殺し合いが始まって
二日目になる。
これまでの一日をどうしていたかと言うと、なんて事はない。
寝ていたのだ、無駄な一日だったのだ。
「老人を減らすために殺し合いか、これじゃ老人どころか子供も死ぬんじゃないかなぁ」
そんな事を考えながら、ぼく、いーちゃんはまだ家でゴロゴロしていた。
「それにしても生産を中止したら、あっという間に全員餓死じゃないか。戯言だけどね」
どこか他人事のように呟くぼく。
「ま、実際他人事なんだけど……」
自慢じゃないが、ぼくには普通の知り合いが少ない。
なぜか変人ばっかりが集まってくる。
引き篭もりの蒼とか、人類最悪とか、人間失格とか。
「そういういーたんが一番変だけどな」
そして―――この人、哀川潤さん。
「いい加減、人の心読むのやめてくださいよ、潤さん」
「かははっ、傑作だぜ」
「声真似もやめてください」
読心術と声真似、その他諸々が得意な人類最強の請負人。
そんな人たちが知り合いにいるので、未だ食料には困っていない。
とはいえ、いつまでもこんな生活をしているわけにはいかない。
学校だってあるし……行かないけど。
「ま、確かに信長を放置しているわけにもいかねぇよな」
「そうですよ、潤さんならなんとかできるんじゃないですか?」
人類最強の請負人というのは伊達ではなく、この人は何でもできる実力を持っているのだ。
「はん、当然だな」
「じゃあ早く何とかして下さいよ!」
「ったく、仕方ねぇな、いーたんの為に一肌脱いでやるか、人肌じゃねぇぞ?」
「わかってますよ!」
今までの無駄な様に見えた一日は、やはり無駄だったようだ。
「じゃあ行くぞ、いーたん」
その言葉に、ぼくは呆然とする。
「当たり前だろ、言い出したのはいーたんだ。心配するな、いざとなったらお姉さんが守ってやる」
そう言って問答無用でぼくを連れ家を出た潤さんは、無駄に頼もしかった。
ぼくの冒険は順風満帆にスタートを切る―――はずだったのだが……
なぜかぼくはまた家にいる。
「どうしてぼくは、まだ家にいるんでしょう」
部屋には先ほどと同じ、いや、少し違う。
部屋の中は二人から三人に増えていた。
「そして、どうして貴方がここにいるんです?」
ぼくは新たな闖入者の方を向きながら問うた。
「『どうしてぼくは、まだ家にいるんでしょう』
ふん、意味の無い質問だな。お前がまだ家に居ようと居まいと、それはどうせ同じことだ。
そして、久しぶりだな『俺の敵』」
そう言って狐面の男は振り向いた。
「お前も当然、この状況を知っているんだろう」
そして唐突に話を切り出す。
「ええ、まぁ」
この男には出来るだけ会いたくは無かった……が、このタイミング。
会うべくして会ったと言う事なのだろうか。
人類最悪と呼ばれた男、西東天は話を続ける。
「お前も知っての通り、俺は世界の終わりを望んでいる……だが、こんな終わりは御免だ」
「でしょうね、ぼくだって御免ですよ」
当然だ、こんな事を望むのは殺人狂か既知害、どっかの狂信者ぐらいだろう。
織田信長がどれに属するのかは知ったことじゃないが。
「そうだろうな、そこで俺は奴と対抗するために『対信長用の十三階段』を集めることにした。
候補は何人か上がってるがな、武器屋の
スコールや期待ハズレのヨルス、ファントム吾妻玲二。
それに相手が信長なら明智光秀を裏切らせるのもいいだろう」
「はん、十三人で足りるのかよ、クソ親父」
今までムスッとした顔で押し黙っていた潤さんが、突如口を開く。
「ふん、足りようが足りまいが、どうせ同じ事だ。」
その回答に潤さんは、またもや押し黙る。
「それで、どうするんですか?」
西東の話は要領を得ない。
彼が信長に対抗するとして、それで僕らにどうしろというのだろうか。
まさかぼくらに十三階段に入れとでも言うのだろうか。
西東はその疑問に答えるように言う。
「ふん、お前らはお前らで動けばいいさ。後は必要に応じて、俺が手を貸そう」
そう言った西東は、荷物の中から携帯電話を取り出し僕に投げた。
「連絡はそこにする、そっちも必要だったら連絡すればいい」
慌てて携帯電話をキャッチすると、西東は既に玄関の扉に手をかけていた。
「じゃあ、『縁が在ったら、また会おう』」
扉が閉まる音が聞こえると、僕はふぅと息を吐いた。
潤さんと西東との空気が重すぎたせいだ。
「けっ、相変わらす自分勝手なやつだ」
それはあなたもですよ、と僕が思ったと同時に頭を叩かれた。
「それは兎も角僕らも知り合いや仲間を探しに行きましょう」
「久渚ちゃんはどうすんだ?」
「久渚や零崎は大丈夫でしょう、それより一人じゃ危なそうな人を探したい」
ぼくの頭の中には朝比奈さんの事が浮かび上がっていた。
ダナティアさんは……たぶん大丈夫だろう。
僕に関われば何人も人間が死ぬとはいえ今回は別だ、関わらなくても死ぬ。
それなら僕が積極的に関わっていき、信長の計画を狂わせたい。
「じゃあ、その朝比奈ちゃんでも探しに行くか」
潤さんは僕に渡された携帯を奪うと、おもむろに何処かに電話をかける。
「あーもしもし、ちぃくん? ああ、そうそう、所在を調べて欲しい奴が居てな、
今回は違う、
朝比奈みくるって娘なんだが、うん、そう、え、ジャミング、
ちぃくんでも無理? ああ、そうか、そんだけわかりゃ十分だ、サンキュー」
どうやら話が終わったみたいだ。
あの「ちぃくん」でも探すのが無理だったとは信じられないが、
潤さんの口ぶりによると手がかりは見つかったらしい。
「というわけで、朝比奈みくるは三重県のどこかにいるらしい」
「ありがとうございます潤さん、じゃあ早速いきましょう」
ぼくはそう言って家を出て、下に止まっている潤さんの愛車・コブラの乗った。
車を飛ばしていた俺―――岸田洋一は、ようやく京都府にまで着いていた。
京都に急ぐまでに、窓からはたくさん戦いが起きているのが見えた。
老人や子供は真っ先に狙われている。
そして放送で呼ばれた人数の多さ。
活躍したものが呼ばれたのだから、死者は数えきらないほどなのだろう。
殺し合いに乗らない腑抜けどもばかりだったらどうしようかと思ったが、その心配はないようだ。
そう考えていると、マンションに入っていく一人の少女を見つけた。
ちょっと年が小さすぎる気もしたが、最近やってない事だ、この際関係ない。
そう思い、少女を襲おうと車を止め外に出る。
ブレーキの音に気付いたのか、こちらを見て驚く少女。
そしてその後顔を恐怖に歪める。
「くくく、お嬢さん、ひとりで歩いちゃ危険だぞ」
恐怖に歪んだ顔も実にそそる。
しかし持ち直したのかバックから杖を取り出すと、踊りだした。
気が触れたか、まあいい、倒して犯すだけだ。
そう思い、やすりを片手に走る。
「サプラーイズパーティー!」
走る、走る、走る、走る、走る。
そしてあともう少しという所で、突如異変が起こる。
閃光と共に、先ほど少女が立っていたところに変なネコがいたのだ。
「くっ、どこだ!?」
少女を探そうと辺りを見回すと、既に遠くに走っていくのが見えた。
「くそっ」
八つ当たりにネコに攻撃しようと思ったら、突然奇妙な声で鳴き始めた。
「オアァァァ~~~~~~」
その奇妙な声で、突然力が抜けて頭が痛くなっていく。
「なんてことしやがる、ペット厳禁だって書いてあるだろうが!」
捨て台詞を吐いて、逃げるようにマンションから離れていく。
去っていく最中に、この声にやられたのか倒れているオバサンがいた。
収穫が無いのは腹が立つので、このオバサンに止めをさして逃げることにした。
突然の事だった。
どこかで一休みをしようと街を歩いていたところ、突然変な声が聞こえたと思ったら
姉さんが苦しみだして、倒れたんだ。
声の聞こえるほうを見てみると、猫の怪物が鳴いていた。
たぶん、姉さんはバチが当たったんだ。
たくさんのネコを殺したバチが当たったんだ。
だけど、姉さんをそのまま見殺しにするわけにはいかない。
こんな姉でも、姉は姉だ。
ぼく一人で姉さんを運ぶことはできない。
だから助けを呼ぶために駆け出した。
待っててね姉さん、必ず助けを呼んでくるから!
しばらく走ると、車に乗った二人組みを見つけた。
ぼくは急いで車道に入り、手を広げ道を塞ぐ。
案の定、キキーッと音を鳴らして車は止まった。
「どうした、ぼうず」
赤い女の人は僕に質問をした。
「お願いです、ぼくの姉さんを助けるために手を貸してください!」
赤い女の人は「わかった」と言うと、ぼくに案内を促した。
姉さんのところに戻ってきた時には、すでに姉さんは殺されていた。
頭がグチャグチャになった、見るも無残な姿に変わっていた。
ほんの少ししか眼を離していないのに、迂闊だった。
ここはそういう世界だったんだ、理解できていたつもりなのに、全然理解していなかった。
「そんな、姉さん…」
僕は膝をつき、呆然とする。
やっぱり、バチがあたったのかな。
悪気はないとはいえ、たくさん罪の無いネコを殺してきたんだ。
そう思ったら、悲しいけど仕方ないのかもと感じた。
確かに、いない方がいいと何度も思った。
だけど、だけどこんな突然に……
「姉さん、もういない方がいいなんて思わないから帰ってきてよ!」
ぼくは形振り構わずに叫び声を上げる。
そう言った所で、すでに手遅れな事は分かっている。
でも、そう叫ばずにはいられなかった。
ワカメに続き、姉さんまで死んでしまって辛い、寂しい。
それと同時に、どうしようもない怒りが湧いてくる。
こんな所でくよくよしているわけにはいかない。
僕は姉さんたちの仇を討つんだ!
すべての元凶、織田信長を倒すんだ!
だけど、今は、今だけは泣いてもいいよね、姉さん……
「ああ、今お前は泣いていい」
赤い女の人はそう言うとぼくを抱きしめた。
ぼくは、大声で泣いた。
【京都府 マンションの外 二日目 18時】
【ククリ@魔方陣グルグル】
〔状態〕???
〔装備〕???
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:???
【京都府 マンションの外 二日目 18時】
【岸田洋一@鎖】
〔状態〕吐き気
〔装備〕鉄やすり、恐ろしいほどに男根
〔道具〕黒塗りの長剣
〔思考〕
1:声の聞こえない場所へ
2:サプライズパーティー!
【京都府 マンションの外 二日目 18時】
【いーちゃん@戯言シリーズ】
〔状態〕健康
〔装備〕コブラ
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:少年(カツオ)をなぐさめる?
2:三重に朝比奈みくるを探しに行く
3:知り合いや仲間を集める
4:織田信長を倒す
【哀川潤@戯言シリーズ】
〔状態〕健康
〔装備〕コブラ、携帯電話
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:少年(カツオ)をなぐさめる?
2:織田信長を倒す
【
磯野カツオ@
サザエさん】
〔状態〕かなり被爆、疲労
〔装備〕ピストル、
対個人用核爆弾2個
〔道具〕支給品一式 ×2
〔思考〕
1:泣く
2:姉さんたちの仇を討つ
基本方針:どこかで体勢を立て直し、主催者を倒す
【京都府 どこか 二日目 18時】
【西東天@戯言シリーズ】
〔状態〕健康
〔装備〕携帯電話、狐の面
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:対信長用十三階段を集める
2:織田信長を倒す
最終更新:2006年12月23日 19:39