「ぅ・・・・・・ううん・・・・・・」
「南さんが目を覚ましたよ!」
「本当ですか?」
洋館の一室、こなたさんの声を聞いて、私は気を失っていた春香さんの顔を覗き込む。
時を少し巻き戻してみよう。
突然現れた鉄の巨人が私達を踏みつけようとしたので、私は咄嗟に彼女達を抱えて走り出したのだ。
そのとき春香さんは巨人の足が見えた瞬間に気を失ってしまい、その後も彼女は溜まっていた疲労のせいか眠りに落ちてしまったのだ。
そして彼女を休ませるためにみくるさんはこの洋館を紹介してくれたのだ。
どうやらここは彼女が身を潜めていた場所らしく、今休んでいる部屋の一室では、彼女が使っていたと思われるシーツがきちんと畳まれたまま床に放置されていた。
春香さんをベッドに休ませて部屋でこなたさんとくつろいでいると、みくるさんは私達に紅茶を振舞ってくれた。
彼女に与えられた支給品である最高級紅茶葉から煎れられたものらしい。 その香り、後味ともに最高級の名に恥じないものであり、目が覚めた春香さんにも一杯飲ませてあげたいものだ。
隣のこなたさんは慣れない手つきでティーカップを持っていたので、自分の飲みやすい飲み方で賞味するように勧めた。
するとこなたさんは持っていたティーカップを口に当てて一気に飲み干す。 殺し合いに放り出されて約6時間、これまでたまった緊張で喉がかわいていたのだろうか。
そんなことを考えていた私にこなたさんが照れくさそうに頬をかいた。
「
ごめんごめん、ちょっと行儀が悪かったよね」
「いえいいんですよ、マナーはこれから覚えていけばいい話です」
そもそもこの状況でマナーだのなんだの言っている暇はない。 私は彼女達淑女が生き延びてくれればただそれだけで良い。
ドアが開かれた音がしたかと思うと、台所に行っていたみくるさんが色とりどりのクッキーを持ってきたのだ。
部屋の中に食欲をそそる、それでいて上品な香りが広がる。
「あの・・・・・・クッキー焼いたんですけどどうですか?」
「わーい食べる食べるー」
彼女がテーブルに皿を置くなり、こなたさんが皿の上のクッキーを食べ始める。
「あ、
混沌の騎士さんも一つ食べてみてください!」
そういえば私もこの6時間何も食べていない。 そのことを思い出した私は軽い空腹感に襲われ、
彼女の勧めに従 ってこなたさんと同様にクッキーを一つ摘まんで頬張ってみる。
口の中になんとも言えない素晴らしい香りと甘さが広がって、私の空腹を少しずつ塗り替えていった。
「おかわり欲しかったら言ってくださいね! すぐに作りますから!」
彼女はそう言うと満面の笑顔で私に微笑みかけた。
初対面の私達にここまで手厚くしてくれるなんて、どこまで優しい娘なのだろう。
「ぅ・・・・・・ううん・・・・・・」
聞き覚えのある声が部屋の片隅から聴こえた
その時隣でクッキーを食べていたこなたさんが突然椅子から立ち上がり、ベッドのほうに向かって歩き始めた。
そして再び現在の話になる。
春香さんの美しく整った顔立ちの両の瞼が、今ゆっくりと開かれた。
「私は一体・・・・・・」
「南さんはあのおっきいロボットが襲ってきたとき気絶してしまったのです」
「突然襲ってくるなんて酷いよねー。まあ混沌の騎士さんが助けてくれたからもう大丈夫だけど」
私が返すまえに春香さんの問いにみくるさんとこなたさんが答えていく。
それを聞いた春香さんは、綺麗な顔を下げて会釈をした。
「また、あなたに助けられたんですね」
彼女は安堵した表情を見せて立ち上がる。 疲労が残ってないかどうか心配になったので休養を勧めてみたもの、
「もう大丈夫です」
というばかりだ。
「じゃあさーこれからどうするかみんなで決めようよ。 早く主催を見つけないとね」
「ええそうね、いつまでもここでゆっくりしているわけにはいかないわ」
「私も賛成です!
キョンくんや涼宮さんのことも心配です」
こなたさんの提案に春香さんとみくるさんが是の意を見せる。
正直私としてはこのまま彼女達とここにいて、ほとぼりが冷めるまで身を潜めていたいのだが彼女達の意見はそれとは正反対のものだ。
「賛成です。 ・・・・・・が、私の望みも聞いてくれますか?」
主催を倒して惨劇を止める、なんとも勇敢なことだが、可憐なお嬢さん達にそのような危険なことはやらせたくない。
だが止めようとしても彼女達は聞かないだろう。 だから私は質問した。
「私は貴女達を護りたいのですが、私にも自分の記憶を探すという目的もあります。 ですから主催を倒すという目的に私の記憶を探すことも加えて欲しいのです」
瞬間、場が凍りついた。
先ほどまで和やかだった部屋の空気が一気に暗くなり、彼女達は皆、なんとも言えない複雑な表情をして目線を下へと向けている。
しかし私は言及をやめない。
「私はどうしても自分が何者かを知りたいのです。 貴女達は私が何者かを知っている、だから私は貴女達から過去の私を教えてもらいたい」
予想はしていたものの、一番起こってほしくないことが起こってしまった。
元々彼は自分の記憶を探すために放浪していたのだ。 そして私は彼の過去を知っている。 そのことを彼も知っている。
故に彼と一緒に行動していればいつかは聞かれてしまうことは必然だったのだ。
そして今、彼が神妙な顔で私達に質問を投げかけているが私には答えることができなかった。 横で私と同じように俯いている泉さんと朝比奈さんも彼については知っているのだろう。 答えられるわけがない。
彼のことを知っている故に、以前の彼がどれほど残酷だったのかもそのためにどれだけの命が失われているかも死ってしまっている。
もし彼がこのことを思い出してしまったらどうなるのだろうか?
半狂乱になってこの場で私達が殺されてしまうのだろうか・・・・・・
いや、それはまだいい。 本当に恐ろしいのは彼が私に対してなんとも思わなくなってしまうことだ。
あれほど私に、そして泉さんと朝比奈さんに優しくしてくれた彼が自分達を単なる殺人の対象としてしか見てくれなかったらと思うと悲しい。
今の彼が彼で亡くなること、それが一番恐ろしかったのだ。
「春香さん、仮に私は自分の正体を知っていても紳士として貴女に手を加えないことは約束します」
「・・・・・・」
沈黙。 それが唯一、彼に出すことができた答えだった。
やはり彼女達が答えてくれることはなかった。 春香さんと最初に出会ったときのことを思い出してみる。
その瞳には麗しい彼女には相応しくない憎悪に満ち溢れ、彼女が持っていたのがデッキブラシでなく剣だったら私は即座に切り殺されていたのではないのだろうか。
何故初対面でこのような反応をするのかぐらいは私にも容易に想像できる。
『貴方のせいで…夏奈が…夏奈が…』
夏奈といっただろうか、春香さんにとって大切な存在を殺めてしまったのだろう。
しかしそれだけではない気がする。
私の井出達から自分があまり善人ではないことが察せたが、そこからは測ることができないほど深く、邪悪なものを秘めているのではないのだろうか。 そう考えると極めて恐ろしいものがある。
ここで春香さんに襲い掛かってきた男を思い出してみよう。 春香さんを助けるために、私は彼の脳天を突いて結果的に絶命させることになった。
思えばあの時感じた感情はなんだったのだろうか。 普通の人間なら人を殺して良心の呵責でも起こすだろう。
しかし私は、彼を突いた瞬間妙に心地よくなってその遺体をさらに弄びたいと思ってしまったのだ。
咄嗟にそれを振り払い、春香さんを護ることに思考を切り替えたものの、あの時の妙な気持ちは中々忘れることができない。
私は一体なんだったのだろうか、私は何故此処にいるのだろうか、全てが全て謎に包まれている。
その真実をわかっているのは護るべき淑女達だけ。
ただ、わかっていることは、私は私の思う以上に残酷な『存在』だと思うこと。
「失礼しました・・・・・・話したくないのならそれでいて構いません。 私の記憶は私自身で思い出すことにします
不快な思いをさせてしまった彼女達に謝罪をし、話を本題に戻すことにする。
今の私にできること、それは彼女達を護ることだ。
これが私という存在の紳士なのだから。
【一日目・午前6時00分/ハンガリーの洋館】
【
朝比奈みくる@ハルヒ】
[状態]健康、混沌の騎士に惚れた
[装備]不明
[道具]不明
[思考]基本:殺し合いには乗らない
1:できれば混沌の騎士の記憶が戻ってほしくない
2:これからの動向を話し合う
【
泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康、混沌の騎士に惚れた
[装備]:不明
[道具]:支給品一式
[思考] 基本:殺し合いには乗らない
1:仲間を集めて主催を倒す
2:できれば混沌の騎士の記憶が戻ってほしくない
3:これからの動向を話し合う
【南春香@みなみけ】
[状態]健康、マムクートの力封印中、混沌の騎士に惚れた
[装備]デッキブラシ@テイルズシリーズ
[道具]食料一式、その他不明
[思考]基本:殺し合いを止める
1:アカギ、長門、遊戯の安否が気になる
2:できれば混沌の騎士の記憶が戻ってほしくない
3:これからの動向を話し合う
※アカギが主催をやってることを知りません
【混沌の騎士@カオスロワ】
[状態]健康、記憶喪失
[装備]如意棒
[道具]手品セット、食料一式、その他不明
[思考]基本:殺し合いには乗らない
1:南春香、泉こなた、朝比奈みくるを守る
2:『自分』を知りたい
3:自分がそんな存在でも意思は変えない
4:これからの動向を話し合う
※5期のころの記憶と能力は失っています。
最終更新:2008年11月08日 13:57