方不明になっていた妹の居場所が、わかりました。家族で、迎えに行ってやりたいんです」 「……おう……(ビローン…)」 「あの子は今、魔人同士の学内抗争に巻き込まれています。引っ込み思案なところはありますが、優しい子です。戦いには向いてません」 「…………おう(ビョロロン…)」 「……無茶を言っているのはわかっています。できることなら、なんだってやります。どうか」 「…………(ビョロー…)」 「あの……?」 「……ウッ、ヒグッ(オーイオイオイ)……おめー……おめーあれだぞ? 今抜けられたら、正直経営傾いてもおかしくねーんだからな(ビヨンヨンヨン)」 「……! 本当にすみません。その時は、戻り次第俺も立て直せるよう尽力してみます」 「あ゛あ゛!?(ビョーン!)『してみます』だぁ!?(ビョイーンビョイーン!)」 「や、やってみせます! 必ず!」 「ケッ!(ビロビロ)……おし!わかった、俺の負けだ。(ピヨンピヨン)おめーの覚悟はわかったよ……(ビヨビヨ)」 以上。 おわかりかと思うが、()内はリーゼントの挙動である。 こうして次男の休職届は、無事に部長・人情敦に受理されたのだった。 } ---- #center(){&size(18){[[【続編】『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』へ移動>『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』]]} &size(16){[[潮血潮--熱い血のルーツ--1へ移動>潮血潮--熱い血のルーツ--1]]<<|[[番長GSSへ移動>番長GSS]]|>>[[『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』へ移動>『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』]]}}
*『真壁次男、発つ!』 #style(line-height:23px;font-size:15px){ 職場休憩室。 そこは簡素でこそあったものの、ソファーにテーブル、衝立、僅かばかりの調度品が設えられた必要最低限の空間は、真壁次男の好むところであった。 せかせかと部屋に入ると、座り込むでもなく携帯の通話を開始する。画面には「ロゼ」の表示。 「あ、繋がった。もしもし、兄貴?」 「おう、ロゼ。……どうした?」 勤務時間中は、基本的にロゼ子から電話を掛けることはない。彼女からの着信があった時、それは即ち緊急の連絡を意味する。 そして此度の着信もその例に洩れなかった。 ――マリアが忽然と姿を消してから、どれ程経っただろうか。いくら捜せど、その足跡は辿れなかった。 いつまでも家族を失う悲しみに足を止めていたわけではない。 けれどどこかで平和を讃える声があがる度、何に向けられるとも知らぬ怒りが心の内で沸々と燃え上がった。 世界の平和を享受する権利は、我ら兄妹には与えられなかった。次男は、そんなふうに考えいた。 学校へ行くロゼ子を送り出し、会社へ向かう。帰り、飯を食べ、他愛もない会話をし眠り、また朝が来る。 月に二度、二人でマリアを捜しに出る。手掛かりはなくとも、進展が無くとも、最早やめることの出来ない日常となっていた。 たまの麻雀も、なんとなく、どちらも平和で和了る事はしなかった。 「それじゃあ……今、希望崎にマリちゃんがいるのか……!?」 「うん……多分ね。だからさ、あたし番長グループに入るよ。今、番長Gの友達と向かってるところ。一般生徒はなかなかあの辺うろつきにくいから」 「そっか……」 マリアが、生きている。 転校生として。 例えそれが次元を違えた存在なれど、そんなものはどうだっていい。 また会えるのだ。家族三人が、揃うのだ。 なんだか、頭の整理が追いつかない。 目頭が熱くなる。 「兄貴?」 「ああ……はは、悪い。でもロゼ、大丈夫か? 転校生の身内が無事に受け入れられンのかな……少し心配だ。俺も一緒に行くから、その子には悪いけど、時間潰して待っててもらってもいいか? 学生の頃は俺も番長グループ所属だったしな。OBだ」 「ほんとに? 兄貴がいてくれたら心強いよ! じゃあお願いしてみるから、ちょっと待ってて」 ロゼ子が携帯を口元から離す。数秒程待つ。 なんかガバガバ聞こえるが、一体何の音だろう? 「もしもし! オッケーだって。……あ、でも仕事は?」 「んー、そうだな。ンなもん休職届でも出して、まァ……どうとでもするさ」 「そういうの、急に取れるもんなの? ……あんま無茶なことしないでね」 「なァに、心配すんな。マリちゃんが生きてるんだ、そうとわかればこれくらい屁でもねェ!」 「ん……そっか、そうだよね! わかった。じゃあ、あたし学校で待ってるから。また後で連絡して」 「おう、わかった!」 そう、これくらいの事は屁でもない。 また三人で暮らすのだ。 次男は休憩室を後にした。決意に燃える、男の背中であった。 ◆◆◆ 「あ゛あ゛あ゛!? 休みたいだあ!?」 そそり立つリーゼントがビヨビヨと全方位にしなり、真壁の全身を容赦なく叩く。 部長、人情敦。投げやりなネーミングに違わぬ、人情に厚い男であった。 だからまあこの先続く会話劇はぶっちゃけ茶番みたいなものなのだが、省略する理由もないので以下に全文を掲載する。 「ええ。いつまでになるかはまだわかりませんが」 「ふざっけんなよ!? おめー、今大事な時期なのわかってんだろうが! 残ったタスクどうすんだ! ほっぽり出すのか!(ビヨビヨ)」 「今回は……そういうことになります。ですが、帰ってきたら必ず埋め合わせを……」 「そうっっじゃねーよ!!(ビヨッ)今!(ビヨビヨッ)今おめーの抜ける穴が埋まんねーの!!(ビヨンビヨン)後でいくら頑張ろうが今の穴は埋まらねーんだよぉぉ!!(ビヨヨ~ン)」 「…………すみません」 「ハァーッ、ハァーッ! ワケを……言ってみろ……!(ヘニョリ)」 「……行方不明になっていた妹の居場所が、わかりました。家族で、迎えに行ってやりたいんです」 「……おう……(ビローン…)」 「あの子は今、魔人同士の学内抗争に巻き込まれています。引っ込み思案なところはありますが、優しい子です。戦いには向いてません」 「…………おう(ビョロロン…)」 「……無茶を言っているのはわかっています。できることなら、なんだってやります。どうか」 「…………(ビョロー…)」 「あの……?」 「……ウッ、ヒグッ(オーイオイオイ)……おめー……おめーあれだぞ? 今抜けられたら、正直経営傾いてもおかしくねーんだからな(ビヨンヨンヨン)」 「……! 本当にすみません。その時は、戻り次第俺も立て直せるよう尽力してみます」 「あ゛あ゛!?(ビョーン!)『してみます』だぁ!?(ビョイーンビョイーン!)」 「や、やってみせます! 必ず!」 「ケッ!(ビロビロ)……おし!わかった、俺の負けだ。(ピヨンピヨン)おめーの覚悟はわかったよ……(ビヨビヨ)」 以上。 おわかりかと思うが、()内はリーゼントの挙動である。 こうして次男の休職届は、無事に部長・人情敦に受理されたのだった。 } ---- #center(){&size(18){[[【続編】『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』へ移動>『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』]]} &size(14){[[潮血潮--熱い血のルーツ--1へ移動>潮血潮--熱い血のルーツ--1]]<<|[[番長GSSへ移動>番長GSS]]|>>[[『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』へ移動>『真壁次男、発つ!~爆闘・地獄の休職バトル篇!~』]]}}

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