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大空を駆る空母。
幕張メッセを太陽の光から隠すかのように存在感を現しているその艦は、今や激戦の真っ只中にいた。

響く大轟音。
飛び交う幻獣達。
艦から放たれる砲撃。
魔法衛士隊の魔法の嵐。
空母を攻めて来るドラゴン達。

もはや殺し合いから戦争へと発展してしまっているその戦い。
否応なく巻き込まれた者と自ら剣を取った物。
両者に共通する願いはただ一つ。
この戦いに勝利する事。
細かい想いはバラバラだが、今この時根底から望んでいた事は皆変わらない。
美しい青天を飾る色取り取りの役者達は皆、それだけを想い舞台に立つ。

  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

海馬瀬人は冷静に南千秋へと命令を送る。
三次元に放たれる敵の攻撃をかわせる様に、次々と、次々と。
命令をする彼自身が攻撃に移る隙は無く、ただ無闇に体力を削られるだけだった。
仲間達も、千秋が避け切れなかった攻撃を迎撃するので手一杯。
このままでは負ける。
それが分かっていたからこそ彼の決断は早かった。
「出でよ、レッドアイズブラックドラゴン!」
カードデッキから夏奈のカードを取り出し、召喚。
「出でよ、ウォータードラゴン!」
続けざまに春香のカードを取り出し、召喚。

苦肉の策だった。
敵の数が多くて捌ききれない。
なら、的を増やせば一匹辺りの負担は少ない。
それにこの場にドラゴンが増えれば千秋の能力が上がる。
勿論そんな囮紛いの策に千秋の姉を使うという事に罪悪感がないわけではない。
だがこのまま何もせずに負けるわけにはいかない。
急いでレッドアイズとウォータードラゴンに、それぞれ名護&朝倉、アナゴを乗せて分散させる。

こんな所で死んでなるものか。
俺の栄光のロードにはまだ先がある。
殺し合いなどという巫山戯た事を強いる輩に屈するものか。

全ては海馬が海馬たりえるために。
勝利を掴むまで倒れるわけにはいかない。
水竜剣を手に取り、構える。
魔法の呪文と、その内容が頭に浮かび上がりそれを素早く唱える。

「俺は水竜剣の特殊能力を発動!
 水竜剣の能力により俺は水の術法を唱える事が出来る!」
海馬の周辺の水分が次々と集結して、それは幾多もの弾丸に変化する。
「行くぞ、ウォーターガン!」
水の弾丸は次々と敵の幻獣へと当たり、墜落していく。
続けるように呪文を唱え、水弾を放っていく。
唱える、放つ。唱える、放つ。唱える、放つ。
常人には不可能な程の速さで呪文が唱えられ、次々と発射される水弾。
その機関銃のような勢射に幻獣も迂闊に近づけないで居た。
だがそれも長くは続かない。
海馬の常識外の精神力があるとはいえ、それは有限。
あれだけの連射をすれば、直ぐに底が尽きるのは目に見えていた。
唱える、不発。唱える、不発、唱える、不発。
幾度と唱えなおしても結果は変わらない。

  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

ワルドは海馬の精神力が尽きるのを見るやいなや、前線へと飛び出していく。
それを阻止しようとするアナゴ達の足止めを部下に任せながら、前へと、前へと。
彼が狙うのはただ一人、海馬瀬人のみ。
戦場において失ったら一番大打撃を受けるものが指揮官である事を、軍人である彼は知っている。
その為に執拗に遠方から全軍で攻撃を繰り返し、海馬が分散を選ぶのを待っていた。
分散を選べば的が増えて、一人に対する攻撃は減る。
それは間違いではない。
ただし、それは碌に戦いを知らないものが相手ならば、の話。
そして彼は防御が薄くなった指揮官を放置しておくほど馬鹿ではない。

策は上手くいった。
敵の力が強大で守りきれない。
なら、頭脳を叩けば敵の纏まりは消える。
それに敵が一人減るだけでお互いの士気は変わる。
勿論そんな簡単に海馬を倒せると思っているわけではない。
だがこのまま何もせずに負けるわけにはいかない。
急いでグリフィンをシャイニングドラゴンへと近づける。

こんな所で負けてたまるものか。
私の理想への道にはまだ先がある。
私の悲願を邪魔する者達に敗北などするものか。

全ては彼らの悲願のために。
聖地の奪還が見えてくるまで倒れるわけにはいかない。
杖剣を腰から抜き、構える。
魔法の呪文を素早く唱える。

「ラナ・デル・ウィンデ」
ワルドの周辺の大気が次々と集結して、それは空気塊の大槌へと変化する。
「エア・ハンマー!」
空気の槌は次々と海馬へと迫る。
不可視の攻撃は気付かせる事なく海馬へと迫る。
しかし空気の奔流は、周囲で激しい戦闘が繰り広げられていようともドラゴンの聴覚からは逃げられない。
危険を感じた千秋がすぐに海馬へと注意を促す。
だが大空の中、避ける場所は見当たらない。
海馬は咄嗟にカードから『攻撃の無力化』を取り出し宣言する。
そして空気の槌は海馬の眼前で消滅。
だがそれを予想していたワルドは、ブレイドの魔法を唱えて一気に海馬へと迫っていた。

  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

カードを発動したばかりの海馬は反応ができない。
「貰ったっ―――!」
ワルドが杖剣で、すれ違いざまに海馬へ突きを放つ。
風の魔法で射程を伸ばされた不可視の切っ先が海馬を襲う。
それはメイジとしては異質なくらいに素早く鋭い突き。
「くっ……!」
海馬は身を捩じらせ、ドラゴンの背中を転がりながら回避。
しかし服は切り裂かれ、素肌の露出を増やす。

攻撃を避けられた事に軽く驚きながら、ワルドはグリフィンからドラゴンの背中へと着地。
「君という頭脳さえ倒せば後は烏合の衆だ。
 力ばかりが強かろうとも後はなんとでもなる」
周りの、苦戦している海馬の仲間達を見てワルドは断じる。
「ふぅん……確かにその通りだな。
 だが俺も貴様なんぞに負けるつもりはない」
自惚れでもなく驕りでもなく、海馬は本心からそう答えた。


これまでの勝負でも、常に圧倒的に勝ってきた訳ではない。
時には逆境に陥った事もあったし、それを乗り越えて勝つこともあった。
そして最後まで勝利を諦めないのが海馬と言う男。
そんな海馬に対してワルドも油断なく杖剣を海馬へと向ける。

ワルドが杖剣を振るう。単純が故に、普段の訓練による信頼が置ける技だ。
それを海馬は水竜剣で払い、反対に切りかかる。
如何に直接戦闘の経験が少ないとは言え彼は巨大会社の社長。
護身として、ある程度の武道などは習得している。
如何に軍人が相手とは言え、直ぐに負けるほど弱くは無い。
突き、払い、切り、受け流す。
二人は演舞を演じているかのようにそれを繰り返す。
だが段々と海馬が追いつめられていく。
如何に海馬の剣が熟練されていようとも、最後にものをいうのは経験だ。
一瞬の隙を突いたワルドは『エア・ニードル』で海馬の心臓を狙う。
しかし海馬とて、剣の戦闘は未熟であろうとも命のやり取り自体は経験している。
咄嗟に急所を避けるように身体を動かす。
「ぐぅっ……!」
だがそれでも魔法衛士隊隊長の攻撃。
避けきれるはずもなく右肩を犠牲にする。
攻撃を受けた勢いで後方へと吹っ飛ばされる海馬。
その勢いで、跳ねるように傷口から溢れる血。
生暖かい血の感触を感じたのか、千秋が心配の声をあげる。
「ふぅん……この程度、どうという事はない」
海馬は立ち上がりざまにデッキからカードを抜き取る。
「ホーリーエルフの祝福!」
海馬の言葉とともに、カードからエルフが現れ、そこから聖なる光が発せられる。
場の味方の数に比例して回復するそのカードの能力は、海馬の傷を完治させるのに十分だ。
大した時間もなく傷口が塞がり、勝負は仕切りなおしになる。

再び両者は剣を切り結び、演舞を再開する。
だが今度は海馬が追いつめられる事もなかった。
ホーリーエルフの祝福により疲労まで回復した海馬。
何度かの魔法の使用に海馬との戦いで疲労しているワルド。
それは二人の力の差を埋めるのは十分だった。
そして今度は、精神力の回復した海馬にも水竜剣の術法が使える。
「出でよ、エレメンタル!」
呪文を唱え、水のエレメンタルを召喚。
二人掛りでワルドに攻め入る。
今度は一転してワルドが追いつめられていく。
エレメンタルを斬ろうとしたら海馬が切りかかり、海馬を倒そうとすればエレメンタルが襲う。
偏在、スキルニル、サテライト30の分身の全てはアナゴ達を抑えるのに向かわせていた。
そしてワルドと海馬が接近しすぎていてグリフィンの入る余地も無い。
徐々に徐々に尻尾の方へと追いつめられるワルド。
だがワルドに焦りは見えない。
その様子を訝しく思いながらも海馬は攻めを緩めない。

ワルドは一息に後方へと飛び去り、魔法の詠唱を始める。
海馬は追いかけて攻撃を続けようと一瞬思うも、先程の不可視の攻撃を警戒して待機。
だが相手から発せられたのは電撃の攻撃、ライトニング・クラウド。
目に見えるそれは、警戒していた海馬にとって避けるのは簡単だった。
避けたそのままワルドへ攻撃せんと向かっていくも、ワルドは不敵に笑う。
その様子に何かを感じ取り咄嗟に後ろを振り向く。
そうした海馬の視界に、一直線へ千秋の頭へと向かっていく雷撃の姿が映った。
「―――しまった!」
急遽Uターン、雷撃を追うも追いつけるはずがない。
「貴様、最初からこれを狙っていたのか!」
ドラゴンを落とせば、空を飛べない海馬も墜落するしかない。
そしてドラゴンの背にさえ乗ってしまえば後は上から落とすのは簡単だ。
つまり、ワルドをドラゴンの背に乗せた時点で海馬達は負けていたのだ。
「……俺を倒せば烏合の衆だと言ったな。
 確かにそうだが、貴様は勘違いしている事がある。
 認めたくは無いが……この世には確かに結束の力というものがあるのだと!
 そして貴様はその力に破れるだろう!」
海馬は死の覚悟を決め、それでもワルドをキッと睨みつける。
対してワルドは余裕の表情で笑う。
既に勝負は決まっている。
ドラゴンが雷撃を避ける事は適わず、海馬諸共墜落するだろう。
「負け惜しみかい? それに例え僕に勝ててもエミリは僕より強い」
そう、ワルドは自分より弱いものには従わない。
だからこそ彼は喜緑に従うし、情報統合思念体の力を欲していた。
「ふぅん、負け惜しみではない……事実だ!」
そう言うと海馬はすばやくカードを抜き取り、起死回生となるカード名を読み上げる。
「海馬瀬人を生贄に、ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-召喚!」
「なっ……まさか…………!?」
「海馬!?」
海馬のその言葉にワルドと千秋が驚きの声をあげる。
「千秋よ……俺は海馬ではない。
 俺は、正義の味方・カイバーマンだ」
海馬はそういい残して消え、代わりにロード・オブ・ドラゴンが召喚される。
途端、千秋に迫っていた雷撃が跡形もなく消えさる。
このモンスターが場に出ている限り、ドラゴンは魔法の対象にならない。
魔法攻撃が主力であるワルドにとって、厄介な能力だった。

  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

遊戯、貴様と決着をつけられなくなってしまったな。
俺はここで死んでしまうが、貴様なら奴らを倒すと信じているぞ。

アカギ、貴様には千秋を頼む。
二人の姉を失い、俺も死に、千秋が頼れるのはもう貴様以外にあるまい。

モクバ、済まない。
どうやら俺はここまでのようだ。
千秋を庇って死んだ事でお前は嫉妬するかもしれんがな。
だがお前なら分かってくれると信じているぞ。

そして千秋よ……貴様が俺に兄に近い感情を持っている事は知っていた。
だから俺の死は貴様にとって辛いものになるだろう。
俺も貴様にモクバを重ねていたから分かる。
これは貴様を死なせたくないが故にとった行動だったからな。
だが悲しむ事はない。
これからも俺が近くで貴様を見守っていてやろう。
だから泣くな、千秋。



その言葉の通り、海馬の身体は消滅するも彼はカードとなって千秋の荷物に紛れ込んでいた。

二日目・12時40分/nice boat.号近く、ブルーアイズシャイニングドラゴン上】
【南千秋@みなみけ】
[状態]呆然、光竜
[装備]青眼白竜のカード@遊戯王シリーズ
[道具]支給品一式、カイバーマンのカード@遊戯王シリーズ
[思考]基本:主催に制裁を加える。
1:アカギと長門を助ける。

※ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-展開中
※レッドアイズブラックドラゴン展開中
※ウォータードラゴン展開中
※エレメンタル展開中

【ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド@ゼロの使い魔】
[状態]健康、偏在使用
[装備]サテライト30、杖剣、魔法衛士隊全軍
[道具]スキルニル×不明、アンドバリの指輪、グリフィン
[思考]基本:対主催の迎撃。
1:nice boat.号に迫る千秋達を倒す。
※偏在、魔法衛士隊全軍はアナゴと名護達へ向かわせています。

【海馬瀬人@遊戯王シリーズ 死亡確認】

※水竜剣@ロマンシングサガ、デュエルディスク@遊戯王DM、DMのデッキは千秋の背中に落ちてます。
最終更新:2008年10月02日 14:01