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――――ようこそ。我が名も無き庵へ。


人のカタチをした闇は少女に言った。




突然暴走したエルルゥ。
ジャックはレインボーパン(アイシア謹製)を食べさせることで鎮圧に成功し、その後気絶したエルルゥを担いで医務室に運んできたのだった。
当のエルルゥ本人はは現在ベッドで静かな寝息を立てている。
ときおり『ハクオロさ~ん』と寝言を発していた。
「こんな危ないものはこうだ」
ジャックは仮面をくしゃくしゃに丸めごみ箱に投げ込む。
「そうだアイシア」
「なんですか?」
「すまないが食堂に置き去りにしてきた荷物を持ってきてくれないか?」
「はあい、わかりました~」
とてとてと小走りで医務室を出て行くアイシア。
「……僕も少し休むか」

「えっと……荷物は……あったあった」
食堂に放置されたままの三人分の荷物。
重かったらどうしようかと悩んだが荷物は意外と軽かった。
荷物を抱え食堂を出て行こうとするアイシア。
「え――――?」
その視線の片隅に奇妙な人影が映っていた。
夜色よりもさらに昏い闇色の外套を纏った丸眼鏡の青年が、こちらを向いて座っている。
青年の姿をした闇は――うまい棒を食べていた。
「少し、話をしないかね?<小さき魔術師>」
「あ――――」
その瞬間世界が無限の闇に覆われた。



「――――ようこそ。我が名も無き庵へ」


唇をつり上げた闇はくつくつと嗤っている。
片手に持った食べかけのうまい棒はサラミ味と称されていた。
「……誰ですか?」
「<夜闇の魔王><名付けられし暗黒><全ての善と悪の肯定者>――神野陰之」
闇はアイシアにそう答えた。
「それで陰之はわたしに何かご用ですか?」
「君がそう望んだからだ。かつて、一人の魔術師が桜を植えた」
「!?」
「そしてその桜は『枯れない桜』と呼ばれ花びらを散らすことなく人々の願いを集め、それを叶え続けてきた」
うまい棒を食べ終えた神野は深い闇の中に手を伸ばし二本目のうまい棒――チーズ味を取り出す。
「そう、君が望むあるべき桜の姿。だがその桜は無残にも枯れてしまった」
なぜこの男はそのことを知っている?いや、それよりもなぜうまい棒?
<夜闇の魔王>などと大層な名を名乗っているが片手のうまい棒がその威厳を台無しにしていた。

「うまい棒は――うまいからだ」

「はい?」
突然訳の解らないことを言い出す神野。
「私がなぜうまい棒を持っているか?君はその答えを願った。私はその問いに答えたまでだ」
二本目のうまい棒を食べ終えた神野は三本目のココア味を取り出す。
なぜココア味!?
サラミ、チーズときたら次はめんたいだろ、普通に考えて……
アイシアはそう思ったがすぐにその思考を止めた。
なぜココア味なのかなんて考えたら神野はまた訳の解らない答えを言うに違いない。
「魔法の桜の復活。それが君の望みかね?」
良かった。ココア味の答えじゃない。
「ならばもっと願うがいい、誰よりも強い願いを持ち続ければ私もそれに応じよう」
神野は三本目のうまい棒を食べ終える。
「そろそろ時間だアイシア。また会おう」
神野は闇の中に溶け込むようにして消えた。消える直前彼の声があたりに木霊した。
『それは私からの餞別だ。取っておきたまえ』



「……なんだったんだろうあの人」
気がつくと闇が晴れていた。アイシアは荷物を抱えたまま食堂にひとりで立ち尽くしていた。
食堂の床には神野が残したうまい棒コーンポタージュ味が十本残されている。
「とりあえずもらっておこっと」
釈然としないままうまい棒を拾い集めたアイシアは医務室に戻っていった。

【神奈川県横須賀基地:食堂 2日目 15:40】
【アイシア@D.C.S.S】
〔状態〕健康
〔装備〕うまい棒コーンポタージュ味×10
〔道具〕三人分のデイパック
〔思考〕
1:桜の木の復活
2:あの人何者?
3:とりあえず医務室へ戻ろう

【神野陰之@Missing】
〔状態〕不明
〔装備〕うまい棒×987
〔道具〕不明
〔思考〕
1:うまい棒うめぇwwwwwwwwwww

【神奈川県横須賀基地:医務室 2日目 15:40】
【ジャック・バウアー@24】
〔状態〕少し疲労
〔装備〕USPコンパクト
〔道具〕なし
〔思考〕
1:アイシアが帰って来るまで一休み

【エルルゥ@うたわれるもの
〔状態〕熟睡
〔装備〕なし
〔道具〕なし
〔思考〕
1:熟睡中




最終更新:2006年12月23日 19:32