人間は醜い。
人間がいなくなれば、美しい国ができる。
だから、自分は。
『―――俺は人間をやめるぞ!!』
織田信長。
奴だけは、奴だけは絶対に絶対に絶対に殺す。
美しい国を作るのは、自分でなければいけない。
「畜生不幸だ不幸ですよ不幸以外の何物でもねぇぞこの状況―――ッ!」
ごく普通の高校生、上条当麻は絶叫しつつ路地裏を疾走していた。
彼は不良に絡まれては大人数で追い回されるというシチュエーションを飽きるほど経験している。
しかし。
だがしかし。
「そりゃあ俺は否定できねぇよ、事実同じ顔の人間が9000と970人ジャストいるのを知ってるし! っつーか全員知り合いだし!
でも何だってこうも同じ奴ばかりわたくし上条塔麻を狙って来るんですか! これはアレか俺に個人的な恨みでもあるのか神様!!」
うがーっ!! と頭を抱える上条。
背後から追ってくるのは、青い帽子を被り、同色のマントを靡かせる、オレンジ髪の女の子。
「GUUUUUUUOOOOOOOOO!!!!!!!」「か、かゆう、うま……」「わたしの おうじょとしての ちがさわぐ!!」
「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殴潰殺圧殺抹殺撲殺―――」「待てええええええ、小僧おおおおおおおお、殺してやるうううう」
そんな風貌の人物が、だいたい『30人』程。
よく見れば目線が虚ろだったり異常に目が飛び出ていたりやけにおちょぼ口だったり色々細かな違いはあるものの、大別して同じ人間と言ってよかった。
どいつもこいつも発言がブチ切れており、その言葉には殺意が宿っているのも共通点と言える。
さて、想像してみてほしい、街中で同一人物30人弱(with殺気100%)に追いかけられた場合のことを。
それは尋常ではない恐怖だろう。もちろん上条も同じモノを現実(リアル)に感じている真っ最中である。
何より今重要な事実として、以下のような疑問点が一つ。
問一:もしこの集団に追いつかれてしまったら自分はどうなりますか? (10点満点)
「死ぬ! 絶対死ぬ! 今まで何回も死にかけた上条さんでもこればかりは無理! 30人もの数の暴力には勝てませんから! 明らかに!!」
本気で泣きつつ上条は建物の角を曲がる。と、そこには。
「…………………………………………………………………………………………あ。死んだな俺」
行き止まり。
ジ・行き止まり。
これより上は無いぐらいの袋小路(デッドエンド)。
―――もう逃げることができない、という残酷な現実。
全てを諦めたような優しい笑みを浮かべて、上条は振り返る。
31人もの殺戮者が、一人も欠けず、そこにいた。
「さて。生き急ぐというのは、果たして美しいと言えるのか―――」「あはははははははははははははははははははははは」
「Oh, You are very very tough guy. Then, Are you ready the dead?」「ねえねえねえ、今何考えてるの? 怖い? 死ぬのが怖い?」
「■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!」「Lei e ragazzo molto difficile. E poi, pronto il morto?」
それぞれがそれぞれに狂った言葉を叩き付けてくる。上条はその異様さに後ずさった。合わせて、殺戮者達も同じだけ前進する。
やがて、背中に壁を感じた。これ以上は下がれない。にも関わらず31人はじわじわじりじりと距離を詰めてくる―――
「ぁ、ああああああああああああああああああああああ!?」
上条は、もはや何か叫びながら、がみしゃらに両腕を振り回しつつ、敵に突っ込むことしかできなかった。
特攻する少年を温かく冷酷に包むが如く、人の群れが動き、上条を円形に取り囲み、
直後、まるで蟻が熊を噛み殺すかのような動きで、一斉に飛び掛った。
瞬間。
バギン!! と。
ガラスが砕けるような音が、路地裏に響き渡る。
『!?』
本能的にか、少年に覆いかぶさっていた31人のうち、25人が飛びのいた。
動かなかった6人は―――文字の通りに、動かない。その気配もない。
ずるり、と。
派手な音もなく、6人が6人とも力なく、崩れ落ちた。
その中心にいる無傷の少年は、己の右手を呆然と見つめている。
「そうか―――」
ぼんやりとして、上条は呟いた。
「そういう、ことか―――」
しかし、呆けていたのも僅かの間。瞳に力が戻る。
その力ある眼で、25人の敵を見回す。
『ひっ』
両の眼には、確かな“力”が存在していた。
『お前らごときには負けない』―――そんな灼熱じみた意思がチカラとなり、殺戮者を戦慄させる。
恐怖に追い立てられた彼女達にできるのは、無理矢理に自分を焚きつけ、標的へ襲い掛かることだけだった。
25人のうち、4人が風のように接近し、その鉄拳を叩き込もうとして、
「邪魔だ」
バギン!! と。
上条が大きく振り回した右手は、4人を僅かに掠めただけだった。
にも関わらず、それに触れた瞬間、敵は倒れ臥し、二度と動かなくなる。
彼女達には、標的が何をしているのか分からない。何故圧倒的有利な立場にいる自分達が倒されるかが分からない。
そんなことは知らない、とでも言うかのように。未知の恐怖を備えたソレは、初めて自ら動いた。
ダン! と、大きく前方の1人に向け、踏み込む。上条は、大きくその右腕を振りかぶり、
「!!」
狙われた彼女は、咄嗟に腕をクロスさせ防御しようとして―――気付き、果てのない恐怖に身を凍らせた。もう遅い。
上条渾身の右ストレートが強かに強かに彼女の防御にぶち当たり、その両腕から、足から、全身から力が抜け、倒れた。
間髪入れず、20人のうちの何人かが、何事かを叫びながら襲い掛かる。
少年は、ただ右手で大雑把に周囲を薙ぎ払うだけ。全員が全員とも倒れる。
襲い掛かる。
倒れ臥す。
また襲い掛かる。
やはり倒れ臥す。
それでも襲い掛かる。
例外無く倒れ臥す。
襲い、襲い、襲い。
倒れ、倒れ、倒れ。
襲い、倒れ、襲い、倒れ、襲い、倒れ―――
こうして、分裂の壺で増殖したアリーナ255人のうち、31人がある少年一人の手によって倒された。
微細な光を放ちながら、そこら中に倒れているアリーナ達が消滅していく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
荒い息を吐きながらも、やはり上条は無傷だった。
幻想殺し(イマジンブレイカー)。
それが上条当麻の右手に宿る力である。
魔術や超能力といった『異能』の類であれば、問答無用で打ち消す破壊の右手。
この場合、分裂の壺で現れた分身は、全身が『異能』のようなモノで構成されていた。
そのため、直接体に触れずとも、服を掠るだけで幻想殺しはその効果を発揮した、ということである。
無論、それは上条の知る所ではないが。
「……、何なんだよ、本当に」
上条はぐったりしながら一人ごちる。
突如放り込まれた殺人ゲーム。
見知らぬ街。
壊れた殺人者達。
「ちくしょう、何なんだよ本当に…………ッ!」
全てに対する理解不能。
それらに対し、自分はただ受け入れるしかない、この現状。
やり場もなく溜まっていく苛立ちが、上条にギリリと歯軋りをさせて、
ドゴン!! と。
辺りを揺るがす轟音が、遠くから伝わって来た。
「!?」
地震―――にしては、随分と突発的で、振動は一瞬だった。
ズズン、ズズン、と断続してその衝撃は響いてくる。
もはや何が起こっているのか、上条は全く判断がつかなかった。
「くそっ!」
それでも、上条は足を震源に走らせる。
もううんざりだった。倒すだの、倒されるだの、殺すだの、そんなことは。
だから、これ以上
ゲームに乗ろうとしている奴が存在するのなら―――
「―――なら、そのふざけきった幻想は、俺がぶち殺す!」
上条当麻は、事態の中心へと勢いよく踏み込んでいった。
それは、地獄以外の何物でもなかった。
『…………安部晋三でございます…………安部晋三でございます…………安部晋三でございます…………』
黒く、巨大なナニかが、眼に煮えたぎる怒りを宿らせ、大量虐殺を行っている。
逃げようとした者達が、天から次々と降り注ぐ巨大な本―――『美しい国』に圧殺された。
その場に立ち竦み、腰が抜けて動けない人々が、ソレの眼から放たれた破壊光線で炭と化す。
圧倒的蹂躙。形容としてはそんな所が妥当だろう。
「な―――」
あまりの光景に、上条は言葉を失うしかない。
「何、を―――」
失った言葉は、即座に怒りを燃焼させる助燃剤と化す。
「―――してやがる、テメェ!!」
怒りは、沸点を越えると共に、上条の体を疾走させた。
―――この右手は便利だ。テストの点も上がらず不幸ばかり引き寄せるが、あのクソ野郎をブン殴ることができるんだから。
走ってくる上条に気がついたのか―――黒い塊、安部晋三は視線だけをそちらへ向ける。
『世界の未来は―――』
そう声が辺りに響いたかと思うと、安部は眼を光らせ、その眼から純白の破壊光線を照射する。
ゾン!! と。
摂氏九千度を軽く越える白光が、上条を灰にしてしまおうと迫る。
「それがどうしたってんだ!」
上条は、右手で光を裏拳気味に払った。バギン!! と、ガラスが砕けるあの音がする。
それだけで、灼熱の死閃は空気に溶けるように消え去ってしまった。
『―――。世界の、未来は―――』
一瞬だが、確実に安部は動揺した。自分の必殺を右手一本で無力化されたのだ。
しかし、距離は10メートル程。まだまだ余裕があるのも事実。
再び安部は、眼に光を集め―――その『死』を開放する。
鉄だろうダイヤだろうが、余す所なく両断し、燃やし尽くす収束熱レーザー。
(あれは、何かの間違いに決まっている)
そんな気持ちを隠すかのように、安部の眼から白い閃光が穿たれる。
大地を走りながら、白線は上条を両断しようと襲い掛かった。
だが、
「オラァ!」
だが、軽く上条が振るった右手に、あっさりと必殺は打ち消される。
間合いは6メートル程度。まだ、余裕はある。あるのだが。
『―――!? 美、しい国、日本ッ!!』
安部は動揺を隠せない、隠せないが―――それでも、別の攻撃に切り替えることで、主導権を取り戻そうとした。
レーザーが駄目ならば、他の手段で殺す。そう決めた安部が精神を集中させれば、一つの奇跡が起きる。
彼らの上空千メートル。何もない空間に、突如大人三人分ぐらいの全長を持った『本』が現れた。
表紙には『美しい国』と記されている。
物理法則を平然と無視して、虚空に顕現を果たしたそれは、
次の瞬間、恐るべきスピードで地上へ向けて落下を始めた。
千メートルなど、ものの数秒程度で埋めてしまう、尋常ではない速度だ。
「―――ッ!」
暗くなった視界に気づき、上条が空を見れば、化け物じみた『本』が落下してくるのが見える。
安部はその上条に浮かんだ『焦り』を見て、「殺した」と確信した。
『本』は10t程度の重量があり、九千度の熱に耐えられるような物質でも、容赦なくその破壊力で粉砕する。
例えるなら、極めて小型の、しかし正真正銘本物の隕石が落下してくるようなものだ。
轟!! と、空気が唸りを上げ、超重物体の到来を告げる。
上条には、それを避けることも生身で耐えることも叶わず、ただ安部をじっと睨むことしかできずに、
「邪魔だ」
バン!! と。
上条は、『本』を見ることすらしなかった。
取った行動は、右の掌を高々と掲げる。それだけ。
それだけのことなのに、上条の手に触れた『本』は一瞬で砕け散り、欠片を残すこともなかった。
『――――――』
安部は、何も言えなかった。
何かを、しようとも考えられなかった。
ただただ、頭を占めるのは、目の前に歩いてきているモノに対する恐怖。
怖い。
怖い怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、怖い怖い怖い。怖い。
距離は、もう3メートルあるかないかだった。
じゃりっ、と。荒れ果てた道路を踏みしみ、上条が近づいてくる。
安部は―――。
『……。北朝鮮も、この―――』
その巨体に似合わぬ速度で、方向転換し、逃げの体勢に入った。
いや、正確には入ろうとした。
何故ならば―――それを見越していたかのように、上条が地を蹴り安部との間合いを一気に詰めたからだ。
間合いは、ゼロ。
『!!!?! せ、世界の未来は――――――ッ!!』
安部が慌てて背後に光線を放つ前に、
ゴン!! と。
上条の右拳が、安部の巨体に突き刺さった。
その瞬間、安部は体から力が急速に抜けていくような感覚に包まれた。
安部の知る由もなかったが、死体と融合していたジェノバ細胞・ノロウィルス・Gウイルス・スーパーモスキート―――等との超魔的結合が、全て上条の一撃で断ち斬られたのだった。
ザラザラと、音を立てて、安部の体が徐々に灰化していく。
灰は風に晒され、どこかへ飛ばされていく。
この様子では、一片残さず安部の存在した痕跡は消え失せるだろう。
『私は―――』
安部は、最後に頭に浮かんだ言葉を、無意識に紡いでいた。
『―――私はただ、美しい国が作りたかっただけなのに』
それが全てだった。
平成18年度自民党総裁・安部晋三は、文字通りにこの世から消滅した。
僅かに伺える灰の残滓を前に、彼は何を思ったのか?
「……、上等だ。第六天魔王だかなんだか、そんなことは俺の知ったことじゃない―――」
上条当麻は、盗聴器が仕掛けられていることも知らず、宣言した。
「―――織田信長。まずはテメェの壊れた幻想……俺がこの手でぶち殺す!」
誰に言うでもなく、しかしその咆哮は周囲へ深く響いていった。
何処までも、何処までも―――
【東京都内
二日目午前1時】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:強い怒り
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
エクスカリパー@FF5 超こち亀(デジ亀付属) リーサルドラグーン×2@サガフロンティア
[思考]:1.ゲームを終わらせる
2.知り合いを探す
3.信長打倒のため、ゲームに乗っていない参加者を探す
【アリーナ3・9・17・22・25・29・43・51・61・77・80・101・115~120・132・179・199・222・230・236・240・241・247・253~256 消滅】
【金正男@北朝鮮 死亡】
【ワーロック@シャドウゲイト 死亡】
【ウェッジ@FF6 死亡】
【のみ@ぷよぷよ通 死亡】
【スライム@サガフロンティア 死亡】
【メタナイト@星のカービィ 死亡】
【ネイダー@バッカーノ! 死亡】
【野比のび助@
ドラえもん 死亡】
【ふっかつしゃ@星をみるひと 死亡】
【八代尚宏@国際基督教大 死亡】
【ブッチャー@ロマサガミストレルソング 死亡】
【岡星良三@美味しんぼ 死亡】
【恐田奇一郎@DEATH NOTE 死亡】
【師匠@アトランチスの謎 死亡】
【ゼクシオン@キングダムハーツ2 死亡】
【安部晋三@自民党 死亡】
最終更新:2006年12月20日 17:44